レガロ~私が見えている好感度は、私が相手に抱いている好感度です~

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序章

六話

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 数日後。
 斎藤は相変わらず学校を休んだままで、高島が臨時で担任を務めている状態に変わりはなかった。
 『斎藤先生は体調不良』と高島が先んじて伝えていたためか、遥たちのクラスメイトは、斎藤に対してそこまで心配した素振りを見せなくなっていた。
 流石に長期ともなれば疑問に思う生徒が一人くらい居ても良いものだが、誰もが高島に夢中で、遥には、それが随分異様な光景に見えていた。
 獲物を見つけた獣の様な目をした高島はなりを潜め、誰もが知る、爽やかスポーツマンの顔をしていたからなのか、それとも、斎藤に対するクラスメイトの好感度がそれほど高くないからなのか。
 何にしても、女子生徒は高島に色めき立ち、サッカーや野球なんかに高島を誘う男子生徒は楽しそうに昼休みを過ごしている。
 まるで斎藤など最初からいなかったかのように。
 遥にとっては、もちろんクラスメイトが喜ぶ姿は眼福、目の保養である。
 斎藤の事をすっかり忘れてしまった様な、異様ささえなければの話だが。

 検査結果が出たと優斗から聞かされた遥は、校門前に待機しているリムジンに乗り込んだ。
 前に来た時と同じように、外観は豪邸、内部は要塞の様な施設を歩き、優斗についていき応接間に向かった。
 応接間の中では、円卓の上にマカロンやケーキ、紅茶が用意されていた。

「兄さん、もう少しで帰ってくるから」
「部活?」

 優斗がソファーに腰かけ、紅茶が注がれたティーカップに口をつける。
 遥も隣に座ると、マカロンに手を伸ばした。

「もう引退してる。生徒会の方で忙しいの」
「生徒会?先輩、生徒会役員だったのか」
「ええ」

 生徒会長や副会長は、表立って生徒の前に立つこともあるため顔を見かけるが、慎に対して、生徒会役員という印象はない。
 恐らく書記か何かだろうと遥は予想した。
 三年生は大学受験や就職活動で忙しくなってくる時期で、部活も委員会も二年生へとバトンタッチするタイミングだ。
 生徒会も同じように、そろそろ引継ぎとして、生徒会役員選挙が行われる時期に差し掛かっていた。
 慎が生徒会で忙しいというのは、最後の大仕事として残っている、その生徒会役員選挙の準備か何かだろう。

「卓球部の新しい部長は?もう大丈夫なのかな?」

 遥の問いかけに、優斗が一睨みする。
 どうやら未だ立ち直れないらしい。

「学校には来ているみたいだけれど」
「う~ん、これは…謝りに行った方がいいかな?」
「余計えぐるわよ、それ」
「そうかな…ちょっとしたものでも持って…」
「やめなさい、面倒だから」

 プライドが余計へし折られるか、或いは遥に対して『王子様』の印象を持つようになるか。
 優斗は軽くため息をついてから、ケーキを口に運ぶ。
 遥は、卓球部の部長に対してどうするかと考え続けていた。

「すまない、遅くなった!」

 自動ドアが開くと同時、そんな言葉と共に茶封筒を持って慎が足早に入ってくる。
 控えていたメイドや執事たちが、ティーカップを用意して慎の分の紅茶を注いだ。
 慎は向かいに座ると、茶封筒を遥に差し出した。

「これが検査結果だ」
「見て良いんですか?」
「と言うか、きみ自身の事だから、知っておいた方がいいだろう?」

 まあ、確かにその通りだ。
 遥は茶封筒を両手で受け取って、これ早速と封を開ける。
 中には数枚のA4の用紙が入っていて、それぞれの検査結果が記されていた。
 血液検査の結果ではヘモグロビン値がどうのだとか、MRIではどうのだとか、専門的な分野の記載が多く、遥には、あまり理解が出来なかった。
 専門的な内容が数枚続いた。
 そして、最後の一枚はそれを総評するかの様に、専門知識がない一般人でもわかりやすい文章でまとめられた内容が記載されていた。
 そこには、遥が持って生まれた贈り物の能力についても記されている。

「うん…?」

 遥は、見間違いだろうかと数度瞬きした。
 が、記載内容に一切の変化はない。
 遥の贈り物レガロ
 そこには、二段の記載があった。

 一つは、既に遥自身が認識している、『自身が相手に抱いている好感を、好感レベルという形で認識する』こと。
 そしてもう一つは『好感レベルに応じ、相手の贈り物の力を受け付けない事』だった。

「う~ん?こういったことは、稀にあるのかな…」

 ふ~む、と、まるで探偵の様に唸り、考える。
 慎は遥の反応に、口元を引きつらせた。
 もっと別の反応を予想していた様だが、遥の実際の反応はまるで違うらしい。

「世界にも極僅かながらに存在はしている」

 遥の検査結果は、慎も知っているといった口ぶりだ。

「なるほど、私は希少種って事か、参ったね。スポーツ万能、勉強はそこそこだが王子様と呼ばれる私に、こんな貴重なものが眠っていたなんてね」

 遥はショックを受けるどころか、寧ろ、随分誇らし気だ。
 前髪をかき上げ、男性アイドルやイケメン俳優さながらのキラキラとしたオーラを発する。
 慎が「まぶしっ!」と、いつだかにした反応と同じ反応を見せた。
 優斗は横目でそれを見ながら、マカロンに手を伸ばす。

「おっほん…高島が――」

 慎がわざとらしく咳払いをして、話を戻そうとする。
 が、遥の眩しさに、視線までは向けられない様だった。
 寧ろこのキラキラオーラこそ、彼女の贈り物の能力なのではないかと疑うほどの眩しさだ。

「…高島が君に目をつけたのは、何かしらの形で贈り物の力を使って、君を炙り出したからだと思うぞ」

 慎の言葉に、遥は頷く。

「高島の贈り物の能力って?」
「それは俺たちもわかっていないんだ」

 高島が力を持っている事はわかっていても、詳細は不明という事の様だ。
 遥は更に考えるが、ふと、顔をあげ優斗に視線を向ける。
 優斗もそれに気付き、紅茶を一口飲んでから静かにカップを置いて口を開いた。

「今や、二年生の殆どが高島に好感を持ってる。腹の内が真っ黒なわりにね。一部、一年生も好感を持っているようだけれど」
「三年生は?」

 遥の問いかけに、優斗は首を横に振った。

「高島が三年のクラス棟に行くことはあまりないはずだけど」
「ああ、そうえば高島って、担任は二年だけど受け持ってる教科は一年のものだったね」

 何も言わずとも、求めている答えを差し出してくれた優斗に心の中で感謝しつつも、遥は更に考えを巡らせる。
 好感によって相手の贈り物の能力のかかり方が違うというのは、どうやら幸運らしい。

「気になってる事があるんだけど、私達のクラス、日に日に斎藤の事を心配しなくなってるよね。これだけ長い期間休んでるのに、誰一人として、斎藤の事を聞こうとしない。それどころか、高島に更に色めき立っている。女の子が幸せそうな顔をしているのが見れるのは、こちらとしても嬉しいけど、ちょっと、異常じゃないかな?私だけかな?そう思うのは」

 どうなのか、と優斗に視線をもう一度向けると、呆れ混じりのため息が聞こえてきた。
 が、すぐに優斗も頷く。
 慎が、遥の話と優斗の反応を見て真剣な顔で口を開く。

「高島の贈り物は、相手に取り入る、或いは相手の好感度を上げる、相手の記憶を操作して自分が過ごしやすいような環境を作るか…何にしても、高島にとって都合の良い状態を作り上げている可能性はあるだろうな」

 慎の見解に、遥も頷いた。
 遥が高島の贈り物の力に影響を受けないのは、『好感レベルに応じ、相手の贈り物の力を受け付けない』という遥の持つ力があったからだろう。
 優斗が高島の贈り物の影響を受けないのは、のおかげだと、遥は考える。

「そうなると、高島を学校から追い出すのは容易い事じゃないですね」
「ああ。下手をすれば、学校全体が高島に呑み込まれかねないからな…どうするか…」

 予想以上に打つ手が少ない現状に、慎も、遥も考え込んだ。
 優斗もまた、表情には出さないが考えている様で、マカロンを摘まんだのを最後に手が止まっている。

「高島の隙…弱み…思いつかないな。こうなったら仕方がない、私が直接対決をしようじゃないか」

 堂々と、胸を張ってそう宣言する遥の表情は自信にあふれていた。

「また君は…保護対象にそんな事、させるわけがないだろう?!」
「言ったじゃないですか。私が大人しく保護されると思いますかって」

 実際、かなりの自信があるんだろうが、慎からしてみれば、簡単に「はいそうですか、お願いします」と言えるものでもない。
 どちらも譲らないつもりなのか、暫く互いに睨み合った。
 自信満々のオーラを発する遥のキラキラに、慎は今にも気圧されそうだったが、ここで引けば彼女が協力者になるのを認めてしまう事になる。
 が、やはり眩しいのか、眉間にしわを寄せ、まるで眠気のなかで無理にでも目を開こうとしてるかの様な表情になった。
 そんな慎を見て遥が反応しないはずもない。

「あはは、ぐぬぬって顔してる先輩も面白いな」

 遥は眩しいほどの笑顔を振りまく、この余裕ぶりである。
 優斗に関しては、遥の言動を止める事を諦めた様で、止まっていた手が再びティーカップに伸びていた。

「きみ…高島が実際どんな贈り物の能力を持っているのか、わからないんだぞ?俺たちの予想が外れている可能性だってある」
「まずはそこをある程度絞れば良いんですよね?私、高島になぜか名前呼びをされたので、外部に訴えるだとかでも言ってみれば良いんですよ。PTAまでは贈り物の力でどうにか出来たとしても、第三機関ともなればそうはいかないでしょう。ああ、できれば優斗の力も借りたいですけど。うまくすれば、ある程度、高島の贈り物の力のアタリもつけられるんじゃないですか?」

 追い打ちをかける様に、慎に対して遥は笑顔を向ける。
 遥は、自分が高島に負けるはずがないとさえ思っていた。
 男の力を甘く見ている様に思えるが、遥には、ある程度のの様なものがあった。
 瞬時に頭に浮かんできたものだが、付け焼刃というにはしっかりしている様にも思えるプランだ。
 慎はなかなか首を縦に振らないが、優斗は遥の考えている事が分かるのか、真顔で口を開く。

「それならある程度は安全かもね」
「でしょう?」
「流石に兄さんまで出ていくと怪しまれるかもしれないけど、私達はクラスでも一緒にいる事が多いから、そこまで不自然じゃない。言い訳もできる」
「優斗、きみまで…」

 すっかり呆れた様に額に手を当てる慎は、最終的に渋々頷いた。
 遥はともかく、妹の優斗にまで言われてしまえば、試してみる価値はあるんだろうと思うしかない。

「ただし、万全の準備は必要だからな?危険なことは、やっぱりさせられない」
「わかってますよ、先輩。私のせいで美男美女の表情が曇るのはいただけないな」
「だからそれ、やめてくれ…慣れてないんだ…」

 ついには頭を抱えだした慎の顔は真っ赤だ。
 遥は、慎と優斗が何をしてもさまになると思っている。
 恥ずかしがっていようが、本を読んでいようが、真顔でいようが、例えばそれが鬼の様に怒っていようが、だ。
 そしてそんな表情を見ると、ますます、多面的な部分を引き出したくなってしまう。
 ひとえにそれは、自分が相手にもっている好感度が高いからなのだが。

 遥が優斗の頭のそばにあるバーに視線を向ける。
 やはり、緑色のそれは満タンだ。
 次いで慎の頭のそばに視線を向ける。
 満タンではないものの、半分以上は緑で埋まっていた。
 慎が美男子である事もそうだが、出会って数日であれば、まあ、こんなものだろう。
 寧ろ、今までより速いペースで好感度が上がっているとさえ遥には思えた。



   ***



 翌日、遥と優斗は早速行動に出た。
 ホームルームの時間、高島から『今日も斎藤先生はお休みです』と告げられる。
 クラスの反応は、高島が担当している事に対して好意的で、誰も斎藤の事を確認しようとはしない。
 そんな中、遥が、すっと手を挙げた。

「早風、どうした?」

 当然高島は、手を挙げた遥に確認をする。
 あの、爽やかで白い歯を覗かせる、プロスポーツ選手顔負けの笑顔を添えて。
 遥は席を立ち、高島に負けじと王子様スマイルをかます。

「斎藤先生は何かのご病気なんですか?流石にこうも長い休みですと、心配になりますよ」

 遥が憂いた様に視線を伏せると、クラスの女子が、その表情に色めき立つ。
 どちらかと言うと、アイドルや人気俳優を目の当たりにした様な反応だ。

「いや、俺も詳しくは聞いていないんだ」
「そうですか、残念です…せっかくですから、クラス皆で見舞いの一つでもした方が良いのかと思ったのですが」

 遥は視線を伏せ続け、あからさまに、斎藤を心配していますという空気を醸し出した。
 もちろん演技なのだが、まるでドラマでよく見る片思いの相手を思って恋を諦めたかのような表情に、更に女子たちは、こそこそと、微かに黄色い悲鳴にも似たため息をつく。

「ああ、早風は先生思いだな。だが、本当に体調不良なら会わない方が良いんじゃないか?風邪だとしても、生徒に移すわけにはいかないだろ?」
「ああ、そうですね、その考えには至りませんでした。さすが、高島先生です」

 遥はトドメと言わんばかりに、もう一度、王子様スマイルをかましてから席につく。
 高島も受け答えは終始笑顔で爽やかだった。
 爽やかイケメンと正統派・王子様スマイルが朝から炸裂したクラスでは、女子たちのやる気が満ち溢れている様だった。
 その様子を遥の隣の席で見ていた優斗の表情は、いつもと変わらない鋭いものだった。

 午前の授業を終えた昼休み、遥は優斗と共に購買へ寄ってから─優斗は弁当持参だが─中庭に足を運んだ。
 中庭には、学年に関わらず複数の生徒が遥たちと同じように弁当や購買のマークが入った惣菜パン、或いは有名なコンビニのロゴが袋に印字されたパンなんかを広げて、和気あいあいと、楽しそうにおしゃべりを交えながらお昼の時間を過ごしていた。
 遥たちはその中でも目立たなそうなところを見つけ、腰を下ろす。
 それから暫くすると、慎が弁当を持ってやってきた。

「で、どうだったんだ?本当に大丈夫なのか?」

 三人でそれぞれご飯を食べ始めるやいなや、慎が心配げに二人に問いかける。
 キラッキラの笑顔で答えようとした遥を遮り、優斗が口を開いた。

「そうね。遥に対する執着心が異常だった。気持ち悪いぐらいね。どちらかというと、狩りの目標というよりも、一種の個人的感情の方が大きいかも」
「いやぁ、人気者は辛いね」

 茶化す様に言う遥を、優斗が一睨みする。
 優斗の顔はとても険しい。
 まるで目の前で犯罪者の心理を垣間見た様な顔だ。

「あなた、高島を侮ってると本当に後悔するわよ」
「まさか。勝負に出るって決めたんだ、後悔はしない」
「あなたが想像してる以上に、相手の腹の中は真っ黒なの」
「例えば?」

 具体的な説明を求める遥に、優斗は口を閉じる。
 高島は遥に対し、言葉にするのもはばかられるような感情を抱えている様だ。

「まあ、そのへんにしよう。あまりきみも、相手を焚き付けるような事はするもんじゃない」

 見かねた慎が割って入ると、遥はまた、キラッキラの笑顔を向けるが、言葉にはしなかった。
 遥にとって、窓際の美少女である優斗の表情に陰りが見えるのは、望んでない事だ。
 それは慎相手だったとしても言える。
 だが、現状、学校が持つ高島に対する好感度というのは悪くない。
 むしろ上がる一方で、それが高島の腹の中をさらけ出させるのに苦労している要因にもなっている。
 高島がどんな弱点を持っているのか、それがわかれば、微かだろうと勝機は見えてくるはずなのだ。
 最も、その弱みが何なのかを、今のところ掴めそうにないのだが。

 考え込む遥に、優斗は、真面目な顔で口を開く。

「遥、忘れないで。どんなに王子様だろうと、そう振る舞っていようと、高島にとっての遥は獲物で、王子様でも何でもなく女だってこと。少なくとも高島は
「ふぅん…良い趣味してるじゃん」

 遥の口元に浮かんだのは、困ったようなものでもひきつった様なものでもない、勝負に燃える笑みだった。

「きみな…本当に分かっているのか?!」
「迂闊に手を出さず、けど、決めるとこで決めなきゃいつまでもこのままですよ、先輩」

 そう言って勝ち誇った様な笑みを浮かべる遥に、慎は不安げに優斗へ視線を向ける。
 優斗は首を横に振った。

「何かアクションを起こす場合は、優斗がいる時にしますよ」

 そう言って、手に持っていた惣菜パンにかぶりついた。



   ***



 その日は結局、高島との個別の接触はなかった。
 ホームルームが終わったあと、遥は鞄を肩に下げ、優斗と廊下を歩いていた。
 今日も卓球部は休みらしい。
 一年生から三年生までの様々な生徒が行き交う中、優斗が随分険しい顔をしていた。
 遥はそれに気付いていたが、学校内では優斗の表情に触れることはなかった。

 昇降口から校門まで歩く。
 今日は、リムジンは停まっていない。

「で?どうしたの?そんな顔しちゃって」

 校門を出て歩きながら、遥はようやく優斗の表情について言及した。
 窓際の美少女は、険しい顔をしていてもさまになるが、いつもに増してその表情は硬かった。

「一年生だけど」
「ああ、すれ違ってた」
「そう。それだけじゃないんだけど。どんどん高島に対する根拠のない信頼が増していってる」

 人間関係において、根拠のある信頼という方が珍しいのではないだろうかと思うが、優斗が言っている事が信頼でない事は明白だった。
 特定できていない、高島の贈り物レガロの力によるまやかしの信頼。
 それが次第に勢いを増していってるのだと、優斗は言いたい様だ。
 遥も、優斗の意図を察して頷く。

「厄介なものだね、それは。一年生なんて、それこそ悪い狼に騙されちゃう赤ずきんの様に純粋だっていうのに」
「意味不明」
「そう言わない。ただでさえ可愛らしく純粋で騙されやすいっていうのに、贈り物の力なんて使われたら、あっという間だろうね」

 高島を止める――贈り物狩りとやらに関与しているだろう人物を捕まえることは、影も形も見た事ない贈り物持ちや、優斗や慎の様な知り合いの贈り物持ちに至るまで、様々な可愛らしい、カッコいい、或いは美少女、美男子を救うことになるだろう。
 それを名誉と言わずして何と言うのか。
 遥はそんな事まで考えた。
 そんな遥を、優斗は一睨みする。

「それであなたに何かあったら、その美男美女の大勢が泣くでしょうね」
「おっと、それはまずい」

 優斗が泣くかはともかくとして――贈り物を持っていないクラスメイトだって泣くだろう。
 それは遥も望むところではない。

 その日は優斗が遥を家まで送り、帰宅をした。
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