はごろも伝奇

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05. 悩み相談

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 不気味に笑う信楽焼しがらきやきのタヌキ…、おどる姿のハニワ…。

 そんな変わった品々が並ぶ、骨董屋こっとうや逸品堂いっぴんどうの店内…。

 佳奈子は、真人まさひとに売り物であるイスに案内され、これまた売り物のテーブルの上に、紅茶とシュークリームを並べてもらって食べていた。

「ん~っ!このシュークリーム、すっごくおいしいです!」

「そう?それは良かった!それにしても佳奈子ちゃんは、いつもおいしそうに食べるなぁ!」

 自分のカップに紅茶をつぎ終わった真人まさひとは、佳奈子を見てうれしそうに言った。

「ハッ!す、すみません!いつも相談のたびに、ごちそうになってしまって…」

「いや、全然かまわないよ。むしろ佳奈子ちゃんが食べてくれると、お菓子があまらなくて助かってるんだ」

「そ、そうですか?」

「うん。それに佳奈子ちゃんがおいしそうに食べてくれると、俺も嬉しいからさ。だから遠慮えんりょなく食べて」

「あ、ありがとうございます!それじゃあ、遠慮なく…。はむっ。ん~!おいし~!」

 佳奈子はシュークリームにかぶりつき、あっという間に食べ終わってしまった。



「はぁ~!おいしかった!ごちそうさまです!真人さん!」

 紅茶を飲んで、佳奈子は満面の笑顔で言う。

「ハハッ!どういたしまして。…それで佳奈子ちゃん。今回の相談っていうのは…」

「あ、はい…。…実はこの前、泥田坊どろたぼうを捕獲するのに失敗しちゃって…」

 佳奈子は真人に、失敗した仕事について話した。




「…そっか…。絹代さんが、泥田坊を捕獲するのに、羽衣を使うように言ったんだね?」

 話を聞いた真人は、佳奈子に話の確認をする。

「はい…。そうなんです…。呪符じゅふを使う方法なら、私でも捕まえられると思うんですけど…。羽衣を使うのは難しくって…」

「う~ん…。なるほどねぇ…」

「おばあちゃんは、すごく羽衣にこだわっているんです…。家を守るために、そういう気持ちが強いのかもしれません…。だけど私は、おばあちゃんみたいには、到底とうていなれなくて…」

 佳奈子の祖母・絹代は、とても強い退魔師である。

 八乙女家の異能・天の羽衣も、絹代なら自在にあやつる事が出来てしまうのだ。

 絹代が操る羽衣は、風よりも速く飛び、岩すらも切りく事が出来る。

 佳奈子は、そんな絹代を尊敬する反面、絹代のように羽衣を使えるようになれと言われ、大きなプレッシャーをかかえているのだった。

「…絹代さんは、きっと佳奈子ちゃんに期待きたいしているんだと思う…。…でも、その期待が大きすぎるのかもしれないね…。今日の佳奈子ちゃんの顔色、すごく悪いし…、絹代さんの修行は、きびしすぎるのかもしれない…。…佳奈子ちゃん…。退魔師になった事、後悔こうかいしていないかい?」

「えっ?!確かに修行は厳しいですけど…、退魔師になったのを、後悔なんてしていません!だって私、あの人みたいに…、あの『常磐木ときわぎ』の伊吹いぶきさまみたいに、人を助ける退魔師に、どうしてもなりたいんですから!」

「!」

 佳奈子の言う『常磐木ときわぎ』というのは、退魔師の中でも頂点にいる人々・特級退魔師を指す言葉である。

 実は退魔師には、その実力によって階級かいきゅうがあるのだ。

 一番下が十級で、数が少なくなるほど上の階級になり、一級の上に、一番上の階級、特級があるのである。

 そして、その特級退魔師は、別名、『常磐木ときわぎ』と呼ばれているのであった。

 ちなみに、退魔師になりたての佳奈子は、当然、十級退魔師である。

 そして、今、目の前にいる真人まさひとは、四級退魔師であり、佳奈子の祖母・絹代は一級退魔師の資格をもっている。

 けれど、佳奈子が憧れている伊吹という人物は、絹代よりもさらに上の階級である、特級退魔師・常盤木なのである。

 遥か雲の上の存在である伊吹を、佳奈子は心の中で「神」と呼び、あがめているのであった。

「私もいつか、伊吹さまみたいなステキな退魔師になりたい…!ああ!伊吹さま…!」

「佳奈子ちゃん…。…やっぱりその人の事、忘れていないんだね…」

 真人は、どこか動揺どうようしたように言う。

「もちろんですよ!4年前のあの日から、伊吹いぶきさまの事は、一日だって忘れた事はありません!だってあの方は、私の命の恩人ですから!」

 そう言って佳奈子は、4年前の夏を思い返したのだった。




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