63 / 104
幕開け
60
しおりを挟む
測定テストがあった数日後、闘技会の運営から大きな封筒が二つ届いた。一つは僕宛で、もう一つはお兄ちゃん宛てだった。中には自分が出場する部門と番号、それから日程とトーナメントの表が書かれた紙が入っていた。お兄ちゃんの部門は超上級で、僕は中級だった。正直、テストでの記憶がないからこれが妥当な部門なのかはわからない。闘技会が開催される期間は全部で三日間で、一日目に初級と中級、二日目に上級、三日目に超上級という日程になっていた。意外と短いんだな…。それに一日目の開会式のところに『スペシャルゲスト参加予定!』って書かれてあるけど、一体誰なんだろう…。
それからトーナメント表を見てみる。名前は書いていない代わりに出場番号がたくさん書かれてあった。僕の番号は一番端っこにあり、他のと違って一本少し長めに線が引かれていた。
「アル、シード枠じゃないか。」一緒にトーナメント表をのぞき込んでいたお父さんがそう呟く。
「シード枠…?」
「うん。ほらほかの人と違ってアルは第二試合からになっているだろ?まぁ、あれだけテストで動いていたら当たり前か…。それにしてもアル、かなりトレーニングしたんだなぁ。あんなに動けてしかも魔術も使えるなんてお父さん知らなかったよ。成長したなぁ…。」
お兄ちゃんが言うには、シード枠を獲得する人は測定テストでかなり好成績を残した人なんだそうだ。つまり、唯一のシード権を獲得している僕は中級部門内で一位だったということになる。……僕本当にテストで何しちゃってたんだ…?
「アル、本当に大丈夫か?顔色が悪いぞ?」
「…う、うん。大丈夫…。」
今日は闘技会一日目、つまり僕が初めて闘技会に出場する日。緊張のせいか朝からずっとおなかが痛い。お兄ちゃんがさっきからしきりに「大丈夫?」って聞いてくるから、顔色も相当悪いんだと思う。とはいえ、受付をしないと出場ができないから、とりあえず入り口に向かう。
「アルス=シューベルト様ですね。今日の午後、第二戦からの参加となりますね。はい、受付いたしました。こちら参加賞です。」そう言い、受付のお姉さんはハンカチを手渡した。隅に小さく闘技会のロゴが入ったものだ。
「この後開会式がございます。観客席にて参加が可能ですので、ぜひ行ってみてくださいね。」
僕たちはお姉さんにお礼を言って観客席に向かった。
観客席にはすでにたくさんの人が集まっていた。僕たちはかろうじて二つ空いている席を見つけそこに座る。息をつく暇もなくトランペットの盛大な音楽とともにアナウンスが入った。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます!これから開会式を始めたいと思います。まず、最初に今大会をサポートしていただきますスペシャルゲストにお越しいただきましょう!皆様!ぜひ、拍手でお迎えください!それでは、どうぞ!!」
「スペシャルゲストって誰なんだろうね?」
「さぁな…。今までこういうことなかったからな…。」
観客の拍手の中、フィールドの真ん中に現れたのは、
……あれ、ちょっと距離があるからはっきりとは分からないんだけど…あの人、シャーマール先生じゃない?や、でも髪がいつもより短いような…?…あ、違う!あの人リカード=フォルストさんだ!お兄さんの方だ!
思わず僕の隣に座っている大ファンを見る。小さな声で「…なんで、ここに…?」と呟いていたが、その眼はすごくキラキラしていた。
リカードさんは今回審査員として招かれたらしい。今までこういったスペシャルゲストが来ることはあったけれど、それでもリカードさんほどの有名人が来ることは初めてらしく、周囲の人たちも興奮を隠せないようだった。お兄ちゃんは依然として「俺の戦いが見られてしまうってことか…!?ま、まずいぞ…。」とかなんとかつぶやいていた。
開会式が終わり、ほどなくして初級部門が始まる。僕は午後のしかも第二試合からなので、かなり時間がある。特にすることもないので、ぼくたちはその辺を散歩することにした。
…してるのはいいんだけど…。すれ違う人、すれ違う人に「あれが呪われてるっていう…。」「シューベルト家なのに魔術が…。」ってささやかれてる…。やっぱりこの雰囲気苦手だな…。いや、僕が気にしなければいい話なんだけど、どうしても真に受けちゃうな…。あ、やばいもっとおなかが痛くなってきた…。
不意にお兄ちゃんが立ち止まり、周囲を一瞥する。その視線の冷たさに一気にみんなが静かになる。
「言いたいことがあるなら直接言ったらどうだ?こそこそと、恥ずかしくないのか?」そう言って僕の噂を言っていた人たちのことを見る。お兄ちゃんの毅然とした態度に気圧されているようだった。お兄ちゃんはその人たちが何も言えなくなったのを確認して、「腰抜けめ…。」と吐き捨てその場を去った。慌てて僕はそれを追いかける。
やっぱり、お兄ちゃんかっこいいな…。あんなにきっぱりとモノが言えるなんて…。僕にはできないな…。とはいえさっきのお兄ちゃんのセリフ、もしかして…。
少し人気のないところにつく。僕は気になっていることをお兄ちゃんに聞いてみた。
「ねぇねぇ、さっきの言葉って…「気のせいだ。」
「やっぱり、リカーd「そんなことはない。」
「だって、あれ有め…「気のせいだ!」
語気は強いけれど、お兄ちゃんの耳が赤くなっているのを見て確信する。さっき言ってた言葉、全部リカードさんについての本に書かれてあるセリフの一つだ。いつもは温厚でやさしいリカードさんが唯一激怒したっていうエピソードに出てくる。しかも、お兄ちゃん「腰抜けめ…。」って言った後ポケットを手に入れるところまで再現しちゃってたし、わかる人にはわかる気がするんだけどな…。
「ちょっと、言ってみたかったんでしょ?」
「頼む、もう何も言わないでくれ…。今更羞恥心が込み上げてきた。とっさに出てきた言葉とはいえ、まさかあれを言うとは…。もういっそ殺してくれ…。」そう言って顔を覆う。
お兄ちゃん、首まで真っ赤だ…。なんか、お兄ちゃんっていっつもカッコいいところしか見てこなかったから、こういう姿新鮮に感じるな…。
「ありがとうね。お兄ちゃん、すごくかっこよかったよ。」
いつの間にか緊張はどこかに行っていた。
それからトーナメント表を見てみる。名前は書いていない代わりに出場番号がたくさん書かれてあった。僕の番号は一番端っこにあり、他のと違って一本少し長めに線が引かれていた。
「アル、シード枠じゃないか。」一緒にトーナメント表をのぞき込んでいたお父さんがそう呟く。
「シード枠…?」
「うん。ほらほかの人と違ってアルは第二試合からになっているだろ?まぁ、あれだけテストで動いていたら当たり前か…。それにしてもアル、かなりトレーニングしたんだなぁ。あんなに動けてしかも魔術も使えるなんてお父さん知らなかったよ。成長したなぁ…。」
お兄ちゃんが言うには、シード枠を獲得する人は測定テストでかなり好成績を残した人なんだそうだ。つまり、唯一のシード権を獲得している僕は中級部門内で一位だったということになる。……僕本当にテストで何しちゃってたんだ…?
「アル、本当に大丈夫か?顔色が悪いぞ?」
「…う、うん。大丈夫…。」
今日は闘技会一日目、つまり僕が初めて闘技会に出場する日。緊張のせいか朝からずっとおなかが痛い。お兄ちゃんがさっきからしきりに「大丈夫?」って聞いてくるから、顔色も相当悪いんだと思う。とはいえ、受付をしないと出場ができないから、とりあえず入り口に向かう。
「アルス=シューベルト様ですね。今日の午後、第二戦からの参加となりますね。はい、受付いたしました。こちら参加賞です。」そう言い、受付のお姉さんはハンカチを手渡した。隅に小さく闘技会のロゴが入ったものだ。
「この後開会式がございます。観客席にて参加が可能ですので、ぜひ行ってみてくださいね。」
僕たちはお姉さんにお礼を言って観客席に向かった。
観客席にはすでにたくさんの人が集まっていた。僕たちはかろうじて二つ空いている席を見つけそこに座る。息をつく暇もなくトランペットの盛大な音楽とともにアナウンスが入った。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます!これから開会式を始めたいと思います。まず、最初に今大会をサポートしていただきますスペシャルゲストにお越しいただきましょう!皆様!ぜひ、拍手でお迎えください!それでは、どうぞ!!」
「スペシャルゲストって誰なんだろうね?」
「さぁな…。今までこういうことなかったからな…。」
観客の拍手の中、フィールドの真ん中に現れたのは、
……あれ、ちょっと距離があるからはっきりとは分からないんだけど…あの人、シャーマール先生じゃない?や、でも髪がいつもより短いような…?…あ、違う!あの人リカード=フォルストさんだ!お兄さんの方だ!
思わず僕の隣に座っている大ファンを見る。小さな声で「…なんで、ここに…?」と呟いていたが、その眼はすごくキラキラしていた。
リカードさんは今回審査員として招かれたらしい。今までこういったスペシャルゲストが来ることはあったけれど、それでもリカードさんほどの有名人が来ることは初めてらしく、周囲の人たちも興奮を隠せないようだった。お兄ちゃんは依然として「俺の戦いが見られてしまうってことか…!?ま、まずいぞ…。」とかなんとかつぶやいていた。
開会式が終わり、ほどなくして初級部門が始まる。僕は午後のしかも第二試合からなので、かなり時間がある。特にすることもないので、ぼくたちはその辺を散歩することにした。
…してるのはいいんだけど…。すれ違う人、すれ違う人に「あれが呪われてるっていう…。」「シューベルト家なのに魔術が…。」ってささやかれてる…。やっぱりこの雰囲気苦手だな…。いや、僕が気にしなければいい話なんだけど、どうしても真に受けちゃうな…。あ、やばいもっとおなかが痛くなってきた…。
不意にお兄ちゃんが立ち止まり、周囲を一瞥する。その視線の冷たさに一気にみんなが静かになる。
「言いたいことがあるなら直接言ったらどうだ?こそこそと、恥ずかしくないのか?」そう言って僕の噂を言っていた人たちのことを見る。お兄ちゃんの毅然とした態度に気圧されているようだった。お兄ちゃんはその人たちが何も言えなくなったのを確認して、「腰抜けめ…。」と吐き捨てその場を去った。慌てて僕はそれを追いかける。
やっぱり、お兄ちゃんかっこいいな…。あんなにきっぱりとモノが言えるなんて…。僕にはできないな…。とはいえさっきのお兄ちゃんのセリフ、もしかして…。
少し人気のないところにつく。僕は気になっていることをお兄ちゃんに聞いてみた。
「ねぇねぇ、さっきの言葉って…「気のせいだ。」
「やっぱり、リカーd「そんなことはない。」
「だって、あれ有め…「気のせいだ!」
語気は強いけれど、お兄ちゃんの耳が赤くなっているのを見て確信する。さっき言ってた言葉、全部リカードさんについての本に書かれてあるセリフの一つだ。いつもは温厚でやさしいリカードさんが唯一激怒したっていうエピソードに出てくる。しかも、お兄ちゃん「腰抜けめ…。」って言った後ポケットを手に入れるところまで再現しちゃってたし、わかる人にはわかる気がするんだけどな…。
「ちょっと、言ってみたかったんでしょ?」
「頼む、もう何も言わないでくれ…。今更羞恥心が込み上げてきた。とっさに出てきた言葉とはいえ、まさかあれを言うとは…。もういっそ殺してくれ…。」そう言って顔を覆う。
お兄ちゃん、首まで真っ赤だ…。なんか、お兄ちゃんっていっつもカッコいいところしか見てこなかったから、こういう姿新鮮に感じるな…。
「ありがとうね。お兄ちゃん、すごくかっこよかったよ。」
いつの間にか緊張はどこかに行っていた。
0
あなたにおすすめの小説
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
孤毒の解毒薬
紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。
中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。
不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。
【登場人物】
西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね
虐げられた令息の第二の人生はスローライフ
りまり
BL
僕の生まれたこの世界は魔法があり魔物が出没する。
僕は由緒正しい公爵家に生まれながらも魔法の才能はなく剣術も全くダメで頭も下から数えたほうがいい方だと思う。
だから僕は家族にも公爵家の使用人にも馬鹿にされ食事もまともにもらえない。
救いだったのは僕を不憫に思った王妃様が僕を殿下の従者に指名してくれたことで、少しはまともな食事ができるようになった事だ。
お家に帰る事なくお城にいていいと言うので僕は頑張ってみたいです。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる