異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒

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幕開け

第3話

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※回想あり


「森のクマさん、助けていただき、ありがとうございます」

「その呼び方、やめろ」

「す、すみません。それじゃあ、あなたのお名前を教えてください。僕は亮介りょうすけっていいます」

「おれは名無ななしの半獣属けものだ」

「な、名前がないと不便ふべんじゃ……。えっと、迷惑でなければ、僕が考えてもいいですか? その、あったほうが話しやすいので……」

 上目づかいで会話する8歳児は、人喰い属性の野生動物にとって、それはそれは極上の獲物にしか見えない。安全な場所に移動したあと、灰色の毛並みをしているから〈ハイロ〉と名付けられた半獣属はんじゅうぞく大熊オオクマは、色々な意味で無防備な亮介と、長い時間ときを共有することになる──。

「で、そこの変態は、何者なにものだ」

『ふ、ふふふ……、変態とは、わたしのことでしょうか。しかし、よくぞ聞いてくれましたね。待ちくたびれましたよ。わたしは水の精霊、ミュオン・リヒテル・リノアースです! なにを隠そう、リョウスケくんの危機をさっして逸早いちはやく駆けつけたのは、あなたではなく、このわたしー……(科白せりふの途中ですが、あえて省略)。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 よく、見知らぬ空間で目覚めた主人公が記憶喪失となり、「ここはどこ、わたしはだれ」という文句を発したりするが、亮介の場合、異世界に転移した直後、ぽかんと口をあけたまま、しばらく放心した。
 
 入学式の前に新調したばかりの学ランが、なぜかダボつき、生地きじあまっている。地面にへたりこんだとき、16歳の臀部でんぶにしては筋肉が[ぷよよん]と、やわらかく感じた……ような気がした(気のせいじゃなかった)。

 斗馬とうま亮介は、いつもの下校途中、遅咲きの桜が、はらはらと花びらを散らせる小径こみちに通りかかり、「わあ」と、思わず声をもらした。雪のように舞う花びらを見あげて歩くうち、クラッとめまいがした。よろめきながらガードレールに手をつこうとして、前のめりに倒れると、そのまま意識を失ったのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ハイロさん、こっちの板は組み立てればいいの?」

「それは囲いの門扉もんぴ用だ。おまえさんは等間隔とうかんかくに目印を引いておけ」

「はーい」

 異世界生活3日目の朝、力仕事はハイロにまかせ、亮介は目盛めもりのついた縄で、丸太小屋をぐるりとまわり、くいを打つポイントごとに小さな石を置いていく。このあたりは草食動物の生息域らしが、人間のひとり暮らしに油断は禁物である。ただでさえ、亮介は[ぷにっとして、おいしそうな]8歳児だ。

(ふう、やっぱりハイロさんは、たよりになるな。材料も集めてきてくれるし、必要な道具も持参してくるし……。そういえば、どこからくるんだろう。巣穴とか? 成獣みたいだし、お嫁さんとか子熊コグマとかいたりして……)

「リョウスケ、手を休めるな。日没にちぼつまでに終わらない」

「は、はい、ごめんなさい」

 黙々と作業するハイロを、無意識に観察していた亮介は、あたふたと縄を引いた。

(あれ? ミュオンさんはどうしただろう。さっきから姿が見えないけど……)

 亮介は視線を泳がせたが、そのころの水の精霊は、素材集めに必死だった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


『あった、ありました~。やっと見つけましたぁ。これさえあれば、ハァハァ……、リョウスケくんは、よろこんでくれるにちがいありません!』


★つづく


※誤字脱字などは、ときどき見直して修正しています。何卒ご容赦願います。お読みいただき、誠にありがとうございます。
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