異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒

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第9部

第157話

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 朝、いつものようにハイロが小屋を留守にしたあと、ジェミャがリヒトを連れてやってきた。

「おはようジェミャさん、リヒト……って、どわーっ!?」

 開放された窓から庭へ飛びだしたコリスは、早速リヒトに駆け寄り、きょうはなにして遊ぼうかと、身ぶり手ぶりで会話する。いっぽう、いきなりジェミャに肩を押されて地面に倒された亮介は、プチパニック状態である。力づくでズボンを脱がされ、未熟な生殖器を指先で撫でられた。

「ぎゃあ!? ちょっとジェミャさん、どこ触ってるの! 痴漢ちかんはだめよ!?」

『チカン? 知らぬことばだな』

「ジェミャさ……」

(ええっ!?)

 地の精霊は無遠慮に顔を近づけ、気息を合わせてくる。ジェミャの接吻を受けた亮介は、なにか熱い空気が口腔へ流れこむ感触がして、思わず「うげっ」と叫んだ。

『なにが、うげっ、だ。むしろ、ありがたく思え』

「な、なんで? どういう展開こと!?」

 げしッと、胴体を足蹴あしげにされた亮介は、「痛い~」と、うめいた。

(あ~もう、なんなのこの精霊ひと! 心臓に悪いったらないよ!)

 ひとまず、内心で非難しておき、無防備に丸出しされた下半身を両手で隠した。いくら毛もえていない子どものからだだとしても、ふつうに恥じらう気持ちはある。そもそも、ジェミャは、いったいなにがしたかったのか、大胆な行動は謎ばかりであった。

「あの、こんなことされたら、さすがに驚くんですけど……。ちゃんと説明してください……」

『クククッ、おまえのなかの霊気を高めてやったのだ。感謝しろ』

(それってキスのこと? だったらなんで、下半身を触る必要が……)

 困惑する亮介を見おろすジェミャは、薄く笑みを浮かべている。ミュオンより妖艶な雰囲気を漂わせる地の精霊は、言動こそ不可解な点もあるが、いつだって進むべき道標みちを諭してきた。ジェミャの思惑は不明だが、断じて、亮介たちの不幸は望んでいない。そう感じることはできた。とはいえ、急な状況すぎて亮介の心臓は、バクバクと(ムダに)高鳴った。

「リョウスケくんを襲って、そんなに楽しいかい」

「あっ、ノネコさん!」

 小屋から出てきたノネコは、精霊の足蹴にされる少年を見て、小さくため息を吐いた。そして、「その足をどけておやり」と、助け舟をだす。ジェミャは、妙に冷静な態度を示すノネコを一瞥したあと、亮介から離れた。

(ふう、びっくりしたぁ。なんだったの今の……)

 ようやく自由の身になった亮介は、上体を起こして身なりをととのえた。コリスとリヒトは、木登りをして遊んでいる。ある意味、平和な時間が流れていたが、ミュオンの存在感は大きく、からだの芯にぽっかりと穴があき、すきま風がピューピュー吹き抜けるような消失感は否めなかった。

(僕の霊気を高める? どこも変わってないようだけど……)

 じっと手のひらを見つめる亮介の横で、ノネコが「おや」と首をかしげた。広範囲の音を聞き取れる野猫の可聴域かちょういきで、なにやら第三者の足音が響く。しかも、小屋に向かって近づいてくるため、すぐさま、ハイロへ報せに走った。

「ノネコさん? あんなにあわてて、どうしたんだろう」

 平和ボケぎみの亮介は、危機が迫る前兆に気づかず、ノネコのうしろ姿を見送った。周辺の警戒にあたるハイロは、風向きの変化に眉をひそめ、いつもとは異なるにおい、、、を察知した。

「ハイロさん」

 ノネコは雑草を踏みわけ、半獣の姿で二足歩行する灰色大熊と合流した。「野猫か」といって足をとめるハイロは、「気がついたようだな」とも付け加えた。うなずくノネコは、「こちらに、誰かやってくる」と断言した。


★つづく
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