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スーツの下の化けの皮
第38話 ※イラストあり
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[姫季視点より]
時間軸は少し巻きもどり、沢村が姫季のマンションへ訪れたあとの週明けのことである。大学の玄関ホールで彼女を待ち構える沢村は、複雑な心境だった。
「……くそぉ、ヒメキは平常心が大事だって云ってたけど、こんなモヤモヤした気持ちで、巴と話し合いなんてできるのか?」
先週の夜、ビジネスホテルから見知らぬ男と彼女の巴が出てきたところを目撃してしまった沢村は、ここ数日、気分が落ちつかない。
「……あぁ、もう、くそっ。なんでおれが緊張してんだよ。もとはといえば、巴のせいだろーが! あぁ~っ、まだかよ~」
待ち人来ずの状況が焦れったく感じる沢村は、そこへ(偶然)通りかかった石津と目が合った。いつも数人の女性に囲まれて歩く(というか、勝手についてこられる)ため、悪目立ちする学生である。しかし、ファッション誌のグラビア取材を受けるほど、容姿の見栄えはよかった。芸術学部のカリスマ的存在で、カラーコンタクトレンズの瞳の色は、イノセントアッシュである。沢村は目を逸らしたが、なぜか石津のほうから近づいてきた。
「たしか、おまえは士の友人だったな」
「え? あ、はい。沢村です。ヒメキとは1年のときに知り合って、同じテキスタイルデザインコースで学んでます……」
士とは、姫季の名前である。ずいぶん気安く呼びつけているが、大学で姫季と石津が親しげに接する場面を見たことない沢村は、少し眉をひそめた。目当ての巴がなかなか姿をあらわさないため、石津との会話を続けた。
「あの、石津先輩……ですよね。こっちからも質問していいですか?」
「どうぞ」
「ヒメキとは、……その、どういう関係なんですか?」
「本人は、なんて?」
「本人?」
「あいつから、何も聞いてないのか」
「……はい」
「気になるなら、士に聞けよ。おれは、あいつを赦したわけじゃないからな」
「赦すって、なにを……」
ことばの途中で、展示室の石膏像を思いだした沢村は、背中につけられた傷のような線が気になった。
「……まさかな?」
不吉な予感がした沢村は、踵をかえす石津のうしろ姿を、神妙な顔で見つめた。
✰つづく
※あまり丁寧ではなく恥ずかしいのですが、イメージの参考になればと思い、載せてみました(汗)
時間軸は少し巻きもどり、沢村が姫季のマンションへ訪れたあとの週明けのことである。大学の玄関ホールで彼女を待ち構える沢村は、複雑な心境だった。
「……くそぉ、ヒメキは平常心が大事だって云ってたけど、こんなモヤモヤした気持ちで、巴と話し合いなんてできるのか?」
先週の夜、ビジネスホテルから見知らぬ男と彼女の巴が出てきたところを目撃してしまった沢村は、ここ数日、気分が落ちつかない。
「……あぁ、もう、くそっ。なんでおれが緊張してんだよ。もとはといえば、巴のせいだろーが! あぁ~っ、まだかよ~」
待ち人来ずの状況が焦れったく感じる沢村は、そこへ(偶然)通りかかった石津と目が合った。いつも数人の女性に囲まれて歩く(というか、勝手についてこられる)ため、悪目立ちする学生である。しかし、ファッション誌のグラビア取材を受けるほど、容姿の見栄えはよかった。芸術学部のカリスマ的存在で、カラーコンタクトレンズの瞳の色は、イノセントアッシュである。沢村は目を逸らしたが、なぜか石津のほうから近づいてきた。
「たしか、おまえは士の友人だったな」
「え? あ、はい。沢村です。ヒメキとは1年のときに知り合って、同じテキスタイルデザインコースで学んでます……」
士とは、姫季の名前である。ずいぶん気安く呼びつけているが、大学で姫季と石津が親しげに接する場面を見たことない沢村は、少し眉をひそめた。目当ての巴がなかなか姿をあらわさないため、石津との会話を続けた。
「あの、石津先輩……ですよね。こっちからも質問していいですか?」
「どうぞ」
「ヒメキとは、……その、どういう関係なんですか?」
「本人は、なんて?」
「本人?」
「あいつから、何も聞いてないのか」
「……はい」
「気になるなら、士に聞けよ。おれは、あいつを赦したわけじゃないからな」
「赦すって、なにを……」
ことばの途中で、展示室の石膏像を思いだした沢村は、背中につけられた傷のような線が気になった。
「……まさかな?」
不吉な予感がした沢村は、踵をかえす石津のうしろ姿を、神妙な顔で見つめた。
✰つづく
※あまり丁寧ではなく恥ずかしいのですが、イメージの参考になればと思い、載せてみました(汗)
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