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エッチな指
しおりを挟む水族館デートは、思っていた以上に愉しめた。館内のフードコートで昼食をとる桃瀬は、家族連れや若い男女の視線が気になったが、そんなときにかぎって、石和の長い指が触れてくる。
「理乃ちゃんの唇、何色のリップクリームをぬっているの?」
「ベビーピンクです」
軽く顎をすくわれ、表情をどうしていいのか迷う。館内を見てまわるあいだ、石和は桃瀬の腰あたりに片手を添え、分岐点に立つたび、指先の勁さで歩く方向をしめした。桃瀬はその指を強く意識して、密かにうろたえた。ときどき下半身がムズムズしたが、性的興奮を躰が主張しても、理解におよばない桃瀬は、実は、ぬれやすい体質だとはまだ気づかない。
「あとで、ぼくに口紅をプレゼントさせてもらえるかな」
「口紅を?」
「理乃ちゃんの場合は、もう少し明るいトーンを使用しても不自然ではないと思うよ」
「あ……ありがとうございます……」
「ふふ、どういたしまして」
石和はふたりぶんの食器トレイを片づけると、桃瀬の腰へ腕をまわし、おみやげコーナーへ立ち寄った。「好きなものを買っていいよ」といわれても、種類の多さに目移りする桃瀬は、チンアナゴのマシュマロやウツボのフィギュアがエッチなものに見えてしまい、心拍数が上昇した。石和は首をかしげたが、水槽を泳ぐ魚の群れを目で追う桃瀬の表情は明るく、愉しんでもらえたようだと安堵した。
「どう、きまったかい」
ふいに、石和の息づかいを耳もとで感じた桃瀬は、「ま、まだですぅ」と声が裏返った。ふだんはスーツやカマーベストを着こなす紳士だが、ほんじつはカジュアルな服装である。地味な容姿の桃瀬への配慮かもしれないが、なにを着てもイケおじの魅力は隠しきれない。どこにいても、通行人の目をひいた。……わたしへの視線は冷ややかだ。
その後、手のひらサイズのマンボウのぬいぐるみとペンギンのキーホルダーを買ってもらい、日が暮れるまえにアパートの駐車場へ到着した。シートベルトをはずして先に車をおりる石和は、助手席のドアをあけると、部屋に寄っていかないかと、恋人の時間を延長した。「はい」と返答する桃瀬は、いざというときの手入れは欠かさないくせに、誘われた目的を失念している。
石和の部屋は同じ間取りとは思えないほど、広々とした空間が演出されていた。寝室の襖は取りはらわれ、無駄な家具は見あたらず、リビングの窓辺に、折りたたみ式のパイプベッドが設置されている。微かに男性用品特有のにおいがただよう室内は、もう石和のテリトリーだ。うっかり足を踏みいれた桃瀬の表情は、ギクッと硬張った。ガラスのテーブルに、新品のコンドームと潤滑ジェルの容器が置いてある。どちらも使用された経験はないが、無言のアピールに息が詰まった。背後で、玄関の鍵をしめる音がきこえた。
「い、石和さん、もしかして……、いまからエッチするんですか……?」
「できればそうしたいけど、きみが疲れているなら考えよう」
猶予をあたえられたが(そのあいだに石和は手を洗っている)、せめてシャワーを浴びてからと云いだせず、ベッドまで誘導された。桃瀬の正面に膝をつく石和は、ウエストリボンを解くとワンピースの裾をめくり、「いいかな?」と訊く。拒む理由をさがしているうちに、するするとパンティーを脱がされた。
「きれいだね」
「恥ずかしいです……」
「どうして? ぼくのために、こんなにきれいにしてくれているじゃないか。よく見せてご覧」
処女膜は薄い襞状の粘膜で、ひとによって形や伸縮性が異なるため、初体験の性行為で出血するかどうかは個人差がある。石和は潤滑ジェルの容器を手にとり、キャップをはずした。
「なにをするんですか……?」
「これは、直接肌に使える天然成分のジェルだよ。ちょっとだけ指を挿れて状態を調べさせてもらうけれど、リラックスしててね」
冷たいゼリーのような質感とともに、ツプッと指を挿入された瞬間、ゾワッと全身に鳥肌が立つ。石和の中指はまだ2センチもはいっていなかったが、桃瀬は、ズキッとした痛みを感じた。
✦つづく
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