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私の今後の行動方針
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ひとまず私への興味はそれで収まったので、彼らは砦の中のどこに滞在場所を作るかと話し合いながら、オリヴェイル先生の部屋を出た。
「そうそう、わしはオリヴェイルから上の部屋を借りる手はずになっているからな」
一番に宣言したのは老魔術師だ。
「転移用の部屋の隣ですから、狭いですし、いいですけど」
バイアのやや不満そうな声がする。
「それなら私は一階の……」
とバイアが続けようとしたところで、家庭教師風の女性魔術師が口をはさんだ。
「一階はご老体の補助も兼ねて、私が常駐するように言われています。そこも台所などがあるぶん、部屋が狭いですから、お弟子さんと隣同士の部屋を設けられる、砦の西側の部屋が良いかと思いますよ、バイア殿」
しかも部屋の位置をそれとなく指定してきた。
嫌だと言うこともできるだろうけど、それは青年によって封じられる。
「ああ。石づくりの建物は寒くなりますからね。残照が長く部屋に入る西に窓がある部屋の方が夜もいくらか温かいでしょう」
「お師匠様、私温かい方がいいです!」
ミージュという名前の弟子にもねだられ、バイアは他の人と一緒に砦の西の方へ移動していったようだ。
主塔が静かになったところで、ジュリアンが私を呼びに来た。
「食事は済みましたか?」
「はい、もう部屋を出ても……?」
ジュリアンがうなずき、そのままオリヴェイル先生の部屋へ手を引かれていく。
中にはまだ、老魔術師マドリガルと家庭教師風の女性魔術師がいた。
思わずびくっとして立ち止まると、二人が苦笑いした。
「大丈夫ですよ、セリナ。この二人は事情を知っています」
ジュリアンが微笑んでそう言うので、ようやくほっと息をついた。
すぐに私は二人に一礼した。
「失礼なふるまいをして申し訳ございません、魔術師の方々」
すると二人は、おっと言いたげに目を見開いてから、微笑んでくれる。
「貴殿の状況はうかがっております。見を隠されたい事情がありながら、ご協力いただきありがとう存ずる。わしはマドリガルと申す魔術師。協会長とも知己の古参であるので、問題があれば知らせてくれたら対応させていただく」
協会長の知己だと初対面の私に教えるのだから、友人関係にあるのだろう。
そういった人が私の事情を知ったうえで協力してくれることと、そうなるように配慮してくれたオリヴェイル先生やジュリアンに感謝の気持ちが湧く。
そっと視線を向けると、私の気持ちがわかったようにジュリアンがうなずいてくれた。
「私はメディアといいます、セリナ嬢。竜の研究をしてきました縁で、今回参加させていただきました。オリヴェイルとも同期の魔術師で気心も知れていますので、オリヴェイルに相談しにくいことがあれば私にお知らせくださいね」
魔術師メディアは流れるような所作で一礼した。
賢く理知的で、とても頼りになりそうな女性だ。
「セリナです。お二人にはご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
「本当に、想像以上に穏やかなお嬢様だったのですね。本当に人の噂はあてにならない。実地調査の大切さをしみじみと感じますわね」
メディアがそう言ってほぅっと息をつく。
研究と同列に語るあたり、彼女は生粋の研究家なのだろう。
「さよう。真実というものは、おのれの手で掴むまではおいそれとその全体像を掴めぬものよ」
うなずいたマドリガル老が、優しい目をしていった。
「問題はバイアだけじゃな。ケルンやミージュは問題ない。というかミージュはお目付け役みたいな状態だが、あの婦人だけは俗世にしがみつきすぎて、いまだに魔術師になった自覚が乏しいようだ」
「お目付け役の、お弟子さん?」
マドリガル老の表現からすると、ミージュという女の子の方が協会に近しくて、その意思を受けて動いているようだけど……。
「さよう。バイア殿は、コーレル侯爵家の出身。今の王妃殿が養女となった家なのでな。王家にも影響が強く、」
「養女ですか? あの、初耳です」
まさか王妃が養女だったなんて思わなかった。
王家の嫁ぐために、上位の家の出身ということにしたのだろうか。
「王妃はもともとメイドでな」
「メイドっ!?」
「国王がどうしてもと言って聞かず、王妃の利用価値を感じたコーレル侯爵家があのメイドを養女にしたのだよ。王家もそれで彼女を王妃に迎えたわけだ」
マドリガル老の話に、驚くと同時に納得もする。
あの王妃が妙にメイドに肩入れするのは、自分と同じ状況だからか。
国王も反対しなかったのは、自分がそうだったから息子の主張に反論できなかったのと、一応貴族出身だからかもしれない。
「そろそろ明日以降の予定を話し合いましょう」
そこでジュリアンが言う。
「誰か国王や貴族に通じる人間が来そうだとは思いましたが、バイア殿となれば、少し彼女の正体を知られるまで時間を置きたいですね。なのでオリヴェイル先生とも話したのですが、早朝にひっそりとここを訪れて、花を増やしたり様子を見ることにしたいと思います」
メディア達がうなずいた。
「必要な時だけでもいいと思うの。花の増え方については、ジュリアンだけが確認に来てもいいぐらいよ。本当は私とかが知らせに行ければいいんだけど……」
「手紙の転送陣なんて作ると、魔力の流れでどこと連絡をとっているのか調べられてしまいそうですし。砦から出入りをしていると、何があるのかとついて来かねないですよ、メディア」
オリヴェイル先生の言葉に、メディアはうなずく。
「ええ。だからジュリアンが確認に来て、必要だった時だけセリナ嬢を連れて来るべきですわ」
「わしもそう思うな」
マドリガル老もうなずいた。
それで私の行動方針が決まったので、他の魔術師に見つからないように、こそこそと砦を出たのだった。
「そうそう、わしはオリヴェイルから上の部屋を借りる手はずになっているからな」
一番に宣言したのは老魔術師だ。
「転移用の部屋の隣ですから、狭いですし、いいですけど」
バイアのやや不満そうな声がする。
「それなら私は一階の……」
とバイアが続けようとしたところで、家庭教師風の女性魔術師が口をはさんだ。
「一階はご老体の補助も兼ねて、私が常駐するように言われています。そこも台所などがあるぶん、部屋が狭いですから、お弟子さんと隣同士の部屋を設けられる、砦の西側の部屋が良いかと思いますよ、バイア殿」
しかも部屋の位置をそれとなく指定してきた。
嫌だと言うこともできるだろうけど、それは青年によって封じられる。
「ああ。石づくりの建物は寒くなりますからね。残照が長く部屋に入る西に窓がある部屋の方が夜もいくらか温かいでしょう」
「お師匠様、私温かい方がいいです!」
ミージュという名前の弟子にもねだられ、バイアは他の人と一緒に砦の西の方へ移動していったようだ。
主塔が静かになったところで、ジュリアンが私を呼びに来た。
「食事は済みましたか?」
「はい、もう部屋を出ても……?」
ジュリアンがうなずき、そのままオリヴェイル先生の部屋へ手を引かれていく。
中にはまだ、老魔術師マドリガルと家庭教師風の女性魔術師がいた。
思わずびくっとして立ち止まると、二人が苦笑いした。
「大丈夫ですよ、セリナ。この二人は事情を知っています」
ジュリアンが微笑んでそう言うので、ようやくほっと息をついた。
すぐに私は二人に一礼した。
「失礼なふるまいをして申し訳ございません、魔術師の方々」
すると二人は、おっと言いたげに目を見開いてから、微笑んでくれる。
「貴殿の状況はうかがっております。見を隠されたい事情がありながら、ご協力いただきありがとう存ずる。わしはマドリガルと申す魔術師。協会長とも知己の古参であるので、問題があれば知らせてくれたら対応させていただく」
協会長の知己だと初対面の私に教えるのだから、友人関係にあるのだろう。
そういった人が私の事情を知ったうえで協力してくれることと、そうなるように配慮してくれたオリヴェイル先生やジュリアンに感謝の気持ちが湧く。
そっと視線を向けると、私の気持ちがわかったようにジュリアンがうなずいてくれた。
「私はメディアといいます、セリナ嬢。竜の研究をしてきました縁で、今回参加させていただきました。オリヴェイルとも同期の魔術師で気心も知れていますので、オリヴェイルに相談しにくいことがあれば私にお知らせくださいね」
魔術師メディアは流れるような所作で一礼した。
賢く理知的で、とても頼りになりそうな女性だ。
「セリナです。お二人にはご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
「本当に、想像以上に穏やかなお嬢様だったのですね。本当に人の噂はあてにならない。実地調査の大切さをしみじみと感じますわね」
メディアがそう言ってほぅっと息をつく。
研究と同列に語るあたり、彼女は生粋の研究家なのだろう。
「さよう。真実というものは、おのれの手で掴むまではおいそれとその全体像を掴めぬものよ」
うなずいたマドリガル老が、優しい目をしていった。
「問題はバイアだけじゃな。ケルンやミージュは問題ない。というかミージュはお目付け役みたいな状態だが、あの婦人だけは俗世にしがみつきすぎて、いまだに魔術師になった自覚が乏しいようだ」
「お目付け役の、お弟子さん?」
マドリガル老の表現からすると、ミージュという女の子の方が協会に近しくて、その意思を受けて動いているようだけど……。
「さよう。バイア殿は、コーレル侯爵家の出身。今の王妃殿が養女となった家なのでな。王家にも影響が強く、」
「養女ですか? あの、初耳です」
まさか王妃が養女だったなんて思わなかった。
王家の嫁ぐために、上位の家の出身ということにしたのだろうか。
「王妃はもともとメイドでな」
「メイドっ!?」
「国王がどうしてもと言って聞かず、王妃の利用価値を感じたコーレル侯爵家があのメイドを養女にしたのだよ。王家もそれで彼女を王妃に迎えたわけだ」
マドリガル老の話に、驚くと同時に納得もする。
あの王妃が妙にメイドに肩入れするのは、自分と同じ状況だからか。
国王も反対しなかったのは、自分がそうだったから息子の主張に反論できなかったのと、一応貴族出身だからかもしれない。
「そろそろ明日以降の予定を話し合いましょう」
そこでジュリアンが言う。
「誰か国王や貴族に通じる人間が来そうだとは思いましたが、バイア殿となれば、少し彼女の正体を知られるまで時間を置きたいですね。なのでオリヴェイル先生とも話したのですが、早朝にひっそりとここを訪れて、花を増やしたり様子を見ることにしたいと思います」
メディア達がうなずいた。
「必要な時だけでもいいと思うの。花の増え方については、ジュリアンだけが確認に来てもいいぐらいよ。本当は私とかが知らせに行ければいいんだけど……」
「手紙の転送陣なんて作ると、魔力の流れでどこと連絡をとっているのか調べられてしまいそうですし。砦から出入りをしていると、何があるのかとついて来かねないですよ、メディア」
オリヴェイル先生の言葉に、メディアはうなずく。
「ええ。だからジュリアンが確認に来て、必要だった時だけセリナ嬢を連れて来るべきですわ」
「わしもそう思うな」
マドリガル老もうなずいた。
それで私の行動方針が決まったので、他の魔術師に見つからないように、こそこそと砦を出たのだった。
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