11 / 46
第11話 - ウルダン ギルド支部 爆散
しおりを挟む
「ダイオン様が……やられた……!」「あ、あり得ない! 嘘だ、嘘だ!」「ヒャハァ……! 魔法そのものを斬らず、ほんの一部の機能を傷付け、倒した。これが、魔崩剣ってか……!」
兵たちに動揺が広がる。
魔法も使えぬただの剣士が、無敵の魔法を纏う、Aランクを、打ち倒したのだ。
その少年をどうするのか、誰も指示を出すことができず、遠巻きに眺めることしかできない。
レウはそんな中を、ふらふらとした足取りで、少女がいる檻の中にまで歩いた。
そして、無造作に振るった剣が、檻の鍵を壊す。
ぎい、と扉がひらき、中から、白い少女が出てきた。
白髪に、白い肌。白兎を思わせる、小柄な少女。
しかし、そんな雪のような肌を、真っ赤に染め上げて、恨めしそうにレウを見上げていた。
そして、細い腕を振りかぶり、ぽかりと、レウの胸元と叩いた。
それ受けて、気まずそうに、少年はぼりぼりと頭を掻く。
「まぁ、その、なんだ。言いたいことは、わかるよ。でも、その件は一旦、後にしてもいいか? 僕ァ、あんたが言った、呪いを解く方法ってのを早く知りたいわけなんだが」
「……シャロ!」
少女は、精一杯の声で、そう主張した。
「私は、シャロ! まずはちゃんと、名前で呼んで!」
「……あぁ、シャロ。そうだな。すまなかった」
「……こっちも、その、ありがと。助けてくれて」
わだかまりが溶け、ほんわかとした空気が、二人の中に漂う。
しかし、支部長を倒したとしても、ここは敵地の真っただ中なのだ。あまり呆けている時間はない。
レウは振り向く。
戦意を喪失し、立ち尽くすばかりの兵を一瞥し、争わないのであればそのまま真っすぐ帰ろうと足を踏み出す。が。
「ぐは……ぐはは……お前ら……本当に……馬鹿だ、な……ぐは、ぐはは」
這いつくばり、首から零れる鮮血を手で抑える、死に体のダイオンが、ごぼごぼと喉を鳴らしながら、そう言い放った。
羽を捥がれた虫を思い来させる、無残な姿である。喋る度に焼けるような激痛が走っているであろう。
だが、不思議なことに、ダイオンは笑っていた。
その様子に、レウは訝しむ。
「間違えたんだよ……! お前たちは……! 我を倒すというのは、最悪の選択肢だ……!」
「お、おい! なんだ、揺れてるぞ?」「地震? 違う、この振動は……」「おい! あちこちに、魔法紋が出てるぞ! この建物中に……紋様が浮き出ている!」
兵たちが騒ぎ始めた。その言の通り、ギルド支部全体が、微かに振動しており、次第にその振動が強くなっていっている。
ダイオンが、呵呵と大笑する。
「ぐはははは……! 覚悟しろ……お前らにこれより、安寧はない! わかるか? お前は、ギルドの要職を殺した……! 世界中の猛者に、お前らを殺す大義と名分が与えられたのだ……! 高ランク冒険者パーティー、七大幹部、六剣聖、王国騎士、暗殺教会……! ぐはははは……! 血みどろの狂宴が、これより始まる! そんな悪夢の祝砲を、我から上げさせてもらおうか……!」
「だめだ! 止まらない!」「逃げろ! ギルド支部が……!」「出口はどこだ!」「ヒャッハー! これは、緊急警砲だ、もう手遅れだぁ!」
振動が激しくなる。建物中の紋様が眩しく輝く。兵たちが絶望の混乱の中走り回る。
レウも出口に駆けだそうとするが、人混みで詰まり、抜けられそうにない。そして紋様が限界にまで発光しきった、その時。
「レウ! こっち!」
シャロが、手を差し伸べた。レウは、その白い指を、握る。
そして彼女は、すう、と息を吸い込み、唱えた。
「【劣化模造《デッドコピー》】――【不破魔城の絶壁】」
そして何もかもが光に包まれ――巨大な爆発音が轟いた。
ウルダンの町の中央に聳える、ギルド支部。その中腹から頂上までが、一気に弾け、爆発した。
中に残る者の悲鳴も掻き消すほど、大きな大きな爆発であった。
その爆煙は、きらきらと輝きながら、不思議な紋様を形作った。
幾何学的で、神秘的な、特殊な紋様である。
一般人が、それを見ても、意味を見出すことはむずかしいだろう。
世界に認められた超常の強者が見て初めて、理解ができる。
それは、緊急警砲と呼ばれる、各ギルド支部に備わる最後の手段。
その紋様には情報が詰められている。今の状況、起きた出来事――敵の詳細。
力及ばず、敵によって陥落したギルド支部は、自爆と共に、その情報を遠方に伝える手段を備えているのだ。
それは、大きな大きな紋様となった。
果てしなく遠くまで見える、巨大な花火のようで。
一定の資格を有する者がそれを目にすると、紋様が魔法式となり、状況が一発で脳内に刻まれる。
ダイオン、敵に敗れたり。
敵は、本部が捜索している、白髪の少女、シャロ。
そして、魔崩剣を使う少年、レウ。
願わくば、どんな手を使ってでも、殺しに囲むべし。
爆煙の紋様は、消えることなく空中に留まる。
これを見た者は、果たしてどんな感情を抱くのか。
どんな強者が、見つめているのか。
どんな試練を与えるモノなのか。
街の人々は、紋様を見上げ、ギルド支部に一大事があったことだけは理解するが、それ以上のことはわからず、怯えるしかない。
ウルダンの街は慌ただしくなる。レウのシャロの命運なぞ、そんな喧騒に溶けてしまうようであった。
兵たちに動揺が広がる。
魔法も使えぬただの剣士が、無敵の魔法を纏う、Aランクを、打ち倒したのだ。
その少年をどうするのか、誰も指示を出すことができず、遠巻きに眺めることしかできない。
レウはそんな中を、ふらふらとした足取りで、少女がいる檻の中にまで歩いた。
そして、無造作に振るった剣が、檻の鍵を壊す。
ぎい、と扉がひらき、中から、白い少女が出てきた。
白髪に、白い肌。白兎を思わせる、小柄な少女。
しかし、そんな雪のような肌を、真っ赤に染め上げて、恨めしそうにレウを見上げていた。
そして、細い腕を振りかぶり、ぽかりと、レウの胸元と叩いた。
それ受けて、気まずそうに、少年はぼりぼりと頭を掻く。
「まぁ、その、なんだ。言いたいことは、わかるよ。でも、その件は一旦、後にしてもいいか? 僕ァ、あんたが言った、呪いを解く方法ってのを早く知りたいわけなんだが」
「……シャロ!」
少女は、精一杯の声で、そう主張した。
「私は、シャロ! まずはちゃんと、名前で呼んで!」
「……あぁ、シャロ。そうだな。すまなかった」
「……こっちも、その、ありがと。助けてくれて」
わだかまりが溶け、ほんわかとした空気が、二人の中に漂う。
しかし、支部長を倒したとしても、ここは敵地の真っただ中なのだ。あまり呆けている時間はない。
レウは振り向く。
戦意を喪失し、立ち尽くすばかりの兵を一瞥し、争わないのであればそのまま真っすぐ帰ろうと足を踏み出す。が。
「ぐは……ぐはは……お前ら……本当に……馬鹿だ、な……ぐは、ぐはは」
這いつくばり、首から零れる鮮血を手で抑える、死に体のダイオンが、ごぼごぼと喉を鳴らしながら、そう言い放った。
羽を捥がれた虫を思い来させる、無残な姿である。喋る度に焼けるような激痛が走っているであろう。
だが、不思議なことに、ダイオンは笑っていた。
その様子に、レウは訝しむ。
「間違えたんだよ……! お前たちは……! 我を倒すというのは、最悪の選択肢だ……!」
「お、おい! なんだ、揺れてるぞ?」「地震? 違う、この振動は……」「おい! あちこちに、魔法紋が出てるぞ! この建物中に……紋様が浮き出ている!」
兵たちが騒ぎ始めた。その言の通り、ギルド支部全体が、微かに振動しており、次第にその振動が強くなっていっている。
ダイオンが、呵呵と大笑する。
「ぐはははは……! 覚悟しろ……お前らにこれより、安寧はない! わかるか? お前は、ギルドの要職を殺した……! 世界中の猛者に、お前らを殺す大義と名分が与えられたのだ……! 高ランク冒険者パーティー、七大幹部、六剣聖、王国騎士、暗殺教会……! ぐはははは……! 血みどろの狂宴が、これより始まる! そんな悪夢の祝砲を、我から上げさせてもらおうか……!」
「だめだ! 止まらない!」「逃げろ! ギルド支部が……!」「出口はどこだ!」「ヒャッハー! これは、緊急警砲だ、もう手遅れだぁ!」
振動が激しくなる。建物中の紋様が眩しく輝く。兵たちが絶望の混乱の中走り回る。
レウも出口に駆けだそうとするが、人混みで詰まり、抜けられそうにない。そして紋様が限界にまで発光しきった、その時。
「レウ! こっち!」
シャロが、手を差し伸べた。レウは、その白い指を、握る。
そして彼女は、すう、と息を吸い込み、唱えた。
「【劣化模造《デッドコピー》】――【不破魔城の絶壁】」
そして何もかもが光に包まれ――巨大な爆発音が轟いた。
ウルダンの町の中央に聳える、ギルド支部。その中腹から頂上までが、一気に弾け、爆発した。
中に残る者の悲鳴も掻き消すほど、大きな大きな爆発であった。
その爆煙は、きらきらと輝きながら、不思議な紋様を形作った。
幾何学的で、神秘的な、特殊な紋様である。
一般人が、それを見ても、意味を見出すことはむずかしいだろう。
世界に認められた超常の強者が見て初めて、理解ができる。
それは、緊急警砲と呼ばれる、各ギルド支部に備わる最後の手段。
その紋様には情報が詰められている。今の状況、起きた出来事――敵の詳細。
力及ばず、敵によって陥落したギルド支部は、自爆と共に、その情報を遠方に伝える手段を備えているのだ。
それは、大きな大きな紋様となった。
果てしなく遠くまで見える、巨大な花火のようで。
一定の資格を有する者がそれを目にすると、紋様が魔法式となり、状況が一発で脳内に刻まれる。
ダイオン、敵に敗れたり。
敵は、本部が捜索している、白髪の少女、シャロ。
そして、魔崩剣を使う少年、レウ。
願わくば、どんな手を使ってでも、殺しに囲むべし。
爆煙の紋様は、消えることなく空中に留まる。
これを見た者は、果たしてどんな感情を抱くのか。
どんな強者が、見つめているのか。
どんな試練を与えるモノなのか。
街の人々は、紋様を見上げ、ギルド支部に一大事があったことだけは理解するが、それ以上のことはわからず、怯えるしかない。
ウルダンの街は慌ただしくなる。レウのシャロの命運なぞ、そんな喧騒に溶けてしまうようであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした
黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。
地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。
魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。
これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。
「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」
Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。
故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。
一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。
「もう遅い」と。
これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる