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第12話 - 労働街エナハ 捨てられた街
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「わかんねえよ。おじさんの言ってること、難しいよ」
ひどく、懐かしい記憶だ。
何故今、この景色を見ているのだろう。
彼が見ている世界は、砂嵐が巻き起こっているかのように、かすれ、鮮明さを失っている。
どこかに隠された、秘密基地のような、建物群の中で。
幼いころのレウが、頬をむくれさせて、そう非難していた。
それは、目の前で笑っている、一人の男に向けられており、その男は、気持ちよさそうに笑っていた。
「ああ。そうだ。とりあえずは、それでいい。わからない、と素直に認めることも大事だからな。全部、水平だ」
「その水平ってのがわからないんだよ! もっかい分かるまで、説明してよ!」
レウが怒るさまを、嬉しそうに見やる男。彼は、しょうがないなぁ、なんて言いつつ、少年のオーダーに答えた。
「この世のものはな、全部、同じ価値を持つんだ、全部、水平だ。石ころも、大木も、砂も、水も、虫けらも、俺も、お前も。全部同じ価値であり、水平線上に並んでいる。それが俺ら、《水平線《ホライゾン》》の考え方なんだ」
「それがわからないんだよ。僕と虫が、一緒なわけないじゃんか」
「まぁ、そうだな。それが普通の感覚だ。だけどそれは、真理ではないんだな。お前みたいな坊主が悟れるほど、この思想は浅くねえんだ」
「そうやってすぐ、はぐらかす。人に教えられないようじゃ、まだまだだぞ、おじさん」
少年は口をとがらせながら、また非難する。
その様子を見て、男は気持ちよく笑った、
「口で言っても、わからないってことさ。じゃ、今日もやろうか。体を動かすことで、見えてくることもある」
「……わからないなぁ」
そういって男は、傍らの棒のようなものを、少年に投げ渡した。
それは、剣の形に削った、木刀であった。
二人は立ち上がり、遠くへ赴く。
男が語る真理が、剣を振った先に待っているだなんて、思ってもいないが。
この時間はきっと、かけがえのないものであることは、わかっていた。
========================================
「あ、やっと、起きた」
鈴が鳴るような、綺麗な声がした。
レウが、ぼやぼやと目を覚ますと、目の前に、白髪の少女の顔があった。
この子はシャロ。昨日、ギルド支部から連れ出した、捕らわれの少女。
白兎を思わせるような小柄な体に、透き通るほど綺麗な顔立ちをしている。
そんな美貌はひどく無防備で、自分の顔との距離が、近かった。
レウは思わず飛び起き、少しだけ距離を離した。
シャロは、はぁ、と溜息を吐いて、呆れるように首を振る。
「なに、その反応。大げさすぎない?」
「……うるさい。少し驚いただけだ」
むす、とむくれている少女から目を逸らし、レウは周囲を見回す。
小汚い、といより、剥き出しの石造りの、粗末な部屋。
今にも壊れそうな二段ベッドの、下段に、自分は横たわっていたようだ。
扉すらないこの部屋は、壁や天井のところどころに穴が開いており、廃棄された建築物のようである。
「ここは、エナハ。捨てられた街。皆が目を逸らす、後ろ暗い者が集う場所。その、飯場の跡よ。」
困惑するレウを察したのか、シャロがそう説明する。
飯場の跡。――こんな少女の口から出るような単語ではないであろうが、確かに、扉の向こうにも、ここと同じような粗末な部屋がずらりと並んでいるのが見える。
「私たちがよく潜伏に使っていた場所。野盗が住み着いていたけど、手ひどく追い出してからはもう近寄ってこない。数少ない安全な寝床よ。比較的、だけど」
「ええと、ちょっと待ってくれよ、自分で思い出す」
そうだ。昨日は、本当に色々あった。
シャロを追いかけてギルド支部に突入し、そのまま支部長との決闘が始まる。
それに打ち勝ったと思ったら、ギルド自体が爆発するというまさかの結果で終わった。
あの爆発の只中にいて、生き延びられるはずはないのだが。
シャロが何故か――ダイオンと同じ、無敵の魔法を発動させ、二人を包み込み爆発から守った。
そして、街に降り立つと、そこは大混乱の渦中であった。住人や冒険者が皆おおわらわになっている隙に、どこかに繋がれている馬を一頭拝借し、夜道を駆け、ここまで逃げ込んできたのであった。
こんな粗末なベッドに飛び込むや否や、全ての力を出し切ったレウは、泥のように眠りこけてしまったのであった。
「……あの魔法を、何故使えるんだ、シャロ。いや、というより、そもそも君はなんだ? どうしてギルドに追われてる? ああくそ、何から聞くべきだろうか」
「当然ね。うん、そうね。私には全部を、話す義務がある」
そしてシャロは、すくりと立ち上がった。
分厚いローブを羽織り、フードをぐいとおろして、顔を隠す。
「とりあえず、出ましょう。お腹が空いたわ」
そう言って彼女は、つかつかと扉から出て行った。レウは慌てて剣を取り、シャロの背中を追う。
飯場は山の上に建てられた施設だった。
坂道を下り、でこぼこの道を行く。しばらく歩くと、街の入り口にたどり着いた。
バラックのような、継ぎ接ぎの建築物が目立つ、小さな街だった。
いや、街というほど整備されたものではないだろう。
他に選択肢がなく、ここに行き着くものが、無理やり住み着き、出来上がった凸凹の居住区、といった感じだ。
汚れた身なりの者が多く行きかい、がやがやと騒がしい場所であった。
だが、不思議なことに、騒がしくはあるが活気があるわけではない。
どの者も希望を失った目で、機械のように、今日生きるために必要なことだけを淡々とこなしている。
そんな街の様子に、レウは思わず眉をしかめる。それを見て、シャロが指を立て、くるくる回しながら解説をする。
「ね、言ったでしょ。ここは捨てられた街、労働街エナハ。希望を奪われた人たちが行き着くところ。構造の被害者ってところかな」
彼女はしゃべりながら、慣れたように、人混みの中をかき分け進む。
潜伏に使っていると言っていた通り、この街のことはよく知っているようであった。
いや、知っているのは、街そのものではなく、残酷な世界の影のほうなのかもしれない。
「今や、大抵の仕事はギルドが独占している。あそこを通さないとまともな仕事にありつけない。でも、誰にどんな仕事を回すかは、完全にギルドが管理をしている。色んな事情でそこから漏れた人は、泥を啜るしかない。旨みの無い仕事を、ギルドがどこかに丸投げして、それがまたどこかに丸投げして、利益をすっぽり抜かれた酷い仕事に縋りついて、今日なんとか生きるだけのお金をもらうの。そんな人たちが集う街が、このエナハ」
ギルドという巨大すぎる組織に歯止めをかけられなかった結果である。
妖精との契約の独占、なんていう特権が、怪物を生み出した。
あらゆる仕事はギルドに投げられ、冒険者や関連組織に流される。
その甘い汁を吸うために、多くの人が縋りつこうと、ギルドに融通を利かせる。
そしてまた仕事がギルドに集まる。
ここから撥ねられたら、人生が壊れる。それがギルド。世界最大の組織。
レウは、そんな組織に、真正面から喧嘩を売ったのであった。
そんなことを知ってか知らずか、レウは、ふーん、なんて呑気な相槌を打つ。
「だから、捨てられた街、か。ギルドも見放したような仕事しか舞いこまない街。なので、ギルドの視界に入らない、安全圏ってわけか」
「そう。ただ、治安自体は最悪だけどね。ちょっとしたことですぐに殺し合いが始まるから、気を付けて」
軽くそんな注意をするシャロ。そう言われ、レウはさっと周囲を見回す。
若い女を連れた男、ということで。小汚い労働者たちの視線がこちらに集まっていることを、察した。
レウは肩を竦め、なるべく皆を刺激しないように気を付けながら、シャロの後を付いていく。
そして二人は、街中央部にある、大きな倉庫のような建物に入った。
そこは、街で一番人が集まる、食堂のようなところであった。
カウンターに向かって、プレートを持った人々が、行列を作っている。
カウンター奥に置かれた幾つもの大鍋から、何が煮込まれているかわからない不思議な色の煮物が、無造作にプレートに放り込まれ、受け取った人はカウンター脇のどんぶりに小銭を投げ入れ、ずらりと並んだ机と椅子の空いているところに座っていく。
「とりあえずご飯にしましょ。はいこれ、レウのプレートね」
どこから取ってきたのか、シャロはプレートをレウに渡す。
レウは、カウンター奥の、鍋の中の色を見て、嫌な顔をするが、シャロがもうご飯を食べるモードに入っているらしいのを感じ、溜息を吐いて、列に並んだ。
そして食事を受け取った二人は、食堂の隅のほうの席に着き、食事にありついた。
きつい肉の匂いが漂う肉のスープは、癖のある味付けてあるが、意外と悪くはない。きっと、肉体労働者が多いので、肉を中心とした濃い味付けにしているのだろう。
シャロは上手にフォークを使い、煮物をするすると口に入れていく。
「うん! これよね、これ。レウ、意外と美味しいでしょ?」
にこにこと微笑みながら、名前のわからない料理を平らげていく少女。
顔立ちだけ見れば、どこかの貴族の令嬢といっても通じそうなのに、こんな下賤の食事に手を付けているのが、アンバランスに映る。
なので、否が応でも、彼女の生い立ち、ここまでの事情に、興味が湧いてくる。
周囲に、こちらの話を聞いてそうな輩がいないことを確認したレウは、切り出した。
「なぁ、あんた……シャロ。あんたは一体、何なんだ? 勢いで助けちまったが、本当に、呪いを解く方法を、知っているのか?」
「そうね。まずは助けてくれて、ありがと。……すごく、辱められた気がするけど、水に流しましょう」
そう言うと彼女は唐突に、す、と、手のひらをレウに見せた。
陶器でできているかのような、美しく白い肌。その肌の表皮に。
妖精文字が浮かび上がった。
妖精と契約した冒険者でも、こんな風に文字だけを体の一部に浮かび上がらせる、なんて自在に扱うことは難しいだろう。
驚くレウに、彼女はさらに驚くようなことを言った。
「私は、【純白の翅族】の妖精と、人間との間にできた子。妖精界から逃げ出した、お尋ね者一族の落し子、シャロよ」
ひどく、懐かしい記憶だ。
何故今、この景色を見ているのだろう。
彼が見ている世界は、砂嵐が巻き起こっているかのように、かすれ、鮮明さを失っている。
どこかに隠された、秘密基地のような、建物群の中で。
幼いころのレウが、頬をむくれさせて、そう非難していた。
それは、目の前で笑っている、一人の男に向けられており、その男は、気持ちよさそうに笑っていた。
「ああ。そうだ。とりあえずは、それでいい。わからない、と素直に認めることも大事だからな。全部、水平だ」
「その水平ってのがわからないんだよ! もっかい分かるまで、説明してよ!」
レウが怒るさまを、嬉しそうに見やる男。彼は、しょうがないなぁ、なんて言いつつ、少年のオーダーに答えた。
「この世のものはな、全部、同じ価値を持つんだ、全部、水平だ。石ころも、大木も、砂も、水も、虫けらも、俺も、お前も。全部同じ価値であり、水平線上に並んでいる。それが俺ら、《水平線《ホライゾン》》の考え方なんだ」
「それがわからないんだよ。僕と虫が、一緒なわけないじゃんか」
「まぁ、そうだな。それが普通の感覚だ。だけどそれは、真理ではないんだな。お前みたいな坊主が悟れるほど、この思想は浅くねえんだ」
「そうやってすぐ、はぐらかす。人に教えられないようじゃ、まだまだだぞ、おじさん」
少年は口をとがらせながら、また非難する。
その様子を見て、男は気持ちよく笑った、
「口で言っても、わからないってことさ。じゃ、今日もやろうか。体を動かすことで、見えてくることもある」
「……わからないなぁ」
そういって男は、傍らの棒のようなものを、少年に投げ渡した。
それは、剣の形に削った、木刀であった。
二人は立ち上がり、遠くへ赴く。
男が語る真理が、剣を振った先に待っているだなんて、思ってもいないが。
この時間はきっと、かけがえのないものであることは、わかっていた。
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「あ、やっと、起きた」
鈴が鳴るような、綺麗な声がした。
レウが、ぼやぼやと目を覚ますと、目の前に、白髪の少女の顔があった。
この子はシャロ。昨日、ギルド支部から連れ出した、捕らわれの少女。
白兎を思わせるような小柄な体に、透き通るほど綺麗な顔立ちをしている。
そんな美貌はひどく無防備で、自分の顔との距離が、近かった。
レウは思わず飛び起き、少しだけ距離を離した。
シャロは、はぁ、と溜息を吐いて、呆れるように首を振る。
「なに、その反応。大げさすぎない?」
「……うるさい。少し驚いただけだ」
むす、とむくれている少女から目を逸らし、レウは周囲を見回す。
小汚い、といより、剥き出しの石造りの、粗末な部屋。
今にも壊れそうな二段ベッドの、下段に、自分は横たわっていたようだ。
扉すらないこの部屋は、壁や天井のところどころに穴が開いており、廃棄された建築物のようである。
「ここは、エナハ。捨てられた街。皆が目を逸らす、後ろ暗い者が集う場所。その、飯場の跡よ。」
困惑するレウを察したのか、シャロがそう説明する。
飯場の跡。――こんな少女の口から出るような単語ではないであろうが、確かに、扉の向こうにも、ここと同じような粗末な部屋がずらりと並んでいるのが見える。
「私たちがよく潜伏に使っていた場所。野盗が住み着いていたけど、手ひどく追い出してからはもう近寄ってこない。数少ない安全な寝床よ。比較的、だけど」
「ええと、ちょっと待ってくれよ、自分で思い出す」
そうだ。昨日は、本当に色々あった。
シャロを追いかけてギルド支部に突入し、そのまま支部長との決闘が始まる。
それに打ち勝ったと思ったら、ギルド自体が爆発するというまさかの結果で終わった。
あの爆発の只中にいて、生き延びられるはずはないのだが。
シャロが何故か――ダイオンと同じ、無敵の魔法を発動させ、二人を包み込み爆発から守った。
そして、街に降り立つと、そこは大混乱の渦中であった。住人や冒険者が皆おおわらわになっている隙に、どこかに繋がれている馬を一頭拝借し、夜道を駆け、ここまで逃げ込んできたのであった。
こんな粗末なベッドに飛び込むや否や、全ての力を出し切ったレウは、泥のように眠りこけてしまったのであった。
「……あの魔法を、何故使えるんだ、シャロ。いや、というより、そもそも君はなんだ? どうしてギルドに追われてる? ああくそ、何から聞くべきだろうか」
「当然ね。うん、そうね。私には全部を、話す義務がある」
そしてシャロは、すくりと立ち上がった。
分厚いローブを羽織り、フードをぐいとおろして、顔を隠す。
「とりあえず、出ましょう。お腹が空いたわ」
そう言って彼女は、つかつかと扉から出て行った。レウは慌てて剣を取り、シャロの背中を追う。
飯場は山の上に建てられた施設だった。
坂道を下り、でこぼこの道を行く。しばらく歩くと、街の入り口にたどり着いた。
バラックのような、継ぎ接ぎの建築物が目立つ、小さな街だった。
いや、街というほど整備されたものではないだろう。
他に選択肢がなく、ここに行き着くものが、無理やり住み着き、出来上がった凸凹の居住区、といった感じだ。
汚れた身なりの者が多く行きかい、がやがやと騒がしい場所であった。
だが、不思議なことに、騒がしくはあるが活気があるわけではない。
どの者も希望を失った目で、機械のように、今日生きるために必要なことだけを淡々とこなしている。
そんな街の様子に、レウは思わず眉をしかめる。それを見て、シャロが指を立て、くるくる回しながら解説をする。
「ね、言ったでしょ。ここは捨てられた街、労働街エナハ。希望を奪われた人たちが行き着くところ。構造の被害者ってところかな」
彼女はしゃべりながら、慣れたように、人混みの中をかき分け進む。
潜伏に使っていると言っていた通り、この街のことはよく知っているようであった。
いや、知っているのは、街そのものではなく、残酷な世界の影のほうなのかもしれない。
「今や、大抵の仕事はギルドが独占している。あそこを通さないとまともな仕事にありつけない。でも、誰にどんな仕事を回すかは、完全にギルドが管理をしている。色んな事情でそこから漏れた人は、泥を啜るしかない。旨みの無い仕事を、ギルドがどこかに丸投げして、それがまたどこかに丸投げして、利益をすっぽり抜かれた酷い仕事に縋りついて、今日なんとか生きるだけのお金をもらうの。そんな人たちが集う街が、このエナハ」
ギルドという巨大すぎる組織に歯止めをかけられなかった結果である。
妖精との契約の独占、なんていう特権が、怪物を生み出した。
あらゆる仕事はギルドに投げられ、冒険者や関連組織に流される。
その甘い汁を吸うために、多くの人が縋りつこうと、ギルドに融通を利かせる。
そしてまた仕事がギルドに集まる。
ここから撥ねられたら、人生が壊れる。それがギルド。世界最大の組織。
レウは、そんな組織に、真正面から喧嘩を売ったのであった。
そんなことを知ってか知らずか、レウは、ふーん、なんて呑気な相槌を打つ。
「だから、捨てられた街、か。ギルドも見放したような仕事しか舞いこまない街。なので、ギルドの視界に入らない、安全圏ってわけか」
「そう。ただ、治安自体は最悪だけどね。ちょっとしたことですぐに殺し合いが始まるから、気を付けて」
軽くそんな注意をするシャロ。そう言われ、レウはさっと周囲を見回す。
若い女を連れた男、ということで。小汚い労働者たちの視線がこちらに集まっていることを、察した。
レウは肩を竦め、なるべく皆を刺激しないように気を付けながら、シャロの後を付いていく。
そして二人は、街中央部にある、大きな倉庫のような建物に入った。
そこは、街で一番人が集まる、食堂のようなところであった。
カウンターに向かって、プレートを持った人々が、行列を作っている。
カウンター奥に置かれた幾つもの大鍋から、何が煮込まれているかわからない不思議な色の煮物が、無造作にプレートに放り込まれ、受け取った人はカウンター脇のどんぶりに小銭を投げ入れ、ずらりと並んだ机と椅子の空いているところに座っていく。
「とりあえずご飯にしましょ。はいこれ、レウのプレートね」
どこから取ってきたのか、シャロはプレートをレウに渡す。
レウは、カウンター奥の、鍋の中の色を見て、嫌な顔をするが、シャロがもうご飯を食べるモードに入っているらしいのを感じ、溜息を吐いて、列に並んだ。
そして食事を受け取った二人は、食堂の隅のほうの席に着き、食事にありついた。
きつい肉の匂いが漂う肉のスープは、癖のある味付けてあるが、意外と悪くはない。きっと、肉体労働者が多いので、肉を中心とした濃い味付けにしているのだろう。
シャロは上手にフォークを使い、煮物をするすると口に入れていく。
「うん! これよね、これ。レウ、意外と美味しいでしょ?」
にこにこと微笑みながら、名前のわからない料理を平らげていく少女。
顔立ちだけ見れば、どこかの貴族の令嬢といっても通じそうなのに、こんな下賤の食事に手を付けているのが、アンバランスに映る。
なので、否が応でも、彼女の生い立ち、ここまでの事情に、興味が湧いてくる。
周囲に、こちらの話を聞いてそうな輩がいないことを確認したレウは、切り出した。
「なぁ、あんた……シャロ。あんたは一体、何なんだ? 勢いで助けちまったが、本当に、呪いを解く方法を、知っているのか?」
「そうね。まずは助けてくれて、ありがと。……すごく、辱められた気がするけど、水に流しましょう」
そう言うと彼女は唐突に、す、と、手のひらをレウに見せた。
陶器でできているかのような、美しく白い肌。その肌の表皮に。
妖精文字が浮かび上がった。
妖精と契約した冒険者でも、こんな風に文字だけを体の一部に浮かび上がらせる、なんて自在に扱うことは難しいだろう。
驚くレウに、彼女はさらに驚くようなことを言った。
「私は、【純白の翅族】の妖精と、人間との間にできた子。妖精界から逃げ出した、お尋ね者一族の落し子、シャロよ」
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