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ファーストキス
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「本当か?」
確かめるように従兄さんが問い掛けてくる。だから私はもう一度、腕の中で頷いた。
「うん」
呟くように返事をすると、私を抱き締める腕の力がより一層強くなった。
「椿……」
熱を帯びた声で名前を呼ばれる。私はどきどきと胸を鳴らしながら、従兄さんの心臓の音を聞いていた。
猛従兄さんの腕の中は太陽の日差しのせいで、少し暑く感じた。
そして初めて抱き締められた時とは違って、胸の奥がじんわりと温かくなるような多幸感で心が満ちていた。私は出来るだけ長くそれを感じていたくて、従兄さんの広い背中に腕を回す。
そうしたら、私を抱く従兄さんの腕が動いて、ワンピースの上から背中を撫でられた。髪の毛と服の間で繰り返し動く手のひらの動きは何だかいやらしくて、私の背筋にぞくぞくとした感覚が走り抜けていった。
「やだ……変な風に触らないで」
顔を熱くしながら抗議すると、従兄さんは右腕を上に滑らせて、私のうなじに触れてきた。撫でるようにそっと動く指先のくすぐったさに、私は肩をすくめて身を硬くした。その時、思わず鼻にかかった声を漏らしてしまった。
「んっ」
あまりの恥ずかしさに、従兄さんの背中に回した腕を離す。
「もうっ! エッチな触り方しないで」
私が顔を上げて睨みつけると、従兄さんは欲望に火のついたような目をして私を見ていた。普段から鋭い瞳が、鋭さを増した状態でまっすぐに私を貫く。なんて雄々しい瞳なんだろう。
目を逸らすことも出来ないまま、私は従兄さんと視線を交わらせた。
「そんなに嫌だったか?」
「やだ。だって、従兄さんは触り方がいやらしいんだもん。それにここは、公共の場なんだよ?」
都合のいいことに今は周りに人がいないからいいけど、女子中学生の身体を撫で回す成人男性なんて、他人に目撃されたら問題しか発生しない。
それにエッチなことをされていると、「誰か来たらどうしよう」って考えて、余計にどきどきしてしまう。
「でも、今は誰もいないぞ」
「そうだけど……」
「椿。誰もいないうちにキスがしたい。してもいいか?」
唐突な質問に私の心臓が跳ね上がった。心拍数が上がっていくのを感じる。
「私は従兄さんのことが好きだってもうわかってるのに、キス……するの?」
「お前との約束とは関係なく俺がしたいんだ。嫌か?」
言葉と共に問い掛けてくる濃褐色の瞳が、未だに欲望を宿しているのがはっきりとわかる。私は身体中を熱くさせながら、眉を寄せた。
「嫌じゃないけど……心の準備が……」
「唇同士が一回触れるだけだ。すぐに終わる」
全然ロマンチックじゃない、ともすれば酷いとも受け取れる台詞を言いながら、従兄さんは顔を寄せてきた。
私は羞恥のあまり顔を逸らしたくなったけど、ぐっと我慢した。観念して瞼をきつく下ろす。
その直後、唇が柔らかいものに覆われた。これが、キス。恥ずかしさと官能で、全身が一瞬で燃え上がった。
だけど感慨に浸る間もなく、柔らかいものが離れいく。ああ、初めてのキスが終わったーーと思ったのに、従兄さんはまたキスをしてきた。角度を変えて、私の唇を鳥のように啄んでくる。ちゅっ、ちゅっと恥ずかしい音が繰り返し響いては霧散した。何度もキスをされて許容範囲を超えてしまった私は、頭の中がぐちゃぐちゃになって泣きたくなった。
「いやっ」
繰り返されるキスに堪えきれなくなった私は、従兄さんから顔を背けて両目に涙を滲ませた。
「そんなにたくさんしないで……私、初めてなのに」
初めてのキスなのに、こんなに何度もされるなんて思わなかった。従兄さんは酷い。子供の私に、いやらしいことばかりしてくくる。
私から拒絶された従兄さんは、珍しく狼狽えていた。申し訳なさそうに、凛々しい眉が下がっている。
「悪かった。一度だけのつもりだったんだが、お前がとても可愛くて……その、とにかくすまない」
「従兄さんのエッチ……嫌い」
むくれながら呟くと、従兄さんは少し気落ちした様子で私から両腕を離した。
私はすかさず距離を取って、従兄さんを睨みつける。すると従兄さんは、いつになく真剣な声で許してほしいと請願してきた。もう……。
私は諦めて深く息を吐き出しながら、従兄さんに警告した。
「従兄さんはもっとちゃんと理性を働かせてください。でないと、本当に嫌いになっちゃうかもしれないよ?」
「悪い。気を付けてはいるつもりなんだが……お前は可愛くて、どうにも理性が飛ぶ」
「人のせいにしないでよ」
「でも実際、お前は可愛い。お前が会ったこともない同僚に嫉妬したと聞いた時、俺はお前のことをとても可愛いと思ったし、嬉しかった」
初めての嫉妬に脅えて泣きながら逃げ出した挙げ句、従兄さんに余計な心配をかけて、さらには告白までしてしまった自分を思い返し、私は顔を熱くさせた。
私ってば、何やってるんだろう。
「お願い、思い出させないで。会ったこともない人たちに嫉妬するなんて……改めて考えると、バカみたい」
「俺は嬉しかったぞ」
「嫌な女の子だって、思わなかった?」
「思うわけないだろう。俺だって、お前が他の男に好かれていると知ったら、嫉妬する」
その言葉に、私は照れてしまった。
確かめるように従兄さんが問い掛けてくる。だから私はもう一度、腕の中で頷いた。
「うん」
呟くように返事をすると、私を抱き締める腕の力がより一層強くなった。
「椿……」
熱を帯びた声で名前を呼ばれる。私はどきどきと胸を鳴らしながら、従兄さんの心臓の音を聞いていた。
猛従兄さんの腕の中は太陽の日差しのせいで、少し暑く感じた。
そして初めて抱き締められた時とは違って、胸の奥がじんわりと温かくなるような多幸感で心が満ちていた。私は出来るだけ長くそれを感じていたくて、従兄さんの広い背中に腕を回す。
そうしたら、私を抱く従兄さんの腕が動いて、ワンピースの上から背中を撫でられた。髪の毛と服の間で繰り返し動く手のひらの動きは何だかいやらしくて、私の背筋にぞくぞくとした感覚が走り抜けていった。
「やだ……変な風に触らないで」
顔を熱くしながら抗議すると、従兄さんは右腕を上に滑らせて、私のうなじに触れてきた。撫でるようにそっと動く指先のくすぐったさに、私は肩をすくめて身を硬くした。その時、思わず鼻にかかった声を漏らしてしまった。
「んっ」
あまりの恥ずかしさに、従兄さんの背中に回した腕を離す。
「もうっ! エッチな触り方しないで」
私が顔を上げて睨みつけると、従兄さんは欲望に火のついたような目をして私を見ていた。普段から鋭い瞳が、鋭さを増した状態でまっすぐに私を貫く。なんて雄々しい瞳なんだろう。
目を逸らすことも出来ないまま、私は従兄さんと視線を交わらせた。
「そんなに嫌だったか?」
「やだ。だって、従兄さんは触り方がいやらしいんだもん。それにここは、公共の場なんだよ?」
都合のいいことに今は周りに人がいないからいいけど、女子中学生の身体を撫で回す成人男性なんて、他人に目撃されたら問題しか発生しない。
それにエッチなことをされていると、「誰か来たらどうしよう」って考えて、余計にどきどきしてしまう。
「でも、今は誰もいないぞ」
「そうだけど……」
「椿。誰もいないうちにキスがしたい。してもいいか?」
唐突な質問に私の心臓が跳ね上がった。心拍数が上がっていくのを感じる。
「私は従兄さんのことが好きだってもうわかってるのに、キス……するの?」
「お前との約束とは関係なく俺がしたいんだ。嫌か?」
言葉と共に問い掛けてくる濃褐色の瞳が、未だに欲望を宿しているのがはっきりとわかる。私は身体中を熱くさせながら、眉を寄せた。
「嫌じゃないけど……心の準備が……」
「唇同士が一回触れるだけだ。すぐに終わる」
全然ロマンチックじゃない、ともすれば酷いとも受け取れる台詞を言いながら、従兄さんは顔を寄せてきた。
私は羞恥のあまり顔を逸らしたくなったけど、ぐっと我慢した。観念して瞼をきつく下ろす。
その直後、唇が柔らかいものに覆われた。これが、キス。恥ずかしさと官能で、全身が一瞬で燃え上がった。
だけど感慨に浸る間もなく、柔らかいものが離れいく。ああ、初めてのキスが終わったーーと思ったのに、従兄さんはまたキスをしてきた。角度を変えて、私の唇を鳥のように啄んでくる。ちゅっ、ちゅっと恥ずかしい音が繰り返し響いては霧散した。何度もキスをされて許容範囲を超えてしまった私は、頭の中がぐちゃぐちゃになって泣きたくなった。
「いやっ」
繰り返されるキスに堪えきれなくなった私は、従兄さんから顔を背けて両目に涙を滲ませた。
「そんなにたくさんしないで……私、初めてなのに」
初めてのキスなのに、こんなに何度もされるなんて思わなかった。従兄さんは酷い。子供の私に、いやらしいことばかりしてくくる。
私から拒絶された従兄さんは、珍しく狼狽えていた。申し訳なさそうに、凛々しい眉が下がっている。
「悪かった。一度だけのつもりだったんだが、お前がとても可愛くて……その、とにかくすまない」
「従兄さんのエッチ……嫌い」
むくれながら呟くと、従兄さんは少し気落ちした様子で私から両腕を離した。
私はすかさず距離を取って、従兄さんを睨みつける。すると従兄さんは、いつになく真剣な声で許してほしいと請願してきた。もう……。
私は諦めて深く息を吐き出しながら、従兄さんに警告した。
「従兄さんはもっとちゃんと理性を働かせてください。でないと、本当に嫌いになっちゃうかもしれないよ?」
「悪い。気を付けてはいるつもりなんだが……お前は可愛くて、どうにも理性が飛ぶ」
「人のせいにしないでよ」
「でも実際、お前は可愛い。お前が会ったこともない同僚に嫉妬したと聞いた時、俺はお前のことをとても可愛いと思ったし、嬉しかった」
初めての嫉妬に脅えて泣きながら逃げ出した挙げ句、従兄さんに余計な心配をかけて、さらには告白までしてしまった自分を思い返し、私は顔を熱くさせた。
私ってば、何やってるんだろう。
「お願い、思い出させないで。会ったこともない人たちに嫉妬するなんて……改めて考えると、バカみたい」
「俺は嬉しかったぞ」
「嫌な女の子だって、思わなかった?」
「思うわけないだろう。俺だって、お前が他の男に好かれていると知ったら、嫉妬する」
その言葉に、私は照れてしまった。
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