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Dirty Little Secret side.B
しおりを挟む俺の隣にいる彼女は、可愛くて、ちょっとドジで、性格も良くて。
明るく素直で、周りによく気がつく、なかなかできる子だ。
決して天然では無い。
なのに自分に向けられる恋愛感情には超鈍感だったりする。
だから俺の想いにも気づかない。
――放課後、教室を出るときに肩を叩かれた。
「高橋くん」
俺の名を呼ぶ柔らかな声。
振り向かなくても声でわかる。
3年間同じクラスで、3年間一緒にクラス委員をやっている、同級生の彼女。
そう、ただの同級生。
「どうした?」
何でもないふうを装って振り向く。
「あのね、今日もこれから勉強教えて欲しいんだけど…」
少し上目遣いで俺の返事を待つ。
俺より頭ひとつ低い彼女は、いつもこの上目遣いで俺を見上げる。
この上目遣いに、心臓が痛みに近い鼓動を刻むようになったのは、いつからか。
もう覚えていない。
一年前かもしれないし、半年前からかもしれないし、もしかしたら初めからだったのかもしれない。
これから起こるであろうことを考えると、彼女の申し出は正直断りたいが、断ることができない。
俺が頷かなければ、彼女は他の人に声をかける。
しかもその相手が女とは限らない。
だから俺の答えも決まっている。
「わかった。図書室でいい?」
そして彼女の答えも決まっている。
「うん!」
極上の笑顔と共に。
――学校の図書室。
制服を着た男女が肩を並べて勉強する風景はごく普通だが、漂う雰囲気の機微は当事者二人にしか解らない。
俺は彼女と二人きりになった時の、この張り詰めた緊張感が嫌いだ。
見えない赤い糸がピンと張ってあって、今にも切れそうだけど決して切れない。
清んでいて鋭い糸。
その糸が鋭利になり、俺をがんじがらめにする。
胸はドキドキして、頬の辺りが酷く熱い。
いよいよそれに耐え切れなくて、叫びそうになる。
この緊張感を何とかしてくれ!と。
俺は感情を表に出すのが苦手だ。
そんな俺と3年間も一緒にクラス委員をやってくれている彼女。
俺が言いたいことや伝えたいこと、僅かな表情と言葉から汲み取ってくれているのは知っている。
だからこの感情を、この想いを、この緊張も汲み取って欲しいとつい見つめてしまう。
彼女の眉間にシワが寄る。
解けない問題に考え込んでいるんだろう。
見つめていると、彼女がノートから目を離し……視線がぶつかる。
また痛みに似た鼓動と共に心臓が跳ねる。
「高橋くん、どうかしたの?」
少し首を傾けて、きょとんとしたような表情を作る彼女。
俺の焦りや動揺など、まるで感じ取っていないかのように。
「…何でもない」
答えて視線を反らし、手元の本に落とす。
彼女が問題に取り掛かったところを見計らって、再び見つめる。
この均衡を崩す方法を俺は知ってる。
彼女が俺の想いを汲み取れないなら、俺が動けばいいだけ。
この関係を変えてしまえば、悶たくなるような緊張も無くなるだろうか。
「ね、高橋くん」
「何?」
「ここの計算なんだけど…」
机の上にあるノートをトントンと指差す。
ノートを覗き込むために俺の顔が彼女に近づく。
わずかに彼女の髪が揺れる。
息が掛かるほど近い距離で、俺の名が呟かれる。
すると、あからさまに走り抜ける緊張感。
甘い香りが鼻腔をくすぐる。
最近よく彼女を纏う…甘い香り。
俺の強い感情を、彼女の存在を思い知らされる瞬間。
二人の間にあるのは、薄くて、とても脆い硝子板。
こちら側から、少し力を加えるだけでヒビが入る、儚い硝子。
簡単に割れることを知っているのにそうしない俺は、臆病なんだろう。
彼女が再び、伏せていた目を上げる。
目線が絡み、例の…俺が大好きな極上の笑顔を向けられる。
そして少しだけ、グロスで潤んだ唇が開かれる。
その唇に触ったらどうなるだろうか。
瞳を閉じさせて、いっそ俺を呼ぶ声も塞いでしまえば――。
「高橋くん?」
彼女の声にハッとなる。
俺は、一体何を……。
沸き起こった衝動に、耳が、頬が、熱を持つ。
俺の隣にいる彼女は、可愛くて、ちょっとドジで、性格も良くて。
明るく素直で、周りによく気がつく、なかなかできる子だ。
決して天然では無い。
なのに自分に向けられる恋愛感情には超鈍感だったりする。
友人曰く、それはヒロイン要素なんだと。
ヒロイン要素って何だ。
そんなの現実で実現しないでくれ。
「オンナの勘」ってヤツは一体どこに行ったんだ。
臆病な俺の限界が突破されるのは、そう遠い未来じゃないかもしれない。
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