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第一章 亡霊、大地に立つ
第一話 ゴブリンから始める肉体強奪(ボディスナッチ)#2
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昼も無ければ、夜も無く、どれだけの昼が、どれだけの夜が、過ぎていったのかも分からない。
だが、おぼろげな感覚だけを頼りに言えば、数年程も過ぎたある日。
「きゃああああああああ!」
若い女の甲高い悲鳴が響き渡ったのを皮切りに、俄に洞窟の中が騒がしくなった。
おそらく、さっきの悲鳴の主なのだろう。
カンテラを手にした女が一人、急な坂道を滑り落ちてきた。
暗闇の中で、激しく揺れるカンテラの灯り。
女の苦しげな息遣いをかき消すように、坂の上からはドタドタと多人数の足音が響いてくる。
やがて、
グルォオオオオオアァ!
唸り声を上げながら、女の後を追って、何者かが一斉に坂道を駆け下りてきた。
一、二、三……全部で七匹。
カンテラの灯りに浮かぶ、子供の様な小柄な体躯に緑色の肌。
口元から覗く凶悪な牙。
シルエットだけを見れば、腰の曲がった老人の様にも見える化け物。
亡霊は、それが何者なのかを知っていた。
――ゴブリン?
馬鹿げていると思うかもしれない。
だが、それがそういう名前の化け物なのだと認識した途端、亡霊の心は激しく高揚した
――そう、あれはゴブリンだ!
もやもやとした記憶の断片。
その一つが明確な形を取った。
たったそれだけの事が、驚くほどに嬉しかったのだ。
亡霊は、一方の女の方へと意識を向ける。
彼女はカンテラを地面に置いて立ち上がると、慌てて腰の鞘から短剣を引き抜いて身構えた。
カンテラの仄灯りに照らし出されて、壁面に長く伸びた女の影が揺れる。
いや、女と呼ぶには、かなり幼い。
よく見れば、それは美しい少女だった。
あどけない瞳は蒼穹のごとき、鮮やかな蒼。
頭の左右で結わえた髪は純金の輝きを宿し、そこに深い海を思わせるラピスラズリの髪飾り。
白磁の肌には、必死に走って来たのだろう。玉の汗が浮かび上がり、触れれば折れそうな華奢な身体を、濃紺の短衣と白のボトムスに包んでいる。
だが、彼女を特徴づけているのは、今挙げた何れでもない。
それは長く尖った耳。
――エルフ……という奴なのか?
ゴブリンの時とは異なる、きっちりとした形を為さない曖昧な記憶。
おそらく知識として知ってはいても、エルフという存在を実際に見たのはこれが初めて。そういう事なのだろう。
だが、おぼろげな感覚だけを頼りに言えば、数年程も過ぎたある日。
「きゃああああああああ!」
若い女の甲高い悲鳴が響き渡ったのを皮切りに、俄に洞窟の中が騒がしくなった。
おそらく、さっきの悲鳴の主なのだろう。
カンテラを手にした女が一人、急な坂道を滑り落ちてきた。
暗闇の中で、激しく揺れるカンテラの灯り。
女の苦しげな息遣いをかき消すように、坂の上からはドタドタと多人数の足音が響いてくる。
やがて、
グルォオオオオオアァ!
唸り声を上げながら、女の後を追って、何者かが一斉に坂道を駆け下りてきた。
一、二、三……全部で七匹。
カンテラの灯りに浮かぶ、子供の様な小柄な体躯に緑色の肌。
口元から覗く凶悪な牙。
シルエットだけを見れば、腰の曲がった老人の様にも見える化け物。
亡霊は、それが何者なのかを知っていた。
――ゴブリン?
馬鹿げていると思うかもしれない。
だが、それがそういう名前の化け物なのだと認識した途端、亡霊の心は激しく高揚した
――そう、あれはゴブリンだ!
もやもやとした記憶の断片。
その一つが明確な形を取った。
たったそれだけの事が、驚くほどに嬉しかったのだ。
亡霊は、一方の女の方へと意識を向ける。
彼女はカンテラを地面に置いて立ち上がると、慌てて腰の鞘から短剣を引き抜いて身構えた。
カンテラの仄灯りに照らし出されて、壁面に長く伸びた女の影が揺れる。
いや、女と呼ぶには、かなり幼い。
よく見れば、それは美しい少女だった。
あどけない瞳は蒼穹のごとき、鮮やかな蒼。
頭の左右で結わえた髪は純金の輝きを宿し、そこに深い海を思わせるラピスラズリの髪飾り。
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だが、彼女を特徴づけているのは、今挙げた何れでもない。
それは長く尖った耳。
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