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第二章 亡霊、勇者のフリをする。
第十三話 首のかわりに #1
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「ふざけるな! お主、今度は神の化身である勇者を、愚弄するつもりか!」
幼女司祭――ソフィーが声を荒げて激昂すると、その背後で黒髪の修道女が垂れ目がちの目を見開いて、怒りを露わにした。
だが、二人のそんな様子などお構いなし。
ミーシャは涼しげな顔をして、からかう様に手をひらひらさせる。
「あらあらぁ、いきり立っちゃって。まあ仕方ないわよね。ゴブリンだもん。見た目は」
「ゴブリン以外の何者でもないわ!」
「まあ、話を聞きなさいってば。見た目はゴブリンだけど、中身は本当に、アンタんとこの勇者よ?」
「意味が分からん! 中身とはどういうことじゃ!」
「魔王領の洞窟で、身体を失って生霊になってた勇者を見つけたのよ。ほとんど記憶がないみたいだけど。で、まあ緊急避難って奴? とりあえず、手近なゴブリンの死体に入らせたんだけど……」
幼女と黒髪の修道女は、思わず顔を見合わせる。
「その生霊が主張しておるのか? 自分が勇者だと」
「うん、そうよ」
その瞬間、レイの眉の無い眉間に皺が寄った。
――嘘がバレたら、私の所為にする気満々じゃ……ぐっ!?
ミーシャは「黙ってなさい」とばかりに、彼の足を踏みつける。
それも、性質の悪い事に、ブーツの踵で小指の先端を。
幼女は、レイの引き攣った顔をじっと眺めた後、呆れたとでも言わんばかりに、肩を竦める。
「全く……何を唱うかと思えば……。そいつが勇者じゃと? 馬鹿馬鹿しいにも程があるわ」
「司祭様、ワタクシに彼女を教え導く機会をお与えくださいませ。三日もいただければ、二度とそんな戯言を吐くことの無い、従順な神の僕に育て上げてみせますわ」
黒髪の修道女がそう言ってジッと見つめると、ミーシャは得体のしれないその迫力に、思わず後退る。
「じゃ、じゃあ、証明してあげるわよ!」
「証明じゃと?」
「この砦で一番強いのと戦わせてみれば分かるでしょ。勇者なんだから負けっこないもの」
一瞬、ポカンとした表情を浮かべた後、幼女は堪えきれないといった様子で、「ク、ク、ク」と笑いを洩らした。
「あほうじゃ、本物のあほうがおるぞ、のう、ドナ・バロット」
「何が、おかしいのよ!」
「おかしいに決まっておろうが! ……まあ、良かろう。この砦で一番強い者で良いのじゃな。そやつの化けの皮が剥がれたら、お主も只では済まさん。きっちり改宗させてやるから、そのつもりでおるが良い」
「上等よ! アンタの方こそ、勝負が終わったら、地面に額を擦りつけて、私に許しを請う事になるわよ」
睨みあう二人の間で、
「ひ、姫、今ならまだ引き下がれます。司祭殿もそんな大人げない事を仰らずに……」
ゴディンはオロオロと両者をとりなそうとして、
「お主は黙っておれ!」
「引っ込んでなさいよ!」
と、両側から怒鳴りつけられて、その大きな身体を縮こまらせた。
「では、中庭で待っておるぞ」
幼女はそういうと、黒髪の修道女を引き連れて、つかつかと部屋を出て行く。
「司祭殿! お待ちください! こんな無益な事は……」
そう声を上げながら、ゴディンが司祭たちを追って出て行ってしまうと、レイが小さく溜息を吐いた。
――強ければ勇者とは、強引な論法だな。
「まあ、ほとんど売り言葉に買い言葉だけどね。たぶん、この砦で一番強いのって、ゴディンでしょ? 騎士団長なんだし」
――違うと思うぞ。
「何が?」
ミーシャがきょとんと首を傾げる。
――一番強いのがだ。
幼女司祭――ソフィーが声を荒げて激昂すると、その背後で黒髪の修道女が垂れ目がちの目を見開いて、怒りを露わにした。
だが、二人のそんな様子などお構いなし。
ミーシャは涼しげな顔をして、からかう様に手をひらひらさせる。
「あらあらぁ、いきり立っちゃって。まあ仕方ないわよね。ゴブリンだもん。見た目は」
「ゴブリン以外の何者でもないわ!」
「まあ、話を聞きなさいってば。見た目はゴブリンだけど、中身は本当に、アンタんとこの勇者よ?」
「意味が分からん! 中身とはどういうことじゃ!」
「魔王領の洞窟で、身体を失って生霊になってた勇者を見つけたのよ。ほとんど記憶がないみたいだけど。で、まあ緊急避難って奴? とりあえず、手近なゴブリンの死体に入らせたんだけど……」
幼女と黒髪の修道女は、思わず顔を見合わせる。
「その生霊が主張しておるのか? 自分が勇者だと」
「うん、そうよ」
その瞬間、レイの眉の無い眉間に皺が寄った。
――嘘がバレたら、私の所為にする気満々じゃ……ぐっ!?
ミーシャは「黙ってなさい」とばかりに、彼の足を踏みつける。
それも、性質の悪い事に、ブーツの踵で小指の先端を。
幼女は、レイの引き攣った顔をじっと眺めた後、呆れたとでも言わんばかりに、肩を竦める。
「全く……何を唱うかと思えば……。そいつが勇者じゃと? 馬鹿馬鹿しいにも程があるわ」
「司祭様、ワタクシに彼女を教え導く機会をお与えくださいませ。三日もいただければ、二度とそんな戯言を吐くことの無い、従順な神の僕に育て上げてみせますわ」
黒髪の修道女がそう言ってジッと見つめると、ミーシャは得体のしれないその迫力に、思わず後退る。
「じゃ、じゃあ、証明してあげるわよ!」
「証明じゃと?」
「この砦で一番強いのと戦わせてみれば分かるでしょ。勇者なんだから負けっこないもの」
一瞬、ポカンとした表情を浮かべた後、幼女は堪えきれないといった様子で、「ク、ク、ク」と笑いを洩らした。
「あほうじゃ、本物のあほうがおるぞ、のう、ドナ・バロット」
「何が、おかしいのよ!」
「おかしいに決まっておろうが! ……まあ、良かろう。この砦で一番強い者で良いのじゃな。そやつの化けの皮が剥がれたら、お主も只では済まさん。きっちり改宗させてやるから、そのつもりでおるが良い」
「上等よ! アンタの方こそ、勝負が終わったら、地面に額を擦りつけて、私に許しを請う事になるわよ」
睨みあう二人の間で、
「ひ、姫、今ならまだ引き下がれます。司祭殿もそんな大人げない事を仰らずに……」
ゴディンはオロオロと両者をとりなそうとして、
「お主は黙っておれ!」
「引っ込んでなさいよ!」
と、両側から怒鳴りつけられて、その大きな身体を縮こまらせた。
「では、中庭で待っておるぞ」
幼女はそういうと、黒髪の修道女を引き連れて、つかつかと部屋を出て行く。
「司祭殿! お待ちください! こんな無益な事は……」
そう声を上げながら、ゴディンが司祭たちを追って出て行ってしまうと、レイが小さく溜息を吐いた。
――強ければ勇者とは、強引な論法だな。
「まあ、ほとんど売り言葉に買い言葉だけどね。たぶん、この砦で一番強いのって、ゴディンでしょ? 騎士団長なんだし」
――違うと思うぞ。
「何が?」
ミーシャがきょとんと首を傾げる。
――一番強いのがだ。
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