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第四章 亡霊、魔王討伐を決意する。
第三十七話 ダークエルフは大体口が悪い。 #2
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「どうしたのだ、アレは?」
魔物の群れの最後尾。
巨大芋虫が牽引する車の荷台で、黒山羊の頭を持つ魔物が、その感情表現の乏しい目を細め、怪訝そうに首を捻る。
中空に向けられたその目には、城壁の向こうから飛び出した一頭の人面獅子が、海際の小高い丘の方へとふらふらと降りていく姿が映っていた。
「大方、傷ついて、苦し紛れに逃げてきたというところでしょうな……」
黒山羊の頭を持つ魔物――ガープのすぐ隣に立っていた魔物がしわがれた声で応じる。
やせ細った人間の身体に梟の頭。草色のローブを纏った魔物、ガープの副官、ストラスである。
背後から、ストラスのその一言をせせら笑う少女の声が聞こえた。
「……人間ごときにやられる? 魔王の部下も案外だらしない」
抑揚の無い平坦な声。
それは眠たげな眼をした、ダークエルフの口から発せられた。
ストラスは、ギロリとダークエルフの少女を睨みつける。
「クシャーナ殿、お言葉が過ぎますな。魔王様を愚弄するおつもりですか?」
「魔王を愚弄? 冗談。くーは魔王の部下をバカにしただけ」
「貴様ァ! 新参者のくせに調子に乗るな!」
「やめよ! ストラス!」
ストラスが食って掛かると、ガープが苛立たしげに声を上げる。
このダークエルフの少女は、多くのダークエルフ達を率いて、つい最近魔王に帰順した。
魔王が執着する耳長姫を探し出すためには、肌の色の違いはあれど、精霊と交信できるダークエルフが役に立つだろうと同行させたのだが、なにせ口が悪い。
ここへくるまでの間、幾度となくプライドの高いストラスと衝突を繰り返していた。
ガープは、クシャーナの方へと目を向ける。
「人面獅子の一匹や二匹、捨て置けば良い。それよりクシャーナ殿、魔法の気配はあるか? ハノーダー砦にいた大司教の他に、あの厄介な『聖域』を使える者はおらぬ。魔王様からはそう伺っておるが……どうだ?」
「ん…………幾つか魔法を発動する気配はある。でも、どれも小さい」
「そうか。だが引き続き警戒を頼む。結局、例の大司教はまだ発見出来てはおらぬのだ。我々より先にヌーク・アモーズに辿り着いていることなど有り得ぬが、用心にこしたことはないからな」
「小娘一人捕らえられない。魔王の部下はやっぱり間抜け」
「貴様っ!!」
「いい加減にしないか!」
今にも掴みかからんばかりのストラスを、ガープが押しとどめる。
大司教の極大魔法もなければ、警戒していた古竜の姿も見当たらない。
対して彼らの周囲には、オーガやトロール、ゴブリン、コボルドといった亜人達。それに加えて、三体の巨大なヒドラをはじめ、オルトロス、コカトリスやミノタウロスといった魔獣の姿も見える。
正に総攻撃といった陣容。人間が太刀打ちできる筈も無い。
「城門が開き次第、ミノタウロスどもを先頭に突貫させろ!」
ガープが周囲の魔物にそう声を上げたその時、クシャーナがぴくりと眉を動かして、先ほど人面獅子が落ちて行った小高い丘の方をじっと見つめた。
「山羊頭……何匹か魔獣を貸して」
「どうした?」
「あの丘の上、あそこで魔力が膨れ上がっている。エルフのイヤな匂いがする」
クシャーナのその言葉に、ガープとストラスは顔を見合わせた。
「ストラス、貴様は一軍を率いて、あの丘を制圧しろ」
ガープのその一言に、クシャーナが食って掛かる。
「山羊頭! くーが行くと言った!」
「エルフならば、耳長姫の可能性が高い。耳長姫は無傷で捕えねばならぬ。エルフに深い恨みを持つダークエルフに、それが出来るとは思えんのでな」
「むぅうううう!」
頬を膨らませるクシャーナを一瞥して、ガープはストラスへと向き直った。
「良いか、ストラス。耳長姫は殺すな。傷一つ付けてはならん。魔王様に灰にされたくなければ、丁重にご同行願うことだ」
魔物の群れの最後尾。
巨大芋虫が牽引する車の荷台で、黒山羊の頭を持つ魔物が、その感情表現の乏しい目を細め、怪訝そうに首を捻る。
中空に向けられたその目には、城壁の向こうから飛び出した一頭の人面獅子が、海際の小高い丘の方へとふらふらと降りていく姿が映っていた。
「大方、傷ついて、苦し紛れに逃げてきたというところでしょうな……」
黒山羊の頭を持つ魔物――ガープのすぐ隣に立っていた魔物がしわがれた声で応じる。
やせ細った人間の身体に梟の頭。草色のローブを纏った魔物、ガープの副官、ストラスである。
背後から、ストラスのその一言をせせら笑う少女の声が聞こえた。
「……人間ごときにやられる? 魔王の部下も案外だらしない」
抑揚の無い平坦な声。
それは眠たげな眼をした、ダークエルフの口から発せられた。
ストラスは、ギロリとダークエルフの少女を睨みつける。
「クシャーナ殿、お言葉が過ぎますな。魔王様を愚弄するおつもりですか?」
「魔王を愚弄? 冗談。くーは魔王の部下をバカにしただけ」
「貴様ァ! 新参者のくせに調子に乗るな!」
「やめよ! ストラス!」
ストラスが食って掛かると、ガープが苛立たしげに声を上げる。
このダークエルフの少女は、多くのダークエルフ達を率いて、つい最近魔王に帰順した。
魔王が執着する耳長姫を探し出すためには、肌の色の違いはあれど、精霊と交信できるダークエルフが役に立つだろうと同行させたのだが、なにせ口が悪い。
ここへくるまでの間、幾度となくプライドの高いストラスと衝突を繰り返していた。
ガープは、クシャーナの方へと目を向ける。
「人面獅子の一匹や二匹、捨て置けば良い。それよりクシャーナ殿、魔法の気配はあるか? ハノーダー砦にいた大司教の他に、あの厄介な『聖域』を使える者はおらぬ。魔王様からはそう伺っておるが……どうだ?」
「ん…………幾つか魔法を発動する気配はある。でも、どれも小さい」
「そうか。だが引き続き警戒を頼む。結局、例の大司教はまだ発見出来てはおらぬのだ。我々より先にヌーク・アモーズに辿り着いていることなど有り得ぬが、用心にこしたことはないからな」
「小娘一人捕らえられない。魔王の部下はやっぱり間抜け」
「貴様っ!!」
「いい加減にしないか!」
今にも掴みかからんばかりのストラスを、ガープが押しとどめる。
大司教の極大魔法もなければ、警戒していた古竜の姿も見当たらない。
対して彼らの周囲には、オーガやトロール、ゴブリン、コボルドといった亜人達。それに加えて、三体の巨大なヒドラをはじめ、オルトロス、コカトリスやミノタウロスといった魔獣の姿も見える。
正に総攻撃といった陣容。人間が太刀打ちできる筈も無い。
「城門が開き次第、ミノタウロスどもを先頭に突貫させろ!」
ガープが周囲の魔物にそう声を上げたその時、クシャーナがぴくりと眉を動かして、先ほど人面獅子が落ちて行った小高い丘の方をじっと見つめた。
「山羊頭……何匹か魔獣を貸して」
「どうした?」
「あの丘の上、あそこで魔力が膨れ上がっている。エルフのイヤな匂いがする」
クシャーナのその言葉に、ガープとストラスは顔を見合わせた。
「ストラス、貴様は一軍を率いて、あの丘を制圧しろ」
ガープのその一言に、クシャーナが食って掛かる。
「山羊頭! くーが行くと言った!」
「エルフならば、耳長姫の可能性が高い。耳長姫は無傷で捕えねばならぬ。エルフに深い恨みを持つダークエルフに、それが出来るとは思えんのでな」
「むぅうううう!」
頬を膨らませるクシャーナを一瞥して、ガープはストラスへと向き直った。
「良いか、ストラス。耳長姫は殺すな。傷一つ付けてはならん。魔王様に灰にされたくなければ、丁重にご同行願うことだ」
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