【Lv.999】から始まる異世界攻略譚 ~落ちこぼれゲーマーの俺は、ユニークスキル「ゲーム」を使って異世界を無双攻略する~

𝔐𝔞𝔡-𝔈𝔫𝔡

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第16話 緊急クエスト

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ギルドの酒場に入った瞬間、異様な熱気が肌にまとわりつくのを感じた。いつもよりも多くの冒険者達が、まるで一つの生命体のように押し合い、ざわついている。その中心に何があるのか、見渡してもはっきりと見えない。けれど、その張り詰めた空気と興奮は、何か重大なことが起こっているのを確かに物語っていた。

「なんだ、何かあったのか……?」

心の中で呟きながらも、視線を巡らせ、手持ちのわずかな金を掴んでカウンターへと歩み寄る。パン一つと白湯を買い、硬そうなパンを手に取る。その手触りは冷たく、パサパサに乾いていた。口に運ぶ前から、すでに味気なさが伝わってくる。

視線を酒場の奥へと向けると、少し落ち着いた一角でラプラス、クオラ、セシルがテーブルを囲んでいるのが目に入った。三人ともそれぞれに朝食を楽しんでいる様子だが、いつもの通り静かで、その場の喧騒から一歩引いたような空気を纏っている。

俺はそっと歩み寄り、椅子を引いて三人のテーブルに腰を下ろした。

「おはよう」

声をかけると、ラプラスが片手で持っていたパンに視線を落としながら答えた。そのもう片方の手には、いつも通り学術書。彼女はパンをかじりながら、分厚いページに視線を走らせている。

「やあ、おはよう。昨夜はちゃんと眠れたかい?」

彼女の声には、軽い調子でありながら、どこか学問的な冷静さがある。パンの硬さを気にしている様子は一切なく、むしろその固形物すら、彼女にとっては何かの研究対象の一つに思えるほどだった。

「ああ、まあな……」

曖昧に答えながら、視線はセシルへと移る。彼女は優雅な手つきでクリームシチューのような温かい料理を口に運んでいた。その丁寧な所作と、テーブル越しにこちらへ向けられる微笑みには、彼女の礼儀正しさが感じ取れる。

「おはようございます、アカシ様。ラプラスさんからお話を伺いました。別のクエストに参加していた間、大変なことに巻き込まれたと聞いて……」

彼女の瞳は優しげながらも、どこか鋭い。表情こそ穏やかだが、その言葉の端々に漂う緊張感が、彼女の本音を示している。俺は軽く肩をすくめ、少し照れ臭く答える。

「まあ別に……。朝から変な奴らに絡まれただけだよ」

だが、その答えが彼女の心配を払拭するわけではないようだ。セシルの表情は変わらない。

「アカシ様、もし何かあれば、私にすぐに教えてくださいね。アカシ様に危害を加える輩がいれば、私が生命に代えても叩き潰します」

彼女の瞳が瞬間的に鋭く光り、危険なほどの決意を込めた笑みを浮かべる。その微笑みは美しいが、同時に不安を掻き立てる。彼女なら、本当にやりかねない……。

「ははは……そうっすか……」

苦笑しながら応えるが、心の奥底にはほんの少しの恐れが芽生えていた。彼女の過剰なまでの思いやりが、時に抑制を失うことがある。

その時、隣のクオラが豪快に声を上げた。彼女の前には、肉の塊が豪勢に置かれており、その骨付き肉に大胆にかじりついている。まだ朝だというのに、片手には酒杯が握られている。

「なんだお前、朝っぱらからバトルしてたのか? オレも混ぜろよ!」

彼女の勢いに思わずため息が漏れる。

「お前が混ざったら、もっと面倒なことになるだろ……」

そう言って、俺は気乗りしないまま、硬いパンを口に運んだ。その食感は期待以上に悪く、まるで砂のように乾いている。味などまったくと言っていいほどなく、口内の水分を奪い取られる感覚に、俺は眉をしかめた。

白湯で無理やりその不味いパンを流し込むと、ふと周囲の騒がしさが再び気になった。

「ところで、朝からすごく騒がしいけど、何かあったの?」

俺が問いかけると、ラプラスは依然として学術書に目を落としたまま、無表情にポケットから一枚の紙を取り出した。そして、その紙を無造作に俺の前に差し出す。

「これだよ」

紙に目を通すと、大きな文字で「緊急クエスト」と記されていた。

「緊急クエスト……? 何これ?」

俺が問いかけると、ラプラスは視線を学術書から一瞬も離さず、冷静に口を開いた。

「この近辺のエリア全域で、魔物の大移動が発生しているらしい。昨日出現したキンモクオドシもその一つだ。緊急クエストは通常のクエストとは違い、報酬が倍になる。金稼ぎにもランク上げにも絶好の機会だよ」

その説明を聞いて、俺は一気に興奮を覚えた。

「報酬が倍!? そりゃ受けるしかないだろ!」

だが、ラプラスは何事もなかったかのように学術書のページをめくり続け、冷淡な声で続けた。

「ボクは受けない」

「えっ、なんで?」

思わず問い返すと、彼女は淡々と答える。

「危険すぎるからさ。ボクは死にたくないんでね」

ラプラスの声は冷たく、まるでどこか遠くの出来事を話しているようだった。それは、感情に流されるものではなく、精密に計算された結論であるかのような響きを持っていた。

俺は思わず顔をしかめたが、ラプラスは視線を一切上げず、手元の分厚い学術書に集中したままだ。

「ちょっ、は? いやいや、何言ってんだよ!」

俺は慌てて言葉を挟む。

「お前この前、立ち入り禁止の島に一人で行ってたじゃん!」

本来なら考えられない行動だ。だが、彼女は動じることなく、静かに返す。

「あれは、あの島に命をかけるだけの価値があったからさ。魔物の大移動を食い止めなければ、このクウェールの町は没落するだろう。しかし、それはボクにとって重要なことじゃない。拠点を別のギルドに移せば、それで済む話だからねぇ」

彼女の声には、何の感情もない。まるで、数字を足し引きするかのような、機械的な冷静さだ。その一言一言が、俺の腹に重たく沈み込む。

「ドライだな、お前……」

俺は思わず息を吐いた。

「じゃあ後の二人はどうなの?」

視線をクオラとセシルに向けると、クオラはまるで待っていたかのように、大きく頷いた。彼女の手には肉の塊があり、それにかぶりつく勢いのまま声を張り上げる。

「オレは受けるぜ!」

肉を噛みしめる音が響く。それに対して、セシルは明らかに対照的だった。彼女は青ざめた顔で、目を泳がせながら、声を震わせる。

「え、あ……わ、わたしは受けたくないです……」

セシルの声には、確固たる決意よりも、どこか迷いが含まれている。彼女の両手はテーブルの端を掴み、僅かに震えていた。

「じゃあ、クエスト受けるのは俺とクオラだけか……」

その瞬間、セシルがはっと顔を上げ、勢いよく言葉を発した。

「あっ、やっぱり行きます!」

まるで自分自身を奮い立たせるかのように、セシルの顔には決意が宿った。しかし、その目に潜む焦りの色は、俺にとっても明らかだった。俺とクオラが二人きりになるのが、彼女には耐えられないらしい。

「じゃあ、ラプラス抜きで三人で行くか……。本当にいいのか、ラプラス?」

俺が改めて確認すると、彼女は無関心そうに肩をすくめた。

「ああ……。ボクはそこまで金やランクに興味がないんだ。君たちが勝手にやればいい」

コイツ、ランクが下がったときは割と騒いでたくせに……。と思ったが、言葉にはせず、ただそのままやり過ごす。

だが、ふとした好奇心が頭をもたげた。

「てかラプラス、お前あの島になら命をかける価値があるって……、あの島には、いったい何があるんだ?」

俺の問いに、ラプラスはページをめくる手を一瞬止め、わずかに瞳を暗くした。その目は、いつも以上に冷たく、そして深い影を帯びていた。

「…………あの島には、君のような珍しい異物がたどり着く可能性が高いのさ。それがボクがあの島に行く唯一の理由だ」

彼女の言葉は冷静すぎて、逆に何かを隠しているようにも思えた。俺はさらに問いを重ねた。

「…………ホントにそれだけなのか? ギルドはあの島を立ち入り禁止にしてるんだろ?ギルドがいう“危険”って、具体的にはなんなんだ?」

ラプラスは再び学術書に目を落とし、何かを考え込むようにしばし黙った。やがて、軽く息をつきながら、淡々とした声で答えた。

「あの島には、リヴァイアサンという魔物がいるんだ」

「リヴァイ……アサン?」

その名前を口にした瞬間、場の空気が一瞬で変わった。





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