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第一部
地方大会二回戦
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高校野球静岡地方大会二回戦が行われる当日。俺達大海原高校は学校からバスに乗り、試合が行われる予定の球場へと向かう。
二回戦の相手は浜北中央高校。バスの中で二回戦の相手が決まった時の鷹村主将の話を思い返す。
特筆すべきはピッチャー。130キロ台のストレート、それから緩やかに大きく曲がるスローカーブとフォークの二種類の変化球を操る変化球中心のピッチャーとの事だった。
打撃の方はというと、特に脅威に感じる打者はいない…そんな風に鷹村主将は話をしていたな。
鷹村主将と倉谷先輩からはお前なら簡単に相手打席を抑えられるとの言葉を頂いたが、だからといって勿論油断はしない。何が起こるか分からないのが野球だし、仮にも相手は初戦を勝ち上がってきているわけだからな。
♢
「…今日も暑くなりそうだな」
「すでに暑いが?」
「それな」
「水分補給はしっかりとしないと」
「だなだな」
「…っ!!す、すいません!少し時間をもらいます!すぐに戻りますから」
球場へ着いてバスを降りる俺達。マネジャーの氷坂先輩が何かに気がついたようで、そんな言葉を俺達に残して駆け出した。駆け出した先に視線を向けると、そこに居るのは浜北中央の文字が刺繍されているユニフォームに身を包む青年達の姿。
今日の対戦相手の浜北中央高校の野球部のようだ。
「あ、あの!試合前にすいません!」
「あん…?」
彼女が話掛けたのはエースナンバーである背番号1のユニフォームを身に着けている青年。言ってはなんだけどロン毛でチャラそうにしている。言い忘れてたけど、この世界でも甲子園を目指す高校球児の髪型は自由なんだよな。前世でも一応そういう規定は確かなかったんだけど、坊主にしている球児が多かったのが脳裏に過ぎる。俺も前世では坊主だったしな。
「俺に何か用か?」
「そ、それ…」
氷坂先輩が相手が持っている何かを指さしたところで、鷹村主将から「たぶん…氷坂の知り合いかなんかだろう。氷坂の事だから話が終われば合流するだろうし、俺達は先に行くとしよう。邪魔したらアレだろうしな」と、声が掛かり俺達大海原高校の面々は球場の中へ。相手選手もエースナンバーのその彼を残し球場の中へ入って行く…。
♢
「あっ…?これがどうかしたのか?」
「あ、あの…私…氷坂です! って…分かるわけないわよね…。ごめんなさい。私自身急な事で信じられなくて…何から話せばいいのか分からないの…」
本当に急な事だったからうまく言葉が出てこない…。でも…約束した通り付けてくれていた。
「俺これから試合なんだけど…もしかしてナンパ?」
「あっ…ちっ、違うのっ」
否定したものの…目の前の彼が約束した彼なら…そうなる気がしなくもない…。少しチャラそうには見えるのは気にはなるけど…
私は…ずっとあの時から彼を想い続けているのだから…。
「…ナンパじゃないのか…じゃあ…何よ?」
「そ、その…キーホルダーの事なんだけど」
私は彼がつけているスポーツバッグの約束の品に視線を落とした。
野球のボールのキーホルダーに…。
「あん?コレか?コレは俺が小せぇ頃に貰ったもんだけど?」
「だ、誰からもらったか…聞かせてくれない?」
「…なんでそんな事を聞きたいんだ?」
「お、お願い!私にとってとても大事な事なの!」
私はそう言って頭を下げる。
「…分かった分かった。分かったから頭は上げてくれ。何事かとみんな見てんだろ。これは女の子から貰ったものだ。わりぃんだけどその子の名前は知らない。なんせ名前も告げられなかったからな」
──っ!?やっぱり!?やっぱり間違いないのね!?
「そ、そのキーホルダーをあなたにあげたのは…私」
「…はっ!?マジかよ…」
「そ、それをあげた時に交わした約束は覚えてる?」
「んっ?あ、ああ…」
「ホントに!?」
約束…覚えてくれてた…
「わ、悪いけど…そろそろ行かないといけねぇから…そうだなぁ…。良かったら試合が終わった後にここで会わないか?んで、そのまま俺の家に来ない?俺の家こっから近けぇし、なんならお互い積もる話もあんだろ?」
「で、でも…か、帰りのバスとか…」
「うまいこと言っとけばいいだろ?なんならそのまま泊まればいいしよ!その方が色々楽しめるだろ?んじゃあ、後でな」
「あっ…待っ──」
彼が駆け出し球場の中へ消えていく。それを見送った後で気がついた。私も急いで球場の中へ行かないといけない事に…。
急ぎ私もみんなの所へ向かう。だけど…脳内は彼の事でいっぱいに…。泊まる!?泊まればいいと言ったわよね…?そそそそそれって…。
♢♢♢
「す、すいません!遅くなりました」
「もしかしてアレ彼氏か?」
そう言って茶化すように言ってきたのは同じクラスの小林君。ベンチ入りしてる選手の一人。
「ちっ、違うわよ!まだ…」
「まだ…?」
「っ~~~!?ほ、本当に違うから!」
「くくっ…まあ…別にいいんだけど…。ただ彼氏よりも俺達の応援してくれよな」
「分かってるわよ!」
そう言ったものの…私の内心はとても複雑だ。マネジャー失格かも知れない…。約束の事もあるし…寧ろ…想い続けた人を応援したい気持ちが強いかも知れない…。
そんな思いを抱いたまま…試合が始まってしまった…。
二回戦の相手は浜北中央高校。バスの中で二回戦の相手が決まった時の鷹村主将の話を思い返す。
特筆すべきはピッチャー。130キロ台のストレート、それから緩やかに大きく曲がるスローカーブとフォークの二種類の変化球を操る変化球中心のピッチャーとの事だった。
打撃の方はというと、特に脅威に感じる打者はいない…そんな風に鷹村主将は話をしていたな。
鷹村主将と倉谷先輩からはお前なら簡単に相手打席を抑えられるとの言葉を頂いたが、だからといって勿論油断はしない。何が起こるか分からないのが野球だし、仮にも相手は初戦を勝ち上がってきているわけだからな。
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「…今日も暑くなりそうだな」
「すでに暑いが?」
「それな」
「水分補給はしっかりとしないと」
「だなだな」
「…っ!!す、すいません!少し時間をもらいます!すぐに戻りますから」
球場へ着いてバスを降りる俺達。マネジャーの氷坂先輩が何かに気がついたようで、そんな言葉を俺達に残して駆け出した。駆け出した先に視線を向けると、そこに居るのは浜北中央の文字が刺繍されているユニフォームに身を包む青年達の姿。
今日の対戦相手の浜北中央高校の野球部のようだ。
「あ、あの!試合前にすいません!」
「あん…?」
彼女が話掛けたのはエースナンバーである背番号1のユニフォームを身に着けている青年。言ってはなんだけどロン毛でチャラそうにしている。言い忘れてたけど、この世界でも甲子園を目指す高校球児の髪型は自由なんだよな。前世でも一応そういう規定は確かなかったんだけど、坊主にしている球児が多かったのが脳裏に過ぎる。俺も前世では坊主だったしな。
「俺に何か用か?」
「そ、それ…」
氷坂先輩が相手が持っている何かを指さしたところで、鷹村主将から「たぶん…氷坂の知り合いかなんかだろう。氷坂の事だから話が終われば合流するだろうし、俺達は先に行くとしよう。邪魔したらアレだろうしな」と、声が掛かり俺達大海原高校の面々は球場の中へ。相手選手もエースナンバーのその彼を残し球場の中へ入って行く…。
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「あっ…?これがどうかしたのか?」
「あ、あの…私…氷坂です! って…分かるわけないわよね…。ごめんなさい。私自身急な事で信じられなくて…何から話せばいいのか分からないの…」
本当に急な事だったからうまく言葉が出てこない…。でも…約束した通り付けてくれていた。
「俺これから試合なんだけど…もしかしてナンパ?」
「あっ…ちっ、違うのっ」
否定したものの…目の前の彼が約束した彼なら…そうなる気がしなくもない…。少しチャラそうには見えるのは気にはなるけど…
私は…ずっとあの時から彼を想い続けているのだから…。
「…ナンパじゃないのか…じゃあ…何よ?」
「そ、その…キーホルダーの事なんだけど」
私は彼がつけているスポーツバッグの約束の品に視線を落とした。
野球のボールのキーホルダーに…。
「あん?コレか?コレは俺が小せぇ頃に貰ったもんだけど?」
「だ、誰からもらったか…聞かせてくれない?」
「…なんでそんな事を聞きたいんだ?」
「お、お願い!私にとってとても大事な事なの!」
私はそう言って頭を下げる。
「…分かった分かった。分かったから頭は上げてくれ。何事かとみんな見てんだろ。これは女の子から貰ったものだ。わりぃんだけどその子の名前は知らない。なんせ名前も告げられなかったからな」
──っ!?やっぱり!?やっぱり間違いないのね!?
「そ、そのキーホルダーをあなたにあげたのは…私」
「…はっ!?マジかよ…」
「そ、それをあげた時に交わした約束は覚えてる?」
「んっ?あ、ああ…」
「ホントに!?」
約束…覚えてくれてた…
「わ、悪いけど…そろそろ行かないといけねぇから…そうだなぁ…。良かったら試合が終わった後にここで会わないか?んで、そのまま俺の家に来ない?俺の家こっから近けぇし、なんならお互い積もる話もあんだろ?」
「で、でも…か、帰りのバスとか…」
「うまいこと言っとけばいいだろ?なんならそのまま泊まればいいしよ!その方が色々楽しめるだろ?んじゃあ、後でな」
「あっ…待っ──」
彼が駆け出し球場の中へ消えていく。それを見送った後で気がついた。私も急いで球場の中へ行かないといけない事に…。
急ぎ私もみんなの所へ向かう。だけど…脳内は彼の事でいっぱいに…。泊まる!?泊まればいいと言ったわよね…?そそそそそれって…。
♢♢♢
「す、すいません!遅くなりました」
「もしかしてアレ彼氏か?」
そう言って茶化すように言ってきたのは同じクラスの小林君。ベンチ入りしてる選手の一人。
「ちっ、違うわよ!まだ…」
「まだ…?」
「っ~~~!?ほ、本当に違うから!」
「くくっ…まあ…別にいいんだけど…。ただ彼氏よりも俺達の応援してくれよな」
「分かってるわよ!」
そう言ったものの…私の内心はとても複雑だ。マネジャー失格かも知れない…。約束の事もあるし…寧ろ…想い続けた人を応援したい気持ちが強いかも知れない…。
そんな思いを抱いたまま…試合が始まってしまった…。
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