異世界でスローライフを満喫する為に

美鈴

文字の大きさ
17 / 37
第一部

専属依頼

しおりを挟む
「…大切な話は終わったみたいね?ちょうどあんたに話があったのよ…」

「…私もある…」

 ティアさんやドレインさんとの話を終えた俺はリーンさんとリカさんの元へ向かったんだ。二人は冒険者ギルド内のテーブルの席に着いていて

「ちょうど俺もお二人に話があったんです。席に着いてもいいですか?」

「待って?席に着く前に一言いいかしら?」
「…一言だけ…」

「あ、はい」

 二人は席を立つと同時に頭を下げた。

「ありがとう。お陰で奴隷落ちしなくてすんだわ」
「…ありがとう…」

「ああ…お礼はいいですよ?なんか照れくさくなってしまうので…」

「本当は頭を下げるだけじゃあ足りないんだろうけどね…」

「…ホントリーンが迷惑掛けた…お礼はリーンが体で払う…」

「アンタ本当に何言ってるのっ!?いい加減親友辞めるからね!?」

「…じゃあ…私が体で払う…?」

「そこから離れなさいよ!?しかもなんで疑問系なのよ!?」

「本当に二人は仲がいいみたいですね?息もピッタリなようで…」

「…相棒…」

「幼馴染だしね…。ただ…リカは奴隷落ちしようとした時もそうだけど、自分だけ助かろうとしたのによくもまあ相棒だなんて言えるわね?」

「…照れる…」

「照れる要素なんてどこにもないわよ!リカに構ってたら話が進まないわね…席に着きましょうか」

 リーンさんのその言葉に丸テーブルを囲むように座る俺達。

「それで…話があるのよね?」

「…私にも…?」

「ええ。先に言っておきますが嫌なら断ってもらって全然構いませんので」

「…嫌なら…?…やっぱり体…?」

「違います!」
「あんたはそこから離れなさいよ!」

 俺とリーンさんの言葉が重なる。こりゃあ早く本題に入った方がいいかな…。

「リーンさんとリカさんにしばらくでも構いませんので専属で依頼を受けていただけないかなと思いまして」

「「…依頼…?」…」

「はい、依頼内容は定期的にユウショウ兎の討伐、及びその肉と血を手に入れてもらう事になります」

「ユウショウ兎…ゴクッ…」

「…美味だった…」

 二人はユウショウ兎と聞いて先程のユウショウ兎のタレ串焼きの味を思い出したみたいだ。俺も一本食べたんだけどジューシーで美味かった。

「定期的にって言ったのはユウショウ兎の血が醤油の材料になるからですね!」

「ちょっ!?あんたっ…!?」

「…っっっ!?…」

「んっ?どうしたんです二人とも?」

「それあたし達に言ったら駄目なやつじゃあないの!?」

「…(こくこく)…」

 リーンさんの言葉にリカさんが同意してこくこく頷いている。なんでだ?

『──錬金の材料は一般的に伝わっているものと伝わってないものがあります。今回の場合ですと後者ですね。二人は醤油の魅力と価値をすでに知っています。ですので、その醤油の材料となるものをそんな簡単に教えられるとは予想していなかったのでしょうね。要は知識は財産というやつですね。言葉通りそういう筋にそういう情報を持っていけばお金にもなりますしね』

 なるほどね。それで二人は驚いているのか。まあ、いずれは他の人に作ってもらう予定だし、二人なら大丈夫だろ?それにどうやって作るのかは知らないだろ?

『──ええ。お二人なら大丈夫ですし、マスターの言う通り作り方を知られても問題はありませんね』


「別によ」
 
「そ、そうなの…ね…」
「……………ズ…」

 んっ?心なしか二人とも頬が赤いような…

『──マスターが気にする事はありませんよ!それよりも話を進めちゃって下さい』

 サチがそういうなら了解。

「先程の話に戻りますが、専属で定期的な依頼になりますけど…どうですかね?」

「っ!?それで…専属なのね…」
「…言った事あながち間違いなし…」

 
 二人が話しあう。良い答えをもらえるといいんだけどな。

「か、勘違いしないでよね!?せ、専属で定期的に依頼をもらえるから食いっぱぐれがなくなるから…それで…し、仕方がないから受けてあげるだけなんだからね!?」

「…勝ち組…」

「ありがとうございます!受けていただいて。それで早速なんですが今からってどうですかね?」

「今から…?」

「…リーンに任せる…」

「何あたし一人に任せようとしてんのよ!」

「…ユウショウ兎くらいリーン一人で十分…」

「あんたさっき相棒って言ったでしょっ!」

「…解消する…」

「いい加減本気で怒るわよ?」


 今日は色々あったし、本当はゆっくりしたいところを頼む訳だから特別手当くらい出さないとな。何かいい案あるかサチ?


『──そうですねぇ…醤油を使ったユウショウ兎の肉を使った親子丼なんていかがでしょうか?運動した後は冒険者ならガッツリ食べたいでしょうしね』

 なるほど…分かった。ありがとうな!サチ!あっ…その時は作り方宜しくな?

『──イエス!マイロード!』


「無理を承知で頼むのでそのお詫びというわけではないんですけど、醤油を使った料理を…」
「やるわ」
「…ヤる…」

 即答!?まだ話し終えてないんだけどっ!?

「…私一人で十分…」

「あんた何を抜けがけして、一人でいい思いをしようとしてんのよ!」

「…食い扶持が減る…」

「食い維持だけは張ってるんだから…」

「…リーンよりも胸も張ってる…」

「…よ~く…分かったわ…あんたは死にたいわけね?」

 ギルド内に殺気が漂い始める。リーンさんは本気のようだ。

「…ほ、ほんの…冗談…そ、それよりも早く行く…」

「次はないからね?」

 本当に仲がいい二人だ。

「話は聞かせてもらったわ!」 

「「「!?」」」

 ギルド内に突如響く声に俺達はビクッとなる。

「私も行くわ!」

 そう言って俺達の前に姿を現したのは受け付け嬢の格好のまま、剣を手にしたグレースさんだ。

「私も手伝ってあげる!なので私にも…」

「何をやっとるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 “ゴツン!”と響く鈍い音。うわぁ…痛そうだな。グレースさんが話し終える前にギルドマスターのグレンさんの拳骨が頭に落ちたのだ。こういう時は雷ご落ちたって感じか?そのままグレンさんの手によってグレースさんは引きずられながら持ち場へと戻される。「私も食べたいのぅ~」とか「私も冒険者に戻るのぅ~」とかはあえて聞かなかった事に…何もなかった事にして話を進める事に…。

「…えっ…と…じゃあ…ギルドから収納の魔法具を借りてくるわ…」

『──マスター』

 どうした?


『──リーンさんを止めて下さい』

『なんだか分かんないけど分かった』

「リーンさん。ちょっと待って下さい」

「? どうしたの?」

『──リーンさんの腰元にあるウエストポーチを借りて下さい』

「リーンさんすいません!その腰元のウエストポーチを借りても?」

「えっ?ええと…まあ、いいけど…ポーションが2個入ってるだけよ?」 

 リーンさんから取り外したウエストポーチを受け取り…
 

『──ウエストポーチに付与をかけます』

『付与?』

『──イエスマスター!彼女達は専属ですからね。ギルドの魔法具を毎回借りるのも手間でしょうし、特別に収納の魔法を付与する事に致しましょう!今日も錬金してたお陰で錬金術レベルがあがり付与するスキルをマスターは覚えてますので』

『そうなんだな…了解。で、どうやんの?』

『──そのまま口にしてもらえば大丈夫ですよ!収納付与と』

 了解。

「【収納付与】!」

「「!?」」

 ウエストポーチが一瞬だけ光ったように見えた。それをリーンさんへと返す。

「収納の魔法を付与しておきましたので、コレに収納して下さい。コレで毎回ギルドに魔法具を借りなくてもすみますよ」

「…はっ?」

「…凄っ…じゃなくて…リーンだけズルい…」

「リカさんの鞄にも勿論付与をかけますよ」

「…むふっ…」

「ほ、ホント…あんたは色々とその…凄いわね?」


 まあ、そんなわけでリーンさんとリカさんは俺の依頼を受けてくれて日暮れまでには帰ってきてくれた。たくさんのユウショウ兎と血を手にして。正確に言うと鞄に収納してだけどな。まあ、当然ふわとろの親子丼を作ってご馳走したのは言うまでもないだろう。ここぞとばかりにおかわりして本当に美味しそうにに食べてくれた。ついでに言うとグレースさんの分も作った形だ。グレースさんも本当に美味しそうに食べてくれた。

 余談にはなるのだが、それをどこからか聞きつけたティアさんとネネさんにユウショウ兎の親子丼をご馳走するハメになる事を俺はまだ知らない…。頑張って作りましたけどね…。




しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...