貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴

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久しぶりじゃん

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「お~い…豊和っ!」 

 学校の帰り道の事だ。俺の名を呼びながら俺に肩を組んできた人物がいた。君の名は?  


「…なんだ…俊哉かっ!?」   

「少しは嬉しそうにしろよな?」 

「いや、まあ、嬉しいは嬉しいぞ?それにしても久し振りじゃん?いつもなら放課後は連れ込み教室に連れ込まれてるだろうに…チッ…羨ましいぜ」 

「恐ろしい事を思い出させるなよな?それにソレを羨ましがるのはお前くらいだからな?」 

 この世界の男性からしたらそう感じるか。 前にも言ったと思うけど、一応ここは貞操が逆転した世界だ。色々とおかしいところはあるものの男性の性欲は無いに等しい。そういうところだけは定番なのだろうけど、有無を言わさずに搾り取られる。それこそ薬で無理矢理勃たせてヤるっていうのもこの世界では常識だ。

 逆レイプなんて言葉はそもそも存在しないしな。 だからこの世界では男性の人権なんて存在しないんだ。普通こういう世界ではもっと優遇されてもいいだろうにな…?まあ、男女比が一対一っていうのもおかしいからだろうけどな。普通こういう世界なら男性が少なくて優遇される世界が多いだろうに…。  


  そんなわけで閑話休題…。 

「──とにかく、今日はどうした?」

「これからは豊和と一緒に遊べるようになったからさ。久し振りに一緒にゲーセンでも行かないかと思ってな?」 

「…んっ?これからは?」 

「ああ…EDが発症してな」 

 俊哉はニコニコしながらそう語る。笑いながら言う事じゃあないんだがっ!?インポって事だよな!?勃起不全だろっ!?男として辛いだろっ!? 

「笑いながら言う事じゃあないと思うぞ?」 

「馬鹿か?コレで俺は自由を手に入れたんだ!」 

「俺なら耐えられんぞ?」 

「それはお前が伝説の童貞だから言えるんだよ!?童貞こそ神だろっ?至高の存在だろっ!?」 

 この世界では童貞は神になっている。女性から童貞を守りきれないからだろうけど、そんなものにはなりたくないわっ!? 

「童貞を神扱いするんじゃねぇーよっ!?」 

「とにかく見てくれよ、コレをっ!!」 

 俊哉に言われて視線をソコに向けると肩からタスキが掛かっていた。タスキには文字がこう書かれている。 

【 H インポッシブル】

  …と。えっ?何?それ誇れるの?エッチ不可能っていう意味でいいのか!? 物凄く誇らしい顔でキメ顔をキメる俊哉…。いや、確かにこの世界ではそうなったらタスキを掛けなければいけない法令がある。女性に手間をかけさせない為だ。俺は絶対にそんなもん掛けたくないんだけどな。 

 しかしだ。タスキはこの世界の男性の憧れでもあり、象徴でもあるっていうわけだ…。 俺は声を大にして叫びたい…。そんな象徴いらねぇーよ!と。 

「見たか?」 

「見たくないけど見せられたな」 

「まあ、そういう訳で俺は自由なんだよ♪」 

「だからニコニコ心底嬉しそうに言う事じゃねぇーからな!?」 

「──で、ゲーセン行くだろ?」 

「…そんなダサいタスキ着けた奴と行きたくないけどな?」 

「おまっ…!?全世界の男性を敵にまわす発言するなよなっ!?」 

「それだけで敵にまわる世界おかしいだろうよ!?」 

「おかしくねぇよっ!?」 

「…ああ、そうかい」 

「それに…ゲーセンにはアイツもいるだろうしな」 

「ああ、アイツか」 

 そんな事を言いあいながらゲーセンへと向かう。途中…すれ違う男性が俊哉に対して憧れの視線を送るのが嫌でも分かる。この世界やっぱおかしいわ…。 



♢ 


「じゃあ…格ゲーからヤるか?」 

「ああ…アイツも格ゲーコーナーに居そうだしな」 

 ゲーセンへと着いた俺と俊哉はお金を両替してから格ゲーが置かれている場所へと向かう。すると…やっぱりというか当然というか、アイツが格ゲーコーナーの一角に居座っているのが分かった。俺と俊哉はソイツの反対側へと向かい乱入する事に…。 

「へぇ…ボクに乱入してくる愚かな者がいるとはね」 

 そんな上から目線の声が聞こえる。まずは俊哉が乱入するのだが── 

「ボクに敵うと思ってたのかい?」 


(ぐぬぬぬぬっ…) 


 でしょうね。俊哉はゲーム好きなんだけど腕はないんだよな…。そんなわけで俺のターン!! 

「へぇ……また乱入とはね。面白い!」 

 相手のコンボを見極め、コンボを叩き込む。俺のカウンターが決まる。 

「むっ!?今のを避けたっ!?」 

 接近戦は不利と感じたのか、遠距離からの攻撃に切り替える相手。だが甘い…。 

「嘘でしょっ!?ボクの遠距離からの攻撃に合わせて相殺!?ちょっ、ちょっと待っ──」   

「待たない」

「っ!? その声っ…!?あっ…」 

 トドメとばかりに超必殺技を叩き込む。  

「ああっ…!?」 

『ケェィーオゥー!ユー!ウィン!』 

 俺の…勝ちだ!画面にもその言葉が表示されている。それと同時にこちらへと近づいてくる気配が一つ。 

「ボクを負かしたのはやっぱり豊和だったか。最初の乱入者は弱かったから俊哉だよね?」 

「ぬなっ!?俺は弱くねぇーよ!」 

「「弱いだろ?」」 

「ぐぬぬぬぬっ…」

「それにしても…久し振りじゃない二人とも」 

「そういえばそうだな。暫く来てなかったな」 

「俺は…来たかったんだけど…連れ込まれてたから…」 

「…あ、ああ…。俊哉を見れば何があったのかは想像つくよ…」 

「なんだよ、まさかΙ葵《あおい》まであのタスキに憧れるとか言うんじゃないだろうな?」 

「いや、そんな事ボクは言わないよ」 

「おっ…!?流石葵だな。さすあおだな!」 

「葵が言うわけないだろ、豊和。葵は…」 


 瞬間…葵が俊哉の懐に入り込み…ボディーブロー…。俊哉の体がくの字に折れ…俊哉は膝を床に着いたのだった…。 

 いいボディーブローだった…。踏み込みといい、パンチの重さといい…この世界の男性初のボクシングのプロになれるのでは? 葵のパンチを見て俺はそう思ったね…。
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