14 / 18
14
しおりを挟む
部屋の中で軽く魔法を使いながらジャムを作る私と、それを私の側で自由に過ごしながら眺める精霊達。
すると、とある一人の精霊がふと何かを察したように窓の外を見たかと思うとこんな事を呟いた。
『あいつが来た~!』
途端にその子の呟きを聞くなり部屋の中でザワザワと騒ぎ出すその他の精霊達。
『あっ、ホントだ』
『えー何しに来たのー』
『きっとオリヴィアに悪いことしに来たんだ!!』
『あの子いい子だと思うけどなぁ~?』
彼らが口々に口にする人物が一体誰のことを指しているのか分からないが、取り敢えず好感を持っている精霊達とその人物を嫌っている精霊達が半々ぐらいいるのは分かった。
そして、暫く彼らを無視しながらジャムを作り続けていると何やら窓の方に向かい始めた精霊達。
私はジャム作りを一時的に中断させると、彼らが見ている窓に近寄ってみた。
すると、そこには立派な馬車がこの屋敷のすぐ近くまで来ているではないか。
私は近くにいた精霊の一人に「あの馬車には誰が乗ってるの?」と問い掛ける。
しかし、何故かその精霊は私の問い掛けには答えずに『来てからのお楽しみだぜー!』の一言。
私はその精霊の言葉に苦笑いをしながらその馬車が屋敷に到着するのを待って、それから数分して屋敷の敷地内に入ってきた馬車を見下ろしながらその馬車から出てきた人物を見て目を見開いた。
なんと、なんとだ。
馬車から降りてきたのはあのアルバート王子だったのだ。
でも何故、この屋敷にやって来たのだろうか?
以前までならばオリヴィア・ローズマリーが「屋敷に来て下さい!」やら何やらとしつこく手紙を送って屋敷に来させていたが、私はそんなことはしていない。
もしかして父さんかレイモンドに用があるのだろうか?
私は考えも分からないと中断させていたジャム作りに戻る。
そして、そこから十分ほどが経った頃だろうか。
ただひたすらに無心でイチゴを煮詰めながら灰汁を取る作業をしていると、何やらコンコンと私のいる部屋をノックする音が聞こえた。
ここで『もしやアルバート王子なのでは……』と考えた私。
もしもそうだとしたらここまでスラスラ魔法を使えているのは不味い。
私はそう考えるなりグイッとなにもない宙を掴んでスーが使ってもいいと言っていた空間を作り出すなり、そこに作りかけのジャムとジャムを作るために使っていた道具を突っ込んで空間を閉じると、更に風の魔法を使って部屋の中の空気を入れ替える。
そして最後に身嗜みを整えながら扉の向こうに対してこう告げた。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
深く扉の前で深呼吸をしてドアノブに手を掛けた私はゆっくりと部屋の扉を開けた。
すると、扉を開けるなり目の前にいたのは綺麗に微笑むアルバート王子。
私は部屋の中に彼を招き入れるなり机の上にあった紅茶をカップに入れて彼の目の前に差し出した。
「……お待たせしてすみません。よければこちらどうぞ」
「ありがとう。いきなり何の連絡もなく来てわるかったね」
「いえ、それは気にしなくてもいいですよ。でも何故こちらへ?」
「君の顔が見たくなったんだ」
ふわりと本当に綺麗に微笑む目の前の彼。
しかし、そんな彼の肩の上にいたとある精霊達が口々にこんな事を口にし始めた。
『嘘ばっかり~』
『オリヴィア騙されちゃダメだよ』
『お腹の中真っ黒黒な癖にぃ~!』
それぞれみんながみんな彼に向かってあっかんべーやら嫌な顔をする。
けど、それとは違って『そんな訳ないじゃん~』やら『アルバート王子は優しいよぉ~?』なんてことを言う子もいる。
でも、彼の設定を思い出すとアルバート王子は物凄く腹黒いキャラだったので性格は悪いには悪い。
彼にとってオリヴィア・ローズマリーとは虫除けかつ王家の力を強くする為に国王に言われるがまま仕方なく婚約した婚約者だ。
ぶっちゃけ彼に私が恋をしたとしても報われる率はほぼゼロパーセントである。
自小説の中でもヒロインと結ばれるのは彼ですし。
「そうなんですね。ありがとうございます」
だから何なら婚約破棄していただいてもいいのだ。
私はそんなことを考えながら目の前の彼に微笑みを返す。
途端に少し驚いたように目をほんの少しだけではあるものの見開いた彼。
「どうかしましたか?」
「あ、いや。なんでもないよ」
私は再び微笑みという名の仮面を被った彼に「そうですか」というと、手元にある自身の紅茶に口を付けた。
すると、とある一人の精霊がふと何かを察したように窓の外を見たかと思うとこんな事を呟いた。
『あいつが来た~!』
途端にその子の呟きを聞くなり部屋の中でザワザワと騒ぎ出すその他の精霊達。
『あっ、ホントだ』
『えー何しに来たのー』
『きっとオリヴィアに悪いことしに来たんだ!!』
『あの子いい子だと思うけどなぁ~?』
彼らが口々に口にする人物が一体誰のことを指しているのか分からないが、取り敢えず好感を持っている精霊達とその人物を嫌っている精霊達が半々ぐらいいるのは分かった。
そして、暫く彼らを無視しながらジャムを作り続けていると何やら窓の方に向かい始めた精霊達。
私はジャム作りを一時的に中断させると、彼らが見ている窓に近寄ってみた。
すると、そこには立派な馬車がこの屋敷のすぐ近くまで来ているではないか。
私は近くにいた精霊の一人に「あの馬車には誰が乗ってるの?」と問い掛ける。
しかし、何故かその精霊は私の問い掛けには答えずに『来てからのお楽しみだぜー!』の一言。
私はその精霊の言葉に苦笑いをしながらその馬車が屋敷に到着するのを待って、それから数分して屋敷の敷地内に入ってきた馬車を見下ろしながらその馬車から出てきた人物を見て目を見開いた。
なんと、なんとだ。
馬車から降りてきたのはあのアルバート王子だったのだ。
でも何故、この屋敷にやって来たのだろうか?
以前までならばオリヴィア・ローズマリーが「屋敷に来て下さい!」やら何やらとしつこく手紙を送って屋敷に来させていたが、私はそんなことはしていない。
もしかして父さんかレイモンドに用があるのだろうか?
私は考えも分からないと中断させていたジャム作りに戻る。
そして、そこから十分ほどが経った頃だろうか。
ただひたすらに無心でイチゴを煮詰めながら灰汁を取る作業をしていると、何やらコンコンと私のいる部屋をノックする音が聞こえた。
ここで『もしやアルバート王子なのでは……』と考えた私。
もしもそうだとしたらここまでスラスラ魔法を使えているのは不味い。
私はそう考えるなりグイッとなにもない宙を掴んでスーが使ってもいいと言っていた空間を作り出すなり、そこに作りかけのジャムとジャムを作るために使っていた道具を突っ込んで空間を閉じると、更に風の魔法を使って部屋の中の空気を入れ替える。
そして最後に身嗜みを整えながら扉の向こうに対してこう告げた。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
深く扉の前で深呼吸をしてドアノブに手を掛けた私はゆっくりと部屋の扉を開けた。
すると、扉を開けるなり目の前にいたのは綺麗に微笑むアルバート王子。
私は部屋の中に彼を招き入れるなり机の上にあった紅茶をカップに入れて彼の目の前に差し出した。
「……お待たせしてすみません。よければこちらどうぞ」
「ありがとう。いきなり何の連絡もなく来てわるかったね」
「いえ、それは気にしなくてもいいですよ。でも何故こちらへ?」
「君の顔が見たくなったんだ」
ふわりと本当に綺麗に微笑む目の前の彼。
しかし、そんな彼の肩の上にいたとある精霊達が口々にこんな事を口にし始めた。
『嘘ばっかり~』
『オリヴィア騙されちゃダメだよ』
『お腹の中真っ黒黒な癖にぃ~!』
それぞれみんながみんな彼に向かってあっかんべーやら嫌な顔をする。
けど、それとは違って『そんな訳ないじゃん~』やら『アルバート王子は優しいよぉ~?』なんてことを言う子もいる。
でも、彼の設定を思い出すとアルバート王子は物凄く腹黒いキャラだったので性格は悪いには悪い。
彼にとってオリヴィア・ローズマリーとは虫除けかつ王家の力を強くする為に国王に言われるがまま仕方なく婚約した婚約者だ。
ぶっちゃけ彼に私が恋をしたとしても報われる率はほぼゼロパーセントである。
自小説の中でもヒロインと結ばれるのは彼ですし。
「そうなんですね。ありがとうございます」
だから何なら婚約破棄していただいてもいいのだ。
私はそんなことを考えながら目の前の彼に微笑みを返す。
途端に少し驚いたように目をほんの少しだけではあるものの見開いた彼。
「どうかしましたか?」
「あ、いや。なんでもないよ」
私は再び微笑みという名の仮面を被った彼に「そうですか」というと、手元にある自身の紅茶に口を付けた。
5
あなたにおすすめの小説
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる