悪役令嬢になった私は運命に抗う

花咲千之汰

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取り敢えずあれからアルバート王子が帰る訳でもなく私は『オリヴィア~暇だよ~!』なんて周りにいる精霊達に言われながらも私はそれを無視して本を読んでいた。

因みに、アルバート王子といえば先程からずっと私の目の前でニコニコと笑いながら私を見ている。

この際、口には出さずとも正直に言わせてもらうと物凄く本を読みにくいし怖い。

私はちらりと目線を目の前にいるアルバート王子に向け、私と目が合うなりニッコリと「どうかしたの?」と言ってきた彼に「……何でもないです」と言って再び黙り込む。

すると、ふと目の前にいた彼が私に向けてこんなことを言ってきた。

「……オリヴィア、君ってそんなブレスレット付けてたっけ?」

そう言って彼が指差すのは私の手首に付いている言わずもがなあのブレスレット。

私は彼の言葉に真っ直ぐに彼の目を見つめながら首を横に振るった。

「いいえ、付けてなかったですよ」

「だよね」

そこからまた広がる沈黙。

アルバート王子は軽く黙ったまま本を読む私を見るのに飽きたのか「オリヴィア、本を借りてもいいかな?」と言ってきたので私は本に目を向けながら「どうぞ」と頷けばその場から立ち上がって部屋の中にある本棚へ向かう彼。

私は本棚へ向かった彼の背中を一瞥すると、私の周りで鬼ごっこやらかくれんぼをしている精霊達に軽く笑みを浮かべる。

途端にそんな私に気付いたとある精霊が『オリヴィアが笑ったー!』と言えば、それに触発されたように『ホントだホントだー!』と言いながら私に群がって来た精霊達。

私は構って貰えると思ったのか上機嫌なまま私に話し掛けてくる彼らに本当に小さな声で「今は遊べないわよ」と言うと、彼らからのブーイングを左から右へ受け流しつつもこちらへ戻ってこようとしているアルバート王子を確認するなり再び本に目を向けようとする。

しかし、その時だ。

私が本に視線を移そうとした時に自身の視界に映ったのは真っ直ぐにこちらを無表情で見つめる紫色のドレスを着た少女。

少女は私と目が合うなりゆっくりとこちらを指差しながらこう口を動かした。

『オリヴィア、いた』

その際にぞわりと私の背に何かが走り、同時に黙ったまま部屋の隅を見ている私を不審に思ったのか心配そうな声色でアルバート王子が声を掛けてきた。

「オリヴィア、どうかしたのかい?」

じっと見つめ合う私と少女と、少女を見詰める私の視線の先を見て首を傾けるアルバート王子。

私は自身の真横から『イズンだ』と呟いた精霊に一瞬だけ目を向けて、彼女が私の知る上位精霊達の中の一人だと頭の中で理解するなりその場から立ち上がる。

「すみません、なんでもありません。少し席を外させていただきますね」

「あぁ、構わないよ」

私はアルバート王子に軽く頭を下げるとそのままイズンと呼ばれた少女に目を向けると、自室の扉のドアノブに手を掛ける。

「すぐに戻ってきますので少々待ちください。ついでに何かおやつでも持ってきます」

「気にしなくていいのに」

私はクスリと自身を見て微笑んだアルバート王子に笑みを返すと、そのまま少女を連れて部屋を出たのだった。

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