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あの日からなんとなく毎日のようにリームやらリーフやらウィングやらハナやらが私の元にやって来るようになると同時に、やたらとレイモンドが私を監視するように窓の向こうからこちらを見ていることが多くなって来た。
だから私は庭にある迷路のような薔薇園で精霊達と戯れている。
まあ、戯れって言っても彼らから貰った能力のような魔法の練習をしたり、くだらない話をしたり、彼らに昔の話を聞いたりと割とどうでもいい事をしているのだけれど。
でも、その日は何故か知らないけれどいつも通りにリーフといっしょに草の上に座りながら話していると庭園の隅にレイモンドがやって来た。
そして、彼は私を見るなり大きく目を見開いたかと思うと思わぬことを口にした。
「誰ですか、その人は……」
ちらりと背後を見れば優しく微笑んで唇に人差し指を添えるリーフ。
リーフはそのまま唖然とした様子でこちらを見るレイモンドにこう告げた。
『……草の上位精霊って言えばわかるかなー?』
途端に眉間に皺を寄せてリーフを睨むレイモンド。
彼は冷たい瞳でリーフを睨み付けながら彼の発言を鼻で笑った。
「ふん、上位精霊が僕らに見えるわけがありません。それに上位精霊がそこにいる義姉上と一緒にいるなんて有り得ません」
『……それはなんで?』
「理由など聞かれても困りますよ。ただ言えるのは精霊が見える人間はいないですし、仮に精霊が見える人がいたとしたら純真無垢な心を持つ人間です。しかしそこの義姉上は純真無垢な心を持っている様な人物ではない。たからですかね」
リーフはちらりと私に目をやると、小さく溜息を吐いたと思うとその場から立ち上がりレイモンドの前に立った。
そして、リーフがレイモンドに右手を向けると同時にレイモンドの近くに生えている草や木などがをレイモンドの手足を縛り、その小さな身体を覆う。
私はそれを見るなり慌ててリーフの服の裾を掴んでこう叫んでいた。
「リーフやめて!」
すると、仕方ないと言わんばかりに右手を下ろすリーフ。
途端にあっという間にその場から消えたレイモンドを囲んでいた草や木の枝達。
私はそれにほっとしながら、こちらを目を丸くしながら見ているレイモンドに向かって猫を追い払うような動作をしながらさっさとこの場から去るように声をかける。
「レイモンド、早くここから消えなさい」
「し、しかし……」
「しかしも何も無いわ。あとこれだけは言っておく、何故貴方に彼が見えるのかは知らないけれど彼は正真正銘本物の上位精霊よ。怪我をしたくないなら何も言わずに早くここから立ち去りなさい」
「っ………!」
私は下唇を噛みながらその場から逃げるようにして立ち去ったレイモンドに軽く安堵の吐息を吐くと、自身の後ろで無表情でレイモンドの背を見るリーフに声を掛ける。
「リーフ、どう言うつもりだったの。それに何故レイモンドに貴方が見えてたのよ」
『……ちょっと腹が立っただけだよ。あと彼に僕が見えたのは僕が彼らにも僕が見えるようにしたから』
「はぁ、これからあの子に手を出すのはやめてよね。……で、普通の人にも貴方達の姿が見えるようにしたりって出来るの?」
『しようと思えばできるよ。ただ僕らはあまり人間が好きじゃないからね、あまり人間に姿を見せようとはしない』
「ならなんで私には姿を見せるの?あまり人のことが好きじゃないんでしょ?」
『オリヴィアは僕らにとって特別なんだよ。君は僕らに感情をくれたから……』
「感情を……?」
『そう、君が僕らに感情を与えてくれた。だから僕らは君のためならなんでもする』
「……よく分からないけど、そのなんでもの中に人を殺すことは含まないでね。私は貴方達に人を殺して欲しい訳でも甘やかして欲しいわけでもない」
『分かったよ』
私は再びゆるりと口元を緩めて笑ったリーフを一瞥すると、レイモンドが向かった屋敷の方へ目を向けて小さく溜息を吐いた。
だから私は庭にある迷路のような薔薇園で精霊達と戯れている。
まあ、戯れって言っても彼らから貰った能力のような魔法の練習をしたり、くだらない話をしたり、彼らに昔の話を聞いたりと割とどうでもいい事をしているのだけれど。
でも、その日は何故か知らないけれどいつも通りにリーフといっしょに草の上に座りながら話していると庭園の隅にレイモンドがやって来た。
そして、彼は私を見るなり大きく目を見開いたかと思うと思わぬことを口にした。
「誰ですか、その人は……」
ちらりと背後を見れば優しく微笑んで唇に人差し指を添えるリーフ。
リーフはそのまま唖然とした様子でこちらを見るレイモンドにこう告げた。
『……草の上位精霊って言えばわかるかなー?』
途端に眉間に皺を寄せてリーフを睨むレイモンド。
彼は冷たい瞳でリーフを睨み付けながら彼の発言を鼻で笑った。
「ふん、上位精霊が僕らに見えるわけがありません。それに上位精霊がそこにいる義姉上と一緒にいるなんて有り得ません」
『……それはなんで?』
「理由など聞かれても困りますよ。ただ言えるのは精霊が見える人間はいないですし、仮に精霊が見える人がいたとしたら純真無垢な心を持つ人間です。しかしそこの義姉上は純真無垢な心を持っている様な人物ではない。たからですかね」
リーフはちらりと私に目をやると、小さく溜息を吐いたと思うとその場から立ち上がりレイモンドの前に立った。
そして、リーフがレイモンドに右手を向けると同時にレイモンドの近くに生えている草や木などがをレイモンドの手足を縛り、その小さな身体を覆う。
私はそれを見るなり慌ててリーフの服の裾を掴んでこう叫んでいた。
「リーフやめて!」
すると、仕方ないと言わんばかりに右手を下ろすリーフ。
途端にあっという間にその場から消えたレイモンドを囲んでいた草や木の枝達。
私はそれにほっとしながら、こちらを目を丸くしながら見ているレイモンドに向かって猫を追い払うような動作をしながらさっさとこの場から去るように声をかける。
「レイモンド、早くここから消えなさい」
「し、しかし……」
「しかしも何も無いわ。あとこれだけは言っておく、何故貴方に彼が見えるのかは知らないけれど彼は正真正銘本物の上位精霊よ。怪我をしたくないなら何も言わずに早くここから立ち去りなさい」
「っ………!」
私は下唇を噛みながらその場から逃げるようにして立ち去ったレイモンドに軽く安堵の吐息を吐くと、自身の後ろで無表情でレイモンドの背を見るリーフに声を掛ける。
「リーフ、どう言うつもりだったの。それに何故レイモンドに貴方が見えてたのよ」
『……ちょっと腹が立っただけだよ。あと彼に僕が見えたのは僕が彼らにも僕が見えるようにしたから』
「はぁ、これからあの子に手を出すのはやめてよね。……で、普通の人にも貴方達の姿が見えるようにしたりって出来るの?」
『しようと思えばできるよ。ただ僕らはあまり人間が好きじゃないからね、あまり人間に姿を見せようとはしない』
「ならなんで私には姿を見せるの?あまり人のことが好きじゃないんでしょ?」
『オリヴィアは僕らにとって特別なんだよ。君は僕らに感情をくれたから……』
「感情を……?」
『そう、君が僕らに感情を与えてくれた。だから僕らは君のためならなんでもする』
「……よく分からないけど、そのなんでもの中に人を殺すことは含まないでね。私は貴方達に人を殺して欲しい訳でも甘やかして欲しいわけでもない」
『分かったよ』
私は再びゆるりと口元を緩めて笑ったリーフを一瞥すると、レイモンドが向かった屋敷の方へ目を向けて小さく溜息を吐いた。
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