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しおりを挟むもう本当に一体全体どうして私はこんなにも彼らに好かれているのだ。
私は両手で頭を抑えながら自身を膝上に乗せ、無表情なのにも関わらず満足そうに目を細めながら自身の髪を結ってくるウィングと、そんな彼を見ながら目の前でヘラヘラと笑いながら精霊達に『リーフ仕事して!!』なんて叱られつつも、それを払い除けているリーフを見る。
こんなのレイモンドやら父さんやら母さんに見られたらどうなる事か。
だってほら、私の身体は傍から見たら人の膝一つ分浮いてるし髪の毛も勝手に段々と編み込まれていってる訳でしょ?
こんなの見られたら私この家から追い出されるかも知れない。
かといって、彼らからのこの好意を無下にするのもなんだか嫌だし……。
私はウィングの邪魔にならないように小さく肩を落とすと彼の大きくて硬い胸に身体を預ける。
すると、それを見るなり目の前のリーフが不満げな顔をしながらこう言う。
『ウィングずるいなぁ、昔からそうやってオリヴィアにくっつかれててさ。オリヴィア、僕にももっと甘えていいんだよ?』
『……俺からするとお前の方が羨ましい』
『え、なんで?』
お互いがお互いを瞳に写し合っている二人。
そしてお互いが頭に疑問符を浮かべる中、何処からか見知らぬ可愛らしい声が私の耳に届いた。
『なぁに、気持ち悪い顔してるのぉ~?』
途端にビクリと跳ねたウィングの身体とリーフの肩。
私はそれに少し驚きつつもその声のした方へ顔を向ける。
その際に私の目に映ったのはとてつもなく可愛らしい桃色の髪の毛に赤い目をした少女。
彼女はゆったりと笑顔でこちらへ近付いてきたと思うと、ウィングから私を掻っ攫って、優しく私の頭を撫でながらこう言う。
『やだぁ、オリヴィア凄く大きくなったねぇ!』
同時に彼女は何処からか出したのか赤く綺麗な一本の薔薇を私の髪の毛に差すと満足そうに頷く。
『うん、物凄く可愛いよぉ~』
この間、ウィングとリーフは笑顔で硬直状態である。
ちらりと目の前の彼女から二人に目を移せば、彼女は冷たい目を二人に向けながらこう続けた。
『ねぇ、二人共ぉ~?アクアとイムがまた改めてみんなで会いに行こうって言ってたよねぇ?約束破っちゃダメだよねぇ??』
そっと目の前の二人が彼女から目を逸らす。
へえ、そんな約束なんて物してたのか。
私は桃色の少女の後ろから彼女に叱られてしょんぼりとする二人を見て軽く頬を掻く。
そして、未だにイライラとしている様子の彼女にこう問い掛けた。
「お姉さんのお名前はなんなの?」
ぱちりと先程までの苛立ちを何処へやら瞬きをしながらこちらを振り向いた彼女。
ふと、私の隣にいたフリルを着た小さな妖精の何人かが囁くように私にこう言う。
『ハナだよぉ、彼女はハナ~』
『お花を司る上位精霊さんですよぉ~』
クスクスと笑ってパッと私の前に花を散らす桃色の精霊達。
私はそれに驚きつつも、目の前の彼女の名を呼んだ。
「ハナ、さん?」
途端ににっこりと笑った彼女はそのまま頷く。
『うん、そうだよぉ~。そうだったねぇ、オリヴィア私達のこと忘れてるんだったねぇ~』
「アクアって人とフレイムって人が喧嘩して、私が怯えたからメリーって人が仕方なく私の記憶を消したと……」
『そうそう、あの後だけどあの二人には物凄ぉ~く反省して貰ったから許してあげてねぇ~』
「いいよ別に」
『ふふっ、いい子いい子ぉ~』
ハナは私の返事に嬉しそうに頬を緩めると私の頭を撫でる。
けれど、次の瞬間の彼女の言葉を聞いた私は思わずこの場から逃げ出したい気持ちになった。
『にしてもぉ、オリヴィアなんだか大人っぽくなったねぇ。……というか、大人っぽくなったっていうかぁ、中身が入れ替わった見たぁ~い』
でもこんな言葉に動揺したらそれこそ不味い。
私はそう考えて、そのまま楽しげに微笑む彼女の目を見ながら普通に返事を返した。
「そうかしら?でも私も将来的にはこの国を治めることになる王子の婚約者であり未来の王妃ですもの。少しは大人にならないと」
『やだぁ、かっこかわいぃ~!ならハナもお手伝いしちゃう~!!』
その瞬間、目の前の彼女が指を鳴らすなりふわりと私の足元に現れたのは彼女の髪と同じ色の魔法陣。
『ハナ、契約しまぁ~す』
すると、驚く間もなく私の手首に現れたのは桃色の小さな石の入った花のシルバーチャームの付いたブレスレット。
ハナはぽかんと口を開けたままの私の手首を見るなり満足そうに頷いて笑う。
『これでオリヴィアはいつでも花を使う魔法を使えるよぉ~』
この時、そのハナの言葉を聞くなり動いたのは他の二人だ。
『え、なら僕も契約しようっと!』
『……俺も』
そしてまたしても先程同様に足元に浮かんだのは深緑と緑の魔法陣で、二人が『契約する』と言うと同時に現れる四葉のクローバーのチャームと銀色の羽の形をしたチャームがブレスレットに増えた。
「……これってどういうこと?」
『えっと、オリヴィアは草と花と風を自由に操れるようになったってこと。あっ、因みにそのブレスレットも死ぬまで外れないし壊れないから』
「なにその呪われたブレスレットみたいなの。怖いし要らない……」
『王妃になるんでしょ~?なら持ってても損は無いよぉ~』
「精霊って勝手過ぎない……?」
『それが俺達だ』
私はまるで当たり前かのように自身の肩に手を置いたウィングに「……いい加減にしてくれ」と言いたくなるのを我慢して、そのまま大きく肩を落とした。
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