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パーティーも無事に終わって帰って来た屋敷。

私は取り敢えず屋敷に帰るなりさっさとお風呂を済ませると、自身の部屋に戻って首に掛かっていた笛を吹いた。

すると、音もなく窓を開けて目の前に現れたのは気だるそうな表情をしたギノ。

私はそんな彼に手に持っていたクッキーの詰め合わせを渡しながら今日の礼を口にする。

「ギノ、本当に今日は妹と幼馴染みを助けてくれてありがとう。また改めてお礼の品は渡すけれど、これを受け取ってちょうだい」

ギノは私の掌に乗る軽くラッピングのされたクッキーを凝視したかと思うと、小さな声で私にこう尋ねてきた。

「……食べてもいいの?」

「勿論よ」

そして、私の返事を聞くなりゆっくりとラッピングのリボンを外して中にあったクッキーを口に入れた彼。

次の瞬間、彼は大きく目を見開いたかと思うとほんの少しだけ笑ったのだ。

私は思わずそれにギョッと目を見開くと、またもや無表情ではあるものの少しだけ穏やかな雰囲気になった彼に動揺しながらもふと頭に浮かんだ質問を彼へと投げ掛けていた。

「ギノってもしかして甘い物が好きだったりするの……?」

すると、首を傾けながら「さあ?」と答える彼。

けれども、明らかにさっきの表情は甘い物が好きという感じだった気がする。

私は頭の中で今回の二人を助けてくれたお礼に彼に渡すのはお菓子の詰め合わせになるかなと考えながら、部屋の中にある飴玉の入った瓶を片手にギノへ近寄る。

「ギノ、ここから好きなのも食べていいわよ」

「本当にいいの?」

「嘘なんて吐かないわよ」

「……なら貰うよ」

ギノはそういうと瓶の中から赤色の飴玉を手に取るとそれを口の中に放り込んで、クッキーに再びリボンを掛ける。

「ありがとう」

「別にいいわよ、それよりまた何かあったらお願いね」

「じゃあお礼はこれね」

そう言ってギノが私に見せたのはクッキーの詰め合わせ。

私はそんな彼の言動にそれでいいのかと笑いつつも「それ以外にも美味しいものはいっぱいあるからまたあげるわ」と言って、窓の方へ向かうギノへ「またね」と告げる。

すると、パッとこちらを振り返った彼は少しだけ穏やかに目を細めながら「じゃあね」と言ってその場から消えた。

「……ギノって変な子」

私はそう笑いながら呟くと、今度彼に出すのはプリンかゼリーにしようと思いながらベッドの中へ潜り込んだ。
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