【R18】一匹狼は愛とか恋とか面倒くさい

藍生らぱん

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高等部 一年目 皐月 ゴールデンウィーク 

058 GW 4日目 2

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**健太視点**

高名な芸術家である京夜の祖父の誕生日パーティーに家族みんなで招待された。

祖父母達と一緒に京夜の祖父に挨拶して雑談をしていると絵のモデルを懇願された。
それを快諾して、日時の調整は陽翔がする事になった。

陽翔は実家のホテルの繁盛期で忙しいせいか、今日は給仕の手伝いをしている。
陽翔がいるケーキバイキングのコーナーは女性と可愛い系の男性Ωの人集りが凄いことになっている。
跡取りではないが、黙っていれば王子様な見た目の若く優秀な御曹子のαだからモテモテだ。

華やかなギャラリーに囲まれた陽翔とは逆に、今、俺はαの年代が近い若いイケメン達に囲まれている。
自分んちのパーティーに来ないかとか、食事のお誘い、デートのお誘い、夜の・・・

イケメン揃いだけど、自意識過剰ナルシスト系の俺様ばっかりで、好みのタイプがいない。
そしてピーチクパーチク、ウザイ。
陽翔に群がってるお洒落で可愛いトイプードル系の女子とチェンジして欲しい。
パーティー中だし、威圧で全員沈めたら不味いので我慢して聞き流す。
でも我慢の限界に近づいた頃、スマホのバイブが鳴った。
「すみません、失礼します。」
電話に出るからとその場を後にする。

宴会場の前のロビーを抜けてエレベーターホールに向かいながらスマホのアラームを切った。

こういうパーティーの時は囲まれた時に場を離れやすくするため、着信に見せかけたバイブ設定のアラームやタイマーを入れている。

祖父母達にも挨拶が終わったら適当にホテルの部屋に戻っていいと言われていたし、城山と最上階のレストランで夕飯を食べる約束もしていたので、そのままエレベーターに乗った。

エレベーターには先客が一人。
何処かで見たようなイケメンだ。
何処だったっけ?

結婚式の帰りらしく、ホテルの引き出物用の白い大きな手提げ袋を持っていて顔色が悪い。
酒臭いから飲み過ぎか?

エレベーターのボタンは俺の部屋と同じフロアが押してあったので、先客の男と反対側の角に背をつけた。

エレベーターのドアが開いて、フロアの方へ数歩歩き出した時、ドサッという何かが倒れるような音がした。
振り向くと男がゼエゼエと荒い息を吐いて踞っていた。
「大丈夫ですか?」
「薬、盛られた、多分・・・ラットの促進剤・・・」
「医務室に行きましょう!」
「いや、部屋に中和剤がある。俺、医者・・・」
「肩に捕まって、部屋はどこですか?」
男を支えながら立ちあがると、男は上着のポケットからカードキーを出した。
俺はそれを受け取って部屋番号を確認する。

1002

ここから近いな。

男の部屋に着くとカードリーダーにカードキーをかざしてドアを開けた。
念の為ドアが閉まりきらないように引き出物を入口付近に置いてストッパー代わりにしてから男を近くのソファーに座らせた。
「中和剤は何所ですか?」
「クローゼットの中のアタッシュケース」
男が言った場所の扉を開けるとアルミ製のアタッシュケースがあった。
それを男の前に置いて、
「自分で開けられますか?」
男が肯いたので洗面所に行ってカップに水を汲んで持って行った。
「ありがとう」
男が震えながらカプセルを口に入れたのを確かめてからカップを渡した。
俺は再び洗面所へ行くと水をためてタオルを浸した。
そして雪成兄さんに薬を盛られた男の症状と部屋番号をメールで送った。

絞った濡れタオルをソファーで横になっていた男の額に乗せてやった。
薬が効いてきたのか、10分程経った頃には呼吸と顔色が良くなってきた。
「助かった、改めてありがとう。」
「どういたしまして。じゃあ、俺はこれで失礼します。」
「待って!」
男の手が俺の手を掴んだ。
その時、男と初めて目が合った。
「俺の運命・・・」
男に肩を掴まれ、抱き寄せられて項の匂いを嗅がれた。
いつもなら肩を掴まれる前に避けるのに、油断してたせいか、がっちり掴まれて動けない。
触れられた所や項に鳥肌が広がる。
体が思うように動かないし、威圧を上手く出せない。

「俺の運命、今度は間違いない!」

運命、そう決めつける男に嫌悪感がつのる。
いつの間にか男にソファーの上に押し倒されていた。
「名前、教えて」
「離せっ、」
男に反撃出来ないように四肢をがっちり押さえ込まれた。
「やめろ!」
男の顔が近づいて、唇があと少しで触れそうになったとき、部屋のドアが開いて誰かが入って来た。

「健太?」

城山の声だ!
「先生!」
俺にのしかかっていた男を城山が押し退け、俺を抱き寄せる。
「亮輔? 何で?」
男が目を見開いて、呆然と城山と俺を見上げていた。
あららぎ?!」
「あららぎ?」
あ、こいつ颯の追っかけしてたセクハラ校医だ!
「健太、何でコイツと一緒にいるんだ? ここ、お前の泊まる部屋じゃないよな?」
「エレベーター出たとこで、この人が倒れたから部屋まで運んでやったんだ。ラットの促進剤盛られたって話で、中和剤が部屋にあるからって、飲ませて様子見してた。」
城山は俺を抱き込んで大きく溜息をついた。
「通りかかった時にこの部屋からお前の声が聞こえたから、入ってみて良かった。ケガとかしてないか?」
「大丈夫だよ」
俺を守るように抱きしめたまま、城山は男に声をかけた。
「蘭、何で恩人を押し倒してたんだ?」
「彼は俺の運命だ!」
「運命? α同士で?」
「α? いや、それより亮輔、彼とどういう関係だ?」
「俺の唯一、俺の命より大事な人だ。」

そう言う城山の声が言葉が態度が俺の身も心も優しく包み込む。

俺は無意識に城山の背に手を回していた。

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