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高等部 一年目 皐月
071 王道転校生の事情 前編
しおりを挟む**大和視点**
去年、キヤマタケルとして、運良く出演する事が出来た映画を切っ掛けに、本格的に日本の時代劇の殺陣を学ぶ目的で、拠点を日本に移すことになった。
エージェントの三島さんがピックアップしてくれた、いくつかの寄宿学校の中から凰堂学園の資料を見て、凰堂学園の編入試験を受けることを決めた。
「何でここにしたんだ?」
ホテルで編入試験の詳細を確認している時に、幼馴染みで、三島さんの次男である耕平に聞かれた。
「教員名簿に城山亮輔の名前があった。」
「マジ?」
「マジ。臨時みたいだけど。」
そう言って学園のパンフレットを開いて耕平に見せた。
「ふーん、どれどれ、教科国語、演劇部臨時顧問、特別講師ねぇ・・・すっかり役者から遠離ってるな。」
「でも、彼の作る舞台は凄いよ。」
「だよな~」
何だかんだ言いつつ、耕平も俺も役者で写真家で舞台芸術家の城山亮輔の大ファンであることに今も昔も変わらない。
劇作家を目指している耕平にとって城山亮輔は役者としても舞台芸術家としても魅力ある表現者だ。
そして俺の目標は城山亮輔の実父、今は亡き伝説のアクション俳優、キヤマダイスケを超えること。
「そうだ、王道ハーレム、タケルならさ、ここの学園を舞台にできるんじゃね?」
「急に何おかしなこと言ってんだ?」
「乙女ゲームとか学園ものの小説で流行ってんだよ、王道学園モノ。それを参考に舞台用の脚本の構想練ってんだけどさ、身近で見たことないし、基本設定だけで書いてみても何かイマイチなんだよな。」
そう言って耕平はノートを俺に渡した。
中身を見ると、ある程度の設定とシナリオが書き込まれていた。
「様々な学園ものの恋愛シミュレーションゲームやアニメ、小説、漫画を元に脚本の登場人物たちの基本設定を書き起こして、試しに脚本を一冊書き上げたんだけど、現実でも王道主人公みたいな奴に攻略対象者たちの設定に近い奴らは惚れるのか? という疑問が出た。その疑問を解消する為に、タケル、王道主人公になってくれないか?」
リアルの中で耕平の考えた「王道主人公」を演じるのは面白そうだとは思った。
それで協力する事にしたんだけど・・・
「凰堂学園の編入試験受かったらさ、生徒会とか学園の様子教えてくれよ。ついでに王道ハーレム、できるかどうか試してみようぜ!」
「ハーレムは無理、俺はシアン一筋だからな。」
「まあ、無理なら仕方ない。でも、俺が考えた主人公になりきって行動してくれよ。ハーレムか、固定か、友情エンド目指すかは好きにしていいからさ。」
「じゃあ、友情エンド一択だな。」
「えぇえ~」
「耕平の設定通りに演技するのはいいよ、面白そうだし。でも攻略とやらは友情一択な。」
「仕方ないなぁ。でも俺の脚本の為に情報提供はヨロシクぅ!!」
そうして耕平の設定で「高校生・乾大和」のキャラを作った。
一昔前の苦学生な雰囲気。
帰国子女だから日本語が苦手な天然系。
αだけど、βっぽくて、「受け」っぽい。
誰とでも仲良くできて、気配りができる中身が八方美人系。
長い前髪と分厚い眼鏡で素顔を隠しているが、素顔は美形。
こんなんで引っかかる奴いるのか?
って思ったけど、副会長がキヤマタケルのファンで、初対面で正体バレたのは計算外だった。
そして遠目で見たシアンに似た立姿の男子生徒。
2年S組の教室でシアンと同じフェロモンの香りに出会えたのは偶然か必然か・・・
***
副会長には学食から一番近い保健室に連れて行って貰った。
年配の優しそうな養護教諭の藤原玲子先生に手当をしてもらった。
教室に戻る道中、城山亮輔が一人の生徒と連れ立って一年生のフロアへ向かっているのを遠目で見かけた。
「神月君と城山先生? 珍しい組み合わせですね・・・」
副会長が呟く声が聞こえた。
「知ってる人?」
「ええ、国語教諭の城山先生と一年生の神月君。神月君は私の幼馴染なんですよ。」
そう言って神月とかいう生徒の後姿を見つめる副会長の眼差しは、キラキラと輝いていて綺麗だった。
ああ、副会長は神月って奴に惚れてるんだな。
俺にはファン以上の感情が無さそうで安心したわ。
副会長とはS組のフロアへの入り口の前で別れた。
そして、待ちに待った六時間目、チャイムと共に教室に入って来た城山亮輔の姿を見て俺は絶句した。
学食帰りの時は遠目だったので服装の方はよく見ていなかった。
近場で見るとギラギラしていて何か眩しい。
シアンがモデルをしているブランドNYRの新作のピアスとネックレス、腕にはロレックス、老舗ブランドの白いスーツを着崩して、というか上着脱いでいて黒いYシャツのボタンは胸元まで開いている。
王道学園ものの、ホスト教師にしか見えない。
「そういや、転校生がいるんだっけ? 立って自己紹介してくれる?」
「は、はいっ、」
俺は慌てて立ち上がった。
「乾大和デス。」
「俺は国語担当の城山亮輔だ。宜しくな。」
城山亮輔はそう言って十数年前、事故に合う数年前に会った時と同じ優しい眼差しで俺に微笑んでくれた。
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