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高等部 一年目 皐月
073 一匹狼(仔犬)は決意する
しおりを挟む**健太視点**
雪成義兄さんが取りに行ってくれた荷物から弁当が入った保冷バッグを取りだして亮輔に渡した。
「昼飯、喰えそうか?」
「ごめん、無理そう。」
「健太は点滴させるから、亮輔は放課後になったら迎えに来てくれる?」
「了解。雪、暫くの間、俺の部屋に泊めさせてもいいか?」
「そうしてもらえると保護者としては安心だ。健太もいい?」
「うん。」
「じゃあ、放課後にな。」
そう言って出て行った亮輔を見送った後、雪成義兄さんに点滴をしてもらってから少しウトウトしていると、ドア越しに騒ぐすばるの声が聞こえた。
「健太の見舞いに来ました!!」
「面会謝絶、教室に戻りなさい。」
「健太、どこだ!?」
シャーっと、ベッド周りのカーテンが開く音が微かに聞こえた。
カーテンの仕切りをあちこち開けながら騒いでいる。
だが、個室の存在には気づいてないようだ。
「やめないか!」
「健太に会わせろよ!」
「ダメだ!」
「先生にはそんな権利ない!」
「権利? 権利ならあるよ。僕は健太の保護者だ。」
「・・・保護者?」
「健太は僕の弟だ。」
「嘘だ! 健太には姉ちゃんしかいない!」
「僕は健太の姉の夫だ。」
「えっ!?」
「学園での健太の事は義両親から一任されている。僕は健太の義兄で保護者で主治医、赤の他人の君とは違うんだよ。大体、健太の怪我の原因は君じゃないか。そんな奴に会わせるわけないだろう?」
「!!」
雪成義兄さんはそう言って、すばるを追い出したようだ。
ドアの開閉音とバタバタと走り去る足音が聞こえた後に雪成兄さんが個室にやってきた。
「健太、大丈夫かい?」
「雪成義兄さん、すばるの相手させてごめん。」
「平気平気、あれより五月蠅い病人とか怪我人とかその関係者、結構多いから気にしないで。それより、少し寝なさい。睡眠不足とストレスで傷の治りが遅くなったら颯が心配するよ? 黙ってるわけにもいかないから、後で京夜君が颯を連れて来るから。」
「うん、ありがとう。」
そう言って俺は目を閉じた。
それにしても、一体誰がすばるに俺が保健室にいることを教えたんだろう?
昔みたいに周りの迷惑も顧みずに行動するようになってるし・・・
・・・すばるの事は気になるけれど、今は忘れよう。
颯が来るまでに少しでも回復して、心配させないようにしないと。
**颯視点**
5時間目が終わってすぐ、珍しく京夜が教室に来てくれた。
「京夜!」
側に行くと頭を撫でられた。
「颯、落ち着いて聞いて欲しいんだけどよ、」
「何?」
「健太が保健室で点滴受けてる。」
「ケン兄、具合悪いの?」
「詳しくは向こうについてからな。」
オレは京夜に手を引かれて雪成先生が常駐しているα専用の保健室に向かった。
雪成先生が常駐している保健室はα専用だけど、番持ちのΩのみ条件付きで入る事ができる。
オレは番持ちでケン兄の血縁者だから入室可能だ。
ケン兄がいる個室に入って、点滴を受けて寝ている姿を見たら涙が溢れて止まらなくなった。
たまに見る夢の中の瀕死の白い犬の姿とケン兄の姿が重なって、とても哀しい気持ちが溢れて止まらない。
「「颯?」」
そんなオレの姿を見て京夜と雪成先生が「大丈夫だから!」と言ってアタフタとオレの涙を拭ってくれた。
暫くすると、ケン兄が目覚めて
「颯、心配かけてごめん」
と、優しく俺を抱き寄せてくれた。
ケン兄の項にはガーゼが張り付けてあって、そこから薬の匂いに混じってすばるの匂いがした。
「ねぇ、すばるに咬まれたの?」
「・・・ああ、そのせいで体調崩したみたいだ。」
「ケン兄、オレ、すばるとは絶交したから・・・」
もし、ケン兄がすばるのこと好きでも、オレはもうすばるとは仲良くなんかできない。
「絶交? すばると何かあったのか?」
「昼にさ、すばるに弁当全部食われて、すばるがモジャ男で幼稚舎の時のおやつ泥棒だって、気づいたんだ。」
「「「・・・・・・」」」
「あいつ、一口だけって言ったのに、ケン兄がオレの為に作ってくれた弁当勝手に全部食ったから、絶交!」
「颯、じゃあ、昼は食ってないのか?」
ケン兄が心配そうにオレを見つめる。
怪我して具合の悪いケン兄に心配かけちゃいけない!
「ケン兄に会いに剣道部向かってたら城山先生が助けてくれたんだ。」
オレは城山先生と、ケン兄と城山先生が作った弁当を分けっこして食べた事を話した。
「でね、今度さ、城山先生がまた唐揚げ作ったら分けてくれるって。オレ、すげぇ、楽しみ!! オレ、城山先生がケン兄の彼氏になるのは大賛成!」
「そうか。」
オレが昼飯ちゃんと食えた事にケン兄は安心してくれたようだ。
「それとさ、ケン兄、体調戻るまで俺たちの部屋にお泊りしよ?」
オレがそう言うと、京夜も
「体調戻るまでは颯の為にもそうしてくれ。」
って言ってくれた。
「それがさ、城山先生の世話になることになったから・・・」
「マジ!?」
「マジ・・・」
ケン兄が頬を染めて微笑んだ。
ケン兄が嬉しそうで、オレも嬉しい。
城山先生がケン兄の側にいてくれるなら安心だな!
やっぱ、ケン兄には城山先生だよな!
すばるはダメ、絶対!
モジャ男の魔の手からオレはケン兄を護る!!
***
6時間目の終わりのチャイムが鳴った頃、放課後の見回りの為に風紀委員会室に向かう京夜を保健室前の廊下の分かれ道まで見送って戻ろうとしたら、保健室の前にすばる──今は伸びかけの坊主頭だからイガグリ頭でいいかな?──がいたので角に身を隠して様子見をしていたら知らない人とぶつかった。
「痛っ!」
「ゴメンナサイっ」
イケボで謝罪する目の前の人に目が釘付けになった。
「・・・レッド?」
目の前に、大好きだった戦隊ヒーローの変身前の姿にそっくりな人がいた。
「バース戦隊のアルファレッド!!」
何度か配役とか設定変えてリメイクされたバース戦隊。
その初代のリーダー、アルファレッドの変身前の仮の姿にそっくりだ!
俺は思わずレッドの腕を掴んだ。
「レッド! ちょっと、保健室まで付き合って!!」
レッドを前面に押し出すように保健室の前まで行くと、モジャ男改め、イガクリ頭がオレ達に気づいた。
「颯っち!!」
満面の笑顔で近寄ろうとするイガグリ頭に
「お前のせいでケン兄が・・・オレはお前を許さない・・・」
オレはレッドの背中越しに言った。
「颯っち?」
オレの言葉にイガグリ頭の顔色がどんどん悪くなる。
「ケン兄が倒れたのはお前のせいだ。お前がケン兄を傷つけたからっ!!」
「・・・・・・」
レッド──ソックリさんだけど──!
オレにイガグリ頭を倒す勇気をくれ!!
「ケン兄を大切にできない奴はオレの敵だ!」
オレはレッドの体を盾に、イガグリ頭に宣言した。
オレの言葉に崩れ落ちるイガグリ頭。
「もう二度とオレとケン兄に近づくな!!」
──────────
余談
因みに、三代目シリーズのアルファレッドはリハビリ終了後の城山先生が演じています。
ドラマは制作スタッフが特撮監督をしている叔父のチームだったので体調を考慮しながら休み休みできたのと、ダンスの時のような繊細さは不要だったので何とかなったけれど、限界も知った。
これがきっかけで城山は完全にミュージカル俳優は断念した。
因みに今の見た目と全く違うので、学園で城山先生が三代目レッドだったと知ってる人や気付いている人は極少数。
颯は全く気付いてない。
大和ことタケルは五代目のオーディションにエントリー中~
初代の見た目はもっさりガリベン系
二代目はやんちゃ系
三代目はワイルド系
四代目はアイドル系
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