【R18】一匹狼は愛とか恋とか面倒くさい

藍生らぱん

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高等部 一年目 皐月

075 咬み痕

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**健太視点**

寄宿舎の亮輔の部屋にはシアンの仕事の打ち合わせで何度か入ったことがある。
でも、泊まるのは初めてだ。

階は違うが、俺の部屋と同じ棟なので行き来はしやすい。
なので一度自分の部屋に戻って着替えを数日分、亮輔の部屋に持ち込んだ。
シャワーを借りたあとはガーゼと包帯を変えて貰った。

今日は早めに休むように言われていたので、大人しく寝室に入る。
亮輔の寝室のベッドは生徒用の部屋のベッドより大きめのセミダブルサイズだ。
ベッドの奥の方に横になって目を閉じた。

昨日から色々あって、本当に疲れた、というか、草臥くたびれた・・・

すばるとの事は何一つ解決してない。
でも、もう、無理だ。
俺に対しては何をされても仕方無い。
でも颯は違う。
自分の欲のために颯を利用したり、ないがしろにする奴とは一緒にいられない。


「健太?」
不意に亮輔に名前を呼ばれ、瞼を開けると、上半身裸の、風呂上がりの亮輔が目の前にいた。
程よく筋肉がついた引き締まった体にドキリとさせられる。

「まだ、痛むか?」
「もう、痛くないよ。」
亮輔はベッドの空いてるスペースに寝転ぶと、俺を抱き寄せた。
「亮輔、大好きだよ。」
「ばか、この状態で言うなよ。キスとかそれ以上したくなる・・・」
「治るまで我慢してくれるんだよな?」
「キスはしたいけど、我慢する。」
「キスだけならいいんじゃない?」
「お前は鬼か?」
「ふふっ、亮輔の好きにしていいよ。」
「俺は抱きたいけど、健太は? 健太が抱きたい方なら受け入れる覚悟はあるぞ。」
「俺は、亮輔に抱かれたい。」
俺はそっと亮輔の項を指先でなぞった。

この間、ホテルで添い寝した時に気がついたのだが、亮輔の項には小さな窪みが二つ並んでいる。
その窪みをなぞっていると亮輔が何とも言えないような顔で俺を見つめていた。
「健太、赤ん坊の頃の事は覚えているか?」
「颯が生まれてからの記憶はあるよ。颯の成長の事だけはさ、はっきり覚えてる。」
「うん、流石に生後半年くらいの頃のは無いか・・・」
亮輔が苦笑する。

俺が乳幼児の時に何かあったのか?

「健太ってさ、赤ん坊の頃は俺に凄く懐いてて、遊びに行くとべったりくっついて離れなかったんだ。」
「マジ?」
「颯が生まれたら俺に見向きもしなくなったけどな。」
「ご、ごめん?」
「中等部の寄宿舎入ったら頻繁に遊びに行けなかったから、お前が夢中になれる者ができて丁度良かったんだけどな。寂しかったけど。」
「覚えてなくて、ごめん。でも、何で今その話?」
「俺の項咬んだの、赤ん坊の頃のお前だから。」
「はい?」
「お前が今触ってるところ。」
「俺が咬んだの? 何で?」

その話が本当なら、何で赤ん坊の頃の咬み痕が残ってるんだ?

「丁度、歯が生えて来たあたりでムズムズしてたみたいでさ、あの頃のお前って噛みつき魔だったんだよな。俺だけじゃなくて、黒峯の家の人たちみんな噛まれてたぞ。俺はお前と一緒に昼寝してた時に、後ろから寝ぼけたお前にガブリって・・・」
亮輔は当時の事を思い出しながらクスクスと笑った。
「みんなは腕とか足だったからか、痕も残らずに直ぐに治ったのに、俺の項だけ咬み痕が残ってる。凄いと思わないか?」
「痛くない?」
「いや、全然。それより、痕が残ってる事の方が凄く嬉しいんだ。俺たちはα同士だから番にはなれないだろ? でも、俺がお前のものだって所有印があるようで、それが嬉しいんだ。」
「・・・亮輔、俺にもつけてくれるか? 治ったら、抱いて、項も咬んで欲しい。」
「・・・だから、今そういう事言うなよ・・・これでもかなり我慢してるんだぞ?」
「そうなんだ?」
「項の怪我が治って、体調も戻ったら、覚悟しろよ?」
「おう・・・」

結局、歯止めが効かなくなるかもしれないからと、キスもお預けになった。

その代わり、そのまま抱きしめられたまま寝た。
亮輔の肌の体温と鼓動が心地良くて、割とすぐ眠れた。

***

朝になって目が覚めると、ベッドに亮輔の姿はなかった。
寝室のドアが全開になっていて、キッチンで朝食を作っている亮輔の後ろ姿が見えた。
「おはよ。」
ベッドから起きた俺は真直ぐキッチンに向かって亮輔に声をかけた。
「おはよう、顔洗ったら飯にしよう。」
「うん。」

トイレを済ませてから顔を洗ってキッチンに戻ると、朝食の準備を終えた亮輔が座って待ってくれていた。
「美味そう・・・」
「食欲がありそうで良かった。」
「いただきます。」
「おう、俺も、いただきます。」

豆腐とネギの味噌汁に、ハムエッグ、ポテサラ、白いご飯。
「亮輔、いいお嫁さんになれるな。」
「健太が貰ってくれるなら、毎日作ってやるぞ?」
軽口を言ったのに、マジで返された。

「城山先生、寄宿舎で生徒と同棲する気ですか?」
俺の言葉に亮輔が大きなため息をついた。
「今すぐ教師辞めたい・・・」
「辞めたら毎日会えなくなるな。」
「それも嫌だぁ・・・」
仕事もできて家事も万能でスパダリなα様のくせに、変なところでヘタレだな。

でも、俺の事で一喜一憂する亮輔が愛しい。

「健太、完治したら家の別荘に行かないか?」
「別荘? なんで?」
「初めてはさ、思い出に残したいだろう?」

別荘で、つまり、最後までするってことか。

「亮輔って、ロマンチストだったんだな。」
「ダメか?」
「ダメじゃない・・・」
「じゃあ、決まりな。」
「おう・・・」

***

それから数日は、日中は雪成義兄さんの保健室で過ごして、部活は休んだ。
出席が必要な授業と、生徒会の仕事はリモートでこなした。

保健室登校初日、昼休みに体調管理をしっかりしろと真琴からお小言のテレビ電話がきた。
ネチネチ色々言われたが、心配してのことだから素直にハイハイと聞いてやった。
プリプリ怒りつつも「倒れる前に頼りなさい!」と言う真琴のツンデレ具合が可愛い。
颯は嫌ってるけど、俺はそんな真琴が友達として好きだ。
「心配かけて悪い。真琴、愛してるよ。」
「寝言は寝て言え。」
「ははっ、ごめんごめん。」
「ったく、黒峯がいないと使い物にならない人がいるので、早く戻って下さいね。」

昼は颯と一緒に保健室で学食のデリバリーを注文して食べた。
あれ以来、颯の所にも、ここにも、すばるが来ることは無かった。

静かで平和な、特に何もない日々を保健室で過ごす。

六月になったら体育祭があるけれど、実行委員会も立ち上げ済みだし、プログラムも決まっているので、後は種目毎の参加者を各チームで決めて練習するのみだ。
体育祭は紅白2チームに分かれる。
実力が偏らないように、体育教師たちの采配で振り分けられるので、週明けにならないと自分がどちらのチームになるのかが判らない仕様になっている。

去年は真琴と同じチームで、他の生徒会メンバーと京夜とは敵対したっけ・・・
応援に来ていた颯が、どっちを応援するかで頭を抱えていたな。
でも、京夜とは出た種目が被らなかったので、リレーの時は颯の応援のお蔭で陽翔を抜いてトップでゴールできた。

今年はどういう編成になるんだろう?
颯とはできれば同じチームになりたいものだ。

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