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高等部 一年目 皐月
077 続 王道転校生は気づかない 2
しおりを挟む**三島耕平視点**
「ったく、目の前にいたのに、何で気づかないんだよ・・・」
大和との電話を切ったあと、俺は大きくため息を吐いた。
視点を変えれば、捜し当てるのは容易だった。
大和から電話が来た時、俺はシアンに関する新しい情報を、出版社に勤めている2番目の兄貴の彼女さんから聞かされたばかりで、その情報を基にシアンの特定作業をしていた。
「内緒なんだけどね、シアンってさ、あの文豪の黒峯健吾の孫なんだよ! この前、うちの勤め先に男装したシアン、連れて来てくれてね。ネットに流さないならいいよって、写真撮らせてくれたの!」
そう言って見せてくれたインスタントカメラで撮った写真の中に、黒い短髪のシアンが確かにいた。
「シアンって、とっても気さくで、年下なんだけど、もう、お姉様って感じで、ホントにカッコよかった~」
「黒峯健吾の、孫って本当なの?」
「黒峯健吾の長男で作家してるイケオジ、健一氏の子供だよ。」
「え、でも、宇佐美凪と兄弟なんだよね?」
「ああ、デザイナーの凪さん、旧姓、黒峯だよ。」
「そうなの?」
「うん、あたし、学部違うけど彼女と同じ大学の同級生だもん。共通の友達とかいるから聞いたことあるんだよね。大学入る前に結婚して宇佐美姓になったのよ。でね、ブランドのNYRの意味はね、幼馴染で共同経営者でもある三人の名前の頭文字なんだって。」
「そう、なんだ・・・」
宇佐美姓で捜して見つからない筈だ。
大和はシアンが宇佐美三姉妹の末っ子だと思い込んでたし、俺はショッピングモールで偶然会うまではリアルのシアンに会ったことがなかったから、それを鵜呑みにしてたし。
兄貴の彼女さんからの情報を元に黒峯健吾氏の家族を調べたら、長男で作家の健一氏の子供の欄に長女・宇佐美凪、高校生の長男・黒峯健太の名前が記載されていた。
黒峯健太君は去年の剣道の注目選手として、インターハイを特集したスポーツ雑誌に顔写真とプロフィールが載っていた。
「シアンの完全男版・・・」
多分、二人の写真を並べたら双子の姉弟だと思うだろう。
シアンは儚げだけど、彼からは凛とした生命力を感じる。
シアンはメイクで、健太君とは真逆の雰囲気に化けてるんだろう。
しかも、大和の転校先の学園の生徒会の書記じゃん。
学園の最新のホームページに高等部の生徒会役員の顔写真が載っているのも見つけた。
健太君は黒縁眼鏡をかけていて、さらに雰囲気がシアンからかけ離れている。
眼鏡のチョイス、すげぇな・・・
眼鏡かけただけで、ここまで人相って変わるもんなの?
剣道の胴着着てる時の凛々しい美少年剣士が、鬼畜系の神経質そうな軍人の雰囲気になってんじゃん・・・
文学女子に「鬼畜眼鏡のイケオジ」として大人気の、翻訳家で作家の父親、健一氏にクリソツになってる・・・
「うわっ、、大和に教えてやらないと・・・」
って思ってた時に、大和から電話が着て、
「にいちゃんが、黒峯ってムカつく奴を唯一だってのたまってる! 大変だ!!」
と、騒ぐ騒ぐ。
とりあえず、先に一通り大和の話を聞いた。
聞き終わったあと、まず、こいつにシアンの正体、教えちゃいかんな、って思った。
だって、ヒントはシアン本人である健太君からも、亮輔氏からも与えられてる。
何で気づかないかな?
似てるって、思ったんだよな?
兄弟とか親戚かも?って思ったんだよな?
なんでそこで「本人」かも?って、思わないかな!
雰囲気が、声が違うから、別人だって、思うのも無理ないよ?
鬼畜眼鏡寄りの男子高生が、実は女装して儚げ美少女になってるなんて、ギャップがありすぎて気が付かないのも仕方ない。
でもさ、あの城山亮輔氏が唯一だって、言ってるんだよ?
何年か前の写真誌のインタビューで、「シアンは自分の人生における唯一無二の被写体」って言い切ってたの、大和も一緒に見たじゃん。
それ思い出して、ちょっと考えればさ、わかるじゃん。
大和は認めたくないんだ。
ショッピングモールで、シアンがαで男だって知った時は俺も一緒にビックリしたけれど、大和が愛してやまないシアンの姿だったから、大和は受け入れられたんだ。
でも、生徒会の写真を見ると、普段の健太君には「シアン」の雰囲気の欠片もない。
小さい頃に一度会っただけの、成長段階に関しては写真を通してしかシアンを見ていない大和は、シアンに自分勝手な理想とイメージを持ちすぎた。
偽物は、作り物は「シアン」の方。
健太君を、ホンモノを受け入れられない時点で大和の初恋は終わってる。
だから、俺から引導は渡さない。
自分自身で決着をつけないと意味がないから。
・・・あれぇ・・・王道学園ものより、このネタの方、面白く書けそうなんだけど・・・
大和には悪いけど、俺が劇作家としてのし上がる為に書くわ。
究極のすれ違いラブコメになるんじゃね?
そうだな、俺の脚本の中だけでも大和の初恋は成就させてやろう・・・
お互い誤解して喧嘩ばっかりだけど、実は両片思い・・・
いいね!
そうと決まれば、早速!
俺はノートパソコンでワードを開くと、湧き出てきた文章をキーボードで打ち込みまくった。
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