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高等部 一年目 皐月→水無月 体育祭
080 決起集会 白軍
しおりを挟む**健太視点**
「まいったな・・・」
体育祭の組み分けで、俺も京夜も颯と同じ組になれなかった。
しかも、颯のいる紅組の大将は陽翔だ。
しかも、すばると乾の名前も紅組にあった。
左近と親衛隊と風紀委員の名前も何人かあったから、ガードの方は大丈夫そうだが、颯の精神面が心配だ。
組み分けから数日後、俺は白組の大将にされた京夜と共に参謀の財前に呼び出されて、クラブ棟に向かっていた。
クラブ棟のミーティングルームでは財前と剣道部主将の林原武蔵先輩、白組担当の体育教師で剣道部顧問の藤原良経先生、そして亮輔と演劇部の連中が衣装箱を持ち込んで待っていた。
「健太、お前、応援団長な。」
決定事項のように、良経先生が笑顔で言った。
「応援団長、ですか?」
ちらりと亮輔を見ると、亮輔は
「優勝したら番届の証明書、受理してくれるって!」
と、満面の笑顔でコッソリと耳打ちしてきた。
番届は役所に届を出して受理されれば証明書が発行される。
そして、その証明書のコピーを学園に提出して受理して貰えれば、学園の寄宿舎で同居が可能になる。
俺たちは一応α同士だから、本当ならば番届は出せない。
でも、医師の診断書と、双方の両親の同意書(俺がまだ未成年だから)、念の為に楓叔父さんと、診断書を発行した大学病院の顧問弁護士をしている雪成義兄さんの次兄で陽翔の義兄でもある柊次先生にも同行して貰って、役所には番届を受理して貰えた。
前例があったようで、確認は厳しかったけれど、割とスムーズに受理して貰えた。
でも、学園の事務局からは証明書の受理は保留にされている。
どうやら理事長が嫌だとごねているらしい・・・
あんまり長引くようなら柊次先生にまた出張ってもらわないとダメかなって思ってたところだ。
そう言えば、良経先生って学園の創設者一族の直系で、理事長の従兄弟、だったな・・・
前理事長だった校医の藤原先生夫妻のお子さんで、学園の理事もしてたはずだ。
つまり、証明書を受理する権限&権力持ってる。
番届、受理して貰えれば京夜と颯と同じ番専用の寄宿舎に引っ越しできる。
しかも、颯たちの部屋の隣、空いてるんだよな・・・
「わかりました。応援団長、拝命します。」
「では、衣装、これね。」
「・・・・・・」
そう言って財前が出してきた応援団長の衣装は、セーラー服だった。
紺色に白い白線、白いスカーフ。
ひだスカートの丈は少し長めで上品。
ひと昔前の不良漫画の可憐なヒロインか憧れのマドンナ風のメイクがいいかもしれない。
応援団長だから、白いポンポンでチア風にしようか・・・
髪型はポニーテールかツインか、姫カットか・・・
悩む・・・
「颯には悪いけど、優勝は白組な。京夜、颯に誘惑されて無様な真似したら殺すからな?」
「颯は誘惑なんて、姑息な真似はしないと思うぞ?」
「甘いな!」
「健太?」
「お前、MVPの景品、忘れたのか?」
「景品・・・あっ・・・佐藤甘慈監修スイーツバイキングの回数券か!」
「お前、体育祭終わるまで颯と別居しろ。」
「い、嫌だ!」
「俺は、俺たちはお前が絶対に裏切らない確証が欲しい。」
「なら、MVPは俺が取る。」
「ほう・・・」
「スイーツバイキングの回数券は俺が必ず取る。お前は俺らの隣に引っ越しできて、回数券は俺から颯に渡れば結果オーライだろ? だから、別居は絶対しない!」
「いい、答えだ。」
「あと、引っ越し祝いに颯とお揃いのパジャマ、買ってやる。超、可愛い奴!」
「京夜、もし颯が負けてごねても、俺が取り持ってやるからな!」
「そん時は頼むわ・・・」
**文化部系モブ・視点**
「体育祭、かったり~」
決起集会だかなんだか知らないが、白組のメンバー全員が講堂に集められた。
これだから体育会系の熱血野郎どもは嫌いなんだよ。
円陣でも組んで暑苦しい雄たけびでも上げんのか?
「あ~、女子が恋しい・・・」
「女学院のお嬢さんたちに応援されたいよな。」
「キャーキャー応援されたい。そしたらやる気出る。」
「静粛に、これより白軍の決起集会を始める。」
ステージにマイクを片手に、白い学ランを着た演劇部の財前が現れた。
軍!
組じゃなくて?
もしかして、大将とか、トップの奴ら、ヤバイ系の熱血野郎か?
「白軍大将、狗遠寺京夜。」
魔王降臨かよ!
「副将、林原武蔵。」
剣道部の主将、学園のゴリマッチョ四天王の一人!
名前を呼ばれた風紀委員長と厳つい剣道部の主将がステージに登壇する。
二人の圧がスゲェ・・・
狗遠寺はαだから仕方ないけど、それに勝るとも劣らない圧を持つβの林原・・・
恐すぎ・・・
「参謀は私、財前透が務めます。そして最後に、応援団長・・・」
突然、講堂内が暗くなり、ステージの中心にスポットライトが当たる。
そこに現れたのは、セーラー服を着た黒髪の内巻きボブカットの美少女・・・
いや、待て、ここは男子校、女子がいるわけがない。
つまり、確実に、100%中身は男だ。
それなのに
女子にしか見えない。
『応援団長を拝命しました。私の事はクロエって呼んで下さい。』
声も可憐だ!
『みなさん、一緒に優勝目指して頑張りましょうね。』
「「「「「うおおおおおおおお!!!」」」」」
講堂内に雄たけびが響く。
全員が熱く叫んでいた。
「姫!」
誰かが言った。
「クロエ姫!!」
『私、どうしても白軍に優勝して欲しいんです。だから、優勝した暁には、一番頑張った人にご褒美用意しちゃいます。』
ご褒美って、何だろう?
凄く気になります!
『クロエの手作りのお弁当か、学園祭のミスコンのエスコート役をお願いしちゃおうかな? どっちがご褒美だと頑張れますか?』
「両方!!」
って、おい、何で城山先生が挙手して言ってんだよ?
『もう、先生ったら、先生は競技に出られないじゃないですか。ご褒美は生徒限定ですよ?』
「そうだった・・・くそっ!」
城山先生の悔しがる姿が、本気すぎて引く・・・
「先生、姫の貞操は俺が護ります!」
壇上の林原が城山先生に宣言した。
お前、いつホスト、いや、城山先生の舎弟になりさがったんだ?
「林原、よく言った!」
満足そうに頷く城山先生。
「エスコートは先生に譲りますから、姫の手作り弁当、食いたいです。」
姫の前にまるで騎士のように膝まづく林原。
そんなに黒峯、いや、クロエ姫の手作り弁当が食いたいのか!?
俺だって、食いたい!!
「姫、因みにお弁当は何人まで可能ですか?」
と、財前。
『そうね。一日二人分を5回、つまり、頑張った上位10名様はどうかしら? 教室にクロエが直接お届けしますね。』
上位10名・・・なら、頑張れば手が届くんじゃね?
「俺は姫の忠実な僕です。必ずや優勝に貢献しますから、手作り弁当、お願いします!」
「「「「「俺らも、手作り弁当、お願いします!」」」」」
『ムサシ先輩、みんな、喜んで♡』
俺らに笑顔で快諾するクロエ姫、尊い・・・
クロエ姫が教室に、俺の為に弁当持ってくる・・・
想像しただけで、俺の分身が、滾る!!
ヤバイ!!!
「「「発言、いいですか!」」」
不意に、三年生数人が挙手して立ち上がった。
「あの、もし俺が上位10人に入ったら、あのチャイナドレス、着て届けて貰えませんか?」
『いいですよ♡』
「すんません、俺も、頑張るんで、去年の魔法少女で!」
『うふっ、覚えていてくれて、嬉しい! もちろんOKですよ。』
「じゃあ、俺はあの、メイドさんで!」
『うふふ、喜んで。優勝できたら、上位10名様からのコスプレの御要望には応じますわ。でも、露出が多いのはダメですよ?』
「「「「「うおおおおおおおお!!!」」」」」
「「「「「クロエちゃーん!」」」」」
巻き起こるクロエコール。
そのコールの中にうっかり「クロミネ」が混じってるぞ!
幼稚舎から一緒だった一部の生徒はクロエ姫の正体を知っている。
でも、あえて言わない。教えない。
知っている者たちだけの公然の秘密だ。
「あのっ!」
不意に二年のΩの生徒が立ち上がった。
黒峯の非公認ファンクラブの奴だ。
「僕、僕、上位10名には入れないと思うけど、頑張ります! だから、優勝できたら、あの公認を・・・」
「・・・ファンクラブの公認は認めないよ。」
姫、地声に戻ってますよ!!
「・・・はい、ごめんなさい。」
「でも、お茶会、一回だけならいいよ。」
「ホントですか!?」
「優勝できたら、ファンクラブの子たち、全員、まとめて、一回だけね。」
「はい、ありがとうございます! 頑張ります!!」
姫、敢えて地声でファンサ?
ファンの子たち、感動で涙目だ。
去年のファンクラブのメンバーだった卒業生が色々やらかして、本当だったら親衛隊に格上げだったのに、それが無くなって、公認も外されたんだよな。
今ファンクラブにいる子らは黒峯からの信頼を取り戻そうと必死だ。
でもな~、神月の悪口言ってる奴らもいるから、道は険しいだろうな。
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