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高等部 一年目 皐月→水無月 体育祭
079 決起集会 紅組
しおりを挟む**颯視点**
ケン兄が城山先生と番になった。
電話で報告された夜、不思議な夢を見た。
白い柴犬が大きな柴犬と寄り添っていて、幸せそう。
やっと、一緒になれたんだね。
良かった。
***
休み明けに学園に行くと、体育祭のメンバー表が配布された。
オレは紅組だ。
二年生の名前をチェックしてたら・・・
「うわぁ・・・」
最悪なことに、バ会長の名前が紅組の大将のとこに・・・
そして、京夜とケン兄の名前が無い・・・
なんで?
「番と組離すなんて、横暴だ!」
って、紅組の担当の体育の高木マッチョ先生に食ってかかったら、
「神月、お前、新入生歓迎会で記録作っちまったろ?」
「記録?」
「お前の運動神経が良すぎて、狗遠寺とセットにしたらバランスがとれない。」
「えぇえ~、ならせめてケン兄を寄こしてよ! バ会長とケン兄とれーどー!!」
「変更はできん。」
「ううっ、」
「嘘泣きしても変わらんぞ?」
「くそっ! サボってやる!!」
「優勝したら、デザート食い放題だぞ。」
「・・・え?」
「我が校のOB、スイーツ界の風雲児、佐藤甘慈監修のデザートバイキングの回数券がMVPの景品の一つだ。」
「オレ、やるよ、マッチョ先生・・・!」
「神月、やる気になってくれたか! 先生は嬉しいぞ!!」
「ケン兄と京夜には悪いけど、オレ、絶対優勝してMVPになる!」
「その意気だ!」
「デザートバイキングの回数券はオレが絶対に手に入れる!!」
**大和視点**
俺は体育祭で紅組になった。
亮輔兄ちゃんは白組担当になってしまった。
しかも、黒峯まで白組・・・ムカつく!!
放課後に決起集会?というのをするとかで、体育館に集められたのだが、俺の背後に颯君が何故か隠れている。
「レッド、匿って・・・」
ニ、三年前のシアンにそっくりな、幼さが残る麗しい顔でお願いされた。
可愛い・・・
ブンブンと首を縦に振れば、颯君はにっこりと笑顔を俺に向けてくれた。
「レッド、ありがと。」
あ~、何かシアンに感謝されてるような気分でいい感じ。
そうこうしているうちに決起集会?とやらが始まった。
壇上には転校初日に俺と事故チューしたイケメン生徒会長、事故原因の補佐、副会長、双子の庶務の片割れが立っていた。
「紅組団長、鬼柳院陽翔だ。俺様が団長になったからには優勝しか認めん。皆、全身全霊で挑め。」
「「「「「きゃーーーーーーーー!!!!!」」」」」
生徒会長の親衛隊たちの黄色い歓声が上がる。
五月蠅いなぁ・・・
「副団長を拝命しました、早乙女真琴です。優勝に貢献した上位10名の生徒の皆さんには豪華特典を用意しています。特典目指して頑張って下さいね。」
「「「「「うおーーーーーーーーー!!!!!」」」」」
野太い歓声も上がる・・・五月蠅い・・・
「参謀になった各務左近です。正々堂々、頑張って優勝しようね!」
ほのぼのした参謀の笑顔には皆が惜しみない拍手を送る。
「応援団長になった天野すばる。よろしく。」
最後に応援団長になった補佐の天野が覇気のない様子で挨拶した。
この間の修羅場の影響か?
天野には是非とも黒峯を兄ちゃんから奪って貰いたいのだが・・・
どうしたら・・・
「・・・イガグリめ・・・」
背後から颯君の声・・・
黒峯は従兄弟の颯君をかなり溺愛しているって、クラスの奴らが言ってたな・・・
兄ちゃんから黒峰を引き離すには天野の存在は欠かせない。
だが、今のままでは駄目だ。
颯君が天野を許さない限り、黒峯も天野とは関係を修復しないだろう。
天野に黒峯を引き取って貰うには、まず先に颯君と仲直りさせないと・・・
「颯クン、天野クンと仲直りシナイの?」
「あいつに幼稚舎の時からオヤツ盗られたし、ケン兄と遊んでるとこ邪魔されたし、お昼寝でもケン兄独り占めしようとしたワルイ子・・・」
うわ~、結構根深そうだな・・・
「ホントウのワルイ子はイナイ。ミンナ、ナカマ。真のヒーローは罪ヲ憎ンデ、人ヲ憎マズ、ネ?」
とりあえず、颯君が好きな初代アルファレッドの科白を口にする。
「レッド・・・」
「今スグ無理デモ、颯クン、初代レッドの言葉、忘れナイデ?」
「・・・でも・・・あいつ、ケン兄にケガさせたんだよ?」
「黒峯サン、怒ッテル?」
「・・・怒ってないって言ってた・・・」
「ソウ・・・デモ、颯クン、納得デキテナイ?」
「うん・・・」
「天野クンノ、全部キライ?」
「・・・全部、嫌いってわけじゃない・・・」
「ケンカする前、一緒ニイテ楽シカッタ?」
「・・・楽しかった・・・友達だって思ってた。だから、余計に許せない・・・」
「真のトモ、ミステナイ。」
「・・・真の友?」
「ワルイ事シテモ見捨てないノガ真のトモ。正しい道ヲ示すノ。」
「レッド・・・」
颯君が涙目で俺を見上げる。
可愛すぎない?
シアンと似たいい香りもするし・・・
・・・そういえば、転校初日以来、教室にシアンの香りが無い。
颯君にそれとなく聞いた事もあったけど、ノーコメントを徹底されている。
「オレ、でも、今すぐあいつを許すのは無理・・・」
「ウン。ユックリでイインダヨ? カレも反省スル時間ヒツヨウ。」
本当は今すぐ仲直りして欲しいが、焦りは禁物だ。
確実に関係修復して貰わないと・・・
「うん、ありがとう、レッド。オレ、あいつとの事、ちゃんと考えてみる。」
「颯クン、イイコ。」
思わず、頭を撫でてしまった。
「貴様!」
不意に、壇上から大きな声がしたと思ったら、颯君を撫でていた手を乱暴につかまれた。
「貴様、俺様の颯に馴れ馴れしく触るんじゃない!」
会長が鬼の形相で俺を睨んでる・・・
何?
会長、まさか颯君のことが好きなのか?
「バ会長!、レッドに乱暴するなよ!!」
ペシっと、颯君が会長の手を払ってくれた。
「颯、こんな得体の知れない奴の側にいるんじゃない! お前は俺の番になるんだから!」
「オレは京夜と番なの! バ会長の番には絶対になれないし、なりたくない!!」
「お前は、俺のΩだろうが!」
「俺は京夜のΩだぞ!」
オメガ?
颯君が?
嘘だろ・・・?
でも、なんだろう・・・
不快感が無い。
Ωのあざとさとか、陰湿さが無いからか?
颯君は俺に懐いてるけど、そこに計算とか、媚は一切ない。
俺をキヤマダイスケに重ねて見ているだけだ。
あるのは、純粋な憧憬。
その純粋さが心地いい。
俺には絶対に恋愛感情を向けないだろう安心感がある。
シアンに似ているせいもあるけれど・・・
颯君と友達になりたい。
苦手な筈のΩの男子と友達になりたいと思ったのは初めてだ。
俺は颯君の手を取った。
「逃げよう!」
「うん!」
俺と颯君は手に手を取って駆けだした。
「待て!!」
追いかけようとした会長の前に肉の壁?ができるのを尻目に、俺たちは体育館を飛び出した。
**すばる視点**
颯っちに絶縁されてから、何もかもやる気が起きない。
流されるように体育祭の応援団長に指名されて、決起集会に連れられて挨拶した。
「貴様!」
不意に陽翔が大声を出してステージから降りて行った。
颯っちの頭を撫でている留学生?の腕を掴んでたけど、颯っちにその腕を振りほどかれたようだ。
相変わらず、颯っちを番にすることを諦めてないようだ。
その執念深さに感服する。
そうこうしてるうちに颯っちは留学生?と一緒に手と手を取り合って、仲良く体育館から出て行った。
追いかけようとした陽翔は颯っちの親衛隊のマッチョ軍団に囲まれて、身動きが取れてない。
颯っちは留学生に心からの笑顔を向けていたな。
少し前までは俺にも向けてた笑顔・・・
ううっ、涙出そう・・・
決起集会はなあなあで終わり、俺はステージから降りて教室に向かった。
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