【R18】一匹狼は愛とか恋とか面倒くさい

藍生らぱん

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高等部 一年目 皐月

閑話 シロの運命と約束 前編

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**誰かが見た夢**

不思議な夢を見た。

夢の中で、白い仔犬が大きな犬の首に齧りついていた。

「シロ、咬んでも無駄だよ。」
「どうして?」
「僕には番がいるから。」
「でも、伯父上、ヴィアンカあたし運命オメガでしょ?」
「そうだよ。でもね、僕たちは血が近すぎるし、年だって離れすぎてる。君が大人になった時、僕はお迎えを待つばかりのお爺さんだよ? 君には僕よりも相応しい人がいるから、いい加減諦めて。」
「伯父上はヴィアンカのこと嫌いなの?」
「大好きだよ。でも、僕は番を愛してる。」
「嘘つき。あいつ、浮気者じゃん。」
「僕が子供を産めなかったから仕方ないんだよ。僕は辺境の長として、強い子供がたくさん必要。血族であれば僕の実子でなくても構わないんだ。」
「どうして、あたし、あいつの子供なんだろう。もっと早く産まれたかった。」
「シロは優しいね。僕の為に泣いてくれて、怒ってくれてありがとう。今世は無理だけど、来世でも運命が繋がっていたら、番になろう?」
「約束!」
「うん、約束。シロ、僕を見つけてね。」
「伯父上も、あたしを見つけてくれる?」
「うん、見つけたらずっと側にいるよ。」
「あたし、伯父上を見つけたら咬むから。次は誰かに先を越される前に咬むから。」
「うん、それまで誰にも咬ませないようにするからね。」


**亮輔(10歳~)視点**

目が覚めた時、項に鈍い痛みを感じた。
なんだろうと、確かめるために手を伸ばしたら、健太が俺の項に咬みついたまま寝ていた。
「ふふっ」
生えたばかりの乳歯の犬歯で必死に俺の項に喰らいつく健太が可愛くて、愛しいと思った。

そして健太から香るミルクの匂い、まん丸なほっぺ、ぷくぷくした体が懐かしい、と俺の中の誰かが思った。

「また会えたね、シロ・・・」

誰かが俺の声でそう言った。

そうだ、俺はシロに、健太に会うために生まれてきたんだ。
なんとなく、そう確信した。

咬まれた後は大騒ぎになったけれど、大した怪我でもなかったし、咬み痕はそのうち消えるだろうと、みんな思ってた。
でも、何年経っても咬み痕は消えなかった。

健太は俺の存在を忘れたかのように颯の育児に夢中になっていたし、中等部の寄宿舎に入ったので会えるのは年に数回だけになった。
でも、不思議と颯に嫉妬する事は無かった。
それが当たり前だし、そうでなければ生まれ変わった意味がない、と心の中で誰かが言った。

健太に会えない寂しい日々は、役者の仕事に打ち込むことで紛れた。
俺が出る舞台や映画は必ず観てくれると確信していたから、ワンシーンだけの端役であったとしても全力で演じた。


**誰かが見た夢**

シロは幼年学校から士官学校へ進学した。
長期休みには友人だという同級生の狼獣人の男の子とその弟を連れて帰省したり、彼らの領地に滞在することが増えた。
シロの同級生の親は僕の番の友人だから、僕の番──シロの父親の差し金だろう。

気に入らない・・・
あの兄弟がいつかシロをどこか遠くへ連れ去りそうで怖い。

士官学校を卒業して、軍本部勤務になったシロは、あの兄弟の兄の方と婚約した。
「セイランのこと好きなの?」
そう聞いた僕にシロは静かに首を横に振った。
「婚約したけど、結婚するかどうかは分からない。ただ、周りもあいつも五月蠅いし、もう、面倒で、疲れた。」
「ダメだよ、そんなんじゃ、幸せになれないよ・・・」
「好きな人はいるよ。でも、10も年下なんだ。伯父上があたしを受け入れなかった気持ち、今ならわかる。あの子にとって、あたしは足手まといにしかならない。」
自分から拒んでおいて、シロの言葉に愕然とした。
シロが僕以外の男のものになるのが嫌だと、初めて思った。

それからシロは何年も帰ってこなかった。
隣国との戦争が避けられない時期になった頃、突然、シロは退役して帰ってきた。
「伯父上、匿ってくれない?」
大きなお腹を抱えて、帰ってきたシロ。
「誰の子なの?」
「セイランかエリオスか、どっちの子なのかわからない。婚約解消して、軍も辞めて、あちこち旅してた時に妊娠してるのが判って、悩んだけど、伯父上に会いたくなって、帰って来た。」
「おかえり、シロ。僕の所に帰ってきてくれてありがとう。」
僕はそう言ってシロを優しく抱きしめた。
僕の目が黒いうちはシロもシロの子も護ると誓った。

けれど、その時すでにシロは病魔に侵されていた。
人族が治める隣国が、獣人を根絶やしにしようと開発した生物兵器。
そのウイルスに感染した女性獣人の致死率は特に高かった。
シロが帰ってくる前に、シロの母親である僕の年の離れた妹や、シロの姉妹たちも感染して亡くなっていた。
ワクチンや特効薬はまだ開発途中で、感染したら死を待つだけだ。

産室で冷たくなったシロ。
シロが命懸けで産んだ子も産声を上げることなく逝った。
ワクチンは間に合わなかった。
ワクチンを持って来た若い狼獣人は、シロの亡骸に縋って泣いていた。
シロの子と同じ色をもったその狼獣人はシロと子を弔ったあと、その墓の側で自害して死んでいた。

僕もそろそろ天に召されるだろう。
思いのほか僕は長く生きすぎた。
まさかシロを、シロの子を弔う側になるなんて・・・
シロだけではない。
シロの父親である僕の番も、シロの母親である僕の妹も、他の子供たちもみんな先に逝ってしまった。

神様、どうか来世ではシロと釣り合う年齢に生まれ変わらせて下さい。
シロとシロの子がまた家族になれますように、切に願います。
そして、できれば、あの狼獣人よりも早くシロに会えますように・・・


**亮輔(16歳)視点**

その日は出演していた舞台が休演の日だったから、雪成と一緒に幼稚舎に向かっていた。
幼稚舎はお遊戯会で、俺と雪成は凪にカメラマンを頼まれていた。
葉輔叔父さんから貰ったお下がりのカメラを持って、雪成と二人で寄宿舎を出た。
幼稚舎まではバスで30分。
バスに乗って暫くすると、渋滞に巻き込まれた。
パトカーや救急車のサイレンの音が遠くから聞こえた。

暴走族のバイクや車が数台事故っていて、通れないようだと、乗客は全員バスから降ろされた。

俺と雪成は事故を避けて裏路地を進んだ。
幼稚舎の近所に辿り着いた時、近くの公園で喧嘩をしている悠聖を見かけた。
多勢に無勢ではあったが、高位αの悠聖は難なく相手を蹴散らしていた。
「行こう・・・」
雪成に急かされてその場を無視して歩を進めた。
何気に振り向くと、バイクが悠聖に向かって突っ込んでいった。
「危ない!」
悠聖はバイクをうまく避けたようだ。
それにホッとしていると、バランスを崩して横倒しになったバイクがクルクルと回転しながらこちらに向かって来た。
避けようと思えば避けれた。
それ位の反射神経はある。
でも、避けたらバイクは幼稚舎の正門にぶつかってしまう。
幼稚舎は登園時間で、正門の前には家族連れが何組かいた。
異常事態に気づいた彼らは慌てて逃げ惑う。

「!」

視界の端に健太と颯を庇うように抱きしめる凪の姿が見えた。
そちらへ慌てて駆け寄る雪成の姿も。

バイクを止めることはできないかもしれない。
でも、方向を変えることはできるかもしれない。

「亮輔、よけろ!!」
悠聖の叫び声が聞こえた。

無我夢中で俺は、俺のαとしての力を開放した。


**誰かが見た夢**

大きな川の船着き場に並んで順番を待っていると、白い犬が飛び込んできて、俺は順番待ちの列からはじき出されていた。
「ダメだよ。約束、守って。」
「約束?」
「忘れたの? ずっと側にいてくれるんじゃなかったの?」
そうだ、シロの、健太の側にいなくちゃ!
「帰ろう。シロ、健太のいるところに連れて行ってくれる?」
シロは頷くと、尻尾を嬉しそうに振りながら、俺を先導してくれた。



────────────────────


シロ ヴィアンカの愛称 α 10人兄弟の末っ子 うち同母は4人姉妹 白柴獣人

伯父上 シロの母親の兄 Ω 柴犬獣人 辺境伯 儚げ美人

伯父上の番 シロの父親 α 黒柴獣人 辺境騎士団団長 王族 βの側室(辺境伯の血族)が複数いる

シロの母親 β 辺境伯である兄とは15歳差 シロの父親の側室 柴犬獣人



シロの父親は側室がたくさんいるクズですが、番が一番大好きです。
この世界の男性Ωは出産での致死率が高いので、シロの父親は番の死のリスクを無くす為、子供を産むだけのβの側室を設けましたが、番にはその心情が伝わってません。

側室たちは辺境伯を尊敬してるので、増長することなく、協力しあって子育てしています。

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