まつろわぬ番【完結済・番解除した僕らの末路シリーズ】

藍生らぱん

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まつろわぬ番・裏 V視点

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自分がこんなにもヘタレだったとは思いもしなかった。

季節が変わって夏季休暇になっても、俺とアーサーには何の進展もなかった。

相変わらず、ストーカーのようにアーサーをこっそり見つめるだけの日々。
でも夏季休暇に入ったら、二か月もアーサーを見ることができなくなる。
夏季休暇の大半、アーサーは毎年サマースクールに参加しているという情報を掴んだから、同じサマースクールに申し込みをしておいた。

申し込んではみたけれど、同じ班にも、同じ部屋にもなれず、毎日遠目で見守る日々。
寄宿学校にいる時と全く変わらない。

どうして一歩踏み出せないんだろう?
アーサーの方から来てくれないかな?

俺もアーサーも余計な奴らに囲まれることが多くて、なかなか一人になれない。

毎日毎日、どうでもいいウザイ奴らの面倒を嫌な顔一つせずにこなすアーサーを尊敬する。

アーサーを見るたびに好きになる。
アーサーを見てるだけで幸せな気持ちになる。

結局、サマーキャンプでアーサーとお近づきになることはできなかった。
唯一、収穫があったとすれば、アーサーが仲良くなった日本人留学生と一緒にアップルパイのことを「リンゴパイ」と言って盛り上がっていて、アーサーの好物だと分かったことくらいだ。

アーサーのことで心がいっぱいになっているお陰か、俺の精神状態は良い方向に向かっていた。
性衝動も減ったし、依存傾向も改善されつつある。
特に悪夢を見なくなったことが大きかった。
俺は健全で健康な日々を取り戻しつつあった。


***

「あの、今晩、お部屋に行ってもいいですか?」
夏季休暇が終わり寄宿学校に戻ってすぐ、友人枠のアルファたちと歓談しているところに、俺の性処理の契約相手だったオメガの同級生が話しかけてきた。
「もう来なくていいよ。」
最近は悪夢を見ることも無くなったから、性処理も必要ない。
だから契約していたオメガは、全て契約解除することになっていた。
「え?」
「こっちの都合だから、報酬は契約期間分はきちんと払っとくよ。君の家にも近いうちに通達が届くはずだから。」
「あの・・・」
「なに?」
「誰を番にするか決まったんですか?」
「そうだよ。」
「他の契約してる子ですか?」
「君には関係ないよね。」
「でも、僕は貴方の番候補です。」
「そんなの親同士が勝手に決めたことだよね。それに候補は他にもいっぱいいるし、誰を番にするかは俺に一任されてる。君たちの中から選ぶか、他所で見つけるかは俺の自由。そういう契約だってわかってて俺の相手してたんでしょ?」
「でも、僕は貴方をずっと好きで・・・」
「本気で言ってるの?」
「本気です!」
「ぶはっ!」
オメガの子が、あまりにもおかしなことを真剣な顔で言うから、思わず笑ってしまった。
「俺を好きなんて、見る目ないね。俺のどこが好きなの?」
「かっこいいし、成績も優秀だし、将来だって・・・」
「ああ、君は俺の家が好きなんだね。」
「え?」
「それとも俺の実家と繋がりたい君の親の命令かな? 俺はさ、実家の仕事には関わらないよ。大学出たら普通のサラリーマンになってウサギ小屋に住むから。だから番とは共稼ぎ希望で、子供は嫌いだからいらない。」
「え・・・」
「君は将来、どんな仕事に就くの?」
「仕事・・・?」
「医者? 弁護士? それともハリウッドスター?」
「あの、本気で言ってるんですか?」
「本気だよ。俺、本当はさ、サラリーマンよりもジゴロになりたいんだよね。家事も何もできない浮気者のヒモ男になるけどさ、君、俺を飼う甲斐性はある?」
オメガの子は俺の言葉に真っ青になりながら去って行った。
「うわ~、カワイソウ・・・」
「お前、マジでジゴロとかヒモになる気か?」
静観していた友人枠のアルファたちがケラケラ笑いながら俺に言った。
「サラリーマンとか、マジ笑える。」
「俺、本気だよ?」
「年収10万ポンドのサラリーマンか?」
「いや、月収10万ポンドの予定だけど?」
「ウサギ小屋はペントハウスか?」
「家事とかしなくてもいいようにホテルに住むわ。」
「ぎゃはははは!」
「ちなみに、何のお仕事する気?」
「アルファ用の安全な抑制剤とか避妊薬の研究。」
「え、マジ?」
「自衛は大事でしょ。」
「確かに!」
友人枠のアルファたちは親が貴族とか、上流階級のやつらばかりだ。
常人に比べたら、はるかに恵まれた生活をしているけれど、オメガのヒートトラップとか金目当ての誘拐とか、常に危険と隣り合わせの生活だ。
だからなのか、結構仲間意識は強い。
「俺、将来お前の研究に融資する~」
「俺も~」

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