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まつろわぬ番・裏 V視点
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しおりを挟むアーサーを抱きつぶした後、両手の拘束を解いてアーサーの体を綺麗に拭いた。
そのあと、抱きしめて眠った。
心も体も満たされて、俺はぐっすりと眠った。
けれど、目が覚めた時、アーサーは俺の部屋からいなくなっていた。
週明けの昼休みに学食でアーサーを捜したけれど見つからなくて、たまたま会ったヴァイオリンの奴に聞いてみたら登校していないようだと言われた。
「アーサーに何の用?」
ヴァイオリンの奴―エイベルが怪訝そうに俺を見た。
「ダンスパーティでさ、お友達に薬盛られて具合悪そうにしてたの助けてやったから、心配で。」
「薬?」
「いつもアーサーの側にいるオメガとベータの二人。名前はなんだっけ、ベンジャミンとナイジェルだったかな。」
「嘘だろう・・・?」
「証拠見る?」
「証拠?」
「様子がおかしかったからさ、念のためにスマホで録画してたんだよね。ああ、一応録画のコピーは学校に提出済みだから良くて停学、最悪退学になってるかもね。」
「だから今朝、あの二人、学生課に呼び出されたのか・・・」
「それより、アーサーと連絡とれる? 俺が心配してるって伝えてくれないかな?」
「電話はさっきかけたけど、電源入ってないみたいで繋がらない。」
「SNSは?」
「既読がつかない。」
寝てるのかな?
「・・・部屋に行ってみようかな・・・」
そう俺が呟くと、
「俺も行く!」
とエイベルが言った。
エイベルのその言葉は都合が良かった。
だって、俺、アーサーの部屋がどこなのか知らなかったし。
「じゃあ、放課後に一緒に行こう?」
「わかった。」
放課後になって、俺とエイベルは寄宿舎のアーサーの部屋に向かった。
俺もエイベルもアーサーとは別の棟だったから舎監に面会の申請をするために声をかけた。
「バーンスタインはいないよ。」
「出かけてるんですか?」
「昼に後見人の代理人の弁護士さんが迎えに来てね。しばらくの間休学するって。」
「休学?」
「どうして?」
「個人情報だから理由は教えられないよ。」
「「・・・・・・」」
何だろう、わけもなく焦燥感が募る。
エイベルと別れて部屋に戻った俺は不安感でいっぱいになり、ベッドの上で丸くなった。
1週間過ぎて、停学していたベンジャミンとナイジェルが復帰してもアーサーは帰ってこなかった。
「お前ら、一体アーサーに何したんだよ!」
裏庭に行こうとして通りかかった階段の近くで、エイベルが怒った顔でベンジャミンとナイジェルに詰め寄っているのを見かけた。
高位ではないけれど、それなりに強い部類に入るのか、エイベルの威圧にベンジャミンとナイジェルは顔面が蒼白になっている。
「お前らのせいで、アーサー、退学したんだぞ!!」
退学?
「エイベル、アーサーが退学したって本当?」
俺がそう言いながらエイベルの視界に入ると、エイベルは涙目で頷いた。
「今朝、アーサーの寄宿舎行ったら、舎監が教えてくれたんだ。」
「うそ・・・」
「そんな・・・」
「スマホも解約したみたいで電話は不通だし、SNSも全部、アカウントが無くなってる。」
「うそだ・・・」
ベンジャミンは壁に背をつけてズルズルと座り込んで泣き始めた。
「俺らは薬盛ったけど、それだけで何もしてない。ダンドレジー、お前が何かしたんじゃないのか?」
ナイジェルは獲物を奪った俺を憎しみのこもった目で見据えた。
俺がいなければ最後までアーサーを犯す気だったくせに、よく「何もしていない」なんて言えるなぁ・・・
「責任転嫁はやめろ! ヴィクトールはアーサーを助けてくれたんだぞ!」
「エイベル、お前は鈍いから気づかなかっただろうけど、ダンドレジーはいつもアーサーを見てた。」
「そうだよ。アーサーは綺麗だし、頭もいいし、性格もいいからね。俺のグループに勧誘したいなって思って見てたんだ。」
俺は否定せずに、本心を語った。
「本当にそれだけか?」
ナイジェルが俺に詰め寄ってきた。
ベータのくせにカンがいい。
こいつはきっと、アーサーのこと簡単にはあきらめない。
早々につぶすか・・・
「あの日、薬がなかなか抜けなくて、介抱するのが大変だったよ。睡眠薬だけならまだしも、ラットの促進剤とか・・・お前サイテーだな。」
「うぅっ」
俺の言葉にナイジェルは勢いを失くして項垂れ、泣きだした。
「・・・アーサーが、アーサーが俺の告白断るから・・・」
「告白してたんだ?」
「でも、友達でいようって・・・でも、諦めきれなくて、体からモノにしようと思ったんだっ」
「ナイジェル!」
ナイジェルの言葉に、カッとなったエイベルが拳を振り上げた。
「エイベル、こんなやつ殴る価値ないよ。」
俺はエイベルの振り上げた腕にそっと触れた。
「手と腕は大事にしろよ。ケガしたら演奏ができなくなる。コンクールも近いだろう?」
「でもっ!」
「君の出るコンクール、アーサーはどこにいても絶対見るはずだよ。だから、アーサーのためにも暴力はダメだ。」
エイベルは振り上げた拳をゆっくりと降ろした。
俺はその拳をなんとなく両手で覆った。
アーサーならそうすると思ったから。
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