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まつろわぬ番・裏 V視点
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しおりを挟む実家からフラットまでの帰り道、俺はデパートに寄って綺麗な装飾の写真立てをいくつか買った。
アーサーの調査ファイルの中には写真も何枚か入っていたから、それらを入れて飾るためだ。
アーサーの両親と一緒に映っている、プロのカメラマンが撮ったらしい四つ切サイズのものもあった。
黒猫の仮装をした10歳位のアーサーを抱き上げる狼男に扮装した父親と、魔女の扮装をした母親。
ハロウィンの記念写真なのかもしれない。
あと、イースターの記念写真なのか、カラフルな模様の入った卵がたくさん入った籠を抱えたウサギの着ぐるみパジャマを着た3歳くらいのアーサーの写真もあった。
「可愛い・・・」
他の写真は最近のものらしく、黒縁の太めの四角いフレームの眼鏡をかけた白衣姿のアーサーが写っていた。
「ダサい眼鏡なのに、凄く綺麗だ・・・」
アーサーは病院内にあるカフェで、少年らしき人物と向かい合わせに座って、笑顔を見せている。
少年の方は背を向けているので誰なのかはわからないけれど、髪の毛の色や緩めの癖毛が似ている。
調査によるとアーサーには同じ病院に通院している従兄弟がいるから、その子なのかもしれない。
早く、予約の日にならないかな。
写真の中のアーサーは金茶色の髪で、瞳は青みががった琥珀色が神秘的だった。
形のいい薄いピンク色の唇で俺の名前を読んで欲しい。
もっと側で、近くでアーサーを見てみたい。
***
ようやく予約の日になって、何度も鏡を見て身だしなみのチェックをしていると、珍しくヘンリーが俺のフラットにやってきた。
「トール、担当がバーンスタイン先生になったって本当か?」
「うん、今日これから初めて診察してもらうんだよ。」
「俺の車で送ってやるよ。」
「別にいいよ。一人で行けるし。」
「いや、でも心配だし・・・あ!」
不意にヘンリーが部屋の奥の壁に飾っていた写真の前に向かって行った。
「神よ・・・」
アーサーのハロウィンの、家族で写ってる写真の前でダーッと涙を流し、お祈りの時みたいに両手を組んだヘンリー。
アーサーの亡くなった両親は世界的に有名な伝説のロックバンドのメンバーで、ヘンリーはその熱狂的なファンらしい。
「この写真のコピー、くれないか?」
「ダンテからもらったやつだから、ダンテに聞けばネガとかで焼き増ししてもらえるんじゃない?」
「ダメって断られた・・・」
「・・・じゃあ、ダメだね。」
「お前ばっか、ずるい~」
「予約の時間もあるから、もう行くよ。」
「もう少しだけ見せてくれ~」
「時間無くなる! 置いてくよ?」
「ううぅ・・・」
車で送るだけかと思ったら、何故か付き添おうとするヘンリー。
いい年して付き添い付きとか、恥ずかしいから帰って欲しい。
「ヘンリーは帰りなよ。」
「だって、リチャードとミシェルの息子さんにご挨拶しないと・・・」
モジモジと頬を染めるヘンリー。
絶対、アーサーには会わせたくないなぁ・・・
「・・・・・・」
その時、ヘンリーのスマホが鳴った。
「やば・・・」
ヘンリーが取り出したスマホの画面にはダンテの名前。
随分とタイミングがいい。
「ハロー、ダンテ。どうしたの?」
『お前、俺との約束を破る気か?』
「何のことかな~?」
『・・・・・・』
その時、近くに停まっていた車の後部座席のドアが開いて、ダンテが降りてきた。
「ダンテ、兄さん、何で?」
「今日は健康診断の予約を入れていたからな。」
「え、ズルい!」
「お前は仕事があるだろう?」
「午後からだし・・・」
その時、ダンテが乗ってきた車の助手席からヘンリーのエージェントのガブリエルが降りてきた。
ヘンリーは「トリスタン」という名前でモデルと俳優をしていて、ガブリエルはそのマネージャー兼エージェントをしている小柄な東洋系の女性だ。
「一時間後にカメラテストが入りましたので、お迎えに来ました。」
「何で、場所・・・」
「スマホに迷子アプリ入ってますから。」
「はぁ・・・いつの間に・・・」
ヘンリーはガブリエルに連れられて自分の車の後部座席に乗せられた。
「ダンテ様、同乗させていただきありがとうございます。」
「ああ、そっちは頼む。」
「お任せ下さい。」
ガブリエルは俺とダンテに会釈してヘンリーの車の運転席に乗り込んだ。
ヘンリーの車が走り出すのを見送って、俺とダンテは大学病院の受付に向かった。
「終わったらここで待ち合わせな。ランチを一緒に食べよう。」
「わかった。」
健康診断の予約は本当だったらしく、ダンテは内科の外来の方に向かった。
俺はがん研究センターの外来の方へ向かった。
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