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まつろわぬ番・裏 V視点
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しおりを挟むアーサーの診察は月に1回だけだった。
他の患者は2回とか、3回とか、毎週の人もいるのに・・・
治療状況やがんのステージによって回数が違うのは仕方ない。
俺はステージ1だし、薬も合ったようで副作用も気にならなかったから、診察の回数が増えることは無かった。
だから毎週会える患者が羨ましい。
いや、毎日会える入院患者の方がより一層妬ましい。
そして最初の診察以来、アーサーが俺に会う時は屈強な男性看護師が診察室の中に控えるようになった。
二人きりで会いたいのに、看護師が邪魔すぎる。
他の人に聞かれたくないプライベートな質問ができないじゃないか!
思わずウィルにクレームを入れたけれど、
「殴られたいのか?」
と言われた。
あの看護師は、アーサーが俺に殴り掛からないように、抑止力として配置されているらしい。
俺、本当に何をしたんだ?
どうでもいいと思っていた失くした記憶を、思い出したいと強く願った。
謝って済むことなら謝りたい。
でも、何も覚えていないのに、どうして謝ることができるだろう?
中身のない謝罪してもアーサーには届かない。
心から謝って、許しを請いたい。
けれど、記憶の蓋が開かないまま、治療が終わってしまった。
次に会えるのは、経過観察のための定期検査で半年後だ。
半年後の予約を入れて、何となくロビーのソファーに座って窓ごしに外の景色を見ていた。
「ルイく~ん、1番にどうぞ~」
受付の職員の間延びした声がスピーカーから聞こえた。
「はーい。」
1番という言葉に、診察室の方に目を向けると、診察室に入る少年を出迎えるアーサーが見えた。
アーサーはその少年の頭にキスをし、労わるように中へ・・・
あの少年はただの患者じゃない。
アーサーと親しすぎる。
友達?
まさか、恋人?
いや、そいえば、アーサーの従弟が通院していたはず。
あの少年はアーサーが実の弟のように可愛がっているという従弟に違いない。
きっとそうだ。
アーサーには恋人はいないって調査報告にあったし・・・
頭が痛い・・・
ガンガンと痛み出した頭を抱えて、しばらくの間うずくまっていると、誰かが心配そうに声をかけてきた。
「あの、大丈夫ですか?」
声の主に視線を向けると、そこにはアーサーがいた。
アーサーは心配そうに俺を見ていた。
「看護師さん呼びますね。」
アーサーはそう言って俺に背を向けた。
「行かないで・・・」
俺はアーサーに威圧をぶつけた。
「あ・・・」
アーサーはふらりと体制を崩して転びそうになった。
俺はそれを抱きとめて、ソファーに座らせた。
「アーサー、会いたかった。どうして逃げたの?」
俺の言葉にアーサーは首を横に振った。
「違う・・・僕は・・・」
青い瞳にいっぱい涙をためて、「違う」と首を振るアーサー。
「・・・アーサーだよね?」
違和感を覚えながらも、俺はアーサーを見つめた。
10年前、初めて声をかけられた時と変わらない綺麗な顔、でも、髪の色と目の色が微妙に違う。
髪を染めて、カラコンでも入れたのかな?
あの神秘的な青みがかった琥珀色の瞳がみたいのに、どうして隠しているんだろう?
「ちがう・・・」
「ルイ!」
誰かが俺とアーサーの間に入って、アーサーを抱き上げた。
ダサい眼鏡をかけた青みを帯びた琥珀色の瞳。
「アーサーがふたり・・・?」
いや、違う。
本物はこっち、もう一人はアーサーの従弟だ。
アーサーの従弟ルイは10年前のアーサーにそっくりだった。
髪の色と目の色は微妙に違うけれど、顔はすごく似ていた。
でも、この子のお陰で全部思い出せた。
全部思い出した。
アーサー、俺の運命。
記憶が無いことを利用されて、解除してしまった俺の唯一の番。
「アーサー・・・こんなところにいたんだね。」
もう逃がさない。
どんなことをしてでも必ず手に入れる。
「逃がさない。また逃げたら、わかるよね?」
俺はアーサーの腕の中で震えているルイに視線を向けた。
この子はきっとアーサーの弱点だ。
「大丈夫、これからはベッドで酷いことはしないよ。束縛はするかもだけど、仕事は続けてもいい。」
俺はアーサーとルイを交互に見つめた。
「俺とお前はもう、番じゃない。」
アーサーは苦しそうな顔を俺に向けた。
「また番になれるから大丈夫だよ。でもどうしても嫌って言うなら、代わりにその子、咬んじゃおうかな?」
本気で咬む気は全くないけれど、アーサーの選択肢を狭めるために、あえて弱みをつついてみた。
「は? 何言って・・・」
「アーサーが俺のところへきてくれるなら、アーサーの大事な従弟には何もしないって約束するよ。俺はアーサーさえ傍にいてくれるならそれでいいんだ。」
俺は諭すように、アーサーに微笑みながらそう言った。
「俺はお前が嫌いだ・・・大嫌いだ!」
「うん、でも、俺は愛してるよ。」
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