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まつろわぬ番・裏 V視点
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しおりを挟む愛してる。
俺の言葉にアーサーは悲しそうに顔を歪めた。
その瞳の中の感情はとても複雑そうに見えた。
10年・・・
10年もアーサーのことを忘れていたなんて、信じられない。
でも、ちゃんと思い出せたし、思い出す前にアーサーをまた見つけて好きになった。
もう二度と忘れないし、絶対に離さないから、傍にいて欲しい。
「お前とは友達でもなんでもなかった。話したことだってなかった! なのに何であんなことをしておいて、愛してるなんて言えるんだ?」
「理由なんかない。ただ、アーサーが欲しいだけ。だって、アーサーと俺は運命だから。」
「アルファ同士で運命なんかあるわけないっ!」
『運命の番』にバース性の垣根なんてない。
でなければ『ビッチング』なんてできるはずが無い。
俺には『力』があって、俺が選んだアーサーにはそれを受け入れる『因子』があった。
それ以上の『運命』がこの世にあるだろうか?
「俺が決めたんだ。遺伝子もバース性も関係ない。俺の運命はアーサーだけ。他はいらない。アーサーにも俺じゃない運命は必要ない。だから、ビッチングしたんだ。汚くて卑怯なオメガからアーサーを守るために。」
「そんなの一部だけだ。一生懸命生きていて、優しいオメガもいる。」
アーサーはルイを守ろうと必死だ。
そんなに必死に守らなくても、俺はルイには何もしないよ?
でも、アーサーはそう言っても信じないと思うから、その気持ちを利用するだけだ。
「ああ、その子? アーサーに似てるし、俺の威圧にぷるぷる震えて可愛いよね。」
わざとルイのうなじとアーサーの顔を交互に見つめた。
アーサーはどういう結論を出すのだろう?
諦めて大人しく俺に囲われる?
それとも、また逃げる?
逃げても捕まえるだけ。
今度は時間もかけないし、手段も択ばない。
「ヴィクトール、ちゃんと話をしよう。」
アーサーの言葉に俺は驚いてしまった。
「話? あいつら、俺の話なんか聞かなかった。」
俺を誘拐したやつらは俺が泣きながら「もうやめて」とか「家に帰して」と言っても笑いながら無視した。
番候補だった性処理の相手たちも、自己アピールと要求ばかりで会話にならなかった。
「俺は聞くよ。だから、俺の話も聞いてくれ。」
すがるようなアーサーの声に俺は涙が出そうになった。
「アーサーの話?」
アーサーのことを知りたくて、話したかった寄宿学校の時のことを思い出した。
「ヴィクトール、友達になろう。」
話したくて、友達になりたくて、ずっとアーサーのことばかり見てた。
でも、今は・・・
「俺は番に戻りたい。」
アーサーに触れたい。
もう二度と離れたくないから、一つになりたい。
「だから、友達から始めよう。」
そう言ったアーサーの声は優しかった。
俺を心配して声をかけてくれた時の声と同じだった。
「友達から、始める?」
友達になりたかった。
それから親友になって、恋人に・・・
毎日そう思っていた寄宿学校時代の俺の記憶が想いが心の奥から溢れてきた。
「たくさん、お互いのことを話して、理解して、尊重しあおう。俺は昔、お前にあこがれていた。友達になりたかった。それ以上にもなりたいって思ってた。あんなことをされるまでは・・・なあ、ヴィクトール、お前は、俺がお前を憎んだままで、嫌いなままでいいのか?」
俺は首を横に振った。
「俺は・・・アーサーに俺を好きになってほしいよ・・・」
そして、俺だけを愛して欲しい・・・
「だから、やり直そう。最初から。友達になってくれるか?」
本当に?
本当にやり直せる?
やり直してくれるの?
友達になってくれるの?
「友達になりたい・・・それから恋人になって、番になりたい。」
「俺はまだ、お前が怖い。だから、恋人になれるかどうかは約束できない。一生、友達のままで終わるかもしれない。でも、もう、逃げない。」
「本当に、逃げない?」
「約束する。」
逃げないってアーサーが約束してくれた。
たったそれだけなのに、俺は泣いた。
嬉しくて・・・
許されたわけじゃないのに、少し救われたような気がした。
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