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番外編 番解除した僕らの末路・裏
番解除した僕らの末路・裏 2 V視点
しおりを挟むルイのがんが再発して入院した。
詳しい病状は知らないけれど、俺は時々お見舞いに行って、天気のいい日は散歩に付き合った。
「やっと安定期に入った・・・」
アーサーが久しぶりに俺のフラットに泊った翌日の朝、カレンダーを見ながらそんな言葉をつぶやいた。
「安定期?」
「ああ、ルイが・・・」
「ルイが安定期? 安定期って何?」
「・・・ヴィクトール・・・抱きしめて・・・」
言われた通りに抱きしめると、アーサーは
「ルイ、妊娠してるんだ。」
と言った。
「え? どういうこと? 相手は誰なの?」
まさか、あのサイモンじゃないよね?
「相手は多分、日本人。ルイの運命の番。」
「日本に旅行した時に出会ったってこと?」
「でも、番解除されてる。」
「なんで?」
それから、ルイがアーサーに語った事の顛末を聞いた。
ルイの気持ちもわからなくはないけれど・・・
本当にそれでいいのかな?
***
「妊娠、おめでとう。」
そう言ってルイの病室に入った。
「ありがとう。」
ルイはニコニコと微笑んで、開いていた日記帳を閉じて枕の下に入れた。
俺はベッドわきの椅子に座って、気になってることを聞くことにした。
「投薬止めるって聞いたんだけど・・・」
「うん、赤ちゃんに影響があったら嫌だから。」
「番解除されたのに、産むの?」
不意にルイの笑顔が消えた。
「産むよ。」
ルイはそう言いながら真剣な目で俺を見た。
「投薬を止めたら頭の中の腫瘍が大きくなって、目が見えなくなったり、耳が聞こえなくなるかもしれないよ。」
「うん、知ってる。」
「番に子供のこと知らせないの?」
俺がそう聞いて返ってきた言葉は衝撃的だった。
「もしかしたら、彼、亡くなってるかもしれない。」
「え?」
「夢をみたんだ。彼がタクシーに乗って空港に向かってた。高速道路で対向車が、彼の乗ったタクシーに突っ込んで来た。それで夢から覚めた時、解除されてた。」
ルイの話を聞いて、昔、死に別れで番が自動解除された祖父の話を思い出した。
祖父も番の死に様を夢で見たって言ってた。
「・・・マジか・・・」
「ヴィクトールは、信じてくれるの?」
「俺のおじいちゃんが、大昔、軍人だった番が戦死したの夢で見たって聞いたことあるから。でも、逆夢かもしれないよ?」
「そうかな・・・」
「その夢の話、アーサーとか親に言った?」
「誰にも言ってない。確かめるの怖くて。だから、誰にも言わないで。」
「何で俺に話したの?」
「何でだろう? 話しやすいから?」
「そう?」
ルイが俺の顔を覗き込むように微笑んだ。
ルイは、10年前のアーサーの顔にそっくりだから、ニコニコされると何でもお願いを聞いてあげたくなる。
本当に、綺麗で可愛い。
アーサーたちはルイの意思を尊重して相手の男を捜す素振りもない。
でも、俺は夢の話を聞いて、捜した方がいいんじゃないかと思った。
本当に夢の通りなら、何か形見をルイとルイの子供に持たせてあげたい。
それで、もし生きていて、とんでもないクズ野郎だったら、家の力を使って叩き潰してもいいかな?
それくらいは、してもいいよね?
ルイが子供への手紙を書くというので、何となく介助の真似事をした。
ルイは視力が結構落ちてきているから、書く位置とか教えたり、紙の交換とか。
「ヴィクトール、この子が歩けるようになったら、アーサーと二人で色んな所に連れて行ってくれる?」
書き終わった手紙を三つ折りにしながらルイが言った。
子守か・・・
子供って、苦手なんだよね。
うるさいし、べたべたあちこち触った手で触ってくるから小汚いし。
「ええ~、面倒くさそう。」
俺が正直にそう言うと、ルイはクスクスと笑って、枕の下から出した革製の表紙の日記帳を開けて挟んでいた名刺を取り出した。
中国語?
漢字?がいっぱいで読めないから、誰の名刺かわからない。
でも、その名刺を子供あての封筒の中にルイはさっさと入れて封をしてしまった。
「この子が一緒なら、アーサーとデートできるよ?」
「アーサーとデート・・・」
ルイが入院してから、アーサーは休日返上でルイに付き添ってて、ここ数か月、一緒に出掛けてない・・・
「子持ちデートになるけど、絶対楽しいよ。」
子持ちデート・・・
ルイの子供なら、ルイに、アーサーにそっくりな子かな?
アーサーが、アーサーにそっくりな俺との子供を抱っこしている姿を想像してみた。
いや、実際はアーサーにそっくりなルイの子供か・・・
なんか、いい、かも?
「考えとく・・・」
俺はそう言って病室を後にした。
一瞬だったけれど、名刺の内容は記憶できたし、日記帳の中、名刺と同じページにポストカードが一枚入っているのも見えた。
そのポストカードの絵は人物画で、10歳くらいの少年の絵だった。
俺は実家に帰ると、自室で名刺とポストカードの写しを書いた。
そして、帰宅したダンテを待って、写しを渡した。
「中国語・・・いや、日本語か?」
ダンテは写しをスキャナーにかけて、パソコンで翻訳させた。
「名前はルイ・ミコシバ。帝都大学病院小児科医。」
「ルイと同じ名前だね。」
「知り合いじゃないのか?」
「ルイの元番かもしれない。彼のこと、調べてくれる? 生きてるのか死んでるのか。生きてたらどんな奴か調べて欲しい。」
「? どういうことだ?」
俺はアーサーやルイから聞いた話を簡単に説明した。
「名前と勤め先がわかっているし、すぐにわかるだろう。」
「お願いね。」
一週間後、調査の結果が届いた。
「事故で心停止、蘇生・・・」
ルイが話した夢の通り、ルイの番は事故にあっていた。
しかもルイを追いかけて、イギリスに渡航しようと空港に向かっている最中だった。
そして、救急搬送された病院で一度心停止し、数分後に蘇生していた。
「距離が離れすぎてた影響もあって解除されたんだろうな。」
「仕事辞めてリハビリ中って、治ったらこっちに来るかな?」
「来るつもりらしいぞ。驚異的な回復力で、一年はかかると言われていたリハビリも半年で終わりそうだと報告にもある。」
「そうか・・・」
報告を見る限り、ルイ・ミコシバは有能な小児科医だし、人柄も良さそうだ。
会わせてみる?
でも、アーサーに黙って勝手に会わせるのはまずいよね。
「ありがとう、ダンテ。アーサーと話し合ってみる。」
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