【死に戻りのひねくれ白狐はそれでも比翼連理の伴侶が欲しい】

清白(すずしろ)

文字の大きさ
7 / 12

「いいよー!」

しおりを挟む
.




 拍子抜けするほど、彼等の返事はあっさりしていた。
 きょとんとしてた千種ちぐさが瞳を瞬かせる。

「え…。いいのか…? 本当に?」
「「「「うん!いいよー!」」」」

 確認に対する返事はやはり変わらない。

 遊んでと自分を引き止めるちいさな下位の聖獣達に、千種が尋ねたのは上位の聖獣である自分が彼等の領域とも呼べる森のこの場所で、共に過ごしても良いかと言うこと。

 内心恐る恐る…。
 断られてしまったら何処に行けばいいのかと、そんな恐怖にも似た感情を抱きながら聞いたのだが、結果は快諾であった。

 千種としては…ありがたい。
 …の、だが、心配にもなる。

(そんな簡単に…躊躇いもなく“いいよ”って…、……良いのか?)

 自分の上に太々しく乗っかるちびっこ達をどかし、千種が面布の下でなんとも言えない表情になる。

「おい…」
「なあにー?」
「一緒に過ごさせて欲しいと言ったのは確かにぼくの方だが、もしもぼくが意地の悪い聖獣……おまえ達にとって害をなすような存在だったらどうする。もっと慎重になるべきじゃないのか?こう言うことは…普通」
「ちくたたま、ワタシたちいじめるの…?」
「ぼくがおまえ達にそんなことするか!…今のは例えばの話だ。それに…」
「それにー?」
「なぁにー?」
「…ぼくだって、おまえ達にとっては実は良い奴とは限らないだろう。急に態度を豹変させて、力を誇示して威張って命令しまくるかも知れないし、顎でこき使うようになるかも知れないじゃないか」
「ちくたたまはだいじょーぶ~」
「だってつよそうにみえないしー!」
「んなっ…!?」

 その通りではあるがズバッと言われるとグサリと胸に刺さるものがある。

「それにね、わるそうなせいじゅーにはみえないもーん」
「ほんとうにわるいせいじゅーは、そんなことわざわざいわないしー」
「!」
「ボクたちそーゆーはもってるんだよ~?」
「え?」
「ちっちゃくてぇ、かわいくてぇ、かよわいから、「「「ねー!」」」」
「わるそうなせいじゅーには、オレたちさいしょからちかよったりしないんだー」
「だまそうとしてもみやぶれるよぉ!」
「ボクたち、かしこいから♪」
「ねー!」
「「「「ねー♪!」」」」

 弱者が故の自衛本能とでも言うのだろうか。
 だから一度目の時も、害が無い相手と判断したから、彼等は千種に友好的に接してくれていたのだろうか。

 ………わからない。
 けれど、にこにこご機嫌な彼等を前にの姿が重なる。

 …─⁠─⁠大勢の聖獣達から嫌われ、好きになった『片割れ』からも疎まれ、身の置き場を失くした千種を何も言わず置いてくれた、『あの彼等』の姿が。

「だからだいじょーぶ!」
「ちくたたまは、むがーい!」
「へいきなのー!」

「おまえ達…」

 ぴょんぴょん飛び跳ねながら言葉を紡ぐ彼等に、何かジン─⁠とした温かなものが千種の胸の内に広がる。
 それは、千種にとって今まで一度も感じたことのない不思議な感覚だった。
 擽ったいような、泣きたいような、わけのわからない胸の疼きに、そっと衣の上からそこを押さえた時だった。

「それにそれに!」
「ん…?」

「「「「ちくたたまは、みためからしてよわそうだから{ボク・ワタシ・オレ}たちでも、へっちゃらだよー!!」」」」

「は、はぁああああっ!?」

 可愛い見た目とは裏腹な生意気且つ辛辣な言葉に、流石に千種の眦もつり上がると言うもの。
 感動を台無しにする余計過ぎる一言に先程まで確かにあった千種の感謝の気持ちもどこへやら、彼がまたちいさな下位の聖獣達を怒りのままに追い掛け回し始めた。

「誰が弱そうだ!本当に失礼な奴らめ!」
「きゃー!」
「おこったー!ちくたたまがおこったのー♪!」
「にっげろ~♪」
「待て、このちび共めっ!」
「やだもーんねー♪」
「わーい!おいかけっこー!」

 ちいさな彼等の逃げ足はやはり実に早かった。
 大騒ぎでちょこまか逃げ回る彼等を捕まえようと躍起になるが、飛んだり跳ねたり茂みに逃げ込んだりと小さな体の利を生かし、軽々楽々躱される。

 白い衣の裾を翻し袖を靡かせ追い掛ける千種ちぐさは、あっちへ行ったりこっちへ行ったりと完全にちいさな聖獣達に遊ばれていた。

 結局、先程同様ちび聖獣達を大いに楽しませただけで…。
 右往左往させられた千種はただただ疲れただけだった。
 その後へばった千種の体や尻尾を勝手に枕にし、みんなで仲良く一眠りし始められたのには…もう怒る気にもなれなかった。

(…まあ、いいか)





『ちくたたまー』

『しっぽかしてー!』

『まくらー』

『オレたちねむいのー』

『いっしょにねよー!』





(こんなの………、…ふふっ、これくらい、ぼくにはずっと、慣れっこだったしな)

 思い出したに千種がそっと、面布の下で頬を緩めた。



【2025.09.16】
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ

MITARASI_
BL
I 彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 Ⅱ 高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。  別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。  未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。  恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。  そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。  過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。  不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。  それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。  高校編のその先を描く大学生活編。  選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。 続編執筆中

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...