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119 抹茶ラテ
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「ごめんね。一目で気づけなくて」
アリリアナと一緒にシャワーを浴びて、眠気をすっかり洗い流すと、遊びに来てくれたセンカさんと一緒に馬車のお金を支払いに行くことにした。
「いや、構わない。急に来た私も悪いしな。オオルバさんが上がっていいと言ってくれたんだが、ノックくらいはするべきだった」
「センカって意外とおっちょこちょいな感じよね」
「誰のせいだ。毎回お前の家に掃除に行ってたので、つい同じ感覚で入ってしまったんだ。本当にすまなかったな、ドロシー」
「う、ううん。全然気にしなくていいよ。尋ねてくれるのは嬉しいし、ほんと、気にしないで」
むしろ友達がいなかった時と比べると、こんな会話が出来てる時点ですっごく嬉しい。いきなりだとちょっと驚くこともあるけど、それだってアリアの悪戯に比べたら可愛いものだし。
「それよりセンカさん、今日は用事があったりするの?」
「いや、久しぶりの非番だが、どうしてだ?」
「えっと、その、すごいお洒落してるから」
センカさんはいつも兵士さんのキッチリした制服姿か、あるいは胸当てなどの簡易な防具を身につけてるけど、今日のセンカさんはそんな姿からは程遠い、なんていうか、今からパーティに参加してもおかしくない凄く綺麗な格好をしてる。
「センカ、休日はいつもバッチシ決める感じだもんね。普段とギャップありすぎて、見慣れてなければ私でも分かんないかも」
「そこまでか? 私としては気に入ってるんだが」
ちょっと困ったような顔で自身の服装を見下ろすセンカさん。その言動に家を飛び出して初めて短いスカートを穿いた時のことを思い出して、ドキリとした。
「別に変とかじゃないよ? ううん。すっごく似合ってる。まるで空想絵巻に出てくる深窓の令嬢みたいだよ」
「ありがとう。だがドロシーに深窓の令嬢と言われると変な感じだな」
「? どうして?」
「その言葉は私なんかよりもドロシーの方がずっと似合うだろう? 実際名家の出なわけだし」
「そう、かな?」
確かにウチは歴史だけはあるけど、この場合はイメージの問題であって、自分が深窓の令嬢と言われても全然ピンとこない。
「ねぇねぇ。そんなことよりもさ、私まだちょっと眠いからコーヒー飲んでかない?」
「私は構わないぞ」
足を止めた二人が揃って私を見る。
「う、うん。私も全然構わないよ」
「じゃあ決まり。ちょうど『キャット』の近くだし、久しぶりにナオさんのコーヒー飲んじゃおっと」
「本当に好きだな」
「と~ぜんでしょ。徹夜明けのコーヒーほど素晴らしい飲み物はない感じなんだから」
そう言うアリリアナの瞼は昨日寝てないだけあって重たそう。私は学生時代散々徹夜したから一日くらい寝なくても全然平気だけど、アリリアナ、大丈夫かな?
睡眠不足のアリリアナが転けたりしないかハラハラしている内に、看板にコーヒーカップを眺める帽子を被った黒猫が描かれている喫茶店へと到着した。
「いらっしゃいませ。あら、久しぶりじゃない」
お店に入るとセンカさんと同じ艶やかな黒髪をショートカットにした美女が出迎えてくれた。化粧をバッチリ決めたセンカさんは何処からどう見ても大人の女性だけど、ナオさんの場合は両耳で光るピアスが大人感をすごく引き出してる。
「アハハ。すみません、ちょっと色々あって」
「旅館の仕事辞めて冒険者になったんだって? アンタらしいって言えばらしいけど、また思い切ったわよね」
「いや~。職場の先輩と話しているうちにやってみたくなっちゃって」
「普通は思うだけなんだけどね。大丈夫なの? 冒険者って危ない仕事なんでしょ?」
「心配ご無用です。私のクランにはすっごい人が沢山いますから。彼女とか」
そう言ってアリリアナが私の肩に腕を回してくる。
「わ。私は別に凄くなんか……」
「そういや、伝達絵巻見たよ。姉妹揃ってS指定の魔物を倒したんだって? すごいじゃない」
「いえ、あれはみんなで倒したのであって、私一人の力じゃ無理でした」
お父様の指示だと思うんだけど、伝達絵巻の内容が作為的で、あの内容じゃあ誰だって私とアリアがそれぞれ単独でS指定の魔物を倒したと誤解するよね。
「ふーん。なんでもいいけど、アリリアナの事よろしくね。ドロシーさんと違ってアリリアナは強い魔物と遭遇するとすぐにやられちゃいそうだから心配で」
「あっ、はい。任せてください」
アリリアナは勿論、クランの皆に万が一がないよう、もっと魔法の勉強頑張らなくっちゃ。
「いやいや。私も最近すごい魔法覚えたんで、結構レベルアップしてる感じなんで」
「例の糸を使った魔法のことか? 良かったら後でどんなものか見せてくれないか?」
「いいわよ。ってか、簡単なものならここでも見せられる感じだし」
アリリアナはアマギさんに貰ったグローブを取り出す。
もしかしてここで魔法使う気なのかな? ナオさんは特に何も言わないし、時間帯の関係で店内にお客さんは殆どいないけど、流石に迷惑なんじゃ……。
「ね、ねぇ、それよりも一先ず席に座らないかな?」
「ん~? ……確かに。じゃ、ナオさん。いつものをお願いします。あっ、サラダは抜きで」
「はいよ。二人は?」
「あっ、私もいつもので」
「私は……そうだな。抹茶ラテをお願いします」
抹茶ラテ? そんなのもあるんだ。新作なのかな? ナオさんが私のお気に入りを覚えてくれたのが嬉しくて最近あまりメニュー見てなかった。私もそっちにしようかな。でももう注文しちゃったし。そもそも抹茶ラテってなに? 抹茶にミルクが入ってるの? そんなの合うのかな? ……合いそう。飲んでみたい。
「はい。承りました。直ぐに持ってくるから、好きな席に座って待っててよ」
変更しようかなって悩んでいる間にナオさんは行ってしまった。
ハァ。こういう時、直ぐに言い出せない自分が情けない。
「それじゃあその辺の席にでも……ドロシー? どうかしたのか?」
「う、ううん。何でもないの」
次に来た時は絶対に抹茶ラテを頼もう。そう決心しながら私は席についた。
アリリアナと一緒にシャワーを浴びて、眠気をすっかり洗い流すと、遊びに来てくれたセンカさんと一緒に馬車のお金を支払いに行くことにした。
「いや、構わない。急に来た私も悪いしな。オオルバさんが上がっていいと言ってくれたんだが、ノックくらいはするべきだった」
「センカって意外とおっちょこちょいな感じよね」
「誰のせいだ。毎回お前の家に掃除に行ってたので、つい同じ感覚で入ってしまったんだ。本当にすまなかったな、ドロシー」
「う、ううん。全然気にしなくていいよ。尋ねてくれるのは嬉しいし、ほんと、気にしないで」
むしろ友達がいなかった時と比べると、こんな会話が出来てる時点ですっごく嬉しい。いきなりだとちょっと驚くこともあるけど、それだってアリアの悪戯に比べたら可愛いものだし。
「それよりセンカさん、今日は用事があったりするの?」
「いや、久しぶりの非番だが、どうしてだ?」
「えっと、その、すごいお洒落してるから」
センカさんはいつも兵士さんのキッチリした制服姿か、あるいは胸当てなどの簡易な防具を身につけてるけど、今日のセンカさんはそんな姿からは程遠い、なんていうか、今からパーティに参加してもおかしくない凄く綺麗な格好をしてる。
「センカ、休日はいつもバッチシ決める感じだもんね。普段とギャップありすぎて、見慣れてなければ私でも分かんないかも」
「そこまでか? 私としては気に入ってるんだが」
ちょっと困ったような顔で自身の服装を見下ろすセンカさん。その言動に家を飛び出して初めて短いスカートを穿いた時のことを思い出して、ドキリとした。
「別に変とかじゃないよ? ううん。すっごく似合ってる。まるで空想絵巻に出てくる深窓の令嬢みたいだよ」
「ありがとう。だがドロシーに深窓の令嬢と言われると変な感じだな」
「? どうして?」
「その言葉は私なんかよりもドロシーの方がずっと似合うだろう? 実際名家の出なわけだし」
「そう、かな?」
確かにウチは歴史だけはあるけど、この場合はイメージの問題であって、自分が深窓の令嬢と言われても全然ピンとこない。
「ねぇねぇ。そんなことよりもさ、私まだちょっと眠いからコーヒー飲んでかない?」
「私は構わないぞ」
足を止めた二人が揃って私を見る。
「う、うん。私も全然構わないよ」
「じゃあ決まり。ちょうど『キャット』の近くだし、久しぶりにナオさんのコーヒー飲んじゃおっと」
「本当に好きだな」
「と~ぜんでしょ。徹夜明けのコーヒーほど素晴らしい飲み物はない感じなんだから」
そう言うアリリアナの瞼は昨日寝てないだけあって重たそう。私は学生時代散々徹夜したから一日くらい寝なくても全然平気だけど、アリリアナ、大丈夫かな?
睡眠不足のアリリアナが転けたりしないかハラハラしている内に、看板にコーヒーカップを眺める帽子を被った黒猫が描かれている喫茶店へと到着した。
「いらっしゃいませ。あら、久しぶりじゃない」
お店に入るとセンカさんと同じ艶やかな黒髪をショートカットにした美女が出迎えてくれた。化粧をバッチリ決めたセンカさんは何処からどう見ても大人の女性だけど、ナオさんの場合は両耳で光るピアスが大人感をすごく引き出してる。
「アハハ。すみません、ちょっと色々あって」
「旅館の仕事辞めて冒険者になったんだって? アンタらしいって言えばらしいけど、また思い切ったわよね」
「いや~。職場の先輩と話しているうちにやってみたくなっちゃって」
「普通は思うだけなんだけどね。大丈夫なの? 冒険者って危ない仕事なんでしょ?」
「心配ご無用です。私のクランにはすっごい人が沢山いますから。彼女とか」
そう言ってアリリアナが私の肩に腕を回してくる。
「わ。私は別に凄くなんか……」
「そういや、伝達絵巻見たよ。姉妹揃ってS指定の魔物を倒したんだって? すごいじゃない」
「いえ、あれはみんなで倒したのであって、私一人の力じゃ無理でした」
お父様の指示だと思うんだけど、伝達絵巻の内容が作為的で、あの内容じゃあ誰だって私とアリアがそれぞれ単独でS指定の魔物を倒したと誤解するよね。
「ふーん。なんでもいいけど、アリリアナの事よろしくね。ドロシーさんと違ってアリリアナは強い魔物と遭遇するとすぐにやられちゃいそうだから心配で」
「あっ、はい。任せてください」
アリリアナは勿論、クランの皆に万が一がないよう、もっと魔法の勉強頑張らなくっちゃ。
「いやいや。私も最近すごい魔法覚えたんで、結構レベルアップしてる感じなんで」
「例の糸を使った魔法のことか? 良かったら後でどんなものか見せてくれないか?」
「いいわよ。ってか、簡単なものならここでも見せられる感じだし」
アリリアナはアマギさんに貰ったグローブを取り出す。
もしかしてここで魔法使う気なのかな? ナオさんは特に何も言わないし、時間帯の関係で店内にお客さんは殆どいないけど、流石に迷惑なんじゃ……。
「ね、ねぇ、それよりも一先ず席に座らないかな?」
「ん~? ……確かに。じゃ、ナオさん。いつものをお願いします。あっ、サラダは抜きで」
「はいよ。二人は?」
「あっ、私もいつもので」
「私は……そうだな。抹茶ラテをお願いします」
抹茶ラテ? そんなのもあるんだ。新作なのかな? ナオさんが私のお気に入りを覚えてくれたのが嬉しくて最近あまりメニュー見てなかった。私もそっちにしようかな。でももう注文しちゃったし。そもそも抹茶ラテってなに? 抹茶にミルクが入ってるの? そんなの合うのかな? ……合いそう。飲んでみたい。
「はい。承りました。直ぐに持ってくるから、好きな席に座って待っててよ」
変更しようかなって悩んでいる間にナオさんは行ってしまった。
ハァ。こういう時、直ぐに言い出せない自分が情けない。
「それじゃあその辺の席にでも……ドロシー? どうかしたのか?」
「う、ううん。何でもないの」
次に来た時は絶対に抹茶ラテを頼もう。そう決心しながら私は席についた。
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