婚約者の地位? 天才な妹に勝てない私は婚約破棄して自由に生きます

名無しの夜

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125 お昼選択

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「ごめーん。ほんと、ごめーん。許してドロシー」
「別に怒ってないよ。どのみちあの馬車にするつもりだったでしょ」

 私に抱きついて、珍しく反省しているふうなアリリアナの頭を撫でてみる。さっきも思ったけど、こういう時のアリリアナ、猫みたいで可愛い。首の下撫でたら怒るかな?

「ほんと? 何でこいつ陸で船長気取りなんだ? とか思ってない感じ?」
「そんなこと思ってないよ」

 まぁ、船長はどこから出てきたんだろ? とは思ったけど。

「ドロシー、愛してるぅ~」
「わわっ!?」

 私の体に回ってる腕に力が入ってちょっと苦しい。

「本当にすまなかった。お詫びとして今日の昼はご馳走させてくれ。何か食べたいものはあるか?」
「そんな、わるいよ。本当に気にしなくていいからね」

 馬車には衝撃拡散の術式もあって、あの程度の衝撃では傷や凹みは出来ない。たとえ出来たとしても冒険に使うつもりなのだから、遅いか早いかの違いでしかない。

「いや、周囲に人がいないからといってアリリアナに操作を促した私にも原因はある。お昼くらい大した額じゃないんだ。奢らせてくれ」
「そう? それじゃあ……」

 ここまで言われて断るのも悪いよね。でも……う~ん。改まって何を食べたいかと聞かれたらすぐには出てこないかも。

「はいはーい。お寿司! お寿司が食べたいでーす」
「お前がリクエストしてどうする。むしろお前は聞く側だろ」
「あの、センカさん。センカさんが嫌でなければお寿司でお願いしたいんだけど」
「む? それは構わないが……いいのか?」
「うん。久しぶりに食べてみたいし」

 本当言うと生のお肉ってちょっと苦手。お寿司も美味しいとは思うけど、食べてると火を通したくなるから、積極的に食べたいとは思わない。だけどーー

「やり~! お寿司♪ お寿司♪ 久しぶりのお寿司♪」

 アリリアナが嬉しそうだから、まぁいいか。

「あっ、そうだ。ねぇねぇ、どうせならさ、魔物寿司行ってみない?」
「ああ、ギルド街に出来たという。……いいんじゃないか? 気になっていたし、私もその内行こうと思っていたんだ」
「えっ!?」
「ん? どうした、ドロシー」
「う、ううん。なんでもないよ」

 ま、魔物寿司? 何それ? ひょっとしてお魚の代わりに魔物のお肉使ってるのかな? ……生で? いや~!! そんなお店行きたくない!

「それじゃあお昼はギルド街の魔物寿司と言うことでいいな?」
「異議なーし」
「う、うん。良いんじゃないかな」

 は~。何でこういう時、素直に普通のお店が良いって言えないんだろ。でもせっかく二人が楽しそうなのに水差したくないし。そ、それにお寿司屋さんなら普通のお魚だってあるよね? うん。絶対ある。あるに決まってる。

「それじゃあどうする? 昼にはまだ早いし、馬車の納品に立ち会うか? 確かメルルの屋敷に置くという話だったか?」
「そうだね。メルルさんは無理して立ち会わなくて良いって言ってくれたけど、私達が使うものだし、やっぱり立ち会うべきだと……」

 あっ、そう言えば……。

「ん? どうかしたのか、ドロシー」
「いや、その、お父様にも一応お礼言った方がいいのかな?」

 値段は怖くて聞けなかったけど、馬車に使われている素材や組み込まれている術式から考えるに、多分私が今持ってるお金が綺麗に吹き飛ぶくらいの金額にはなってると思う。

「普通ならお礼を言っておく感じだとは思うけど、親子だし、ドロシーパパが勝手にやったことだし、ドロシーが嫌なら無理して会いに行く必要ないんじゃない?」
「すまないドロシー。私が口を出すことではないと思うので、その質問には答えられない」
「う、ううん。気にしないで」

 確かにこれは私とお父様の私的な問題だし、センカさんにとってお父様は上司だし、聞かれても困るよね。でも、本当どうしよう? アリリアナの言う通り無理して会う必要は無いと思う。思うけど、お父様と疎遠になるとアリアに会うのも難しくなるのよね。

 私が屋敷を出たせいで、ドロテア家の重責を一身に背負うことになった妹の姿が浮かぶ。

「ありゃ。ドロシーが本日三回目の落ち込みドロシーになったんだけど、センカが固いこと言うからよ」
「落ち込んでるわけじゃなくて、考え込んでるだけじゃないか? しかし凄い集中力だな。私達の声が完全に聞こえてないぞ」
「ふっふっふ。それだけじゃないのよ。こうなったドロシーはちょっと触ったくらいじゃ気付かない感じなんだから」
「なんだと? いくら何でも触れたら気付くだろ」
「そう思うじゃん? 見ててよ」

 いや、まぁ、私が家を出なくても、お父様はアリアを後継に選んだろうからあまり変わらないんだけど、でもゲルド王子との件もあるし、まったく関わらないと言うのも冷たいかな?

「ね? ね? 凄くない? 頰をプニプニしても気づいてない感じよ」
「まさか。本当に? 二人で私のことを担いでるんじゃないだろうな」
「そう思うならセンカも触ってみればいいじゃん。ドロシーの頰、スッゴイスベスベなんだから」
「ほう。それは興味深いな。どれーー」
「う~……だめだ! 気になる」
「わっ!?」
「おっ!?」

 今更貴族の地位なんてどうでもいいし、家を出た以上、お父様と疎遠になっても仕方ないけど、アリアが学校を卒業して自分の道を選ぶまでは、最低限の関わりは維持しておこう。……あの天才には必要のない心配だとは思うけど。

「ごめん二人とも。やっぱりお父様に馬車のお礼を言いに行ってくるから、二人は先に……どうかしたの?」

 アリリアナとセンカさんは何でかは分からないけど、ビックリしたと言わんばかりの表情で私を見てる。

「あ~。いや、ドロシーの無警戒ぶりが心配になって」
「確かにな。我々王国兵士が目を光らせているとは言っても性犯罪がゼロというわけじゃないんだ。街中だからと気を抜かずにもっと警戒心をもった方がいいぞ」
「う、うん?」

 突然どうしたんだろ? そういえばオオルバさんにも似たようなことを言われたような?

「えっと……」
「ああ、すまない。ジオルド様に会いに行くのだったな。了解だ。馬車の立ち合いは任せろ」
「私はついてってあげようか? ドロシーパパにも興味ある感じだし」
「ありがとう。でもお礼を言ったら直ぐに屋敷を出るつもりだから、大丈夫だよ」

 顔繋ぎとはちょっと違うけど、こう言うきっかけでもないとお父様と話す機会もないし、丁度良いと言えば丁度良いのかもしれない。

「りょ~かい。それじゃあメルルの屋敷で待ってるからね」
「うん。じゃあ後でね」

 そして私は二人と別れて、ドロテアの屋敷へと足を向けた。

 
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