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124 馬車
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「おおっ!? 何々? 予想以上の広さなんですけど」
「わっ、本当だ」
アリリアナに続いて馬車の中に入る。馬車の大きさは外から見たら四人乗りで、後は荷物を少し載せられるくらいに見えたけど、実際に入ってみるとかなり広くて、数週間分の荷物を置いても八人が普通に寛げるくらいある。
「あの、これって空間魔法が?」
「左様です。他にも外部の温度に反応して発動する平温維持の魔法が掛かっており、どの国、どの季節でも、快適にお過ごし頂けます。また重量に応じて発動する軽量化の魔法、馬車への攻撃を緩和させる拡散魔法など多種多様な術式が組み込まれております」
「ちょっとセンカ、この椅子超フカフカなんですけど」
「私は椅子は硬めの方が好きなんだが……むっ。なるほど。確かにいいな」
「でしょ~。ほら、ドロシーもおいでよ。すっごい良い感じよ」
「う、うん。ちょっと待ってね。あの、空間拡張の術式についてですが、スペルアウトの対策について伺っても?」
常時展開型の魔法は何かの拍子で意図せずに破れた時が怖い。空間魔法を用いた収納袋や建築物は大勢の魔法使いが昔から改良し続けているけど、狭い空間を魔法で無理に広げた結果、術式崩壊、つまりはスペルアウトで悲惨な結果になった例は枚挙にいとまがない。
「スペルアウトの際には術式が崩壊する際の魔力を応用して壁四枚に組み込まれた魔銀が伸びて、馬車の大きさを空間拡張時と同等のモノへと変えます。ですので駐車の際には左右に三メートル、可能であれば五メートルの間隔をお開けください」
「あれ? 何でこの席だけ一つ寂しく前にある感じなわけ?」
「ひょっとして魔動車としての機能も備えてるんじゃないのか? ほら、ここの壁、術式があるぞ」
「うっそ? じゃあシロ達に引いてもらわなくても魔力で動いちゃうわけ? 便利すぎでしょ」
「確かに便利ではあるが、魔動車自体は長距離の移動には向いてないからな。冒険が目的ならやはり普段は馬車として使用するのが一番だろ」
「まぁ、それはね。でも利便性うんぬん以前に魔動車って一回運転してみたかったのよね。だから超ラッキー」
「一部の好事家を除けば貴族くらいしか持ってないからな。確かに中々ない機会ではある」
「でしょ? ねぇねぇ、ドロシー。これ見て、凄いのがある感じよ」
「え? うん。もうちょっと待って」
このままこの馬車で決まりそうだけど、その前によく確認しておかなきゃ。ないとは思うけど、王子と婚約破棄したことをお父様が根に持ってて、この馬車に嫌がらせ目的の仕掛けがあったら大変。私とお父様の確執にアリリアナ達は絶対巻き込めない。
「あの、スペルボードは何処ですか?」
馬車自体はしっかりとした作りになってるし、これで術式を統括管理するスペルボードに問題がなければ一安心だ。
「こちらでございます。それとこの指輪をお付けください。馬車の術式を管理するマスターキーでございます」
馬車の一番後ろへと移動する最中、私は店主さんから魔法文字が細かく刻み込まれた指輪を受け取った。
「魔力を込めてオープンと言えばスペルボードが浮かび上がります」
「オープン」
馬車の壁に魔法文字が浮かび上がる。
「スペルコードはM言語で構成されてるんだ。……あっ、ウチのもある」
魔法文字の配列方法として今大陸で最も使われてるのがM言語だけど、お父様はドロテア家独自のD言語を昔からあの手この手で広めようとしている。
「ぬが~。やっぱ動かない感じ」
「だから言ったろ。キー無しでは魔力を流し込めない仕様になってるんだ」
「でもそれだとキー無くした時に不便じゃない? それにこの反応式……なんかいける気がするのよね。ここをこうして、こう? いや……こうか!?」
「おおっ!? 凄いな。魔力が通ったぞ」
「ふふん。アリリアナ船長って呼んでいい感じよ」
「どうして船長なんだ? いや、そんなことよりもどうせなら少し動かしてみたらどうだ?」
「よ~し。……あれ? これどっちの式がアクセルでどっちがブレーキなんだろ?」
「そんなもの、動かしてみたら分かるだろ」
「確かに~。てなわけで出航」
「よし。出航だ」
キキ~……ガシャン!!
「きゃ!? な、なに?」
魔法文字の確認してたらいきなり馬車が揺れた。ってか動いた?
「どうして?」
周囲を見回すとアリリアナと目があった。
「ア、アハハ。沈没船の船長アリリアナで~す」
「せ、船長?」
何を言ってるんだろ? センカさんはセンカさんで両手を組んで目を瞑り、やっちゃった! みたいな顔してるし。というか私がマスターキー持ってるのにどうやって動かしたのかな? あっ、何とぶつかったのか確認しないと。
スペルボードを見たから馬車に込められた術式は大体把握出来ている。私はマスターキーに魔力を流した。
「全面透明化」
「弁償はいや~」
「くっ。殺せ」
アリリアナ達が凄く物騒なことを言ってる。でも、そうか。他の馬車にぶつかった可能性が高いんだよね。……馬車、どれも凄く高そうだったな。
今更ながらに私がヒヤリとしたものを感じていると、馬車の壁が透明になって外の様子がどこからでも分かるようになった。
私達の馬車がお尻をぶつけているのは、少し離れた場所に置かれていた、私達が乗っているのと全く同じ馬車だった。
「あ~。よかった~」
「やれやれ。九死に一生だな」
ホッと息を吐く二人。私も胸を撫で下ろす……のだけど、何だろう? 隣から凄い圧が?
「それでは、予定通りこちらの馬車二点をお引き取りでよろしいですね」
「え? あの……」
「よろしですね?」
「あっ……はい」
ひびの入った店主さんの笑みを前に、私には頷く以外の選択肢は残されてはいなかった。
「わっ、本当だ」
アリリアナに続いて馬車の中に入る。馬車の大きさは外から見たら四人乗りで、後は荷物を少し載せられるくらいに見えたけど、実際に入ってみるとかなり広くて、数週間分の荷物を置いても八人が普通に寛げるくらいある。
「あの、これって空間魔法が?」
「左様です。他にも外部の温度に反応して発動する平温維持の魔法が掛かっており、どの国、どの季節でも、快適にお過ごし頂けます。また重量に応じて発動する軽量化の魔法、馬車への攻撃を緩和させる拡散魔法など多種多様な術式が組み込まれております」
「ちょっとセンカ、この椅子超フカフカなんですけど」
「私は椅子は硬めの方が好きなんだが……むっ。なるほど。確かにいいな」
「でしょ~。ほら、ドロシーもおいでよ。すっごい良い感じよ」
「う、うん。ちょっと待ってね。あの、空間拡張の術式についてですが、スペルアウトの対策について伺っても?」
常時展開型の魔法は何かの拍子で意図せずに破れた時が怖い。空間魔法を用いた収納袋や建築物は大勢の魔法使いが昔から改良し続けているけど、狭い空間を魔法で無理に広げた結果、術式崩壊、つまりはスペルアウトで悲惨な結果になった例は枚挙にいとまがない。
「スペルアウトの際には術式が崩壊する際の魔力を応用して壁四枚に組み込まれた魔銀が伸びて、馬車の大きさを空間拡張時と同等のモノへと変えます。ですので駐車の際には左右に三メートル、可能であれば五メートルの間隔をお開けください」
「あれ? 何でこの席だけ一つ寂しく前にある感じなわけ?」
「ひょっとして魔動車としての機能も備えてるんじゃないのか? ほら、ここの壁、術式があるぞ」
「うっそ? じゃあシロ達に引いてもらわなくても魔力で動いちゃうわけ? 便利すぎでしょ」
「確かに便利ではあるが、魔動車自体は長距離の移動には向いてないからな。冒険が目的ならやはり普段は馬車として使用するのが一番だろ」
「まぁ、それはね。でも利便性うんぬん以前に魔動車って一回運転してみたかったのよね。だから超ラッキー」
「一部の好事家を除けば貴族くらいしか持ってないからな。確かに中々ない機会ではある」
「でしょ? ねぇねぇ、ドロシー。これ見て、凄いのがある感じよ」
「え? うん。もうちょっと待って」
このままこの馬車で決まりそうだけど、その前によく確認しておかなきゃ。ないとは思うけど、王子と婚約破棄したことをお父様が根に持ってて、この馬車に嫌がらせ目的の仕掛けがあったら大変。私とお父様の確執にアリリアナ達は絶対巻き込めない。
「あの、スペルボードは何処ですか?」
馬車自体はしっかりとした作りになってるし、これで術式を統括管理するスペルボードに問題がなければ一安心だ。
「こちらでございます。それとこの指輪をお付けください。馬車の術式を管理するマスターキーでございます」
馬車の一番後ろへと移動する最中、私は店主さんから魔法文字が細かく刻み込まれた指輪を受け取った。
「魔力を込めてオープンと言えばスペルボードが浮かび上がります」
「オープン」
馬車の壁に魔法文字が浮かび上がる。
「スペルコードはM言語で構成されてるんだ。……あっ、ウチのもある」
魔法文字の配列方法として今大陸で最も使われてるのがM言語だけど、お父様はドロテア家独自のD言語を昔からあの手この手で広めようとしている。
「ぬが~。やっぱ動かない感じ」
「だから言ったろ。キー無しでは魔力を流し込めない仕様になってるんだ」
「でもそれだとキー無くした時に不便じゃない? それにこの反応式……なんかいける気がするのよね。ここをこうして、こう? いや……こうか!?」
「おおっ!? 凄いな。魔力が通ったぞ」
「ふふん。アリリアナ船長って呼んでいい感じよ」
「どうして船長なんだ? いや、そんなことよりもどうせなら少し動かしてみたらどうだ?」
「よ~し。……あれ? これどっちの式がアクセルでどっちがブレーキなんだろ?」
「そんなもの、動かしてみたら分かるだろ」
「確かに~。てなわけで出航」
「よし。出航だ」
キキ~……ガシャン!!
「きゃ!? な、なに?」
魔法文字の確認してたらいきなり馬車が揺れた。ってか動いた?
「どうして?」
周囲を見回すとアリリアナと目があった。
「ア、アハハ。沈没船の船長アリリアナで~す」
「せ、船長?」
何を言ってるんだろ? センカさんはセンカさんで両手を組んで目を瞑り、やっちゃった! みたいな顔してるし。というか私がマスターキー持ってるのにどうやって動かしたのかな? あっ、何とぶつかったのか確認しないと。
スペルボードを見たから馬車に込められた術式は大体把握出来ている。私はマスターキーに魔力を流した。
「全面透明化」
「弁償はいや~」
「くっ。殺せ」
アリリアナ達が凄く物騒なことを言ってる。でも、そうか。他の馬車にぶつかった可能性が高いんだよね。……馬車、どれも凄く高そうだったな。
今更ながらに私がヒヤリとしたものを感じていると、馬車の壁が透明になって外の様子がどこからでも分かるようになった。
私達の馬車がお尻をぶつけているのは、少し離れた場所に置かれていた、私達が乗っているのと全く同じ馬車だった。
「あ~。よかった~」
「やれやれ。九死に一生だな」
ホッと息を吐く二人。私も胸を撫で下ろす……のだけど、何だろう? 隣から凄い圧が?
「それでは、予定通りこちらの馬車二点をお引き取りでよろしいですね」
「え? あの……」
「よろしですね?」
「あっ……はい」
ひびの入った店主さんの笑みを前に、私には頷く以外の選択肢は残されてはいなかった。
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