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123 代金
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「支払い済みって……ラッキー! あ、それじゃあですね。納品場所はーー」
「ええっ!? ちょっとアリリアナ? 事情聞かないの?」
そんなお金浮いて助かったみたいな反応する場面じゃない気がするんだけど。
「アハハ。やだな。冗談、冗談だってば」
……怪しい。半分くらい本気だったんじゃないかな? でも今はそんなことを気にしてる場合じゃないよね。一体誰が代金を払ったんだろう?
「ひょっとするとイリーナ殿か?」
「どうなんだろ? それはない……と思うんだけど」
でももしも本当にそうだったなら、ちょっとどうかと思う。勝負に勝ったアリリアナが馬車の選択を変えるのと、勝負に負けたイリーナさんが勝手にお金を支払って、自分の欲しい馬車を選択するのでは全く事情が違う。
クランとして初仕事もまだなのに、早くも暗雲が立ち込め始めた気がする。
「あの、代金を支払った方の名前は分かりますか?」
「ええ。勿論ですよ。ジオルド様です」
あっ、良かった。イリーナさんじゃない。ジオルド……ん? ジオルド?
「えっ!? ジオルドって、ジオルド•ドロテアのことですか?」
「はい。ドロテア家当主であるジオルド様のことです」
「ええっ!?」
な、なんでここでお父様が出てくるの? そもそも私達が馬車を購入しようとしてるなんてどこで知ったんだろ? まさか門弟の誰かに後をつけさせてるわけじゃないよね?
気になって周囲を見回してみるけど、それらしき人影はどこにも見当たらない。
「ここでまさかのドロシーパパか。いっそウチのクランのスポンサーになってくれないかな?」
「どうだろうな。可能性はなくはないと思うが、ドロシーの気持ちを考えると難しいかもしれん」
背中に二人の視線を感じて振り返る。
「えっと……この馬車、ど、どうしようか?」
「気にせずもらっちゃうってのはダメな感じ?」
「それは……ダメではないけれど」
ただ、ちょっとだけモヤモヤするかも。お父様ったら、こんな明け透けな方法で懐柔しようとしてくるなんて。でも冒険者として活動していくなら装備を整える資金は大切だし、このチャンスを私の個人的感情で棒に振って良いのかな? それでシャドーデビルのような例外と遭遇した時、後悔しない? ……するかも。ならやっぱりここは素直に受け取るべき? でも、でも、う~、モヤモヤする。
「ひとまず落ち込みドロシーになるのは、どんな馬車なのか見てからでもいいんじゃないか?」
「そう、だね。……ん? 落ち込みドロシー? え? 何それ?」
「ルームメイトに聞いてくれ」
「アリリアナ?」
「アハハ。ヤダ、そんな顔しないでよ。そんな目で見られると私が落ち込みアリリアナになっちゃうぞ」
背中から抱きついてきたアリリアナが頬擦りしてくる。こういう時のアリリアナって何だか猫っぽくて凄く可愛い。
「もう、仕方ないんだから」
「それで馬車はどうするんだ?」
「あっ、うん。見るよ。ねっ、アリリアナ」
「もっちのロンよ。そんな感じなので、良ければ馬車見せてもらってもいいですか?」
「勿論です。こちらへどうぞ」
ニコニコと仮面のような笑みを貼り付けた店主さんの後に続いて、私達は店の奥へと移動する。
「おおっ~。高そうなのがいっぱい」
異様に天井が高い車庫に馬車や魔動車がそれぞれ大きくスペースを取って並んでいる。決して奇抜なデザインをしているわけではないのに、発せられる重厚感だけで表に展示されてる商品よりも高価だと分かってしまう。
「こちらになります」
店主さんが足を止めたのは横に伸びた長方形の馬車の前。色々な地形に対応するためか、車輪が太く、ゴムのような素材に覆われてる。魔物の襲撃を想定している関係上珍しくはないけど、馬車の中は外からは覗けない仕様だ。
「サイズはイリーナの希望とお同じくらいな感じか。二つありますけど、どっちですか?」
「両方でございます。ジオルド様には同じ馬車を二点ご購入頂きました」
「おおっ。ドロシーパパ太っ腹じゃん」
「……見栄っ張りなだけじゃないかな」
昔から見栄の為なら惜しみなくお金を使うんだから。そんなに人の目を気にするなら、どうしてもっと私達を……私を……。
「え~? でもこれ結構凄そう……だけど、やっぱ前に見た奴の方がいいかもね。すみませ~ん、前回来た時に見た馬車はまだありますか?」
「は?」
「あれ? もう売れちゃった感じですか?」
「い、いえ。無論ございます。ですが冒険、商売、街中の移動、どのような用途で用いるにしろこちらの馬車の方が遥かに優れておりますよ?」
「私達には私達のこだわりがあるんです」
「……左様ですか。それではこちらにーー」
「あっ、ま、待ってください」
いけない。私ったら子供っぽい感情でアリリアナに変な気を遣わせちゃった。
「ねぇ、アリリアナ。前見た馬車も良かったけど、こっちの方がいいと思うの。こっちにしない?」
「私は全然いいけど、ドロシーは本当にオッケーな感じ? 無理してない?」
「してないよ。何があるか分からないんだし、冒険には可能な限り最高の装備で望むべきだよ」
「同感だな。そもそもドロシーはジオルド様の依頼で伝達絵巻の取材に応じているのだから、その報酬と思えばいい」
取材の報酬にしては高すぎる気もするけど、でもセンカさんの言葉でちょっと気が楽になった。そう、これはお父様に買ってもらったんじゃなくて、仕事の報酬なのよ。うん。そう思っておこう。
「オッケー! えっと度々申し訳ないんですけど、やっぱこだわりは消えちゃった感じなので、この馬車の中を見てもいいですか?」
「勿論です。どうぞ」
店主さんが馬車のドアを開いてくれた。中はーー
「ええっ!? ちょっとアリリアナ? 事情聞かないの?」
そんなお金浮いて助かったみたいな反応する場面じゃない気がするんだけど。
「アハハ。やだな。冗談、冗談だってば」
……怪しい。半分くらい本気だったんじゃないかな? でも今はそんなことを気にしてる場合じゃないよね。一体誰が代金を払ったんだろう?
「ひょっとするとイリーナ殿か?」
「どうなんだろ? それはない……と思うんだけど」
でももしも本当にそうだったなら、ちょっとどうかと思う。勝負に勝ったアリリアナが馬車の選択を変えるのと、勝負に負けたイリーナさんが勝手にお金を支払って、自分の欲しい馬車を選択するのでは全く事情が違う。
クランとして初仕事もまだなのに、早くも暗雲が立ち込め始めた気がする。
「あの、代金を支払った方の名前は分かりますか?」
「ええ。勿論ですよ。ジオルド様です」
あっ、良かった。イリーナさんじゃない。ジオルド……ん? ジオルド?
「えっ!? ジオルドって、ジオルド•ドロテアのことですか?」
「はい。ドロテア家当主であるジオルド様のことです」
「ええっ!?」
な、なんでここでお父様が出てくるの? そもそも私達が馬車を購入しようとしてるなんてどこで知ったんだろ? まさか門弟の誰かに後をつけさせてるわけじゃないよね?
気になって周囲を見回してみるけど、それらしき人影はどこにも見当たらない。
「ここでまさかのドロシーパパか。いっそウチのクランのスポンサーになってくれないかな?」
「どうだろうな。可能性はなくはないと思うが、ドロシーの気持ちを考えると難しいかもしれん」
背中に二人の視線を感じて振り返る。
「えっと……この馬車、ど、どうしようか?」
「気にせずもらっちゃうってのはダメな感じ?」
「それは……ダメではないけれど」
ただ、ちょっとだけモヤモヤするかも。お父様ったら、こんな明け透けな方法で懐柔しようとしてくるなんて。でも冒険者として活動していくなら装備を整える資金は大切だし、このチャンスを私の個人的感情で棒に振って良いのかな? それでシャドーデビルのような例外と遭遇した時、後悔しない? ……するかも。ならやっぱりここは素直に受け取るべき? でも、でも、う~、モヤモヤする。
「ひとまず落ち込みドロシーになるのは、どんな馬車なのか見てからでもいいんじゃないか?」
「そう、だね。……ん? 落ち込みドロシー? え? 何それ?」
「ルームメイトに聞いてくれ」
「アリリアナ?」
「アハハ。ヤダ、そんな顔しないでよ。そんな目で見られると私が落ち込みアリリアナになっちゃうぞ」
背中から抱きついてきたアリリアナが頬擦りしてくる。こういう時のアリリアナって何だか猫っぽくて凄く可愛い。
「もう、仕方ないんだから」
「それで馬車はどうするんだ?」
「あっ、うん。見るよ。ねっ、アリリアナ」
「もっちのロンよ。そんな感じなので、良ければ馬車見せてもらってもいいですか?」
「勿論です。こちらへどうぞ」
ニコニコと仮面のような笑みを貼り付けた店主さんの後に続いて、私達は店の奥へと移動する。
「おおっ~。高そうなのがいっぱい」
異様に天井が高い車庫に馬車や魔動車がそれぞれ大きくスペースを取って並んでいる。決して奇抜なデザインをしているわけではないのに、発せられる重厚感だけで表に展示されてる商品よりも高価だと分かってしまう。
「こちらになります」
店主さんが足を止めたのは横に伸びた長方形の馬車の前。色々な地形に対応するためか、車輪が太く、ゴムのような素材に覆われてる。魔物の襲撃を想定している関係上珍しくはないけど、馬車の中は外からは覗けない仕様だ。
「サイズはイリーナの希望とお同じくらいな感じか。二つありますけど、どっちですか?」
「両方でございます。ジオルド様には同じ馬車を二点ご購入頂きました」
「おおっ。ドロシーパパ太っ腹じゃん」
「……見栄っ張りなだけじゃないかな」
昔から見栄の為なら惜しみなくお金を使うんだから。そんなに人の目を気にするなら、どうしてもっと私達を……私を……。
「え~? でもこれ結構凄そう……だけど、やっぱ前に見た奴の方がいいかもね。すみませ~ん、前回来た時に見た馬車はまだありますか?」
「は?」
「あれ? もう売れちゃった感じですか?」
「い、いえ。無論ございます。ですが冒険、商売、街中の移動、どのような用途で用いるにしろこちらの馬車の方が遥かに優れておりますよ?」
「私達には私達のこだわりがあるんです」
「……左様ですか。それではこちらにーー」
「あっ、ま、待ってください」
いけない。私ったら子供っぽい感情でアリリアナに変な気を遣わせちゃった。
「ねぇ、アリリアナ。前見た馬車も良かったけど、こっちの方がいいと思うの。こっちにしない?」
「私は全然いいけど、ドロシーは本当にオッケーな感じ? 無理してない?」
「してないよ。何があるか分からないんだし、冒険には可能な限り最高の装備で望むべきだよ」
「同感だな。そもそもドロシーはジオルド様の依頼で伝達絵巻の取材に応じているのだから、その報酬と思えばいい」
取材の報酬にしては高すぎる気もするけど、でもセンカさんの言葉でちょっと気が楽になった。そう、これはお父様に買ってもらったんじゃなくて、仕事の報酬なのよ。うん。そう思っておこう。
「オッケー! えっと度々申し訳ないんですけど、やっぱこだわりは消えちゃった感じなので、この馬車の中を見てもいいですか?」
「勿論です。どうぞ」
店主さんが馬車のドアを開いてくれた。中はーー
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