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137 出発の朝1
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「さて、準備はオッケーな感じ?」
魔法使いのローブを身に纏ったアリリアナが聞いてくる。私は部屋をぐるりと見回した。昨日のうちにキャンプに必要なものは馬車に入れておいたし、ロッド含めた装備はちゃんと身に付けてる。
「うん。大丈夫だと思う」
「よし。それじゃあ出発~!!」
頭上に勢いよく握り拳を突き上げるアリリアナ。金色の瞳がチラリと私を見た。
「え、えっと……」
「出発~!!」
「お、お~」
私が同じように拳を突き上げると、彼女は満足した様子で荷物を手に取った。そんなアリリアナと一緒に部屋を出る。
「いや~、ついにこの日が来たよね。エルフの里ってどんな感じかな?」
「もう、アリリアナったら。遊びに行くんじゃないんだよ?」
「分かってるけどさ、私、遠出前の朝って好きなんだよね。何か知らないけどすっごいワクワクしない?」
「それは……分かるけど」
実は私も結構……ううん。かなりワクワクしてる。
「でも気をつけるに越したことはないよ。またシャドーデビルみたいな魔物に出くわさないとも限らないんだから」
「分かってるけどさ。今年だけでもう二体ものS指定の魔物と遭遇したんだよ? これでもう一度出くわしたらどんな確率? って感じじゃない?」
「それは……まぁ、確かに」
S指定の魔物に限らず、本来強い力を持つ魔物ほど自分のテリトリー以外での狩りはしない傾向にある。これは単純に強い力を持つ魔物は知能が高い場合が多く、よほどのことがない限り国家という人間の群れに正面切って争いを仕掛けないからだ。でも、今年はもう例外が二度も起こってる。不安を覚えるなという方が無理だった。
「まっ、ドロシーが不安になる気持ちも分かるけどね。アマギさんも気をつけろって言ってたし」
「アマギさんって言えば、昨日はごめんね。せっかくのデートを邪魔しちゃって」
「全然オッケー。ってか私もセンカやメルル、それにドロシーが誰かとデートしてたら絶対覗くし」
「ええっ!?」
それはできればやめて欲しいけど、昨日のことがあるから何も言えない。
「二人とも、体調は良さそうだね」
「あっ、オオルバさん」
「バッチリで~す」
私達が下りてくるのに気づいたのか、店の奥で作業をしていたオオルバさんが顔を出してくれた。
「目的地はエルフの里だったね」
「はい。その気になれば日帰りも可能な距離ですが、キャンプをする予定なので帰りは早くても三日後になると思います」
「そうかい。エルフの里……か」
「オオルバさん? あの、エルフの里に何か?」
いつも悠然としているオオルバさんには珍しく、なんだか難しい顔をしている。
「ん? いや、里ではなくてだね……方角がよくないなと思ってね」
「方角? 風水か何かですか?」
「オオルバさんって占いもやる感じなんですか?」
「まぁね。とは言っても大してあたりゃしないんだけどね。嬢ちゃん、以前ウチの客から貰った石、ちゃんと持ってるかい?」
「え? あ、はい。勿論です」
私は黒い石を取り出した。貴重な石で持ち歩くことに抵抗がちょっとあるけど、シャドーデビルの一件以降、どこに行くにも持ち歩くようにしている。
「何それ? 見た感じ、結構凄そうな石に見えるんだけど」
「これは転移石の一種で、使うとどんな場所にも行けるらしいの。本人が行ったことのない場所でも」
「うっそ? 凄すぎでしょ。どうしたの、それ?」
「ここの常連さんがくれたんだけど……あの、オオルバさん? これがどうかしましたか?」
「何、大したことじゃないよ。ちょっとした厄祓いのようなものさ」
「えっ!? それって妖精の粉……」
オオルバさんが取り出した小瓶には七色に光る粉。稀少な品であるそれが惜しげもなく黒い石に振りかけられる。すると石の表面に小さな魔法陣が浮かびあがった。
「これで石の効果が嬢ちゃん一人から嬢ちゃんの魔力の届く範囲に拡張された。片道切符なのは変わらないけど、何かあったらそれで上手く逃げるんだよ」
「ええっ!? あの、妖精の粉をそんな簡単に使って良かったんですか?」
物凄く貴重な品なのに。
「ふん。こんなもの、大したものじゃないよ。それよりも二人とも、ちゃんと無事に戻ってくるんだよ」
「了解で~す。そうだ。帰ってきたらこの間のパンケーキ焼いてくださいよ」
「いいとも。ドロシー嬢ちゃんは? 何か食べたいものはないかい?」
「えっと……」
妖精の粉まで使ってもらったのにこの上食べたいものを注文するのも気が引けるけど、ここで遠慮するのも何だか違う気がした。
「それじゃあこの間入れてもらった紫色の紅茶。あれをまた飲んでみたいです」
「パープルミストだね。分かった。それに合うお茶菓子も用意しとくから、あまりババアを待たせるんじゃないよ」
「アハハ。遅くても五日以内には帰る感じなんで」
「行ってきます」
「ああ。行っといで」
そうして私達はオオルバ魔法店を後にした。
魔法使いのローブを身に纏ったアリリアナが聞いてくる。私は部屋をぐるりと見回した。昨日のうちにキャンプに必要なものは馬車に入れておいたし、ロッド含めた装備はちゃんと身に付けてる。
「うん。大丈夫だと思う」
「よし。それじゃあ出発~!!」
頭上に勢いよく握り拳を突き上げるアリリアナ。金色の瞳がチラリと私を見た。
「え、えっと……」
「出発~!!」
「お、お~」
私が同じように拳を突き上げると、彼女は満足した様子で荷物を手に取った。そんなアリリアナと一緒に部屋を出る。
「いや~、ついにこの日が来たよね。エルフの里ってどんな感じかな?」
「もう、アリリアナったら。遊びに行くんじゃないんだよ?」
「分かってるけどさ、私、遠出前の朝って好きなんだよね。何か知らないけどすっごいワクワクしない?」
「それは……分かるけど」
実は私も結構……ううん。かなりワクワクしてる。
「でも気をつけるに越したことはないよ。またシャドーデビルみたいな魔物に出くわさないとも限らないんだから」
「分かってるけどさ。今年だけでもう二体ものS指定の魔物と遭遇したんだよ? これでもう一度出くわしたらどんな確率? って感じじゃない?」
「それは……まぁ、確かに」
S指定の魔物に限らず、本来強い力を持つ魔物ほど自分のテリトリー以外での狩りはしない傾向にある。これは単純に強い力を持つ魔物は知能が高い場合が多く、よほどのことがない限り国家という人間の群れに正面切って争いを仕掛けないからだ。でも、今年はもう例外が二度も起こってる。不安を覚えるなという方が無理だった。
「まっ、ドロシーが不安になる気持ちも分かるけどね。アマギさんも気をつけろって言ってたし」
「アマギさんって言えば、昨日はごめんね。せっかくのデートを邪魔しちゃって」
「全然オッケー。ってか私もセンカやメルル、それにドロシーが誰かとデートしてたら絶対覗くし」
「ええっ!?」
それはできればやめて欲しいけど、昨日のことがあるから何も言えない。
「二人とも、体調は良さそうだね」
「あっ、オオルバさん」
「バッチリで~す」
私達が下りてくるのに気づいたのか、店の奥で作業をしていたオオルバさんが顔を出してくれた。
「目的地はエルフの里だったね」
「はい。その気になれば日帰りも可能な距離ですが、キャンプをする予定なので帰りは早くても三日後になると思います」
「そうかい。エルフの里……か」
「オオルバさん? あの、エルフの里に何か?」
いつも悠然としているオオルバさんには珍しく、なんだか難しい顔をしている。
「ん? いや、里ではなくてだね……方角がよくないなと思ってね」
「方角? 風水か何かですか?」
「オオルバさんって占いもやる感じなんですか?」
「まぁね。とは言っても大してあたりゃしないんだけどね。嬢ちゃん、以前ウチの客から貰った石、ちゃんと持ってるかい?」
「え? あ、はい。勿論です」
私は黒い石を取り出した。貴重な石で持ち歩くことに抵抗がちょっとあるけど、シャドーデビルの一件以降、どこに行くにも持ち歩くようにしている。
「何それ? 見た感じ、結構凄そうな石に見えるんだけど」
「これは転移石の一種で、使うとどんな場所にも行けるらしいの。本人が行ったことのない場所でも」
「うっそ? 凄すぎでしょ。どうしたの、それ?」
「ここの常連さんがくれたんだけど……あの、オオルバさん? これがどうかしましたか?」
「何、大したことじゃないよ。ちょっとした厄祓いのようなものさ」
「えっ!? それって妖精の粉……」
オオルバさんが取り出した小瓶には七色に光る粉。稀少な品であるそれが惜しげもなく黒い石に振りかけられる。すると石の表面に小さな魔法陣が浮かびあがった。
「これで石の効果が嬢ちゃん一人から嬢ちゃんの魔力の届く範囲に拡張された。片道切符なのは変わらないけど、何かあったらそれで上手く逃げるんだよ」
「ええっ!? あの、妖精の粉をそんな簡単に使って良かったんですか?」
物凄く貴重な品なのに。
「ふん。こんなもの、大したものじゃないよ。それよりも二人とも、ちゃんと無事に戻ってくるんだよ」
「了解で~す。そうだ。帰ってきたらこの間のパンケーキ焼いてくださいよ」
「いいとも。ドロシー嬢ちゃんは? 何か食べたいものはないかい?」
「えっと……」
妖精の粉まで使ってもらったのにこの上食べたいものを注文するのも気が引けるけど、ここで遠慮するのも何だか違う気がした。
「それじゃあこの間入れてもらった紫色の紅茶。あれをまた飲んでみたいです」
「パープルミストだね。分かった。それに合うお茶菓子も用意しとくから、あまりババアを待たせるんじゃないよ」
「アハハ。遅くても五日以内には帰る感じなんで」
「行ってきます」
「ああ。行っといで」
そうして私達はオオルバ魔法店を後にした。
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