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175 師弟
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ルネラード邸に到着すると門番さんに挨拶をしてから中に入る。途端、耳をつくような激しい鋼の合唱が聞こえてきた。
「……今日もやってるんだ」
木造の建築物を横手に小島のように点在する石の上を歩く。通学路のように見慣れた道を通って出た裏庭では、想像通りの光景が繰り広げられていた。
「まだ不必要なところで筋力に頼っている。一度発生させた力をもっと効率よく利用したまえ」
「ハァハァ……わ、分かってる」
本身を構えたレオ君が鋭い打ち込みを放つ。肩で大きく息をしていたけれど、それでも彼の動きは遠目に見る私でさえ見失ってしまいそうな速度を保っていた。
「ふむ。悪くない。及第点と言ったところかな」
ガルドさんは烈火のごとき剣撃をまるでじゃれてくる子猫の相手でもするかのように優しく受け流す。
ぶつかり合う鋼が火花を散らした。
「防御が甘い。回避に頼りすぎだ」
「く、くそ」
「次は足元がお留守だよ」
「くぁ!?」
足を払われたレオ君の体が宙に浮く。
「さぁ、どうする?」
「舐めんな!」
レオ君は空中で体勢を整えると同時に蹴りを放つ。それをガルドさんは顎を軽く引いて回避した。
「すぐに感情的になるのは悪い癖だね。使いこなせない怒りが通用するのは二流までだよ」
デコピン。傍目には何のことはない額への接触。でもそれを受けたレオ君は物凄い勢いで背後に吹き飛ばされた。
「がぁっ!?」
地面を転がるレオ君。そんな彼に私は駆け寄った。
「大丈夫?」
「あ、ああ。平気……って、ドロシーさん?」
「おはよう」
「おはよう。今日は……いてて、随分早いんだな」
起き上がったレオ君は泥だらけではあるけれど、これといった怪我はないようで、私はホッと胸を撫で下ろした。
「新しいクエストが入ったから。魔法文字送ったんだけど、見てない?」
レオ君の背中についた泥を手で払う。この一年でレオ君の身長は少し伸びて、今では私とあんまり変わらなくなった。
「悪い。まだだ」
「そうなんだ。……あんまり無茶しちゃだめだよ」
文字を送ってから結構たってるけど、この激しい修行をいつからやってるんだろ?
「相変わらず君は優しいな、私の夜空」
「ガルドさん、おはようございます」
「おはよう。朝から君に会えるとは、今日の私は幸運だよ」
ガルドさんはそう言うと、地面に膝をついて私の手の甲にキスをした。
「だからいちいち触るなって」
「わっ!?」
いきなり腕を引かれて、ちょっとビックリ。
「君達の関係を祝福しているが、挨拶にまで口を出すのは些か野暮が過ぎるのではないかな?」
「下心がなければ俺だって何も言わない。下心がなければな」
「下心? ふむ。下心か」
クスリと笑うガルドさん。聖人であるガルドさんの感性は普通の男性とは違う。私に好意を表明してはいても下心がないのが分かってるから、私もつい接近を許してしまう。
でもレオ君とお付き合いしているんだし、私ももっと気をつけなきゃだよね。
視線でガルドさんを威嚇する男の子を見ながら、私が自分の行動を反省しているとーー
「えっと、声がしたから挨拶に寄ったのだけど……出直した方がいいかな?」
裏庭にやってきたメルルさんが、そう言って困ったように笑った。
「……今日もやってるんだ」
木造の建築物を横手に小島のように点在する石の上を歩く。通学路のように見慣れた道を通って出た裏庭では、想像通りの光景が繰り広げられていた。
「まだ不必要なところで筋力に頼っている。一度発生させた力をもっと効率よく利用したまえ」
「ハァハァ……わ、分かってる」
本身を構えたレオ君が鋭い打ち込みを放つ。肩で大きく息をしていたけれど、それでも彼の動きは遠目に見る私でさえ見失ってしまいそうな速度を保っていた。
「ふむ。悪くない。及第点と言ったところかな」
ガルドさんは烈火のごとき剣撃をまるでじゃれてくる子猫の相手でもするかのように優しく受け流す。
ぶつかり合う鋼が火花を散らした。
「防御が甘い。回避に頼りすぎだ」
「く、くそ」
「次は足元がお留守だよ」
「くぁ!?」
足を払われたレオ君の体が宙に浮く。
「さぁ、どうする?」
「舐めんな!」
レオ君は空中で体勢を整えると同時に蹴りを放つ。それをガルドさんは顎を軽く引いて回避した。
「すぐに感情的になるのは悪い癖だね。使いこなせない怒りが通用するのは二流までだよ」
デコピン。傍目には何のことはない額への接触。でもそれを受けたレオ君は物凄い勢いで背後に吹き飛ばされた。
「がぁっ!?」
地面を転がるレオ君。そんな彼に私は駆け寄った。
「大丈夫?」
「あ、ああ。平気……って、ドロシーさん?」
「おはよう」
「おはよう。今日は……いてて、随分早いんだな」
起き上がったレオ君は泥だらけではあるけれど、これといった怪我はないようで、私はホッと胸を撫で下ろした。
「新しいクエストが入ったから。魔法文字送ったんだけど、見てない?」
レオ君の背中についた泥を手で払う。この一年でレオ君の身長は少し伸びて、今では私とあんまり変わらなくなった。
「悪い。まだだ」
「そうなんだ。……あんまり無茶しちゃだめだよ」
文字を送ってから結構たってるけど、この激しい修行をいつからやってるんだろ?
「相変わらず君は優しいな、私の夜空」
「ガルドさん、おはようございます」
「おはよう。朝から君に会えるとは、今日の私は幸運だよ」
ガルドさんはそう言うと、地面に膝をついて私の手の甲にキスをした。
「だからいちいち触るなって」
「わっ!?」
いきなり腕を引かれて、ちょっとビックリ。
「君達の関係を祝福しているが、挨拶にまで口を出すのは些か野暮が過ぎるのではないかな?」
「下心がなければ俺だって何も言わない。下心がなければな」
「下心? ふむ。下心か」
クスリと笑うガルドさん。聖人であるガルドさんの感性は普通の男性とは違う。私に好意を表明してはいても下心がないのが分かってるから、私もつい接近を許してしまう。
でもレオ君とお付き合いしているんだし、私ももっと気をつけなきゃだよね。
視線でガルドさんを威嚇する男の子を見ながら、私が自分の行動を反省しているとーー
「えっと、声がしたから挨拶に寄ったのだけど……出直した方がいいかな?」
裏庭にやってきたメルルさんが、そう言って困ったように笑った。
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