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193 満場一致
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「あはは。それでドルドさん捕まえて、姉妹仲良く研究しようとした感じ?」
イリーナに平謝りしているところに、戻ってきたアリリアナ。彼女は事情を聞くなり腹を抱えた。
「そ、そういう訳じゃなくて、ちょっとだけ好奇心が動いたっていうか……。で、でも、止めようとはしたんだよ?」
正座した私を、アリリアナが実に意地の悪い笑みで見下ろす。
「つまり妹ちゃんが悪いってこと?」
「う、ううん。決してアリア一人の責任というわけでは……」
な、なんか凄くいたたまれない気持ちなんだけど。こんな風に叱られるなんていつ以来だろう?
馬車の中には御者を担当してくれてるロロルドさん以外の皆がいるんだけど、恥ずかしさのあまり視線が下に逃げちゃう。
「もういいだろう。悪気があってやったわけじゃないんだし、ドルドさんだって本気で嫌ならちゃんと抵抗したはずだ」
「レオ君」
庇ってくれてありがとう。やっぱり優しいね。それに比べて私は……。アリアを止めるどころか、途中から口車に乗せられちゃうなんて。は、反省しないと。
「えっと、本当にごめんなさい。次からはこんなことにならないよう気を付けます。本当! 本当に気を付けるから」
「う~ん。私はそんなマジに反省する必要はないと思う感じだけどな。ドロシーって魔法のことになると結構頻繁に周囲が見えなくなるけど、その集中力がむしろ強みなところがあるし」
「えっ!? わ、私ってそんなにしょっちゅう周りが見えなくなってる?」
「モチのロン」
何故か嬉しそうに親指を立てるアリリアナ。それに続いてーー
「そうだな。なってるとは思うぞ」
「なってますわね」
センカさんにイリーナまで。で、でも私にはレオ君が……。
普段はとっても優しいのに、困った時にはすごく頼りになる男の子。そんな彼と目が合う。
「いや、えっと、その……」
フイッ、と視線を逸らされた。
ガーン!? こ、これって皆の言う通りってこと? 確かに昔から考え事してると、周りの状況が目に入らなくなってる時があるけど、そんなに頻繁だったなんて。
「ちなみに私はその状態を天才モード、もしくは変人モードと呼んでるけど、ドロシーはどっちがいい?」
「ど、どっちも嫌なんだけど」
天才という呼ばれるのは抵抗あるけど、変人の二つ名も遠慮したい。
「私は天才モードに一票だな」
「では私は変人に」
「やめろよな。そういう呼び方、ドロシーさんは好きじゃないんだよ」
「レオ君……」
どうしよう。なんだか無性に彼に抱きつきたくなってきた。でも私みたいな根暗が突然そんな行動とったら、絶対変だよね。というか、そろそろ誰か……。
「ピィイイ!! ピィイイイイ!!」
「貴方もいい加減、空気読みなさいな」
ガツン! とイリーナの拳骨がいまだにドルドさんに対して魔法実験を行っていた妹に落ちる。
ああ、良かった。誰も突っ込まないから、幻術にでもかかってるんじゃないかと心配になっちゃった。それにしてもイリーナ、アリアが相手でも遠慮がない。これには流石のアリアも驚いたんじゃないかな。
「……何するの?」
「貴方こそドルドに何してますの? というか、よくこの空気で実験を続けられますわね。貴方の行動が原因で正座してるお姉さんが見えないんですの? ほら、そこ。今までで一番情けないドロテア家長女の姿をご覧なさいな」
「ううっ、情けない姉ですみません」
「イリーナ様。アリア様に対しての狼藉はおやめください」
護衛であるセンカさんが、アリアを守るように二人の間に割って入る。アリリアナが掌を打ち鳴らして注目を集めた。
「あ~、はいはい。それ以上は笑い話にならなそうだから、この辺でこの話は終わり。妹ちゃんもドルドさんへの好奇心は分かるけど、仕事中は我慢してね。その代わりこの仕事が終わった後、ドルドさんに協力してくれるよう、私からも頼んでみる感じだからさ」
「ちょっと、アリリアナ? 勝手に話を進めないでくださいます?」
「分かってる。分かってる。そういうわけでドルドさん、いい加減に意思表示をして欲しい感じなんですけど。妹ちゃんの行動に抵抗しないのは、協力してあげる意思があるってことでいいんですかね?」
皆の注目を一心に浴びて、小鳥がフリフリのドレスに身を包んだ可憐な少女へと変わる。
「集団の中で己の意思を確定することの難しさ。己は他者に何を望んでいるのか。他者は己に何を望むのか。それを知るために必要なのは行動なのか、それとも想像なのか。それが分からぬ内に言の葉を幾ら揺らしたところで、学ぶのはただ己のむーー」
「長いですわ」
ガツン! と拳骨がドルドさん(少女バージョン)の頭に落ちた。ポタラさんが馬車の中を覗き込んでくる。
「ずいぶん楽しそうじゃないか。その様子だと満場一致で決まったかい?」
「あっ。すみませーん。ちょっとした予定外の事態が発生しまして、今から聞くところです。そんなわけでアリリアナ組の全員と妹ちゃん、後ついでにセンカも注目」
「ふっ。ついでか……思えば私はそんな役ばかりだな」
な、なんかセンカさんがニヒルな笑みを浮かべてるんだけど。ここは、そんなことないよって言ってあげるべきなのかな?
「私達はこれからレイドを離れて、村を襲うけしからん魔物討伐に向かう感じだけど、意見がある人は挙手をするように。ちなみにこれはポタラさんからの追加注文で報酬もかなりアップされます。その代わり危険も増し増しな感じ。反対するなら今のうちだからね」
アリリアナは私達全員の顔を見回して、満足そうに一つ頷いた。
「満場一致。依頼主からの追加のご依頼、アリリアナ組が責任をもってお引き受けいたします」
イリーナに平謝りしているところに、戻ってきたアリリアナ。彼女は事情を聞くなり腹を抱えた。
「そ、そういう訳じゃなくて、ちょっとだけ好奇心が動いたっていうか……。で、でも、止めようとはしたんだよ?」
正座した私を、アリリアナが実に意地の悪い笑みで見下ろす。
「つまり妹ちゃんが悪いってこと?」
「う、ううん。決してアリア一人の責任というわけでは……」
な、なんか凄くいたたまれない気持ちなんだけど。こんな風に叱られるなんていつ以来だろう?
馬車の中には御者を担当してくれてるロロルドさん以外の皆がいるんだけど、恥ずかしさのあまり視線が下に逃げちゃう。
「もういいだろう。悪気があってやったわけじゃないんだし、ドルドさんだって本気で嫌ならちゃんと抵抗したはずだ」
「レオ君」
庇ってくれてありがとう。やっぱり優しいね。それに比べて私は……。アリアを止めるどころか、途中から口車に乗せられちゃうなんて。は、反省しないと。
「えっと、本当にごめんなさい。次からはこんなことにならないよう気を付けます。本当! 本当に気を付けるから」
「う~ん。私はそんなマジに反省する必要はないと思う感じだけどな。ドロシーって魔法のことになると結構頻繁に周囲が見えなくなるけど、その集中力がむしろ強みなところがあるし」
「えっ!? わ、私ってそんなにしょっちゅう周りが見えなくなってる?」
「モチのロン」
何故か嬉しそうに親指を立てるアリリアナ。それに続いてーー
「そうだな。なってるとは思うぞ」
「なってますわね」
センカさんにイリーナまで。で、でも私にはレオ君が……。
普段はとっても優しいのに、困った時にはすごく頼りになる男の子。そんな彼と目が合う。
「いや、えっと、その……」
フイッ、と視線を逸らされた。
ガーン!? こ、これって皆の言う通りってこと? 確かに昔から考え事してると、周りの状況が目に入らなくなってる時があるけど、そんなに頻繁だったなんて。
「ちなみに私はその状態を天才モード、もしくは変人モードと呼んでるけど、ドロシーはどっちがいい?」
「ど、どっちも嫌なんだけど」
天才という呼ばれるのは抵抗あるけど、変人の二つ名も遠慮したい。
「私は天才モードに一票だな」
「では私は変人に」
「やめろよな。そういう呼び方、ドロシーさんは好きじゃないんだよ」
「レオ君……」
どうしよう。なんだか無性に彼に抱きつきたくなってきた。でも私みたいな根暗が突然そんな行動とったら、絶対変だよね。というか、そろそろ誰か……。
「ピィイイ!! ピィイイイイ!!」
「貴方もいい加減、空気読みなさいな」
ガツン! とイリーナの拳骨がいまだにドルドさんに対して魔法実験を行っていた妹に落ちる。
ああ、良かった。誰も突っ込まないから、幻術にでもかかってるんじゃないかと心配になっちゃった。それにしてもイリーナ、アリアが相手でも遠慮がない。これには流石のアリアも驚いたんじゃないかな。
「……何するの?」
「貴方こそドルドに何してますの? というか、よくこの空気で実験を続けられますわね。貴方の行動が原因で正座してるお姉さんが見えないんですの? ほら、そこ。今までで一番情けないドロテア家長女の姿をご覧なさいな」
「ううっ、情けない姉ですみません」
「イリーナ様。アリア様に対しての狼藉はおやめください」
護衛であるセンカさんが、アリアを守るように二人の間に割って入る。アリリアナが掌を打ち鳴らして注目を集めた。
「あ~、はいはい。それ以上は笑い話にならなそうだから、この辺でこの話は終わり。妹ちゃんもドルドさんへの好奇心は分かるけど、仕事中は我慢してね。その代わりこの仕事が終わった後、ドルドさんに協力してくれるよう、私からも頼んでみる感じだからさ」
「ちょっと、アリリアナ? 勝手に話を進めないでくださいます?」
「分かってる。分かってる。そういうわけでドルドさん、いい加減に意思表示をして欲しい感じなんですけど。妹ちゃんの行動に抵抗しないのは、協力してあげる意思があるってことでいいんですかね?」
皆の注目を一心に浴びて、小鳥がフリフリのドレスに身を包んだ可憐な少女へと変わる。
「集団の中で己の意思を確定することの難しさ。己は他者に何を望んでいるのか。他者は己に何を望むのか。それを知るために必要なのは行動なのか、それとも想像なのか。それが分からぬ内に言の葉を幾ら揺らしたところで、学ぶのはただ己のむーー」
「長いですわ」
ガツン! と拳骨がドルドさん(少女バージョン)の頭に落ちた。ポタラさんが馬車の中を覗き込んでくる。
「ずいぶん楽しそうじゃないか。その様子だと満場一致で決まったかい?」
「あっ。すみませーん。ちょっとした予定外の事態が発生しまして、今から聞くところです。そんなわけでアリリアナ組の全員と妹ちゃん、後ついでにセンカも注目」
「ふっ。ついでか……思えば私はそんな役ばかりだな」
な、なんかセンカさんがニヒルな笑みを浮かべてるんだけど。ここは、そんなことないよって言ってあげるべきなのかな?
「私達はこれからレイドを離れて、村を襲うけしからん魔物討伐に向かう感じだけど、意見がある人は挙手をするように。ちなみにこれはポタラさんからの追加注文で報酬もかなりアップされます。その代わり危険も増し増しな感じ。反対するなら今のうちだからね」
アリリアナは私達全員の顔を見回して、満足そうに一つ頷いた。
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