記憶の書店と、ひとつぶの問い

久遠梓

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第3巻 消えた足音

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再び書店の扉を開けたとき、少しだけ胸の中に不安がよぎった。
あの日から何度も足を運んでいたのに、今回はなぜか迷いが生じていた。あの本が示唆していたものに、何か引っかかるものがあったのだろうか。

鈴の音が静かに響く。
店内に広がる本の香り、木の床を歩く音――いつも通りの温かな空気。けれど、今は少しだけ、どこかが違っているように感じられた。店主の姿が見当たらないのだ。

私はそのまま本棚の間を歩きながら、手に取った本に目を通す。
目に留まったのは、白い表紙に細かい模様が浮かぶ一冊。
「失われた足音」――そのタイトルを見た瞬間、心臓が強く鼓動を打った。
このタイトルは、どこかで聞いたことがある。何かしらの記憶にひっかかるものがあったが、すぐには思い出せない。

ページをめくると、そこに描かれていたのは、またあの町並みだった。
ただし、いつもと違って、そこには誰の姿もない。ひっそりと静まり返った道が続いているだけ。
心の中で、記憶の断片がちらりと浮かび上がる。しかし、すぐに消えていった。

そのとき、足元から小さな音が響いた。
振り返ると、そこには誰もいない。背後に感じた足音――それは、まるで誰かが近づいてきているようだった。私は思わず息を飲む。

その瞬間、店主が静かに近づいてきた。

「その本も、なかなかのものだね。」
店主は、深い意味を含んだような視線で私を見た。
「忘れたものには、足音も消える。でも、それが再び聞こえるとき、その足音は本物になるんだ。」

その言葉に、私は心臓が止まったように感じた。
足音――それは、過去の記憶に繋がるものなのだろうか。私の中で消えかけていた記憶が、少しずつ呼び起こされている。
店主はにっこりと微笑む。

「君がそれを追うなら、きっと答えが見つかるだろう。」
その言葉に背中を押されるように、私はその本を手に取った。

家に帰ると、すぐにその本を開いた。
ページをめくるごとに、忘れていた記憶がほんの少しずつ蘇ってきた。足音が遠くで響くような、そんな不思議な感覚が胸を満たす。しかし、その音が近づくことはない。
それでも、私は追いかけたくなった。足音の先に何があるのか、答えを知りたかった。

そして、私は再び書店に行く決心をした。今度こそ、何かが変わる気がしたから。
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