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第五章 友哉とあきらの視える日常
5-(5) 再び崩れゆく日常
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毎日、毎日、目が覚めてまず『見えないという事実』を確認することはやめようと思った。まぶたを開いても閉じても暗闇にいるのは同じ、目の前で指をひらひらしてみても見えないのは同じだ。
だから吉野に使い方を教わってから、目が覚めたらすかさず枕元のスマートフォンの画面を触ることを習慣にしてみた。
もぞもぞと薄いタオルケットから手を出すと、カツンと指が画面に当たる。画面の中央をぽんと指で触れる。
『8月2日 7時12分』
音声読み上げ機能が、日付と時間を教えてくれる。
文明の利器は積極的に使うべきだという吉野の言葉は、まさに正しかった。慣れるまで少し時間がかかったけれど、今となってはスマートフォンなしで生きられる気がしない。
時間を知るのも、天気予報やニュースを知るのも、スケジュール管理も、メッセージのやり取りも、音楽を聴くのもオーディオブックで小説の朗読を聞くのも、スマートフォン一台ですべて出来る。
歩くことすら怖くて赤ん坊に戻ったような気持だったあの日が嘘みたいだ。
ホームボタンを押してから、画面上を指でたどっていくと、『リンリン、カメラ、ブック、メモ、カレンダー』と俺の指が触れているアプリをスマートフォンの音声が教えてくれる。『お天気情報』という声が聞こえたところで、俺は画面を二回指先で叩いた。ピコンと音が鳴ってアプリが起動する。
『8月2日、三乃峰市、晴れ、最高気温32度、最低気温23度、湿度……』
また画面を二回叩いてお天気のアプリを閉じ、俺は次にリンリンを開いた。
上からゆっくり指を滑らせる。
『体脂肪が激減! 初回限定14日分お試し価格……』
何かの宣伝を読み上げる音声は無視して、指を少しずつ下げていく。
『ヨシノ もう寝てしまいましたか……』
『ミコガミ 明日の待ち合わせは……』
『お母さん 友哉、体調はどうですか……』
メッセージの差出人と冒頭の部分が読み上げられ、俺は御子神のメッセージの所に指を持って行ってから二回タップした。
『ミコガミ 8月1日 22時25分 明日の待ち合わせは3時に三乃峰駅近くのカフェで。絶対モンブランかき氷食べよう。場所の地図は久豆葉に送った。あと倉橋も髪を伸ばす気なら、ちゃんと手入れしろ。自然乾燥でそのまま寝るなよ。おすすめのシャンプーあるから会った時に教える。それと困ったことがあったら何でも言えよ。久豆葉に言えないこともあるだろうから』
御子神のメッセージは思いつくままに書いているようで脈絡が無く、話があっちこっちに飛ぶことが多い。
俺は次に吉野のメッセージを表示した。音声読み上げ機能がすらすらと読んでくれる。
『ヨシノ 8月1日 22時43分 もう寝てしまいましたか。御子神君が突然待ち合わせ場所を変更したいとのことで連絡しました。駅近くのカフェの期間限定スィーツが食べたいという理由だそうです。倉橋君、目が見えなくてもそのまま普通高校に通い続けて、大学に入って、企業に就職する人もいるそうです。この地域の福祉やボランティアのサポートなど、少し調べましたので明日お話したいです』
吉野のメッセージは理路整然としていてすごく吉野らしい。
俺は次のメッセージを読もうとして、少しためらった。
雪彦さんは何をどう言って説得したのか、俺の両親は俺とあきらがここにいることを『快く』了承したらしい。
でも、母さんからはしょっちゅうメッセージが来るようになって、俺はそのたびに、会いたいという感情と生理的な嫌悪感が同時に湧いて複雑な気分になってしまう。
「ん-、朝ぁ?」
部屋の中であきらの寝ぼけた声がする。
スマートフォンの音量はだいぶ小さくしているのだが、起こしてしまったみたいだ。
「ごめん、寝ていていいぞ」
「ううん、一緒に起きるぅー」
子供っぽい口調の後に、大きなあくびが聞こえた。
俺はホームボタンを押してからサイドボタンを押す。カチッと画面の消える音がした。枕元にスマートフォンを置いてから、あきらの方へ顔を向ける。
「前にも言ったけど部屋を分けないか? いつも起こしちゃうし」
「やだ」
「やだって、お前」
「友哉と一緒の部屋がいい。また幽霊が出たらチョー怖いじゃん」
「幽霊なんてそうそう出ないよ」
「出るよー。竹久の後に何人見た?」
「え? そうだな、ええと……何人か見かけたけど、話をしたのはコンビニ前のサイトウさんと、三乃峰駅にいたトクダさんと、あと公園で会うひばりちゃんの三人だけだよ」
「一ヶ月も経たないうちに三人って」
「でも、この家には出ないだろ。狼がいるから」
「そうだけど、もしもってことがあるだろー」
「大丈夫だよ。もしもがあっても、きっと怖くない」
「それはたまたま、運よく、今まで怖い幽霊に当たらなかっただけでさー」
相変わらずあきらは幽霊を怖がっている。でも、俺はこの一ヶ月でだいぶ幽霊というもののことが分かってきたと思う。彼らはただ寂しいだけだ。誰かに悲しい気持ちを聞いてもらいたいだけで、悪さをするわけじゃない。
「ひとりの部屋で寝る方が寝不足になっちゃうよー」
「一緒だと毎日早起きだぞ」
「オッケー、早起き上等!」
「上等って」
「俺もそんなに遅くまで起きていないよ。友哉が早すぎるんだ」
目が見えなくなってから常に緊張して過ごしているせいか、俺はかなり疲れやすくなってしまった。夜は9時過ぎまで起きていられないし、昼も気を抜くとすぐにうとうとしてしまう。
「そっか。じゃぁとりあえず布団畳む前にシーツはいじゃって。今日、洗い方を教えてもらうんだ」
「洗い方? 洗濯機に放り込むだけじゃないの?」
「シーツの生地によってコツがあるんだって」
「ほー、さすがプロ。んじゃついでに俺が布団干すよ。この前、友哉重さでよろめいていたし」
「あ、あれは、ちょっとバランス崩しただけで」
「分かってる。でも、俺の方が大きいんだし、いっぱいこき使っていーよ」
バサバサと布を動かす音がしてくる。
俺も自分の敷布団からシーツを取ろうとして、ふと目の端に銀色の影が映るのに気付いた。
「あ、銀箭」
「またかあいつ」
庭の方から近づいて来る狼と目が合う。途端にすごい勢いで叢雲と碧空が飛び込んできて、俺の前に立ちふさがった。
あきらも近付いて来て俺の肩を押さえてくる。
「おい、お前! いい加減友哉につきまとうのをやめろ!」
銀箭はあきらの声が聞こえていないかのように、俺をまっすぐにみている。こちらに近づきたいようなのだが、叢雲と碧空がそれを許さない。
「なぁ、銀箭には敵意は無いみたいだし、そんなに警戒する必要は無いんじゃないか」
「銀箭は叢雲や碧空みたいな式狼じゃない。今は自由意思で動いているただの魔物なんだよ。何をするか分からないだろ」
「でも、あの目。何か俺に言いたいことがあるんじゃないかな」
「銀箭はあの時の呪詛に使われた式だ。もしかしたら呪詛を破った友哉を恨んでいるのかもしれないし、友哉の耳を食いちぎって味をしめたのかもしれない。おじさんがそう言っていただろ?」
「うーん、でも、今の銀箭に危険は感じないし」
「友哉は無防備すぎるよ」
「でも……あ、行っちゃった」
俺達が話している内に、銀箭は諦めたようにくるりと尻尾を見せて去って行った。
「はい、シーツ」
頭の上からばさりとシーツを投げられる。
「わ、あきら?」
障子が開けられる音がして、ん-、とあきらが声を出す。多分、伸びをしたんだろう。
「友哉、今日めっちゃ天気良いよー。洗濯ものすぐ乾くね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
煮込み料理は安心して作れる。レシピ通りの時間煮込めば、それなりに美味しくなるから。
でも、炒め物はちょっとまだ苦手だ。火が通ったかどうか分からなくて、ついつい炒めすぎてしまうから。
そして一番難しいのは……。
「まさか半熟目玉焼きがこんなに難関だとは」
「シンプルなものほど難しいですよねぇ」
佐藤の声が右から聞こえる。
「ほんとに。音と匂いだけで判断するのは至難の業です」
慎重になりすぎると黄身が硬くなるし、焦って火を止めると柔らかすぎてお皿に移す時に黄身が破けてしまう。
「いっそ、ちゃんと焼けた時の秒数を計って、毎回ピッタリ同じ時間火に通すようにすればどうでしょう」
「なるほど、いい考えです。ではさっそく時間を計って」
「はいはい、そこまで」
左から山田の声が言った。
「そろそろあきらさんがお腹空いたと騒ぎ出しますよ」
俺はポケットのスマートフォンに指を伸ばす。
『8月2日 8時39分』
機械の音声が時間を教えてくれる。
「ほんとだ。もうこんな時間」
朝食と夕食の前に、キッチン仕事の手伝いをさせてもらっている。実際は手伝いというよりも二人の仕事を増やしているだけなんだけど、山田も佐藤も嫌がらずにとても丁寧に教えてくれる。
見えないということはフライパンに油を注ぐだけでも一苦労で、計量カップや計量スプーンを使うだけも見えている人とは違っている。
油の容器を傾けてもどのくらい出ているか分からないので注ぎ口を指先でちょっと触ってみるとか、100㏄の酢を計るのにも200㏄の計量カップの内側に刻んであるメモリが見えないので、指を100のメモリの所に置いて指先が濡れるまで酢を注ぐとか、とにかく何でも指で触りまくるから何度も何度も手を洗うことになる。
それと、しょうゆ、みりん、酢、酒などの調味料は瓶の形で覚えたけれど、砂糖と塩の容器が同じ形だったので砂糖にだけシールを貼ってもらったりした。
レシピは紙にメモできないので、録画機能を使って毎回佐藤か山田にしゃべってもらっている。自分でメモアプリを使おうとしたけれど、まだ文字入力に慣れていない俺はやたらと時間がかかってしまうのだ。
山田と佐藤にとっては、普通に仕事するより何倍も面倒なはずなのに、いつも明るく楽しく接してくれて、俺に優しくしてくれる。本当に感謝しかない。
「あ、そうそう。友哉さん、この瓶開けてもらっていいですか。ちょっと固くて」
「はい、それくらいいくらでも」
山田に持たされた瓶は直径7、8センチほどのものであまり大きくはない。ジャムの瓶だろうか。俺は左手で持ち、右手で蓋をつかんでグイとひねった。
「あ、あれ?」
ぐぐっと力を込めても、まったくビクともしない。
「ん、おかしいな」
どれだけ固い蓋なのか。
家でもよく母さんに頼まれたけれど、こんなに固い瓶は初めてかも知れない。
「ん-!」
力み過ぎて息切れしてきたところに、キッチンのドアが開けられる音が聞こえた。
「あら、おはようございます」
「おはようございます、あきらさん」
「おはよー。何やってるの友哉。俺が開けようか?」
あきらが近付いて来てひょいと俺から瓶を取り上げた。
そして次の瞬間、カコッと軽い音がして甘いジャムの香りが鼻に届いた。
「まぁ、あきらさん、力が強いわ。何かスポーツでもされていたの?」
山田の声のトーンが急に高くなって、パタパタとスリッパの音を立ててあきらに近づいていくのが分かる。
「いや、友哉がゆるめてくれたのを開けただけだから」
あきらの困ったような声が聞こえ、山田の声がさらに高くなる。
「でも、細いのに筋肉がついていて素敵な体付き。さぞおモテになるんでしょ」
「え、はぁ、まぁ」
「学校ではあきらさんのファンクラブまであったと聞いたんですけど、アイドルや俳優を目指していらっしゃるの?」
「いやあの、そんなことぜんぜん……」
山田は急にどうしたんだろうか。今までは、あきらに対しても節度ある態度で接していたのに。
たじたじとするあきらの声を聞いて助け舟を出そうかと思っていると、右から強く腕を引っ張られた。
「わっ、とと」
よろめきそうになるのをどうにかこらえると、佐藤が俺の耳に息を吹きかける位置で囁いてくる。
「あのぉ、あきらさんって彼女いるんですか?」
「え? さぁ、いないと思いますけど」
囁き声に囁き声で返すと、またさらに質問をされた。
「ほんとうですか? あきらさんって、どんなタイプが好きか分かりますぅ? 年上とか大丈夫かしら?」
「さぁ、そういう話はあまりしないので」
佐藤の様子もおかしい。さっきまで和気あいあいと料理をしていたのに、急に声の雰囲気がべたべたとしたものになっている。
あきらが女性に好かれるのはいつものことだけど、山田も佐藤も大人だし、仕事でここに来ているのだからきっちりと自制してくれると思っていた。
でも、血縁であるあきらの叔母でさえも、あきらの前ではおかしくなったと聞いている。それを考えると、毎日のように顔を合わせている二人がこうなってしまったのは当然なのかもしれない。
「ねぇ、あきらさんって女性経験どのくらいあるのかしら?」
「え……と」
「若いのにすごい色気ですよね。女のこと知り尽くしているって感じで、ゾクッとする目をするんですよ」
「あ……あきらが、ですか?」
俺は、いつも中身小学生みたいな口調でバカ話をしているあきらしか知らない。女性経験のことなんて、俺達の間で話題になったことはない。
「私けっこう胸があるんですけど、あきらさんってこういうタイプ好きかしら」
佐藤は柔らかなふくらみを俺の腕に押し付けてくる。
「えと、ご、ごめんなさい、わ、わかりません……」
動物のメスのような生々しい欲望を感じて、急に吐き気がした。
あの日の母さんの異様な目を思い出してしまい、思わず口を覆う。
「友哉さん?」
「すいません……俺、そういう話よく分からなくて」
「あら……。ふふ、なーんだ童貞くんか」
小バカにしたように笑うと、スリッパの音を立てて佐藤もあきらの方へ寄っていく。
「あのぉ、あきらさんってぇ、ガールフレンド何人いるんですか」
「へ? 何人って、言われても」
「ちょっとなによ、いきなり。私があきらさんとお話しているんですけど」
「ええー、いいじゃありませんか、ね? あきらさん」
「あの、そんなにくっつかないで」
「ちょっと佐藤さん! あきらさんにべたべたしすぎじゃありませんか」
「あらやだ、山田さんこそそんな下品な大声を出して」
「なんですって、下品な色目を使っているのはどっちよ!」
「はぁ? 下品な色目って何よ!」
「前から思っていたのよ。家政婦がそんな胸の開いた服を着る必要ないでしょうが」
「そっちこそ派手な化粧してぜんぜん似合ってないわよ」
「なんですって!」
「なによ!」
いつもは二人ともこんな声を出したりしないのに、人が違ったみたいに金切り声で言いあっている。
「あ、あの、あきらも困っているみたいだし、二人とも落ち着いてください」
「はぁ? 友哉さんに関係ないでしょ」
「そうよ。友哉さんも友哉さんよ。いつもあきらさんを独り占めして」
「あきらさんに恋人が出来るのが嫌だからって、邪魔しないでくださる?」
「その通り。あきらさんしか友達がいないからって、いつもいつもそんなにべったりなのはどうなのかしら?」
「目の見えないのはお気の毒ですけど、それを武器にあきらさんの気を引いているんじゃありません?」
「弱いふりして頼り切って、あきらさんが本当は迷惑しているの分かりませんか?」
彼女たちの矛先が俺を向いて、言葉が胸に突き刺さる。
「やめろよ、変なこと言うな」
駆け寄る足音が聞こえ、ぎゅっと両手をつかまれる。
「友哉、違うよ! 俺は一度も迷惑だなんて思っていな……」
あきらの声をさえぎるように、俺は大きく声を出した。
「俺があきらに迷惑をかけているのは自分でも分かっています」
「友哉、そんなこと……」
「大丈夫」
つかまれた手をそっとはずして、佐藤と山田の声がした方角へ顔を向ける。
「でもそれは、俺とあきらの問題です。俺とあきらだけの問題です。佐藤さんにも山田さんにも関係ない」
相手の目を見返したかったけれどそれは不可能なので、俺は真っ暗な宙を睨みつけた。
「俺はあきらの恋愛には口をはさみません。佐藤さんでも山田さんでも他の女性でも、選ぶのはあきら自身ですから俺は何も言いません。でも、俺とあきらの友情は俺とあきらだけのものですから、他人が口をはさまないでくれますか」
一瞬しんとしたキッチンにすぅっと息を吸い込む音が聞こえ、俺は次の瞬間に襲ってくる数倍もの金切り声を覚悟した。
けれど、聞こえてきたのは低い男の声だった。
「まったく何を騒いでいるんだ? あきらはまだ15だぞ! 二人ともいい年をしてみっともないことはやめてくれないか!」
雪彦だ。
普段の雪彦とは違うきつい言い方に俺はドキリとしたが、佐藤も山田もまったく気にしていないようで、さらにあきらに声をかけるのが聞こえてくる。
「あらぁ、高校一年生で15歳というと、今年のお誕生日まだなんですか?」
「16歳のバースデーは盛大にお祝いしたいわ。いつなんですか」
あきらは返事をせずに俺の手を握ってきた。その手が少しだけ震えていて、俺はぎゅっとその手を握り返した。
「いい加減にしないか! さっさと朝食にしてくれ」
「あ、はーい、ただいま」
「すぐお持ちします。あきらさん、たくさん食べてくださいね」
「リクエストがあったらどんどん言ってくださいね。あきらさんのためにこの家に来ているんですよ」
「私もです。あきらさんのためなら何でもできますよ」
雇い主が怒っているのに、二人の態度は変わらない。
あきらは俺の手を自分の腕につかまらせると「行こう」と小さく言って、ダイニングの方へ歩き出した。
あきらは今まで一度も、彼女達に気のあるようなことは言っていない。あきらはこの二人を恋愛対象として望んでいない。客観的に考えれば分かることなのに、やっぱりあきらの前ではみんなおかしくなってしまうみたいだ。あきらの叔母さんも、俺の父さんも母さんも、学校の女子生徒たちもD組の全員も、みんなそうだった。
大賀見の当主の血を引く特別な子供。
雪彦はあきらをそういう風に言っていたけど、あきらの父親も同じように人を惹き付ける性質を持っているんだろうか。それならせめてあきらに会って、望まない過剰な好意への対処の仕方を教えてくれればいいのに。
それとも、うまく女性に対処できない人だから浮気などしてあきらが出来たんだろうか。もしかしたら何人も愛人がいて、何人も隠し子がいるような人なのか? 自分の息子に会おうともしない人のことは、俺にはよく分からない。
雪彦に大賀見の当主のことを聞いてみたかったけど、朝食の席ではとても言い出せる空気ではなかった。給仕してくれる山田と佐藤が入れ替わり立ち替わりあきらにかまい、そのたびに雪彦がたしなめるので落ち着いて食べられなかったのだ。
これから食事のたびにあきらをめぐる攻防戦が巻き起こるのかと思って、俺は密かに溜息を洩らした。
だから吉野に使い方を教わってから、目が覚めたらすかさず枕元のスマートフォンの画面を触ることを習慣にしてみた。
もぞもぞと薄いタオルケットから手を出すと、カツンと指が画面に当たる。画面の中央をぽんと指で触れる。
『8月2日 7時12分』
音声読み上げ機能が、日付と時間を教えてくれる。
文明の利器は積極的に使うべきだという吉野の言葉は、まさに正しかった。慣れるまで少し時間がかかったけれど、今となってはスマートフォンなしで生きられる気がしない。
時間を知るのも、天気予報やニュースを知るのも、スケジュール管理も、メッセージのやり取りも、音楽を聴くのもオーディオブックで小説の朗読を聞くのも、スマートフォン一台ですべて出来る。
歩くことすら怖くて赤ん坊に戻ったような気持だったあの日が嘘みたいだ。
ホームボタンを押してから、画面上を指でたどっていくと、『リンリン、カメラ、ブック、メモ、カレンダー』と俺の指が触れているアプリをスマートフォンの音声が教えてくれる。『お天気情報』という声が聞こえたところで、俺は画面を二回指先で叩いた。ピコンと音が鳴ってアプリが起動する。
『8月2日、三乃峰市、晴れ、最高気温32度、最低気温23度、湿度……』
また画面を二回叩いてお天気のアプリを閉じ、俺は次にリンリンを開いた。
上からゆっくり指を滑らせる。
『体脂肪が激減! 初回限定14日分お試し価格……』
何かの宣伝を読み上げる音声は無視して、指を少しずつ下げていく。
『ヨシノ もう寝てしまいましたか……』
『ミコガミ 明日の待ち合わせは……』
『お母さん 友哉、体調はどうですか……』
メッセージの差出人と冒頭の部分が読み上げられ、俺は御子神のメッセージの所に指を持って行ってから二回タップした。
『ミコガミ 8月1日 22時25分 明日の待ち合わせは3時に三乃峰駅近くのカフェで。絶対モンブランかき氷食べよう。場所の地図は久豆葉に送った。あと倉橋も髪を伸ばす気なら、ちゃんと手入れしろ。自然乾燥でそのまま寝るなよ。おすすめのシャンプーあるから会った時に教える。それと困ったことがあったら何でも言えよ。久豆葉に言えないこともあるだろうから』
御子神のメッセージは思いつくままに書いているようで脈絡が無く、話があっちこっちに飛ぶことが多い。
俺は次に吉野のメッセージを表示した。音声読み上げ機能がすらすらと読んでくれる。
『ヨシノ 8月1日 22時43分 もう寝てしまいましたか。御子神君が突然待ち合わせ場所を変更したいとのことで連絡しました。駅近くのカフェの期間限定スィーツが食べたいという理由だそうです。倉橋君、目が見えなくてもそのまま普通高校に通い続けて、大学に入って、企業に就職する人もいるそうです。この地域の福祉やボランティアのサポートなど、少し調べましたので明日お話したいです』
吉野のメッセージは理路整然としていてすごく吉野らしい。
俺は次のメッセージを読もうとして、少しためらった。
雪彦さんは何をどう言って説得したのか、俺の両親は俺とあきらがここにいることを『快く』了承したらしい。
でも、母さんからはしょっちゅうメッセージが来るようになって、俺はそのたびに、会いたいという感情と生理的な嫌悪感が同時に湧いて複雑な気分になってしまう。
「ん-、朝ぁ?」
部屋の中であきらの寝ぼけた声がする。
スマートフォンの音量はだいぶ小さくしているのだが、起こしてしまったみたいだ。
「ごめん、寝ていていいぞ」
「ううん、一緒に起きるぅー」
子供っぽい口調の後に、大きなあくびが聞こえた。
俺はホームボタンを押してからサイドボタンを押す。カチッと画面の消える音がした。枕元にスマートフォンを置いてから、あきらの方へ顔を向ける。
「前にも言ったけど部屋を分けないか? いつも起こしちゃうし」
「やだ」
「やだって、お前」
「友哉と一緒の部屋がいい。また幽霊が出たらチョー怖いじゃん」
「幽霊なんてそうそう出ないよ」
「出るよー。竹久の後に何人見た?」
「え? そうだな、ええと……何人か見かけたけど、話をしたのはコンビニ前のサイトウさんと、三乃峰駅にいたトクダさんと、あと公園で会うひばりちゃんの三人だけだよ」
「一ヶ月も経たないうちに三人って」
「でも、この家には出ないだろ。狼がいるから」
「そうだけど、もしもってことがあるだろー」
「大丈夫だよ。もしもがあっても、きっと怖くない」
「それはたまたま、運よく、今まで怖い幽霊に当たらなかっただけでさー」
相変わらずあきらは幽霊を怖がっている。でも、俺はこの一ヶ月でだいぶ幽霊というもののことが分かってきたと思う。彼らはただ寂しいだけだ。誰かに悲しい気持ちを聞いてもらいたいだけで、悪さをするわけじゃない。
「ひとりの部屋で寝る方が寝不足になっちゃうよー」
「一緒だと毎日早起きだぞ」
「オッケー、早起き上等!」
「上等って」
「俺もそんなに遅くまで起きていないよ。友哉が早すぎるんだ」
目が見えなくなってから常に緊張して過ごしているせいか、俺はかなり疲れやすくなってしまった。夜は9時過ぎまで起きていられないし、昼も気を抜くとすぐにうとうとしてしまう。
「そっか。じゃぁとりあえず布団畳む前にシーツはいじゃって。今日、洗い方を教えてもらうんだ」
「洗い方? 洗濯機に放り込むだけじゃないの?」
「シーツの生地によってコツがあるんだって」
「ほー、さすがプロ。んじゃついでに俺が布団干すよ。この前、友哉重さでよろめいていたし」
「あ、あれは、ちょっとバランス崩しただけで」
「分かってる。でも、俺の方が大きいんだし、いっぱいこき使っていーよ」
バサバサと布を動かす音がしてくる。
俺も自分の敷布団からシーツを取ろうとして、ふと目の端に銀色の影が映るのに気付いた。
「あ、銀箭」
「またかあいつ」
庭の方から近づいて来る狼と目が合う。途端にすごい勢いで叢雲と碧空が飛び込んできて、俺の前に立ちふさがった。
あきらも近付いて来て俺の肩を押さえてくる。
「おい、お前! いい加減友哉につきまとうのをやめろ!」
銀箭はあきらの声が聞こえていないかのように、俺をまっすぐにみている。こちらに近づきたいようなのだが、叢雲と碧空がそれを許さない。
「なぁ、銀箭には敵意は無いみたいだし、そんなに警戒する必要は無いんじゃないか」
「銀箭は叢雲や碧空みたいな式狼じゃない。今は自由意思で動いているただの魔物なんだよ。何をするか分からないだろ」
「でも、あの目。何か俺に言いたいことがあるんじゃないかな」
「銀箭はあの時の呪詛に使われた式だ。もしかしたら呪詛を破った友哉を恨んでいるのかもしれないし、友哉の耳を食いちぎって味をしめたのかもしれない。おじさんがそう言っていただろ?」
「うーん、でも、今の銀箭に危険は感じないし」
「友哉は無防備すぎるよ」
「でも……あ、行っちゃった」
俺達が話している内に、銀箭は諦めたようにくるりと尻尾を見せて去って行った。
「はい、シーツ」
頭の上からばさりとシーツを投げられる。
「わ、あきら?」
障子が開けられる音がして、ん-、とあきらが声を出す。多分、伸びをしたんだろう。
「友哉、今日めっちゃ天気良いよー。洗濯ものすぐ乾くね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
煮込み料理は安心して作れる。レシピ通りの時間煮込めば、それなりに美味しくなるから。
でも、炒め物はちょっとまだ苦手だ。火が通ったかどうか分からなくて、ついつい炒めすぎてしまうから。
そして一番難しいのは……。
「まさか半熟目玉焼きがこんなに難関だとは」
「シンプルなものほど難しいですよねぇ」
佐藤の声が右から聞こえる。
「ほんとに。音と匂いだけで判断するのは至難の業です」
慎重になりすぎると黄身が硬くなるし、焦って火を止めると柔らかすぎてお皿に移す時に黄身が破けてしまう。
「いっそ、ちゃんと焼けた時の秒数を計って、毎回ピッタリ同じ時間火に通すようにすればどうでしょう」
「なるほど、いい考えです。ではさっそく時間を計って」
「はいはい、そこまで」
左から山田の声が言った。
「そろそろあきらさんがお腹空いたと騒ぎ出しますよ」
俺はポケットのスマートフォンに指を伸ばす。
『8月2日 8時39分』
機械の音声が時間を教えてくれる。
「ほんとだ。もうこんな時間」
朝食と夕食の前に、キッチン仕事の手伝いをさせてもらっている。実際は手伝いというよりも二人の仕事を増やしているだけなんだけど、山田も佐藤も嫌がらずにとても丁寧に教えてくれる。
見えないということはフライパンに油を注ぐだけでも一苦労で、計量カップや計量スプーンを使うだけも見えている人とは違っている。
油の容器を傾けてもどのくらい出ているか分からないので注ぎ口を指先でちょっと触ってみるとか、100㏄の酢を計るのにも200㏄の計量カップの内側に刻んであるメモリが見えないので、指を100のメモリの所に置いて指先が濡れるまで酢を注ぐとか、とにかく何でも指で触りまくるから何度も何度も手を洗うことになる。
それと、しょうゆ、みりん、酢、酒などの調味料は瓶の形で覚えたけれど、砂糖と塩の容器が同じ形だったので砂糖にだけシールを貼ってもらったりした。
レシピは紙にメモできないので、録画機能を使って毎回佐藤か山田にしゃべってもらっている。自分でメモアプリを使おうとしたけれど、まだ文字入力に慣れていない俺はやたらと時間がかかってしまうのだ。
山田と佐藤にとっては、普通に仕事するより何倍も面倒なはずなのに、いつも明るく楽しく接してくれて、俺に優しくしてくれる。本当に感謝しかない。
「あ、そうそう。友哉さん、この瓶開けてもらっていいですか。ちょっと固くて」
「はい、それくらいいくらでも」
山田に持たされた瓶は直径7、8センチほどのものであまり大きくはない。ジャムの瓶だろうか。俺は左手で持ち、右手で蓋をつかんでグイとひねった。
「あ、あれ?」
ぐぐっと力を込めても、まったくビクともしない。
「ん、おかしいな」
どれだけ固い蓋なのか。
家でもよく母さんに頼まれたけれど、こんなに固い瓶は初めてかも知れない。
「ん-!」
力み過ぎて息切れしてきたところに、キッチンのドアが開けられる音が聞こえた。
「あら、おはようございます」
「おはようございます、あきらさん」
「おはよー。何やってるの友哉。俺が開けようか?」
あきらが近付いて来てひょいと俺から瓶を取り上げた。
そして次の瞬間、カコッと軽い音がして甘いジャムの香りが鼻に届いた。
「まぁ、あきらさん、力が強いわ。何かスポーツでもされていたの?」
山田の声のトーンが急に高くなって、パタパタとスリッパの音を立ててあきらに近づいていくのが分かる。
「いや、友哉がゆるめてくれたのを開けただけだから」
あきらの困ったような声が聞こえ、山田の声がさらに高くなる。
「でも、細いのに筋肉がついていて素敵な体付き。さぞおモテになるんでしょ」
「え、はぁ、まぁ」
「学校ではあきらさんのファンクラブまであったと聞いたんですけど、アイドルや俳優を目指していらっしゃるの?」
「いやあの、そんなことぜんぜん……」
山田は急にどうしたんだろうか。今までは、あきらに対しても節度ある態度で接していたのに。
たじたじとするあきらの声を聞いて助け舟を出そうかと思っていると、右から強く腕を引っ張られた。
「わっ、とと」
よろめきそうになるのをどうにかこらえると、佐藤が俺の耳に息を吹きかける位置で囁いてくる。
「あのぉ、あきらさんって彼女いるんですか?」
「え? さぁ、いないと思いますけど」
囁き声に囁き声で返すと、またさらに質問をされた。
「ほんとうですか? あきらさんって、どんなタイプが好きか分かりますぅ? 年上とか大丈夫かしら?」
「さぁ、そういう話はあまりしないので」
佐藤の様子もおかしい。さっきまで和気あいあいと料理をしていたのに、急に声の雰囲気がべたべたとしたものになっている。
あきらが女性に好かれるのはいつものことだけど、山田も佐藤も大人だし、仕事でここに来ているのだからきっちりと自制してくれると思っていた。
でも、血縁であるあきらの叔母でさえも、あきらの前ではおかしくなったと聞いている。それを考えると、毎日のように顔を合わせている二人がこうなってしまったのは当然なのかもしれない。
「ねぇ、あきらさんって女性経験どのくらいあるのかしら?」
「え……と」
「若いのにすごい色気ですよね。女のこと知り尽くしているって感じで、ゾクッとする目をするんですよ」
「あ……あきらが、ですか?」
俺は、いつも中身小学生みたいな口調でバカ話をしているあきらしか知らない。女性経験のことなんて、俺達の間で話題になったことはない。
「私けっこう胸があるんですけど、あきらさんってこういうタイプ好きかしら」
佐藤は柔らかなふくらみを俺の腕に押し付けてくる。
「えと、ご、ごめんなさい、わ、わかりません……」
動物のメスのような生々しい欲望を感じて、急に吐き気がした。
あの日の母さんの異様な目を思い出してしまい、思わず口を覆う。
「友哉さん?」
「すいません……俺、そういう話よく分からなくて」
「あら……。ふふ、なーんだ童貞くんか」
小バカにしたように笑うと、スリッパの音を立てて佐藤もあきらの方へ寄っていく。
「あのぉ、あきらさんってぇ、ガールフレンド何人いるんですか」
「へ? 何人って、言われても」
「ちょっとなによ、いきなり。私があきらさんとお話しているんですけど」
「ええー、いいじゃありませんか、ね? あきらさん」
「あの、そんなにくっつかないで」
「ちょっと佐藤さん! あきらさんにべたべたしすぎじゃありませんか」
「あらやだ、山田さんこそそんな下品な大声を出して」
「なんですって、下品な色目を使っているのはどっちよ!」
「はぁ? 下品な色目って何よ!」
「前から思っていたのよ。家政婦がそんな胸の開いた服を着る必要ないでしょうが」
「そっちこそ派手な化粧してぜんぜん似合ってないわよ」
「なんですって!」
「なによ!」
いつもは二人ともこんな声を出したりしないのに、人が違ったみたいに金切り声で言いあっている。
「あ、あの、あきらも困っているみたいだし、二人とも落ち着いてください」
「はぁ? 友哉さんに関係ないでしょ」
「そうよ。友哉さんも友哉さんよ。いつもあきらさんを独り占めして」
「あきらさんに恋人が出来るのが嫌だからって、邪魔しないでくださる?」
「その通り。あきらさんしか友達がいないからって、いつもいつもそんなにべったりなのはどうなのかしら?」
「目の見えないのはお気の毒ですけど、それを武器にあきらさんの気を引いているんじゃありません?」
「弱いふりして頼り切って、あきらさんが本当は迷惑しているの分かりませんか?」
彼女たちの矛先が俺を向いて、言葉が胸に突き刺さる。
「やめろよ、変なこと言うな」
駆け寄る足音が聞こえ、ぎゅっと両手をつかまれる。
「友哉、違うよ! 俺は一度も迷惑だなんて思っていな……」
あきらの声をさえぎるように、俺は大きく声を出した。
「俺があきらに迷惑をかけているのは自分でも分かっています」
「友哉、そんなこと……」
「大丈夫」
つかまれた手をそっとはずして、佐藤と山田の声がした方角へ顔を向ける。
「でもそれは、俺とあきらの問題です。俺とあきらだけの問題です。佐藤さんにも山田さんにも関係ない」
相手の目を見返したかったけれどそれは不可能なので、俺は真っ暗な宙を睨みつけた。
「俺はあきらの恋愛には口をはさみません。佐藤さんでも山田さんでも他の女性でも、選ぶのはあきら自身ですから俺は何も言いません。でも、俺とあきらの友情は俺とあきらだけのものですから、他人が口をはさまないでくれますか」
一瞬しんとしたキッチンにすぅっと息を吸い込む音が聞こえ、俺は次の瞬間に襲ってくる数倍もの金切り声を覚悟した。
けれど、聞こえてきたのは低い男の声だった。
「まったく何を騒いでいるんだ? あきらはまだ15だぞ! 二人ともいい年をしてみっともないことはやめてくれないか!」
雪彦だ。
普段の雪彦とは違うきつい言い方に俺はドキリとしたが、佐藤も山田もまったく気にしていないようで、さらにあきらに声をかけるのが聞こえてくる。
「あらぁ、高校一年生で15歳というと、今年のお誕生日まだなんですか?」
「16歳のバースデーは盛大にお祝いしたいわ。いつなんですか」
あきらは返事をせずに俺の手を握ってきた。その手が少しだけ震えていて、俺はぎゅっとその手を握り返した。
「いい加減にしないか! さっさと朝食にしてくれ」
「あ、はーい、ただいま」
「すぐお持ちします。あきらさん、たくさん食べてくださいね」
「リクエストがあったらどんどん言ってくださいね。あきらさんのためにこの家に来ているんですよ」
「私もです。あきらさんのためなら何でもできますよ」
雇い主が怒っているのに、二人の態度は変わらない。
あきらは俺の手を自分の腕につかまらせると「行こう」と小さく言って、ダイニングの方へ歩き出した。
あきらは今まで一度も、彼女達に気のあるようなことは言っていない。あきらはこの二人を恋愛対象として望んでいない。客観的に考えれば分かることなのに、やっぱりあきらの前ではみんなおかしくなってしまうみたいだ。あきらの叔母さんも、俺の父さんも母さんも、学校の女子生徒たちもD組の全員も、みんなそうだった。
大賀見の当主の血を引く特別な子供。
雪彦はあきらをそういう風に言っていたけど、あきらの父親も同じように人を惹き付ける性質を持っているんだろうか。それならせめてあきらに会って、望まない過剰な好意への対処の仕方を教えてくれればいいのに。
それとも、うまく女性に対処できない人だから浮気などしてあきらが出来たんだろうか。もしかしたら何人も愛人がいて、何人も隠し子がいるような人なのか? 自分の息子に会おうともしない人のことは、俺にはよく分からない。
雪彦に大賀見の当主のことを聞いてみたかったけど、朝食の席ではとても言い出せる空気ではなかった。給仕してくれる山田と佐藤が入れ替わり立ち替わりあきらにかまい、そのたびに雪彦がたしなめるので落ち着いて食べられなかったのだ。
これから食事のたびにあきらをめぐる攻防戦が巻き起こるのかと思って、俺は密かに溜息を洩らした。
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