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24話 砂の海を往く狩猟者
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「大砂鮫じゃよ」
イブン老の口から、聞きなれない単語が飛び出しました。
大砂鮫とは何でしょう?
グランドがいるのなら、普通の砂鮫もいるのでしょうか。
「砂鮫はこの砂漠に生息しとる恐ろしい魔物なんじゃ」
先程の慌てた男性の様子とカーミルさんの意味深な言葉。
聞き慣れない魔物の名と思しき単語。
わたしの頭では理解可能な範疇を超えた情報量です。
そんなわたしの混乱した様子にイブン老は穏やかな笑みを浮かべ、
「鮫というだけ、あってのう。見た目は海の鮫にそっくりじゃ。それが砂の海を泳いでおるのがこの『死の砂漠』の恐ろしさじゃ」
「砂の中で棲息している魔物なんですね」
「そうじゃ。砂漠の砂をまるで水の中を泳ぐように高速で泳ぐんじゃよ。こやつらが特に好むのが人肉でのう……。砂漠を旅する者を頭から、パクリとやるんじゃ」
「ひぃっ」
思わず悲鳴を上げてしまいます。
頭からということは宙を舞ったということでしょうか。
想像しただけでも怖い絵柄しか、思い浮かびません。
「その恐怖心もまた、奴らにとっては最高のご馳走になるんじゃ。恐ろしいのう」
「えっと。それはつまり……人間は餌ということでしょうか?」
「そういうことじゃ。まあ、人間だけではない。奴らは他の生き物も襲うぞ。家畜なども襲われることがあるようじゃしのう」
「なんて恐ろしい……」
「大砂鮫は変異種じゃ。親玉なのじゃよ」
「それはどれくらいの大きさなんですか?」
普通の鮫の大きさなら、大きな馬車くらいという話を本で読んだ記憶があります。
それでも十分に大きいと思うのですが、まさか、それ以上なのでしょうか。
「わしも直接見たことはないがのう。体長十五メートルを優に超えるらしいのう」
十五メートル!? 想像を絶する大きさです。
そんな巨大な生物に襲われたらひとたまりもないでしょう。
「しかも、厄介なことじゃが、あやつは魔法を使うのじゃ」
「魔法ですか?」
魔法を使うだけでも脅威なのにそれが十五メートルの巨大生物だなんて……。
何という悪夢なんでしょう。
「魔力を使った攻撃なんじゃ。破壊された痕跡から、判断するとのう……空気を圧縮した高圧の弾丸のようなものを飛ばすのじゃろう」
「まるで大砲ですね……」
「ほう。聖女様はよく知っておるのう。そうじゃ。あれと同じようなものと考えてよいじゃろう。それを動きながら、撃ってくるんじゃよ」
「そんな化け物みたいな魔物が実在するんですね」
世界は広く、わたしの知らないことはたくさん、あったのですね。
どちらかと言えば、あまり知りたくない恐ろしい知識でしたが……。
「そうじゃな。砂の海を泳ぐスピードは馬よりも速いんじゃよ。その上、魔法まで使うからのう。まさに生きた災厄……じゃな」
「そんな恐ろしい魔物がどうして、こんなところにいるんでしょうか?」
「わからんのう。ただ、一つ言えることはじゃ。あやつの大方の狙いは腹を満たす為じゃろうて……」
「では、この集落を狙って!?」
だから、カーミルさんも慌てたように席を立ったのね。
そのような脅威が相手なら、対策を早めに立てないと取り返しのつかないことになる。
わたしには何か、出来ることはないのでしょうか。
「うむ。じゃが、それだけじゃないかもしれんのう。例えば、何かを探しているのかもしれんのう」
「探し物をしている?」
「そうじゃ。そして、その探し物は恐らく、ここにあるのじゃ」
「それって一体……」
イブン老はそれだけを言うと、再び、黙り込んでしまいました。
これ以上、聞いても答えてくれなさそうな気がします。
仕方がありません。
今はとにかく、目の前の脅威を取り除くことを考えましょう。
居ても立っても居られないとはこのことです。
わたしにもきっと、何か出来ることがあるはず!
「わたしも行ってきますね!」
思い立ったら、すぐ動くのがわたしの長所であり、短所。
今はそれが最善と信じ、動くのみです。
まずは防衛策を練っているカーミルさんのところに行くとしましょう。
『聖女様! 待つのじゃー!』というイブン老の声が聞こえた気がしますが気のせいです。
イブン老の口から、聞きなれない単語が飛び出しました。
大砂鮫とは何でしょう?
グランドがいるのなら、普通の砂鮫もいるのでしょうか。
「砂鮫はこの砂漠に生息しとる恐ろしい魔物なんじゃ」
先程の慌てた男性の様子とカーミルさんの意味深な言葉。
聞き慣れない魔物の名と思しき単語。
わたしの頭では理解可能な範疇を超えた情報量です。
そんなわたしの混乱した様子にイブン老は穏やかな笑みを浮かべ、
「鮫というだけ、あってのう。見た目は海の鮫にそっくりじゃ。それが砂の海を泳いでおるのがこの『死の砂漠』の恐ろしさじゃ」
「砂の中で棲息している魔物なんですね」
「そうじゃ。砂漠の砂をまるで水の中を泳ぐように高速で泳ぐんじゃよ。こやつらが特に好むのが人肉でのう……。砂漠を旅する者を頭から、パクリとやるんじゃ」
「ひぃっ」
思わず悲鳴を上げてしまいます。
頭からということは宙を舞ったということでしょうか。
想像しただけでも怖い絵柄しか、思い浮かびません。
「その恐怖心もまた、奴らにとっては最高のご馳走になるんじゃ。恐ろしいのう」
「えっと。それはつまり……人間は餌ということでしょうか?」
「そういうことじゃ。まあ、人間だけではない。奴らは他の生き物も襲うぞ。家畜なども襲われることがあるようじゃしのう」
「なんて恐ろしい……」
「大砂鮫は変異種じゃ。親玉なのじゃよ」
「それはどれくらいの大きさなんですか?」
普通の鮫の大きさなら、大きな馬車くらいという話を本で読んだ記憶があります。
それでも十分に大きいと思うのですが、まさか、それ以上なのでしょうか。
「わしも直接見たことはないがのう。体長十五メートルを優に超えるらしいのう」
十五メートル!? 想像を絶する大きさです。
そんな巨大な生物に襲われたらひとたまりもないでしょう。
「しかも、厄介なことじゃが、あやつは魔法を使うのじゃ」
「魔法ですか?」
魔法を使うだけでも脅威なのにそれが十五メートルの巨大生物だなんて……。
何という悪夢なんでしょう。
「魔力を使った攻撃なんじゃ。破壊された痕跡から、判断するとのう……空気を圧縮した高圧の弾丸のようなものを飛ばすのじゃろう」
「まるで大砲ですね……」
「ほう。聖女様はよく知っておるのう。そうじゃ。あれと同じようなものと考えてよいじゃろう。それを動きながら、撃ってくるんじゃよ」
「そんな化け物みたいな魔物が実在するんですね」
世界は広く、わたしの知らないことはたくさん、あったのですね。
どちらかと言えば、あまり知りたくない恐ろしい知識でしたが……。
「そうじゃな。砂の海を泳ぐスピードは馬よりも速いんじゃよ。その上、魔法まで使うからのう。まさに生きた災厄……じゃな」
「そんな恐ろしい魔物がどうして、こんなところにいるんでしょうか?」
「わからんのう。ただ、一つ言えることはじゃ。あやつの大方の狙いは腹を満たす為じゃろうて……」
「では、この集落を狙って!?」
だから、カーミルさんも慌てたように席を立ったのね。
そのような脅威が相手なら、対策を早めに立てないと取り返しのつかないことになる。
わたしには何か、出来ることはないのでしょうか。
「うむ。じゃが、それだけじゃないかもしれんのう。例えば、何かを探しているのかもしれんのう」
「探し物をしている?」
「そうじゃ。そして、その探し物は恐らく、ここにあるのじゃ」
「それって一体……」
イブン老はそれだけを言うと、再び、黙り込んでしまいました。
これ以上、聞いても答えてくれなさそうな気がします。
仕方がありません。
今はとにかく、目の前の脅威を取り除くことを考えましょう。
居ても立っても居られないとはこのことです。
わたしにもきっと、何か出来ることがあるはず!
「わたしも行ってきますね!」
思い立ったら、すぐ動くのがわたしの長所であり、短所。
今はそれが最善と信じ、動くのみです。
まずは防衛策を練っているカーミルさんのところに行くとしましょう。
『聖女様! 待つのじゃー!』というイブン老の声が聞こえた気がしますが気のせいです。
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