くろいゆきの割とどーでもいいエッセイ

黒幸

文字の大きさ
58 / 190

58 名優・西田敏行の熱演は一見の価値あり!な『火天の城』

しおりを挟む
 今回、御紹介する映画は2009年に劇場公開された時代劇『火天の城』。
 原作は山本兼一先生の歴史小説『火天の城』で『安土城』築城の謎に迫る作品です。
 戦国時代に築城された織田信長の居城『安土城』は未だに残った謎が多く、これからの研究で新しい事実が判明するかもしれない幻の城郭です。
 主人公は実在した宮大工であり、実際に『安土城』築城の棟梁として現場指揮を執った『岡部又右衛門』で演じるのは西田敏行さん。
 『安土城』の主である織田信長は椎名桔平さんが演じており、その他の脇役も実力派俳優が揃い踏みです。
 西田敏行さんの演技は神がかっており、表情だけでひしひしと伝わる感情はさすがの一言で、演技力に定評ある俳優陣の競演は見応えがあります。
 ただ、その反面、話題作りなのか、何らかの柵があるのか。
 起用されたのに疑問を抱かずにはいられない演者や演出もあります(´・ω・`)

 ぱっと見で分かりやすいあらすじはこちらです。
 『長篠の戦いで甲斐の武田勢を破った織田信長はその天下統一事業を象徴する巨城を、安土の地に建築することを決意。設計及び現場の総棟梁として、熱田の宮大工・岡部又右衛門を任命する。「安土の山をまるごとひとつ、三年で城にせよ。」信長から厳命を受け、又右衛門は、妻・田鶴や娘・凛、門下の大工たちの支えを得ながら、徐々に築城を進めていく。しかし、巨大な城を支えるためにはその主柱(大通し柱)に、これまでになく巨大な檜が必要であった。理想の木材は木曽上松にあると踏んだ又右衛門は、意を決して信長の敵方・武田勝頼の領国に分け入っていく。一方、安土の作事場では新たな戦乱の暗雲が立ちこめ、又右衛門の帰還を待つ大工たちも戦地への出立を余儀なくさせる。さらに妻の田鶴にも病魔が迫っていた。果たして、又右衛門は信長の野心を現実のものにすることができるのだろうか…。(C)2009「火天の城」製作委員会』
 あらすじにある通り、『木曽の檜』に関するなんやかんやがかなりの尺を取っています。
 「ひのきがー」のくだりでだいたい、上演時間の三分の一くらいです。
 『安土城』築城開始時、『木曽の檜』がある森林を領有する木曽家は織田家と敵対関係にある武田家傘下。
 悶着が起きないはずもない盛り上がるポイントなのです。
 木曽家の惣領・木曽義昌は笹野高史さん、『木曽の檜』を管理する山の民・杣人(木こりのようなものらしい)の長は緒方直人さんが演じており、演技力お化けの熱演が光るシーンでもあります。
 特に緒方直人さん演じる陣兵衛の漢っぷりが涙を誘うカッコよさ!

 しかーし! 本作で一番、盛り上がったポイントは終盤のクライマックスでもなければ、檜絡みでもなく、実は序盤です。
 序盤、『安土城』の築城を織田信長自ら、岡部又右衛門に命じるのですが、四層吹き抜け構造に又右衛門が異を唱えた為、京都の宮大工・池上五郎右衛門、奈良の宮大工・中井孫太夫といった各地の名匠も招かれ、『安土城』コンベンションが開催されます。
 指図と呼ばれる設計図と何分の一スケールのような精巧な木製の模型を信長の前でプレゼンしながら、競い合うのです。
 ここが又右衛門一番の見せ場でもありました。
 五郎右衛門と孫大夫は信長の望む吹き抜け構造を取り入れたのに対し、又右衛門は吹き抜け構造を取り入れていません。
 それはなぜか?
 吹き抜けは炎の通り道となり、落城の原因となりかねないと力説する又右衛門は模型に火を放ち、実演してみせます。
 このコンベンションで見事に勝ち抜いた又右衛門は、『安土城』の築城を任されるのですが……。
 そこから、材料の檜がー! などのトラブルに見舞われ、群像劇が描かれるのです。

 全体的に重厚でシリアスな展開と渋い演技で安心して見られる本作ですが、不安材料がない訳ではありません。
 原作小説から改悪と呼ばれかねない変更点があるからです。
 原作では又右衛門と又右衛門の息子・又兵衛の確執と和解が描かれているのに、本作には又兵衛は出てきません。
 それどころか、息子がいません。
 出てくるのは娘の凛です。
 そして、この凛と見習い大工・市造の本来はなかったロマンス要素が入っています。
 これは『安土城』を築城した男達が繰り広げる熱いドラマであるという『プロジェクトX』みたいな物語だと思っていたら、急にティーンエージャー向けの少女漫画みたいなドラマ入れてくる感じです。
 でも、これくらいなら、まだ目を瞑れるかなぁという要素です(´・ω・`)

 タレントを辞めて、国会議員になった人がそこそこに出番と台詞があり、それなりに存在感のある大工・熊蔵役で出ているのですが……。
 中々に演技力が酷く、常に一本調子で下手をすれば、演技素人のアスリートなどが俳優で出演している方がましかもしれないのレベルで変に悪目立ちしています。
 そう。
 それだけなら、演技がちょっと酷いでまだまだ、目を瞑れました。
 酷いのはこの熊造という登場人物のキャラクター性でした。
 肉体派で頼りになる若手の大工という扱いで登場したのかと思えば、『安土城』の築城に駆り出され、戦に巻き込まれたと棟梁の又右衛門に泣き言入りの文句を言い始める。
 気のいい兄貴分という描き方を演出しようとしているのは分かるのですが……。
 前述したように演技力がアレなので何か、違うになってしまう(´・ω・`)
 さらに酷いのは熊造の最期です。
 『安土城』の築城では蛇石と呼ばれる巨岩の輸送で事故が起きたとされていますが、そこに織田信長の命を狙う暗殺者の襲撃を組み合わせ、いきなりワイヤーアクションありの殺陣が始まってしまいます。
 その暗殺者には熊造が思いを寄せたうねという女性(演じるのは水野美紀さん! 動けて、さらに演技もできる水野さんがなぜ、この女性を演じているのかと思ったら、まさかの暗殺者……)が含まれており、「うねに何をするんだー」と織田家の兵に殴りかかった挙句……。
 槍で二人ともぐさぐさに刺されて、絶命しちゃうんですよ、これが(´・ω・`)
 如何にも悲恋でドラマチックという演出がされているのですが、唐突なアクションといい、もはやギャグなのではないかと疑うレベルです。

 吉本の芸人である遠藤章造さん(堺の商人という触れ込みで特に意味があるような感じもなく、時代はコレ! みたいなパレードだけで出番終わり)や河本準一さん(結構、重要な羽柴秀吉役! ただ、『安土城』築城開始から二年後、中国地方に派遣されているはず)も出演しており、遠藤さんは演出のせいか、やや浮いていたものの河本さんは良かったと思います。

 真面目な『プロジェクトX』風のドラマを期待していると肩透かしを食らいますが、勇気・知恵・友情・愛といった少年漫画? 劇画? のようなドラマと思えば、見やすい大作時代劇ではないでしょうか。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

王命って何ですか? 虐げられ才女は理不尽な我慢をやめることにした

まるまる⭐️
恋愛
【第18回恋愛小説大賞において優秀賞を頂戴致しました。応援頂いた読者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました】 その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。 貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。 現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。 人々の関心を集めないはずがない。 裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。 「私には婚約者がいました…。 彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。 そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。 ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」 裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。 だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。   彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。 次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。 裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。 「王命って何ですか?」と。 ✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...